2011年12月02日
MVP レアンドロ・ドミンゲス(柏レイソル)
結果的にどこが優勝しようと、この判断だけは迷わない。無慈悲な狙撃手のような間合いで、迷いなく冷徹に撃ち放たれるミドルに何度も痺れた。ビスマルクの堅実さとジーニョの華やかさをプラスしような選手。Jリーグ歴代ベストイレブンに名を連ねるレベルのタレント。
※次点 ジョルジ・ワグネル(柏レイソル)
特に終盤レアンドロ・ドミンゲスが怪我で離脱してからのこの人の活躍はすごかった。柏レイソル後半戦の躍進を支えたのが彼。
最優秀監督 ネルシーニョ(柏レイソル)
勇気を持って若手にチャンスを与え、ベテランたちと切磋琢磨させながら、2年でここまでのチームを創り上げた。文句のつけようのない功績。降格時、ネルシーニョ続投を支えた柏サポーターも同時に讃えたい。
※次点 オリベイラ(鹿島アントラーズ)
三連覇のチーム。優勝争いから脱落してもゲームの質を維持し、ナビスコを獲ったことには大きな価値がある。外国人助っ人が総じて不調のなか、ほぼ日本人だけでJ1トップの内容あるサッカーを維持したのは立派。
ベストヤングプレーヤー賞 酒井宏樹(柏レイソル)
素晴らしい柏の若手のなかでも特に目を引いた逸材。ネルシーニョの許であと1年勉強して欲しいという気持ちもあるが、今すぐ欧州へ行っても充分に通用する数少ない日本人タレントだと思う。
※次点 茨田陽生(柏レイソル)
日本代表におけるポスト遠藤保仁の最右翼。今はとにかく試合に出て欲しい。二十歳の頃の遠藤と比べても、今現在の茨田のほうが上だと思う。大迫もそうだが、表情に厳しさが出てくればなお良し。
ベストイレブン
GK 林卓人(ベガルタ仙台)
※次点 北野貴之(大宮アルディージャ)
DF 田中マルクス闘莉王(名古屋グランパス)
DF 近藤直也(柏レイソル)
DF 駒野友一(ジュビロ磐田)
DF 酒井宏樹(柏レイソル)
※次点 北本久仁衛(ヴィッセル神戸)
MF レアンドロ・ドミンゲス(柏レイソル)
MF ジョルジ・ワグネル(柏レイソル)
MF 野沢拓也(鹿島アントラーズ)
MF 角田誠(ベガルタ仙台)
※次点 兵藤慎剛(横浜Fマリノス)
FW ケネディ(名古屋グランパス)
FW ハーフナー・マイク(ヴァンフォーレ甲府)
※次点 李忠成(サンフレッチェ広島)
いろんなことがあった2011年シーズンも、あと1日で終わろうとしている。
僕たちひとりひとりの暮らしのなかにも、さまざまな試練があり、困難があり、挫折があり……そしてだからこそ見えてきた掛けがえのない何ものかがあり、生き甲斐があり、喜びがあったはずだ。
あらためて気づいた。
自分にとってJリーグは、そんな掛けがえのない何ものかのうちのひとつであり、ちょっとした生き甲斐であり、そして日々の喜びだった。
辛いこと、悲しいことは、ありすぎるほどあったし、きっとこれで終わりでもないはず。
そして、だからこそ、今ここにあるありふれた幸福をしっかりと胸に刻み、2011年の最後にJリーグが辿り着く結末を、楽しみに見届けようと思う。
※関連エントリー
2011年 Jリーグ順位予想
J1 2011年期待の新星ベストイレブン
Jリーグ歴代監督ランキングTOP 10
日本人監督ランキング TOP10
posted by キリタニ |10:58 |
Jリーグ |
コメント(23) |
トラックバック(1)
2011年03月30日
残念ながら、サッカーを見る気にはなれなかった。
あれからもう20日が経とうとしているが、直接の被災者ではない僕は、精神的にも肉体的にも、未だ立ち直ることができずにいる。
これまでの半生。もちろん様々なことがあったが、今回の震災のニュースほど打ちひしがれ、気が滅入ってしまったことはなかった。
大船渡や宮古、釜石、野田、久慈、八戸……。
子供の頃から、サッカーの試合や何やらで度々訪れたり滞在した東北沿岸部の町々が、まるで終戦直後の焼け野原のように、瓦礫に埋もれ、変わり果てた状態のままである。
少し遅い飯を喰いながら、背後のTVのチャンネルをサッカーにあわせ、ぼんやりと耳を澄ましてみる……。リャン・ヨンギが、小笠原満男が、というアナウンスの声につられて、振り返りピッチ上の彼らの姿を眼で追う。そしてまた背中を向け、ただ黙々と飯を喰う。
あらかた喰い終えると、もう今日は風呂にも入らずに寝てしまおうか、と思う。あの日以来、さまざまな情報に振り回され、突き落とされ、思い悩み、そして悔やみ、まともに眠れぬ日が続いている。ベッドに入っても眠れぬのは判っているが、それでも少しでも早く横になりたい……。
が、気がつくと飯を喰い終えた僕は、いつの間にかソファーに座り、親善試合らしからぬ球際の激しい攻防や、海外へ旅立った代表選手達の逞しい成長を眺めながら、いつもJリーグを観る時そうしていたように、上体を前に乗り出し、J選抜の選手達を応援していた。
シーズン中の海外選手たちを網羅した代表と比べれば、Jリーグの選手達は明らかに皆動きが悪い。守備を見ていても攻撃を見ていても、やはり連携は取れていないし、チームにもなっていない。
けれども、闘莉王をはじめ、中澤佑二も、中村憲剛も、小野伸二も、そしてリャンも小笠原も、皆真剣に戦っているのが伝わってくる。単なる顔見世興行とするのではなく、これを真剣勝負とすることで、何かを伝えようとしている。その強い気持ちだけは、確かに伝わってくる。
知らず知らずのうちに、僕はサッカーを見ていた。
いつものように、サッカーに見入ってしまっていた。
そしてザッケローニのインタビューを見て、ピクシーのインタビューを見て、カズのゴールにひとり拳を握って喜び、そして試合後のあの表情を見て胸が熱くなり、そして今とりとめなくPCに向い、そしてとりとめなく思いついたままの言葉を、ボーとした頭のままで書き綴っている。
いつまでもくよくよしていてもしょうがない。亡くなった人たちは帰ってこない。
誰かに頑張れと云う前に、まず自分自身が頑張らなければならない……。いま自分にできることは、一刻も早く3月11日迄の自分に戻ること。そして被災した人たちの為、そしてこの国の為、これからを生きる子供たちの為、あの日までの自分よりも、さらにもう一歩前に踏み出して、自分自身の人生を頑張ってみることなのだろう。
Jリーグも、きっと楽ではないだろうと思う。
時には受け入れがたい現実にぶち当たることもあるかも知れないし、今後さらに厳しい試練の時を迎えることになるのだろうと思う。ここから生き残りを賭けたサバイバルゲームが始まる。しかし、それはこの国も同じことである。僕たちひとりひとりも、きっと同じことなのだろうと思う。
サッカーにできること。
今日ピッチに立った彼らは、ささやかながらそれを証明してくれたのではないだろうか。選手達同様、これを実施したJFAと、集ったサポーター、TVの前で見守ったファンの皆さんと、選手を送り出してくれた内外のクラブに感謝したいと思う。
そしてこのサッカーにできることと、今後のサッカーそれ自体を支えてゆくのは、これに勇気付けられ励まされてきた僕たちの役目でもあるのだろう。
辛いこと、苦しいこと、悲しいこと、絶望的なこと……は、残念ながらこれからもまだ続いてゆくのかも知れない。けれども生きている限り、完全に希望が潰える日などない。いま生きていること、それ自体が希望なのだと僕は思う。
幸い、僕たちは完全に一人ぼっち……という訳でもない。
サッカーさえあれば、またどんなカタチであれ繋がりあえる人たちがいる。見ようによっては、沈みかけた船のようなものなのかも知れないが、同じ船には、こんなにもたくさんの同乗者たちが居る。たった一匹で宇宙に飛ばされたライカ犬を思えば、それだけで幸せなのだ。生きている……やはりそれこそが、ニンゲンにとってもっとも大きな希望なのだと僕は思う。
また皆さんと、ここで楽しく語り合える日がくることを楽しみにしています。
緊急災害時動物救援本部
東北地方太平洋沖地震 被災地応援ボード(ペット連れの被災者の方へ)
日本赤十字
キリタニ文楽館
最新記事 ⇒ 菅さんがバカだというのは、確かに事実なのだろうと思うが……
過去記事
これから『悪意』の話をしよう~御用学者の出番です!~
安全キャンペーンという卑劣な善人ごっこと不道徳
これは放射能の影響でしょうか?~差別探しとデマゴギー~
コントでしょうか? いいえフツーのニッポン人です~首都圏鼻血パニック編~
東電のテレビCMと社員ボーナスを停止せよ!
