須賀啓太のTriathlonレポート

リオ五輪 トライアスロン競技女子 レースレビュー

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リオ五輪トライアスロン競技女子のレース。結果はアメリカのグウェン・ジョーゲンセンが、金メダルをとって当たり前というような周りのプレッシャーもある中、見事金メダルを獲得した。 ジョーゲンセンがトライアスロンの世界最高峰シリーズ、世界トライアスロンシリーズ(以下:WTS)であげた勝利数はここまで17。2位の5勝を大きく引き離し、2014年のWTS横浜大会から今年のWTSゴールドコースト大会で敗れるまで、男女通じて前人未到のWTS12連勝も記録した。

彼女の強さの大きな要因はトライアスロン選手の域を超えた走力。ジョーゲンセンがWTSのレースにおいてラン(10km)で持っているベストタイムは31分41秒。今回のリオ五輪に出場している選手の中で、ジョーゲンセンの次に速いランタイムを持っているイギリスのノン・スタンフォードでさえ32分26秒。45秒もの差がある。同じタイミングでランに入ったのではジョーゲンセンに勝つ見込みはまったく無いと言ってもいいだろう。 ちなみにこの31分41秒というタイムは今回のリオ五輪の女子10,000mで20位に入るタイム。もちろんジョーゲンセンはスイム1.5kmそしてバイク40kmを終えた後で出したタイムである。

今回のリオ五輪のレース、そんなジョーゲンセンに対し他の選手たちは勝機がまったくなかったわけではない。ジョーゲンセンの12連勝がストップした今年のWTSゴールドコースト大会のようにバイク道中に集団から抜け出し、ランで逃げ切れるだけのギャップを築くという展開に持ち込めば勝機はある。 だが今回ジョーゲンセンは結局トップグループでバイクを終えた。ニコラ・スピリグあたりはバイク道中何度も集団から飛び出しブレイクを計ろうとしていたが、ジョーゲンセンも飛び出しが行われそうな時には集団の前方に位置し牽制し、結局ジョーゲンセンをトップグループから落とす事はできなかった。

先述の作戦は後手である。同じトップグループにランの速いジョーゲンセンがいる以上、ジョーゲンセンがすでに先手を打っている。ならば対ジョーゲンセンの先手は何か?それはジョーゲンセンをバイクトップグループに入れさせない事。

先手を打つチャンスはあった。ジョーゲンセンはスイムでトップから11秒差の23位と少し遅れ、スイムからバイクへのトランジションを抜けた時点ではトップから12秒差、順位も一つ下げた。今回のリオのバイクコース、1周5kmの前半2.5kmの中で、斜度20%の急坂が2回もある。バイク1周目のその坂道、トップグループがまだ完全にできあがる前、前方を行く20名近い選手達に必死に付いて行かんとするジョーゲンセンを中継カメラは捉えていた。しかし勾配のきつい前半を抜け、コース終盤のアトランティカ通りに向かう所で多くの選手達は給水ボトルを手に取り一息入れていた。バイクで選手が左右に広がっている時はペースが落ち着いている証拠。その間にジョーゲンセンが前方に追いつき、アトランティカ通りに入ったところでトップグループの集団ができあがった。自分達の先手を打つチャンスを逃すどころか、自らジョーゲンセンに先手を打たせたと言っていいだろう。

勾配のきついコース前半を終え、長い直線走路でスピードの上がるアトランティカ通りに入る前に一息入れたくなるのはわかる。またバイク1周目の集団ができあがる前に他の選手がどこにいるか把握するのは難しい。だがジョーゲンセン以外の選手は後にあのVTRを見て後悔するのではないだろうか。あの時ジョーゲンセンがわずかに遅れ、追ってきているという状況を考えれば、今回のレースの中で、あの時がジョーゲンセンを負かす唯一の勝負所だったと。

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須賀 啓太(すが けいた)

フリーのテレビディレクター兼スポーツジャーナリスト。世界トライアスロンシリーズが開始された2009年から「世界トライアスロンシリーズ」や「NTTジャパンカップ」などトライアスロンのテレビ中継に関わり、海外現地取材も経験。また(社)日本トライアスロン連合ともオフィシャル映像撮影等で直に関わりを持つほか、公認審判員の資格も持つ。自身もエイジグループ(一般部門)での競技経験もあるが、テレビディレクターの目線からトライアスロンをやる楽しさではなく観る楽しさ。競技人口ではなく観戦人口を増やすために活動中。トライアスロン以外ではMLB、NFL、海外サッカー、インディカーのテレビ番組制作にも携わる。ご連絡は下記アドレスまで。

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