残念ながら僕は福島の牛乳は飲めない……
ニッポンを繋げ!!! ~脱原発への道~
『オール前科』がヤツラへの正当な報いである。
『朝生 緊急討論!ドーなる原発? 感想と採点』
『原発安全神話と御用学者たちの責任』
『福島原発の地獄と、点と線』
『昨日、野菜の種を植えた』
posted by キリタニ |11:30 |
ザッケローニJAPAN |
コメント(18) |
トラックバック(33)
2011年03月03日
1位 鹿島アントラーズ
※ゼロックスでは名古屋に勝ちきれなかったが、選手構成を見る限り一番バランスが良い。FWのバリエーションも多彩。今年こそACLを!そしてJ1優勝争いにおいても、オリベイラさんの監督力を評価し、鹿島を推したい。
2位 ガンバ大阪
※中盤から後方にかけての高齢化は進んでいるが、得点王も狙えるタレント、FWアドリアーノの加入は大きい。とにかく前線に良い選手が揃っている。核になる選手が今後1人2人欧州へ行っても、今年も安定して強さを見せてくれるだろう。
3位 サンフレッチェ広島
※槙野&ストヤノフの穴を埋めて余りある良い補強ができたのではないだろうか?助っ人選手も決まり、今年は寿人とチュンソンの得点&ポジション争いにも期待。今後ビッククラブへの道を歩むか、一地方クラブに留まるかの瀬戸際。……正直、優勝して欲しい。
4位 名古屋グランパス
※計算のできる藤本の加入は大きいが、ケネディ、闘莉王など核になる選手が故障がちで、ブルザノ、ダニルソンの開幕欠場も痛い。ゼロックス見る限りチームスタイルにブレはないが、ACLも考慮すると選手層の厚みとその高齢化に少し不安。
5位 浦和レッズ
※もし今年の選手構成で監督がフィンケだったら、少なくとも3位以上の予想はしていた。しかし未知数の新監督が及第点レベルと見込めば、この辺りが妥当か。マゾーラと新監督の力量次第では優勝争いに加わる可能性も。
6位 柏レイソル
※これでも少し控えめか……と思えるぐらい、今年の柏には期待している。素晴らしい監督がいて、良いタレントが揃っていて、そしてさらに良い補強をした。この体制ならば優勝争いに絡んでも驚かない。
7位 川崎フロンターレ
※選手移動の出と入りを見ればプラマイ0といった印象。しかし、未知数の新監督&ジュニーニョのモチベーションとやや不安材料が目立つ。
8位 大宮アルディージャ
※渡辺大剛・上田康太・東慶悟。素晴らしい補強ができたと思う。昨年もスタートで躓きさえしなければ充分戦えるチームだったが、これも何かの巡り合せなのだろう。柏と並び今シーズンの注目チーム。
9位 清水エスパルス
※オフシーズンは衝撃的な大量離脱に肝を冷やしたが、しかし新加入選手も悪くない。特に将来の日本代表を背負うタレントと期待している高木俊幸には期待している。アフシン・ゴトビ監督が及第点レベルと見越せばこのぐらいの順位か。
10位 横浜Fマリノス
※昨シーズンは思いのほか面白いサッカーを見せてくれたが、なんでだろう……どうも強気になれない。トルシエは中国に行ってしまったが、僕はずっとトルシエマリノスが見てみたかった。
11位 ベガルタ仙台
※資金力のない地方クラブとしては最高の補強ができたのではないか。角田誠・松下年宏・マルキーニョス・柳沢敦。ぐっと選手層の厚みと得点の匂いがする布陣が組めるようになる。今年の仙台は楽しみ。
12位 セレッソ大阪
※主力選手が次々離脱する状況の中で、堅実な補強はできたとは思う。が、それでもACLも闘う今シーズンは楽ではない。清武、丸橋のさらなる成長に期待。
13位 モンテディオ山形
※戦力的には昨シーズンよりもさらに少し厳しいか……。誰が得点をとるのか?田代の離脱は痛恨。今年も小林監督の手腕に期待。
14位 ヴィッセル神戸
※取り立てて強気になれる要素もないし、例年に比べれば戦力補強もパっとしないが、都倉賢とイ・ジェミンのポテンシャルに賭けて今年もJ1残留と予想。
15位 ジュビロ磐田
※成岡翔、上田康太、松浦拓弥……重要な選手達を離脱させてしまったような気がしてならない。前田遼一がシーズン途中でパンクするようなことがあれば危ない。
16位 アルビレックス新潟
※昨年は序盤の躓きを見事に盛り返してくれたが、今年は昨年以上に苦しいシーズンか。菊地直哉は戦力的には良い補強だと思うが、マルシオの穴を埋められる選手はいまのJにはいない。
17位 ヴァンフォーレ甲府
※ギリギリ残留可能な戦力だとは思うが、強気になれないのはもうひとつ監督力を信頼しきれないせいだろうか。J1で闘い続けて欲しいクラブではあるが……。
18位 アビスパ福岡
※昨シーズンの湘南同様、厳しいシーズンが待ち受けているだろう。重松健太郎が覚醒し、得点王争いに絡むようであれば期待もあるが……。この面子でも良いサッカーができることは分かっているだけに、今年もこのチームのサッカーは欠かさず見ていくつもり。
【総評】
日本代表クラスの欧州への大量流出もあり、昨シーズンより戦力アップしてきたクラブは果たしてどれだけあるだろうか?今後Jリーグの地盤沈下は顕在化し、これがあらゆるところへ影響を与えてくるのではないかと非常に危惧している。
優勝争いについては、鹿島、ガンバ、広島、名古屋までの4チームにチャンス有りと予想。そのなかでも、ベンチメンバーの質が高く、監督力の信頼性ももっとも高い鹿島アントラーズを1番手とした。ガンバ大阪も前線の質は高く、この2チームの安定感に残りの2チームがどれだけ迫ることができるか?というシーズンになるのではないだろうか。
残留争いは、新規昇格2チーム+新潟とした(この予想を覆す躍進を期待しています^^;)。
これに磐田、神戸、山形が絡む展開と予想。心配されている清水は、新規加入選手の質と将来性でなんとか中位を保てるのではないか。
そしてJ2。
昇格争いは、FC東京、京都、ジェフ千葉、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ、横浜FCの6クラブで争われる混戦と予想。そのなかで勝ち抜けるのは、選手層の厚さでFC東京、京都、そして前線に良い補強ができた湘南ベルマーレの返り咲きに期待する。収益格差も大きく、今後のJ1J2昇降格争いはますます固定化されてゆく傾向にあると思う。
さて、皆さんの予想はいかがでしょうか?
【【J1順位予想のルール】】
○1~18の各順位の予想と結果の差を、上下に関わらず、すべて正数として加算。
○より点数が少ないものが勝者。
(昨年の平均値は50点程度)
○優勝チームを的中させた場合、-10のボーナス付与。
○降格チームを的中させた場合、1チームにつき-5のボーナス付与。
(全3チーム的中であればマイナス15。順位は問わず)
(マイナスの数値を叩き出すものが居たら『神』と認定いたします)
※関連エントリー
2010 J1順位予想
J1 2011年期待の新星ベストイレブン
Jリーグ歴代監督ランキングTOP 10
日本人監督ランキング TOP10
posted by キリタニ |11:05 |
Jリーグ |
コメント(22) |
トラックバック(13)
2011年01月31日
宿敵韓国との激戦によって、一度レッドゾーンまで振り切ってしまった日本の消耗も、この内容・苦戦の要因ではあったかも知れない。また、前線に香川真司を欠き、有効なパス選択肢が減ってしまっていたことも攻め手を欠いた一因ではあっただろう。
しかしそれ以上に、ホルガー・オジェックのリアリズムに徹した戦略と、これを忠実に実践したオーストラリア選手たちの献身的な戦いぶりは見事だったと思う。
またその一方でザッケローニ采配に眼を向けるならば、後半11分に中盤をワイドに構えたことによりなんとか立て直した……と云うのが僕の評価である。3バックだ4バックだなどと云う論理上の問題ではなく、意図はどうあれ現実になんとか立て直した……という実際が評価のすべてである。その後もまた苦戦は続いたが、あそこで岩政大樹の投入に踏み切らなければ、チームはさらに危険な状況を迎えていたことだろう。
韓国は格下日本との対戦であるがゆえに、捨てきれぬ意地があり、日本との前半戦で自ら墓穴を掘るようなゲームをしてしまった。が、オーストラリアにそんな美意識はない。前半の頭から、前線にロングボールを蹴り込むことによって陣を押し上げてくるラグビースタイル。サイドをえぐった際のクロスの狙いも、小細工なしの一貫してシンプルなものであった。
また球際の強さを存分に活かして、本田圭佑や遠藤保仁の足元に思い切りの良いボール奪取を仕掛けるプレスは圧巻で、その出足の鋭さから効率よくカウンターへと結びつける。結局日本の最終ラインが押し上げられなかったのも、そこに脅威があったからである。
日本を倒すならばこれ以上効率的な戦い方はなく、また日本側から見れば、それをこのレベルの相手に90分間ガス欠することなく貫徹されるならば、おおよそこのような試合展開になってしまうことは自明である。そういう意味では、優勝の栄冠を勝ち取った以上に、このゲームは日本に素晴らしい試練を与えてくれた。と同時に、日本は日本自身の脆弱さを、この決勝戦において全アジアに曝け出してしまった……とも云えるだろう。
120分間のゲームで、Shots on Target 3(豪州は8)と云う数字を見ても、やはり日本の劣勢は明らかであった。多くの時間帯においてこの試合の主導権を握り、結局オーストラリアは日本のほぼ倍ものシュートを放っている。
準決勝の韓国戦は五分五分の内容であった……と僕は表現したが、この試合に関しては6分4分かそれ以上で、オーストラリアが圧していた試合である。勝負を分けたポイントは、120分間でほとんど唯一とも云えるDFラインにおける1つのミス。3番カーニーの軽率なポジショニングであり、またそれを誘導した李忠成の仕掛けと、ストライカーらしい本能を感じさせる思い切りの良いトライであった。あそこでトラップしていたら、あのゴールは生まれなかっただろう。
客観的にみれば日本は幸運であった。そして敗れたオーストラリアにとっては、この結果は受け入れがたいものなのだろう。しかしこれもサッカーの現実である。そして過ぎ去ってしまった以上、これは次のステップへの過程でしかない。後はこの試合をいかにして今後の教訓とするか……である。勝ちはしたものの反省材料の方が多い試合であった。次への戦いはもうすでに始まっている。
この決勝戦のMOMとして、度重なるピンチをビッグセーブで救った川島永嗣を選出したい。
そして今大会通してのMVPというのであれば、長谷部誠、岡崎慎司との三択で迷った末に、僕ならば長友佑都を選びたい。
2008年、フッキと対峙する彼を見て僕は確信した。長友佑都こそは、将来このフッキと同じステージで戦ってゆける逸材であろうと。間もなく長友佑都は、ブラジル代表にまで登りつめたフッキとまた同じステージに立つことだろう。日本代表とは別に、彼の欧州における今後の活躍にも大いに期待したい。
先のWCにおいて、このチームは『自信』と『自立心』を獲得した、と僕は書いた。
その見立てはやっぱり間違っていなかったと思う。彼らは『自信』と『自立心』を持って、この厳しい試練の大会を戦い抜いた。消化試合の1つをのぞけば、すべてのゲームが過酷なクロスゲームの連続ではあったが、これまでの日本代表には感じたことのないレベルでの“強かさ”を感じたのも確かだ。
しかし今大会の結果によって、彼らのその『自信』と『自立心』を、愚かな『過信』や『行き過ぎた自負心』へと変容させてしまうような働きかけだけは慎まねばならないだろうと僕は思う。それはJFAも、メディアも、また僕たちファンやサポーターもである。
アジアは厳しい。やはり想像以上に、厳しい戦場なのだ。
日本は確かに3強の一角ではある。が、今回もまた、その内容をしっかりと見定めれば、そこで突き抜けた強さを発揮した訳ではない。冷静に、客観的にジャッジするのならば、この構図はここ十数年来、まるで不変だとも云えるのである。
そして今大会において、1マッチであれば、ちょっとした不運や不調によって、その他のアジアにさえいつ足元を掬われてもおかしくない実力差でしかないことも、充分に思い知ったはずである。この半年で日本代表のサッカーは確かに大きく“回復”はしてきたが、しかしまだ未踏の地、次のステージに足を踏み入れた訳ではない。
今後の戦いを睨めば、このアジアカップの戴冠という栄誉は、むしろ重しにさえ成り得るものなのかも知れない。WC予選において4.5の枠に潜り込むということは、そこに介在する運不運、欧州組との調整の難しさも含めて、未だ決して楽な話ではない。今大会を機に、WCから続くこの弛緩した空気を一掃して、もう一度アジアの厳しさを真摯に見つめなおさなければならないのではないだろうか。いま改めてそんな気がしている。
欧州組、Jリーガー含めて、今回の代表選手達にはたいへん過酷な日程と調整を強いてしまった。まもなく所属チームに帰還する彼らが、今後に続くシーズンを、ここでの影響なく無事健やかに乗り切ってくれることを心から祈っている。
※関連エントリー
【緊急討論】アジアカップにベストメンバーは必要か?
【緊急討論】アジアカップにノルマは必要か?
【アジアカップ】vsヨルダン 戦評
【アジアカップ】 vsシリア 戦評
【アジアカップ】日本の優勝確率 16.25%
【アジアカップ準々決勝】vsカタール 戦評
【アジアカップ準決勝】vs韓国 戦評
キリタニ文楽館
最新記事 朝生 ほりえもん尖閣発言へのQ&A
朝生~激論!日本は本当にダメな国なのか?!~感想と採点
彼女ができない男性の20の特徴
過去記事
【最近お気に入りの曲】虹/手嶌葵
【映画批評】ノルウェイの森 ★
『朝まで生テレビ元旦スペシャルの感想&採点』
『菅と民主党の365日【替え歌】』
【映画批評】グラントリノ ★★★
【書評】ノルウェイの森/村上春樹
『美容室にまつわる悲しい思い出』
『2010年 イラっとさせられた出来事ベスト10 後編』
『2010年 イラっとさせられた出来事ベスト10 前編』
posted by キリタニ |11:07 |
ザッケローニJAPAN |
コメント(31) |
トラックバック(4)
2011年01月26日
10年に1度、の試合ではなかったかと思う。
そしてトルシエジャパンの時代から10年の時を経て、やはり韓国は日本に勝たせてはくれなかった。最後の最後、土壇場の0コンマ数秒、数センチの攻防で、未だ韓国は日本の逆転を許さない。大きな意味での日本サッカーの成長を改めて確信したゲームであったし、また同時に韓国の底力を改めて思い知らされたゲームであった。今大会僕が見てきたなかで間違いなく、最高の試合であった。
前半の韓国は、ポゼッションで上回る日本に対して、前から圧力をかけてゆこうという選択で、自ら墓穴を掘っていた。ボールの動きと日本の両翼のポジションチェンジに合わせ、中へ中へとつり込まれることによって、結果的にサイドのスペースを明け渡し、そこで決定的な仕事を許し、ゴールへ向かいながらの危ういディフェンス対応を強いられていた。
後半開始直後、日本のさらなる攻勢を受け、やむを得ず一旦その意地と誇りを引っ込めて、低い守備ブロックを築くことに切り替えたように見受けられたが、そうしてサイドのスペースを閉じ始めた後半の5分以降は、一転して試合は韓国ペースとなる。シンプルに縦に蹴り込んでからの韓国の押し上げとフィジカルの強さを押し出した攻撃は、日本にとってはやはり厄介なもので、ここからはほぼ一貫して韓国が主導権を握る試合になった。
不必要なPK判定に互いに煩わされ、基準の定まらぬ笛にストレスの溜まる展開ではあったとは思うが、試合内容を冷静に見定めれば、日本韓国ほぼ5分と5分の試合であったという印象である。
またしても中東の笛、日本に不利なジャッジと声を荒げる向きもあるかと思うが、そんなところに苦戦の理由を求めるぐらいならば、日本人選手の危険なゾーンで手や腕を絡めてしまうJ基準の判断、あまり利のない状況で景気良く敵に振舞うFKの類に、むしろ目を向けるべきだろう。ヘタクソな審判に煩わされはしたが、結局はこの試合“も”バランスの良いミスジャッジに、妥当な結果が導き出されたゲームであった。
この韓国戦を通して、いよいよザッケローニ監督の正体が見えてきたように思う。
少しずつ押し込まれる後半以降の展開に、ザッケローニ監督がはじめて切ったカードは後半42分の香川真司⇔細貝萌。ここから日本のフォーメーションは4-3-2-1へと移行したように僕の眼には映る。そしてさらに勝ち越し後の延長前半16分には前田遼一⇔伊野波雅彦の交代によって5バックへ。
セオリーと云えば確かにセオリーであるとも云えるし、結果的にPKとはいえ勝ち進んだことで、ここに焦点が当てられることはないかも知れないが、この試合に関しては難しい試合をさらに難しくしてしまっていたように思う。日本は自陣深くに張り付いてしまい、ポゼッションも押し上げも効かない状況、これまでの日本らしさをほとんど打ち出せぬ窮地へと、自らで陥ってしまった。
準々決勝カタール戦においては、このザッケローニ監督の保守的な采配が良い方に転がったが、この準決勝韓国戦においては、むしろチームにとってマイナスの作用を及ぼしているように見受けられた。良くも悪くも、これがイタリア人監督ザッケローニの真髄の部分なのだろう。彼を選択した以上、日本はここから何を学ぶのか……が肝要である。勝っているうちは問題にされることもないだろうが、今後ある程度の辛抱が必要となるシチュエーションも覚悟しておかねばならない。
試合を見ていて改めて感じたのは、パク・チソンの素晴らしさであった。
確かに香川真司は、同じように素晴らしいタレントではある。が、現時点でパク・チソンのように素晴らしい戦士とは成り切れていない。パク・チソンが頭で行くところ胸で行くところを、足で行き腕で行っている限りは、この部分の差だけは決して埋まることはないだろう。
強くなった日本が、最後の最後で韓国を突き放すことのできないその“小さくて大きな差”とは、そんな細部に宿っているのだと僕自身は信じている。
そして延長前半7分の細貝萌の気持ち。30回にたった1回、報われるか報われぬかの地道な献身を、ゴールへの思いを、90分間すべての選手で共有できた時に、日本はこの韓国を突き放すだろう。10年後、そうなってくれることを期待したい。
こんなにも素晴らしいライバルが、こんなにも間近に居ることに、僕らは幸福を感じなければならないのかも知れない。日本の決勝進出はもちろん嬉しくはあった。が、韓国の為した延長ロスタイムでの同点劇にすらも、感動する自分が在った。
日本人であること。それ以前に、一人のサッカーファンであることを自覚させられた瞬間だった。
素晴らしいサッカーの試合に出合うこと、こそが何ものにも変えがたい一番の喜びなのだ。日本が決勝戦へ進出したこと……それ以上に、おそらくは今大会最高のゲームがニッポンの試合であったということを、僕は一人の日本人として誇りたいと思う。
※関連エントリー
【緊急討論】アジアカップにベストメンバーは必要か?
【緊急討論】アジアカップにノルマは必要か?
【アジアカップ】vsヨルダン 戦評
【アジアカップ】 vsシリア 戦評
【アジアカップ】日本の優勝確率 16.25%
【アジアカップ準々決勝】vsカタール 戦評
キリタニ文楽館
最新記事 【最近お気に入りの曲】虹/手嶌葵
過去記事
【映画批評】ノルウェイの森 ★
『朝まで生テレビ元旦スペシャルの感想&採点』
『菅と民主党の365日【替え歌】』
【映画批評】グラントリノ ★★★
【書評】ノルウェイの森/村上春樹
『美容室にまつわる悲しい思い出』
『2010年 イラっとさせられた出来事ベスト10 後編』
『2010年 イラっとさせられた出来事ベスト10 前編』
posted by キリタニ |11:24 |
ザッケローニJAPAN |
コメント(30) |
トラックバック(6)
2011年01月22日
『待てっ!』と心のなかでつぶやいた。
後半16分の吉田麻也退場。モンテシンのFK勝越し弾を受けての岩政大樹投入時のことである。10人vs11人。1人少ないなか1点ビハインドで残り時間は“たった”の25分。
なんとしてでももう1点取りに行かなければならない状況である。後ろは3枚で耐えてもらい、攻撃の枚数、特にトップの枚数だけは減らすべきではない……僕はそう思ったのであった。
しかし、結果的に見れば、あの後半19分の前田遼一と岩政大樹の交代が、この試合の明暗を分けたターニングポイントだったのかも知れない。もしあそこで違うカードを切っていたならば……最終ラインの枚数を減らして前掛りに点を取りに行っていたならば、逆にカタールの専守防衛を招き、その不均衡な攻守の間隙を突かれて、更なるカウンターの餌食になっていたのかも知れない。
もし仮に1-2のまま、残り25分間が経過していれば、この交代は後に“消極的”“守備的”と謗られていたことだろう……。『攻撃的に出た』というザッケローニ監督の言葉とは裏腹に、決してシステムを崩そうとしないその采配は、GLでの3試合含めて非常に手堅く保守的なものであった。
そしてこの試合に関しては、ザッケローニ監督のその手堅い采配が、後の逆転勝利に大きな影響を与えたのではないかと僕は思う。結果的に彼の投入した岩政大樹は、同点後の後半25分から40分までの、この試合で一番苦しかった15分間の踏ん張りを見事に支えた。もしあそこでシステムをいじっていたら、この15分間のカタールの猛攻にはきっと耐えられなかったことだろう。
つまらぬミスから失点を重ねた。一点目はオフサイド崩れと一対一の対応の甘さを突かれ、二点目もまた壁を含めたGKの対応ミスからの失点。が、何よりもまずその前の軽率なパスミスからのファール、さらには退場に繋がるイエローカードと、これら一連の流れがチームの集中を削いでしまった。
しかしその一方で、逆に日本の攻撃の多彩さ、力強さ、を見せ付ける試合にもなったのではないかと思う。特に再三にわたってDFラインの裏を突いた岡崎慎司 のダイアゴナルランと、少しずつコンディションを上げてきた香川真司のドリブル突破との両翼のバリエーションは見事で、まるで鍛え上げられた中量級ボクサーの、右ストレートと左フックのコンビネーションブローを見るようであった。
また守備に関しても、吉田麻也が度々23番セバスチャンの懐深いキープ力と仕掛けに翻弄されながらも、落としたところのセカンドボールを拾わせなかったことで、試合開始直後を除けば、流れのなかからそれほどキケンなチャンスは与えなかった。その点に関して、今野泰幸のボールへの素早い寄せとカバーリングは見事だったし、攻撃の殊勲が香川、岡崎の両アタッカーであるとしたら、守備の殊勲は間違いなくこの今野泰幸であったように思う。
ゲームを見ていてやはり目を奪われたのは、カタール選手の個のタレントの豊かさである。
云うまでもなく23番セバスチャンは、オーストラリアのケーヒルや韓国の朴主永(パクチュヨン)と並ぶアジア最高のストライカーである。強くて、高くて、速い。身体能力の高さと、ゴールへ向う意欲とそのシュートセンスは見るたびに惚れ惚れさせられる。もしJに加入すれば、間違いなく毎年のように得点王争いを賑わすタレントだろう。
そしてさらに2番ハミドの力強いドリブル突破。また12番アフメドのスピード、4番ローレンスの運動量と球際の強さ。途中出場の11番モンテシンのパス捌きとFKの技巧も含めて、個のタレントはその他のアジア一流国にも決して引けを取らない。
中東サッカーの未来のためには、小国の限界を打ち破るカタチでのミドルイースト・プレミアリーグ的なものの創設も模索してみるべきなのではないかと僕は思う。もしそれが可能になれば、人口百万から数百万人程度のカタールやバーレーン、オマーンやクエートといった国々も、国代表レベルでさらなる躍進が期待できるのではないだろうか。
ひとまずこの劇的な勝利によって、やっとこの日本代表にも熱い魂が注入され、アジアを獲るのだ!という決意と覚悟が力強く芽生えはじめたように思う。そして戦術的にここから、さらにもう一味付け加えるとしたらサイドチェンジである。今後プレスはさらにキツくなる。これに打ち勝つためには、中盤のダイレクトプレーとさらに大きなサイドチェンジが必要となってくるだろう。この3日間でその部分を上積みし、次戦へと向って欲しい。
準決勝の相手がイランになるのか、韓国になるのか……今はまだ分らないが、いずれにせよ次の試合が、今大会最も過酷で最も厳しい試合になるのではないか、と僕は思う。歴史に残る素晴らしい熱戦となることを期待している。
※関連エントリー
【緊急討論】アジアカップにベストメンバーは必要か?
【緊急討論】アジアカップにノルマは必要か?
【アジアカップ】vsヨルダン 戦評
【アジアカップ】 vsシリア 戦評
【アジアカップ】日本の優勝確率 16.25%
キリタニ文楽館
最新記事 【映画批評】ノルウェイの森 ★
過去記事
『朝まで生テレビ元旦スペシャルの感想&採点』
『菅と民主党の365日【替え歌】』
【映画批評】グラントリノ ★★★
【書評】ノルウェイの森/村上春樹
『美容室にまつわる悲しい思い出』
『2010年 イラっとさせられた出来事ベスト10 後編』
『2010年 イラっとさせられた出来事ベスト10 前編』
posted by キリタニ |11:16 |
ザッケローニJAPAN |
コメント(26) |
トラックバック(6)
2011年01月18日
ヨルダン、シリアと、勝たねばならない厳しい試合をこなす中で、徐々にそのチームコンディションとパフォーマンスを上げてきたところだっただけに、この日のサウジとの試合では、決勝トーナメントでの激戦に備えて、逆に少しボールを回され、攻め込まれるぐらいの展開を期待していた。が、サウジの戦意喪失はただごとではないレベルで、それどころの話ではなかった。
ゆるい試合になるだろうことは事前に予想していたが、これほどまでにグダグダの相手となると、逆に次の、おそらくは死闘になるだろうと思われる、準々決勝カタールとの試合が少し心配にもなる。そしてこれを無事越えられたとしても、さらにイラン、韓国、オーストラリアなど、日本と互角かそれ以上とも思しきチームとの対戦が濃厚な準決勝以降、このGL最終戦の消耗と弛緩が、大きく響いてくるかも知れない。
これは2007年のアジアカップ時と同様なのだが、こういうGL最終戦になるのであれば、やはり主力組を温存できる状況を1、2戦のうちに作っておきたかったところである。
この観点で強豪国を見渡せば、GL最終戦に向けて主力を温存できるイランが、コンディション的には少し有利な状況ともいえるのかも知れない。いずれにせよ日本は、実力的にもカタールに勝って準決勝までは進出しなければならない状況といえるだろう。そのへんが、今大会の成否を図るボーダーラインであり、ひとつの基準点となってきそうである。
試合に目を向ければ、ほとんど中盤のプレスを受けぬヌルい状況で、縦パス、ラストパスもよく通り、サイドも怖がらずに積極的にオーバーラップを仕掛けられた。その中で特筆すべきはやはり岡崎慎司の果敢なゴール前、PAへの侵入である。事前のシステムの打ち合わせがどうあったのかは知らないが、前田遼一 との近い距離での連動で、あのオートマティズムが実践できるのであれば、もう何も云う事はない。
そのゴールへ向う姿勢、裏を取るフリーランニング、そして得点。今大会岡崎慎司は、ストライカーとして素晴らしいパフォーマンスを見せてくれているが、それもファーストタッチの精度とアイディアの多彩さがあってこそだと思う。自身3点目のシーンのみならず、トップスピードにおけるボールコントロールの精度が大きく向上してきている。
今大会に関しては、彼らは1セットで使ってゆくべきである。
そしてまたプレスがさらにキツクなれば、柏木陽介のシンプルなパス回しが今日以上に活きてくる状況もあるだろう。いまひとつ調子の上がらない本田圭佑を温存し、柏木陽介に前線のコンダクターを任せてみるのも一考なのではないかとも考える。香川真司にとっても、いまはその方がずっとやり易いだろう。
岡崎慎司にしろ、柏木陽介にしろ、伊野波雅彦にしろ、チャンスを得た選手が次々に持ち味を発揮している状況を見れば、チームの統率はうまくゆき、控え選手も高いモチベーションの中で日々の練習に取り組めている、ということなのだろう。オフ期間中という厳しい日程の中で、ザッケローニ監督はよくチームをまとめ、また選手達もここまではよく頑張っていると思う。
残り試合は多くてあと3試合。
ここからは今日のサウジ戦のような試合はひとつもない。今後はおもにディフェンス面において、ここまでとは別次元の厳しいプレッシャーに晒されることとなるが、そこで吉田麻也を中心としたディフェンダーたちの真価が試されることだろう。
次戦、対カタール。
この状況で10回戦えば、日本の5勝3分2敗……といった相手だろうか。PKを50:50と考えれば、現時点で日本の突破確率は65%となる。
準決勝以降、韓国、オーストラリア、そしてイラン戦が待ち受けていると仮定すれば、勝つか負けるかはほぼ互角。この数字のみを根拠に日本の優勝確率を占うのならば、現時点でそれは16.25%ということになる。
強豪チームが順当に勝ちあがってくるトーナメント方式のACであれば、ご覧の通り確率的にも優勝とは、かくも厳しいものなのである。僕らはそれを踏まえて冷静な評価を下さなければならない。大会前から、優勝がノルマであるとか、ベスト4でなければ監督解任だとか、そんな感情的な願望を強要してみたところで、理のない話である。
こうしてひとつひとつの試合を見、決勝トーナメントで対戦する相手をよくよく観察しながら、単なる結果だけではなくその内容をも吟味して、慎重に判断を下せば良いだけのことなのだ。この見るも無残なサウジアラビアのようになりたくないのであれば、なおさらそうすべきなのだと僕は思う。
※関連エントリー
アジアカップ最終記 未来を創るもの
【緊急討論】アジアカップにベストメンバーは必要か?
【緊急討論】アジアカップにノルマは必要か?
【アジアカップ】vsヨルダン 戦評【キリタニ】
【アジアカップ】 vsシリア 戦評 【キリタニ】
キリタニ文楽館
最新記事 【映画批評】ノルウェイの森 ★
過去記事
『朝まで生テレビ元旦スペシャルの感想&採点』
『菅と民主党の365日【替え歌】』
【映画批評】グラントリノ ★★★
【書評】ノルウェイの森/村上春樹
『美容室にまつわる悲しい思い出』
『2010年 イラっとさせられた出来事ベスト10 後編』
『2010年 イラっとさせられた出来事ベスト10 前編』
posted by キリタニ |11:30 |
ザッケローニJAPAN |
コメント(32) |
トラックバック(5)
2011年01月14日
Jリーグで云えば、ヨルダンはJ2でも昇格争いに加われるかどうかのレベル。
今回と同じ環境で10回戦えば、日本の6勝3分1敗ぐらいの相手だろう、と前回の記事に僕は書いた。
一方、今回のシリアはどんな相手だっただろうか。
僕の見立てでは、シリアはJ1でも充分に戦えるレベルのチーム。
今回と同じ環境で10回戦えば、日本の5勝3分2敗ぐらいの相手だろう。
要するに日本にとっては、2試合戦って1回勝つぐらいが妥当と云える、アジアのなかではかなり手応えのある強い相手であった。これを初戦ではなく、2戦目に戦えたのは、ある意味で幸運だったのかも知れない。
ヨルダン戦に比べれば、日本のコンディションはかなり改善されたように見受けられる。前線の前田遼一、本田圭佑のゴールへ向う動きも、そうして押し込んで創ったスペースを松井大輔や香川真司が突く動きも、随分スッキリとしたカタチになっていたと思う。それによってまた、サイドのスペースも良く使えていた。
初戦の日本を50%ぐらいのデキと捉えるならば、この日の日本は75%から80%と云っても過言ではないと思う。同じメンバーに拘りながら、それぞれの役割を再確認し、個々のパフォーマンスを上げて試合に臨んできたザッケローニ監督の方針には好感が持てた。これは、基礎作りの段階で選手との信頼関係を築くためにもとても大切なことだろう。
日本は確かに良いパフォーマンスを見せた。
しかしそれでも、この試合の勝敗を分けたのは、僕はイラン人レフェリーのMOHSEN TORKY氏であったように思う。
後半31分の“あのシーン”は、ゴール前へと通ったあのボールに最後に触ったのが誰かという問題だ。果たしてそれが今野泰幸であったか、シリアの選手であったのかがすべてであり、もし仮にそれが今野の方に当たっていたとするのならば、その後の“PKレッド”の判定は至極当然のことだと僕は思う。
線審は確かにオフサイド判定をしたが、角度は良くないながらも主審はあの線審よりも近い位置で現場を見ていた。結果、主審が線審の旗を覆して、オフサイドではないと判断したのであれば、きっと主審は“それ”を見ていたのだろう……と僕は認識した。
しかし、その後の流れを見れば、あの時彼(主審)は“それ”を見ていなかった……ということだろう。
後に主審が日本に与えたPKは、明らかにプレゼントだった。少なくとも僕がレフェリーであったならば、自らのあやふやなジャッジの尻拭いのためであったとしても、絶対にあの笛は吹かなかっただろう。
結果的に、主審のミスは彼自身のその後の“調整”によって相殺されるカタチとなったが、川島永嗣へのレッドを考慮に入れても、これがどちらの側に有利に働いたのかどうかは分らない。
僕はむしろ、あのまま後半残り20分超を、じっくりと攻め立てられるほうがキツかったような気もしている。あの時間帯少しずつ押し込まれるような体勢のなかで、守備の意識ともう一点取りに行く前線の意識との間で、それぞれのラインが少しずつ間延びしてきていたようにも映るのだ。
さらに、その後に日本にプレゼントされたPKなどのゴタゴタさえ無ければ、残りのロスタイム含めた15分以上の時間も、シリアはもう少し冷静に戦えていたのではないだろうか。
あの日本が追い詰められた後半31分の“PKレッド”のシーンで、おそらくはシリアの補欠選手なのだろう。ベンチ前にうつ伏せに突っ伏して、涙を流しながら神に祈りを捧げているシーンが画面に映し出された。
僕は日本人であり、日本を応援している身ではあるが、あれを見た瞬間に、それらのことをすべて忘れ、なにか胸に込み上げてくるものがあった。そして、もしかしたらこの大会に勝つべきは、彼らのような選手達であり、彼らのような国なのかも知れないな……とも思った。
今のJFAや、日本代表や、メディアやジャーナリズムや、そして僕らを含めたファンやサポーターは、果たしてこの大会に、彼らや彼らの国ほどの熱い情熱を注いでいると云えるのだろうか?いま足元を見つめ直し、そして深い自省をも込めて、もう一度僕らは、アジアのなかのニッポンであることを強く認識しなおさなければならないのではないか、そんな気がしている。
※関連エントリー
アジアカップ最終記 未来を創るもの
【緊急討論】アジアカップにベストメンバーは必要か?
【緊急討論】アジアカップにノルマは必要か?
【アジアカップ】vsヨルダン 戦評【キリタニ】
キリタニ文楽館
最新記事 【映画批評】ノルウェイの森 ★
過去記事
『朝まで生テレビ元旦スペシャルの感想&採点』
『菅と民主党の365日【替え歌】』
【映画批評】グラントリノ ★★★
【書評】ノルウェイの森/村上春樹
『美容室にまつわる悲しい思い出』
『2010年 イラっとさせられた出来事ベスト10 後編』
『2010年 イラっとさせられた出来事ベスト10 前編』
posted by キリタニ |11:35 |
ザッケローニJAPAN |
コメント(56) |
トラックバック(6)
2011年01月11日
親善試合と公式戦の戦いが異なるように、アジアと世界の戦いもまた同様のものではない。
どちらが強いかと云えば、それはワールドカップの舞台で出会う国々のほうがずっと強いことだろう。が、どちらがやり難いかと聞かれれば、僕ならば『アジア』と答える。
格上の、負けても仕方ない強い相手に負けないように戦うこと。
格下の、勝たなくてはならない弱い相手に、取りこぼしの許されない状況で勝ちきること。
どちらの勝負も同じように、厳しく、困難な戦いに違いない。
ヨルダンは中東らしい当たりの強さに、前からの献身的なプレッシングを加えた、なかなかバランスの良いチームだった。ベーシックな中東のカウンター攻撃に、ギリシャあたりに見られる南東ヨーロッパの組織的な守備戦術が、うまく融合されたようなイメージである。
勿論選手個々のスキルはそれほど高いものではなく、Jリーグに置き換えれば、J2で昇格争いに加われるかどうか……がやっとのレベルだとは思うが、それでもいまの連動性に欠ける個力頼みの日本の攻撃では、しっかりと固められた守備ブロックを突き崩すのは、そう容易いことではない。
例え中東の二流国、アジアの三流国といえども、高いモチベーションの下、我慢強い守備戦術を徹底された場合、やはりどうしても厳しいゲームとなるのだ。冷静に分析すれば、日本の実力とは未だその程度のものでしかないとも云えるし、あるいはサッカーの現実とはそう云うものである、と言い換えることもできる。
またコンディションに関しても日本の選手は、長谷部誠や香川真司などの海外組を除けば、ロシアの本田圭佑も含めて、概ね動きにキレがなかったように思う。途中出場の岡崎慎司(天皇杯決勝出場)が、唯一いつも通りの動きを見せていたところを見れば、やはりこの日程での調整は非常に難しかったのだろう。
そもそもJFAは、選手達にただただハードスケジュールを強いるばかりで、このアジアカップに結果を問えるだけのサポートをしてきたとは到底思えない。ACLの結果を受けて、天皇杯の日程調整に取り組まなかったことを見ても、それは明らかである。例え結果的にこの大会を優勝することがあったとしても、この部分だけは後々厳しく検証されるべきである。まずいまやるべきことをやらずして、選手のため、日程のためと、秋春制にかこつけられても本末転倒である。
今回この試合を困難なものにしたひとつの要因として、選手、スタッフ、監督、協会、そして僕たちファンやサポーターを含めて、対世界(WC)との戦いから、対アジア(AC)との戦いに、本当の意味でシフトしきれていなかった……ということも挙げられるかも知れない。間にアルゼンチンとの余興があったことも、これを助長する作用があったことだろう。これらの影響によって、ACへと向うその空気は、いつもよりかなり弛緩したものになっていたような気もするのだ。
ここからの戦い方は、これまでの戦い方とは180度異なると云っても過言ではない。
2014年ブラジルへと続く、長く、苦しく、果てしない、アジアとの戦いが、いま再びスタートしたのだ。
その一番最初に、このような厳しい試合、過酷な試合、困難な試合を戦えたことは、実はとてもラッキーなことであったのだろうと僕は思う。しかもあの展開で、勝ち点1まで得られたのだから。
今後の戦いにおいてザッケローニ監督にひとつ注文がある。それは、今回の大会に関しては、できれば試合開始から前線に二人、FWを並べてみて欲しい、と云うことだ。今のままではゴール前が薄い……。
序盤、早くボールを前へ運び、良いタイミングでクロスを上げても、中の人数、PA内の人数が足りていないケースがままある。要するに流れのなかで、しっかりとゴール前に厚みを作って欲しいのだ。またそうすることによって、本田圭佑や長谷部誠らのロング・ミドルレンジからのシュートも活きてくるだろうし、少し支配率は落としたとしても、結局は今より有効なゾーンで中盤を制することもできるはずである。
そして遅攻になったら、やはりサイドを基点に人数を掛けて、敵陣ゴールライン際まで深くエグることにトライして欲しい。その為にもまた、中でゴチャついてしまう今のシステムと選手起用には、少し修正を加えたほうが良いのかもしれない。
今後のキープレーヤーは、今大会に関しては岡崎慎司になるような気がする。前田遼一と本田圭佑二人を中央に配して起点にする今のシステムでは、ボールは回れどあまり得点の匂いは感じられないのである。ここにダイナミズムが必要ではないだろうか。
ほんとうの意味でアジアの過酷を知らないザッケローニ監督にとっても、この試合は素晴らしい教訓を残してくれたのではないだろうか。そしてできることならば、さらに苦しめばいいと僕は思う。いまこの時期だからこそ、もっともっと苦しんだ方がいい。
いまの日本にとって一番大切なのは、勝つことよりも寧ろ苦しむこと……なのかも知れない。今大会がそういう大会になってくれることを、僕は強く望む。
※関連エントリー
日本化の方程式と次の代表監督について
新JFA会長への5つの要望
日本サッカー界への宣戦布告
【緊急討論】アジアカップにベストメンバーは必要か?
【緊急討論】アジアカップにノルマは必要か?
キリタニ文楽館
最新記事 【映画批評】ノルウェイの森 ★
過去記事
『朝まで生テレビ元旦スペシャルの感想&採点』
『菅と民主党の365日【替え歌】』
【映画批評】グラントリノ ★★★
【書評】ノルウェイの森/村上春樹
『美容室にまつわる悲しい思い出』
『2010年 イラっとさせられた出来事ベスト10 後編』
『2010年 イラっとさせられた出来事ベスト10 前編』
posted by キリタニ |11:32 |
ザッケローニJAPAN |
コメント(44) |
トラックバック(7)
2011年01月05日
僕が知る限り、日本代表のアジアにおける戦いに、JFAサイドから代表監督に対してノルマが科せられた大会は、この20年で2度ほどあったと記憶する。
一度目は、1994年の広島アジア大会におけるファルカン。そして二度目が2000年レバノンで開催されたアジアカップ(以下AC)におけるフィリップ・トルシエである。
結果的に前者ファルカンは、準々決勝で韓国相手に2-3で敗れ(ベスト8敗退)、その後長沼健会長(当時)の秘蔵っ子とも云われた加茂周氏に取って代わられたし、また後者はものの見事に優勝を収め、トルシエ降ろしに暗躍していた協会内の反トルシエ派を、ギャフンと云わせた(実際には多分云っていない)と記憶している。
このあたりの経緯には、オモテに出た話、または憶測の域を出ないウラの話、さらにはスジ読みで浮かび上がってくる推論の類、諸説さまざまあることは承知しているが、この“ノルマ”なるもの……僕の印象としては、時のJFA権力者が、現監督体制に不満を持っている場合に限り科され、そうでないときには科されてこなかった。
これまでJFA権力者たちは、そこに確たる姿勢を持たぬままに、一貫性なくその時々の“思惑”により、具体的なノルマを出してみたり引っ込めてみたりしてきた。僕自身はそう認識している。
今回のザッケローニ新体制下において、JFAサイドからそのような“ノルマ論”は一切聞こえてこない。まあそうだろうと思う。昨年11月8日にはアディダスジャパンとのアドバイザリー契約も済ませ、ファン・サポーターからの人気も上々のザッケローニである。いまのところ協会権力者が、表立ってザッケローニ降ろしに取り掛からなければならない事情は何一つない。
しかし、僕が不思議に思うのは、今回多くのサッカーファンの間からさえも、そのような声が上がってこないことである。この様相は、2007年のオシムジャパン、そして2004年のジーコジャパンの時と、明らかに異なるのである。僕はそれを、たいへん新鮮な驚きをもって眺めている。
優勝して当然!といった意見や、最低でもベスト4、最低でも次回予選免除の3位以内……。
でなければ解任。
過去2大会においては、そんな意見がかなりの割合を占めていたと記憶する。それが今回はどうだろうか……。どこからもそんな話しは表立って聞こえてこない。
理由はわからなくもない。
それだけ埼スタで行なわれた親善試合アルゼンチン戦の勝利は多くのサポーターを歓喜させたのだろうし、またそれだけ元ACミランのセリエA優勝監督という肩書きは、多くのファンを安心させる響きを有しているのだろう。
ザックならば必ずニッポンを強くしてくれるはず……そんな期待が、このような温かな視線であり穏やかな空気を醸成しているのだろう。
しかし、だとすれば、多くのファンやサポーターといったものも、これまでのJFAの一貫性のない立場と同じように、その時々の個人的な評価や好悪の感情によって、『ノルマ』なるものを出したり引っ込めたりしている、ということなのだろうか?
そしてまた、だとすれば、よく聞く『結果がすべて』と云う決まり文句も、その時々の状況や事情をその都度慮って、出してみたり引っ込めてみたりされ得るものなのだろうか?
そこで皆さんにお聞きしたい……
【1】アジアカップに臨む代表監督に果たしてノルマは必要なのか?
【2】必要だとすればそのノルマとは具体的にどのようなものなのか?
今回はこの2つのテーマについて御意見を伺えればと思っています。
これまでの例に倣って、ここでは僕個人の意見はあえて伏せておき、後にコメント欄の討論に参加させていただくカタチで意見表明してみたいと思っています。今回もまた、さまざまな立場からのご意見・ご感想をお待ちしております。
※関連エントリー
オシムの戦い その批判に対する後記
日本代表監督論【ポストオシムへの提言】
オシムジャパンのタイムスケジュール
【AC】韓国戦とニッポンの現実
【緊急討論】アジアカップにベストメンバーは必要か?
キリタニ文楽館
最新記事 『菅と民主党の365日【替え歌】』
過去記事
【映画批評】グラントリノ ★★★
【書評】ノルウェイの森/村上春樹
『美容室にまつわる悲しい思い出』
『2010年 イラっとさせられた出来事ベスト10 後編』
『2010年 イラっとさせられた出来事ベスト10 前編』
posted by キリタニ |11:22 |
【緊急討論】 |
コメント(59) |
トラックバック(7)
2010年12月28日
「私は育成とスタイルの転換を求められて就任したが、藤口さんが『優勝を求めるべきだった』と言ったという声が後々(外部から)上がってきた。その私を招へいした人もすぐ(開幕1か月後に)いなくなってしまった」※以上スポーツ報知
これがフォルカー・フィンケ元監督の最後の会見でのコメントなのだそうだ。さぞ無念だったろう。
確かに2004年から2007年の一時期の栄華と比較するのであれば、フィンケ時代の2年間の成績は物足りないのかも知れない。しかしこの間、Jリーグの伝説とも云えるエメルソンやワシントンの姿はなく、また全盛期のポンテも、田中達也も、鈴木啓太も、さらに長谷部誠も、闘莉王も、三都主アレサンドロも、 相馬崇人も、高原直泰も失っていった中で、いったい誰が監督であれば、あの当時と同じだけの“結果”を収めることができたと云うのだろう。
この状況の中で、フィンケをブッフバルトに差し替えていたならば、フィンケをオジェックに差し替えていたならば、或いは福田正博ならば、ゼリコ・ペトロビッチならば、いまの面子で優勝争いに絡んで、さらにACLで活躍することができていたのだろうか?
残念ながら、僕はそうは思わない。
これらの誰がフィンケさんに代わり指揮をとっていたところで、戦績的にはさほど変わらないか、或いはそれ以下のものでしかなかったであろうと思っている。
そしてまた、これらの誰が率いていたとしても、これほどまでに大胆で前向きな戦力の更新と、サッカースタイルの変革は為されなかったであろうと思っている。
要するにフィンケさんは、与えられた厳しい条件の中で、当初求められたタスクだけは充分に果たしていたと僕は思う。及第点を与えられるだけの“内容”は示してきた。そしてその“結果”についても、与えられた戦力と状況から見れば、上出来とまでは云わぬまでも、至って妥当なものを残したと云えるのではないかと僕自身は思っている。
ただし、僕がフィンケさんの立場であれば、
2010年を迎えるにあたって、パワープレーにも活用できるもう一人の外国人ストライカーを、サヌーやファイサルに優先して、獲得していたことだろうと思う。
先制されれば打つ手なし。ただアタッキングサードの外周をなぞるようにしかボールを動かすことが出来ない攻撃。そんな自ずから時間を浪費するような攻めに終始してしまったのは、この部分のコマ不足が大きく響いていたように思う。
さらに云えば、後半は幾分改善の兆しが見えてきたとはいえ、結論から云えば、やはり速い攻めに対する意識と工夫が足りていなかった。前線で素早く数的同数や有利を作り出す共通認識とオートマティズムの欠落の為に、結局は上記の攻め倦みの状況に陥り、そこで無駄なリスクを犯してカウンターの餌食となるシーンが頻発した。
ここを割り切り、ブレークスルーする為にも、多少不格好で理念に反する部分はあれども、パワープレーに活路を見出す戦術的な柔軟性も、必要だったように思う。
しかし、この補強やチーム編成については、フロントとの関係や予算の制約もあり、フィンケさんがどのように考え、立ち振る舞っていたのか……僕には判らない。この点だけが、僕がフィンケさんの2年間に抱いた、ほとんど唯一の不満である。
フィンケ元監督の元で、浦和の選手人件費13億6000万円は約43%もカットされ、いまでは7億7000万円にまで圧縮されたとの一部報道もある。
常にケガや故障がちの元スター選手たちが、未だ長期契約の縛りによって高給をあてがわれている状況を鑑みれば、フィンケさんはフィンケさんの限られた裁量のなかで、驚くべきスピードのチーム改革を為してきたとも云える。
そしてなぜこれだけのコストカットが必要だったのか?
急速に拡大してきたクラブ経営の中で、過剰に“肥大化”してしまった贅肉の部分があるのではないか?そしてこの右肩下がりの経済状況を迎えて、まずその贅肉を切り落とすのではなしに、現場サイドの筋肉から先に切り落とすような歪なカタチで、いまクラブ運営が為されているのではないのか?
だとすれば、それはフィンケさんの問題ではない。
おそらくは今後も延々と続くであろう浦和レッズ自身の問題である。このことについては、クラブを愛する人たちすべてで、もう一度真剣に検証してゆくべきであろう。
サッカークラブとは、監督と現場スタッフ、そして選手とサポーターとが、4つの車輪をそれぞれに押し進める4輪駆動のオフロード車のようなものだと僕は思っている。心を一つにして、それぞれの車輪を息を合わせて一緒に押し進めるのであれば、その車はどんな悪路でも前に進む事ができるし、行き止まりに見えるブッシュの中も掻き分けて進むことができるだろう。
しかし、その進路を見極め、舵を切り、アクセルとブレーキを選択する巨大な権利は、多くの場合、出資企業から短期で送り込まれてくる腰掛社長とその取り巻きの一部が握っている。金があるにも関わらず、力があるにも関わらず、没落してゆくクラブの根本的な病理は、ほとんどの場合ここに巣食っている。そしてこれはいまのJFAも似たような構造であると云えるのだろう。
市民クラブの優等生とも讃えられる浦和レッズとて、この構図に他クラブとの大差はない。責任企業からの損失補てんの無い自立した運営組織であることを誇りとするのであれば、さらに一歩進んだ、ほんとうの意味で開かれた市民クラブの姿を、いつか実現してみせて欲しい。常々僕はそう願っている。
ひとまずフォルカー・フィンケと浦和レッズの2年間の冒険はここに終わった。
願わくばこの2年間にフィンケさんが残してくれた未来への財産を、これを引き継ぐものたちが大切に育て、はぐくんでいってくれることを、心から祈っている。
※関連エントリー
浦和レッズ再建論 求められる助っ人とは
浦和レッズとフィンケの航海
浦和レッズ再建案 2010
浦和レッズ再建案 低迷の原因とGMについて
キリタニ文楽館
最新記事 『【替え歌】菅と民主党の365日』
過去記事
【映画批評】グラントリノ ★★★
【書評】ノルウェイの森/村上春樹
『美容室にまつわる悲しい思い出』
『2010年 イラっとさせられた出来事ベスト10 後編』
『2010年 イラっとさせられた出来事ベスト10 前編』
posted by キリタニ |11:28 |
浦和レッズ |
コメント(10) |
トラックバック(1)
2010年12月24日
来年早々1月7日からはじまるアジアカップ2011カタール大会を2週間後に控えて、いよいよ本日12月24日アジアカップ最終登録メンバーの23名の選手が発表される。
今回のアジアカップ(以下AC)は、これまでの6月開催から1月開催に移行されたことにより、国内において天皇杯準々決勝~決勝を戦う代表選手たちにとっては、WC年の厳しいスケジュールを戦い終えたばかりにも関わらず、ここからさらに休む間も無くACを戦い、そのわずか1月後にはすでにシーズン開幕という異常な日程となる。
欧州移籍組にとっても、ウインターブレイクを挟んで後半戦しきり直し直後のリーグ戦3~5試合程度の欠場を余儀なくされる。
これは各クラブで厳しいポジション争いにしのぎを削っている海外組選手達にとって、或いはいままさに来期の身の振り方について、自分自身の価値や評価を少しでも高めようと必死でもがいている選手達にとって、その後の人生を左右しかねない大きな負担ともなる。
例えばいま首位を快走するドルトムントで、チームの主役とも云える活躍を見せている香川真司は、リーグ優勝のみならず、ブンデスリーガベストイレブン、さらにはリーグMVPの候補にすら名を連ねる働きを見せている。いまこのタイミングで、ドイツでの優勝戦線から離脱させ、アジアの地域大会への参加を強いることは、果たして本当に日本サッカー界にとって不可欠なこと、或いは有益なことと云えるだろうか?
そしてまたシャルケには内田篤人がいる。ドイツ有数の強豪クラブの厳しいレギュラー争いを戦うなかで、いまやっとスタメンの座を手中に収めつつある彼に、同じようにアジアの地域大会への参加を強いることは、果たして本当に日本サッカー界にとって不可欠なこと、或いは有益なことと云えるだろうか?
また彼は、僕が知る限り欧州でも五指に入るほど優秀な指導者フェリックス・マガトの指導を受けながらいまチャンピオンズリーグまでをも戦っている。このような状況であれば、その後のコンディションも考慮し、今シーズンは所属クラブの一員としての活躍を全うさせてやることこそが、日本サッカー界にとっての公益にも適う決断である……とは云えないだろうか?
またそういった考え方とは別に、日本代表こそがすべてというファンとしての価値観も当然のように在ることだろう。そしてさらに、選手個々の状況をいちいち慮っていたら、今後二度と日本代表にベストメンバーなど組めなくなる……といった考え方もあろうと思う。
この問題もそれぞれの立ち場によって様々な捉え方が可能だろう。
皆さんの意見はどうだろうか?
【1】アジアカップ(カタール)に最強メンバーで臨むべきか否か?
【2】最強メンバーの必要がないとすれば、どんなメンバー構成で臨むべきか?
(国内組のみ 又は あくまで選手個々の状況による 又は 天皇杯上位組も休ませるべき 等)
今回はこの2つのテーマで討論していただければと思います。御意見をお待ちしております。
※関連エントリー
1分2敗 (得失点差-3)
おまえも岡ちゃんに謝れっ!
岡田ジャパンの総括
【緊急討論】日本人選手の海外流出を問う
キリタニ文楽館
最新記事 【書評】ノルウェイの森/村上春樹
過去記事
『美容室にまつわる悲しい思い出』
『2010年 イラっとさせられた出来事ベスト10 後編』
『2010年 イラっとさせられた出来事ベスト10 前編』
posted by キリタニ |11:29 |
【緊急討論】 |
コメント(53) |
トラックバック(7)
2010年12月20日
僕のJリーグ観戦における一番の楽しみは、可能な限り多くのゲームを観戦しながら、できるだけたくさんの若く新しい才能に出会うこと……のような気がする。そしてまたそんな選手達が、試合を重ねるごとに成長してゆく様を見守るのが最高の喜びであったりする。
サッカー選手に大きなケガはつき物であり、また昨今は残念な事件や、素行不良によってピッチを去ってゆく選手達も少なくは無いが、今年1年僕が見てきたJ1J2あわせて200近い試合の中で、2011年J1の舞台でさらに大きく飛躍してくれそうなタレントを、僕なりの基準で11人選出してみた。
なかにはすでに三十路にあと少し……という、決して若いとは云えない選手達もいるが、キリタニが来期に大きく期待する11人、ということで御理解いただければと思う。
GK 東口順昭(アルビレックス新潟・24歳)
昨年まで広島で活躍した佐藤昭大(現鹿島)に似た足元の技術に優れたタイプであり、キャリアの割にミスも少なく、非常に落ち着きもある。日本のファン・デル・サールを目指して成長していって欲しい。
DF ダニエル(ヴァンフォーレ甲府・28歳)
昨年J1J2の試合をおよそ200試合ほど観戦してきた中で、彼こそが今現在のJリーグの中で、最高のDFなのではないかと僕自身は思っている。ガンバを含めたJ1のビッククラブ間で、争奪戦にならなかったのが不思議なぐらいの素晴らしいタレントである。
DF 近藤直也(柏レイソル・27歳)
以前から密かに注目してきた選手ではあるが、一年間のシーズンを通して戦う中で、完全に一本立ちしてきたという印象。今シーズンの柏の堅固なディフェンスは、間違いなく彼の成長に支えられていた。
DF 丸橋祐介(セレッソ大阪・20歳)
すでにセレッソで確固たる地位を獲得しつつあり、またSBに限らずどのポジションでもこなしそうな確かなスキル・キックの精度を持った選手であるが、ここはぜひ左SBとして育って欲しい。もし今後2~3年のうちに代表において長友佑都のポジションを脅かす選手がいるとするならば、おそらく彼だと思う。
DF 酒井高徳(アルビレックス新潟・19歳)
技術的にはさほどうまい選手だと思わないが、まるでイングランドやスコットランドの選手を見ているような球際の強さと気迫、そしてプレーの小気味良さを持っている。今までの日本にはあまりいなかったタイプの力強いサイドプレーヤーである。
MF 中町公祐(アビスパ福岡・25歳)
すでに遠藤保仁や中村憲剛に劣らぬだけの見事なスキルと類稀なサッカーセンスを持ち合わせている。それがJ1の激しいプレッシャーの中でも発揮出るのか否か……。2011年のJ1で、僕にとっては或る意味一番興味深いタレントである。
MF 清武弘嗣(セレッソ大阪・21歳)
大分時代から才能の塊のような選手であったが、セレッソの流動的なムービングサッカーの中で、ありあまるその才能を見事に開花させつつあるように思う。来シーズンはチームにとって厳しいシーズンになると思うが、精神的な面でもチームを引っ張るような存在となることを期待したい。
MF レアンドロ・ドミンゲス(柏レイソル・27歳)
今年J2を見てきた方々からすれば、何を今更……と云う話しなのだろうが、まだレアンドロのプレーを見ていないと云う人には、ぜひ覚えておいて欲しい選手である。マルシオ・リシャルデスとビスマルクを足して2で割ったようなタレントとでも云っておこうか。2011年J1のベストイレブン候補である。
MF 永里源気(アビスパ福岡・24歳)
休まずボールを追い、休まずパスコースに顔を出し、またスペースに走り、常にフェイクを入れてファーストタッチを工夫し、最後には必ずゴール前へと詰める。泥臭く、そして感動的だった今年の福岡サッカーを象徴する存在。
FW 平井将生(ガンバ大阪・23歳)
改めて取り上げるまでもないが、前への推進力・突破力を持った待望の和製ストライカー。チョン・テセや良かった時期の豊田陽平にも通じる“アフリカン”的スピードとパワーを併せ持つタレント。
FW 高木俊幸(清水エスパルス・19歳)
彼の才能であれば、来期清水エスパルスの中心選手として存分に活躍できるのではないだろうか?19歳にして既にJ2では助っ人外国人と見紛えるばかりの存在感を放っていた。フロントにとっても苦渋の決断だったと思うが、ヴェルディサポーターのためにも必ず大成して欲しい。
広く浅くクラブチームの試合をTV観戦で済ませている為に、やはりどうしてもひとつひとつのクラブの細部には目の行き届かない部分もあり、個別クラブのサポーターの皆さんに比べれば、その情報の深度や詳細さにおいて到底敵うものではありません。
もし皆さんオススメのとっておきの「新星」があれば、コメント欄のほうでご紹介ください。よろしくお願いします。
※関連エントリー
脱・日本代表のススメ
Jリーグ改革 最後に言っておきたいこと
JUMP改革案への評価
新チェアマン・大東和美氏への7つの要望
キリタニ文楽館
最新記事 『美容室にまつわる悲しい思い出』
過去記事
『2010年 イラっとさせられた出来事ベスト10 後編』
『2010年 イラっとさせられた出来事ベスト10 前編』
posted by キリタニ |11:27 |
Jリーグ |
コメント(28) |
トラックバック(2)
2010年12月17日
今シーズンオフはJリーグの功労者・ベテラン選手たちの解雇・0円提示などが問題になっているようだが、どのクラブもギリギリの運営を迫られる昨今の経営状況の中では、これも致し方ないことなのだろうと、個人的には理解している。
もちろん、それぞれのケースにはそれぞれの事情がある訳だが、僕にはむしろ三十代になる実力も動員力もあるスター選手が、残り少ない現役生活の最後を、ただベンチに腰かけて過ごすことのほうがもったいないようにも感じるのだ。
若手にしろベテランにしろ、出場機会を求めてチーム間を機動的に移動できる移籍システムの流動性については、他のプロスポーツに比べてもとりわけ選手生命の短いプロサッカー界においては、やはり必要であると思うし、デメリットよりもメリットの方がはるかに大きいと思っている。
今後はそのクラブと選手間の契約解除のあり方と、超短期レンタルを含めた移籍形態のさらなる多様化、そしてクラブ側にとっての移籍の収益化に対して、各自それぞれが知恵を出し合い、ノウハウを集積し合う局面になってきているのではないだろうかと僕自身は考えている。
特にWC以降顕著になってきた日本人選手の欧州移籍。
つい先日も家長昭博のマジョルカへの移籍が発表されたばかりだが、ガンバ大阪がマジョルカからほとんど金銭的利益を引き出せなかったのに対して、家長昭博にマジョルカが設定した移籍金(違約金)は20億円とも云われる。仮に家長昭博が欧州で香川真司なみの大活躍を見せれば、マジョルカは数億、十数億もの移籍金(違約金)を濡れ手に粟でせしめる事が可能になるのだ。
また一部の報道では、既に20億円を超える移籍金が提示されているとも報じられる香川真司の移籍に際しても、セレッソ大阪がドルトムントから受け取ったのは育成費名目での4200万円。
このままの状況では、Jリーグはいつまでも経っても欧州の食い物にされ続けるばかりである。少なくともフランスリーグアンやオランダエールディビジの中堅クラブのように、育てたタレントを適正価格で売って収益に結びつける……という、確たるビジネスモデルに結び付けなければならない。
現状ではそのための戦略に欠けている。優秀な選手という、プロサッカークラブにとって最も大切な商材であり財産を、或る種ライバルともいえる欧州リーグにほとんど無抵抗のまま略奪されているのと同じ事である。
Jリーグ選手の欧州移籍。
JFAの収益源ともいえる日本代表にとってみれば、これは間違いなくプラスの出来事であろう。これによって潤う広告業界、メディア業界も確かにあるだろうし、短期的視点に立てば、日本代表の強化といった面で、僕も間違いなくプラスの要因であろうと考える。
しかし一方で、移籍金に関わる状況が、今のまま続くのであれば、これはJリーグにとって損失でしかない。そして長期的に見るならば、日本代表の強化といった観点にも、暗い影を落とす要因とも成り得るのではないだろうか……。
WCの成功と香川真司の大活躍により、いま欧州スカウトの目が、日本の、Jリーグの選手に一斉に向き始めている。そう、この状況は、或る意味で大きなチャンスでもある。
Jリーグ各クラブにとってそれは、観戦料収入、TV放映権料に続く、もうひとつの大きな収益の柱にも成り得るビジネスチャンスとも受け取れるからである。しかし何度も云うように、JリーグとそしてJリーグ各クラブは、現状それに対してあまりにも無策、そして無力である。
今回はこの日本人選手の海外移籍について、皆さんの意見を伺ってみたい。
【1】急激に増える日本人選手の海外移籍は日本のサッカー界に何をもたらすのか?
【2】日本のサッカー界はこれに対してどのような対応を迫られているのか?
代表ファン、Jリーグクラブサポーター、様々な立場からの御意見をお待ちしております。
~コメント欄の御利用について~
参加資格
1.他者に対する敬意を忘れないこと。
2.自分とは異なる意見も尊重すること。
3.自身の発言に最後まで責任を持つこと。
この3つを守り、みんなで楽しみましょう。
これまでの
キリタニ 対 参加者
の形式を捨て、キリタニも一参加者の一人として議論や意見交換を楽しみたいと思います。また質問や要望があれば、可能な限りお答えしたいと思っております。それぞれ自由に他の参加者に呼びかけ、それぞれ自由に他の参加者の方々と言葉を交わしてください。
ヨロシクお願いします。
関連エントリー
日本サッカー界今年の漢字は…
ニッポンの贅肉
キリタニ、JFA会長就任へ
クラブワールドカップ改革、最終案
キリタニ文楽館
最新記事 『2010年 イラっとさせられた出来事ベスト10 後編』
過去記事『2010年 イラっとさせられた出来事ベスト10 前編』
posted by キリタニ |11:21 |
【緊急討論】 |
コメント(44) |
トラックバック(1)
2010年12月13日
ベスト16という紛れもない『快挙』を成し遂げた2010南アフリカワールドカップの日本代表。
その後のアルゼンチン戦、さらにはアウェイで行なわれた韓国戦などを含む計4試合のテストマッチをつぶさに眺めてきて、強く印象に残ったことがあった。それは、先のワールドカップでこの日本代表は二つのものを手に入れたのだ……と云う確信である。
その二つのものとは何か?
『自信』と『自立心』である。
彼らはグループリーグ突破と8強を賭けたパラグアイとの死闘の中で、これまでの日本代表では得られなかったレベルでの『自信』という大きな武器を手に入れた。
そしてまた大会前のボロボロのチーム状況において、或る意味監督の意思や思惑、その限界を打ち破るカタチで、選手達自ら主体的に、チーム戦術や戦略、約束事を、現実のピッチの中に組み上げていった。少なくとも僕の目にはそう映った。
これは2002年以降停滞しつつあった日本のサッカーにとって、革命的な出来事であったと僕は思う。
これまでも大会毎に、反抗や抗議、小さな反乱といったレベルでの、選手達のレジスタンスは見せられてきた訳だが、ここまで思い切った、覚悟を決めた、或いは大人びた、成熟した、『自立心』『独立心』といったものを、そのゲームの中に垣間見せられたことは、かつてなかったことのような気がする。
その流れを受けてのワールドカップ後の4つのテストマッチ。
本大会の重圧から解放された中、ほぼ同じメンバーで、伸び伸びと戦うことを許された彼らが、この2つの武器を胸に、目の前の強敵に果敢に立ち向かってゆく姿は実に爽快であった。
別にザッケローニ新監督を腐す意図などまったくないが、たった数日、数時間の練習によって、彼が選手に魔法をかけたのだ……などとは、僕自身まったく考えていない。
戦術的に妙な制約や圧力が加えられるのでない限り、
誰に云われるでも無く彼らは、先のワールドカップで得た『自信』と『自立心』、さらには『経験』を武器に、こちらとしては失うものの無い強豪たちとの腕試しに対して、高いモチベーションと闘争心を持ち、いずれにせよ果敢に戦っていたことだろうと思う。
たとえ誰が監督であったとしても……である。
無論、どのような結果に終わっていたかは、その時々の運不運に左右されるものだろうが、内容に関して云えば、この時期あのメンバーで戦う限り、誰が監督であろうと、あれぐらいの水準のものは表現されていたことであろう……。僕はそう信じている。
ここへ来て彼らは、オシムジャパンでも、岡田ジャパンでも、そしてザッケローニジャパンでもない、本当の意味でのリアルジャパン、日本代表の原型、プロトタイプのようなものを獲得しつつあるのではないだろうか。ワールドカップ後の4つの試合は、そんな手応えを充分に感じさせてくれるものであった。
アジアカップを勝てなかったオシムは無能。岡田では確実に3戦全敗。ザックなら本気のアルゼンチンとも互角以上にやれる……。
僕はそれらの安直な評価が、サッカーの真理であるなどとは到底思えない。むしろサッカーの本質や真理とは、かなり掛け離れた場所にある軽率な思い込みであり、浅はかな価値観であると思っている。
ここまでのザッケローニ監督に批判される要素などひとつもないことは明らかではあるが、また同時に、評価を下すには、まだもうしばらくの時間とゲーム数が必要である。現時点で彼の適性を、或いは日本代表監督としての是非を、判断し得るほどの材料を僕たちは得られた訳ではない。
サッカーは結果がすべてではない。
僕は、これまで腐るほどこの場でこの言葉を吐いてきたし、その信念にいまも変わりはない。結果は確かに重要なものには違いないが、それはサッカーを構成するさまざまな要素の中の、やはり一部分に過ぎないのだ。
しかし同時に、結果によってしか手に入れることの出来ないもの、辿り着くことのできない境地……といったものも必ず有る。間違いなく有る、のだ。
いくつかの幸運にも恵まれたとは云え、やはりこれはあの場で『勝つこと』によってしか辿り着くことのできなかった境地なのであろうと、いま僕は改めて認識している。そしてまた、あの本大会に至る混乱も、窮地も、結果としていまの日本代表をカタチ創るプロセスとして、欠かすことの出来ない不可欠な試練であり、またキッカケであったと云えるのだろう。
日本代表にとっての2010年。
さまざまな紆余曲折はあれど、結果的にみればこの1年は素晴らしい年であったと云える。終わりよければ全て良し。それもある意味で真実なのだろうと思う。
しかし少し視点を変えれば、それは過分に幸福な、或る意味甘美な、恵まれすぎた1年であった、とも云えるのではないだろうか?
どこまでも粘着質で疑り深い僕の目に、この1年はむしろ、雲の切れ間から見えた一瞬の晴天にも見えなくはないのである。
日本サッカー界の足元は、Jリーグという地盤は、いまほんとうに磐石であると言い切れるのだろうか?ここから見通す未来は、そんなに輝いて見えるだろうか?
いずれふとした拍子に、この『自信』は脆くも崩れ去り、失われることがあるのではないだろうか?また彼らがあの晴れ舞台で掴み取った逞しい『自立心』も、後に続くものたちに受け継がれることなく、彼ら一代で潰えてしまうものなのかも知れない。
その時この国は、僕たちのサッカーは、その窮地を撥ね返せるだけの自力を持ち合わせているだろうか?危機に正しく対応し、乗り越え得るだけのシステムを、或いは知性を、果たしてほんとうに持ち合わせていると云えるだろうか?手抜かり無く、育んできたと云えるだろうか?
他の誰かではなく、この僕がここに何かを書き綴ってゆく意義がもしあるのだとすれば、きっとそんなことになるのだろうと思う。もしここに自分の存在意義が在るのだとするならば、他人には少し滑稽に見えるのかも知れないが、日本サッカー界に対する自分なりの危惧、疑問についてこそを、僕はここに書き綴ってゆくべきなのだろう。
多くのサッカーファンの方々にとって、時にそれは“不快”なものであろうことを承知の上で、ここからまた自分らしく、さらに傲岸不遜に、或る意味振り切って、自分なりのサッカー観について書き綴ってゆければと思っている。
2010年12月13日正午。
恥ずかしながら、帰って参りました。
ここに再度、日本サッカー界へ宣戦布告を通達スル。
キリタニ二等兵より、心からの愛を込めて(♡)
関連エントリー
最期に……日本サッカー界への7つの要望
新JFA会長への5つの要望
新チェアマン・大東和美氏への7つの要望
日本化の方程式と次の代表監督について
キリタニ文楽館
最新記事 『2010年 イラっとさせられた出来事ベスト10』
posted by キリタニ |11:17 |
ザッケローニJAPAN |
コメント(48) |
トラックバック(1)