2008年12月26日
花崎組、早すぎる終戦
大学選手権1回戦・秩父宮 慶大-帝京大 17-23(前半3-7) T=三木、立石 G=川本2 PG=川本あともう少し時間があれば―。試合の結果、そして慶大蹴球部の歴史は変わっていたかもしれない。だが、冬空の秩父宮で鳴り響いたノーサイドの笛は花崎組の終焉を告げた。チームとしての連体感が際立っていた好チームは、同じ対抗戦1位の帝京大との大学選手権1回戦でその姿を消すこととなってしまった。 前半は一進一退の攻防が続く。戦前の予想通りキックの応酬が続き、一瞬たりとも気が抜けない展開に。先制したのは慶大。敵陣でのチャンスを掴んだ前半21分。ペナルティーを獲得し、手堅くショットをSO川本が決める。前半24分にはスクラムから帝京大SH滑川の好判断からトライを奪われてしまうが、ディフェンスでは高い集中力と自慢のタックルで帝京大を耐え切る。逆に、アタックではゴール直前まで迫るも帝京大の強い接点を生かしたディフェンスを崩しきれず前半は3-7で折り返す。
後半に入るとペナルティーからじわりじわりとその点差を広げられる。後半2分には、ダイレクトタッチからこの日苦しんでいたスクラムを組み、それをそのまま押しこまれトライを奪われる。反撃の機会を狙う慶大は、「質量で勝る相手」(林監督)帝京大とのコンタクトを避け、陣地を推し進める狙いからキックゲームを展開する。だが、帝京大FB船津の好キックもあり、いたずらに時間は経過し、気づけば試合時間残り10分の段階で3-20と厳しい状況に追い込まれてしまう。ここから目の色を変え、バックスに継続しながら、展開した結果、後半32分にWTB三木、後半39分にLO立石と次々にトライが生まれ、1トライ1ゴールで逆転可能な6点差まで追い上げる。(17-23)だが、ディフェンスの手堅い帝京大から1トライ奪うには十分な時間と力は残っておらず、無念のノーサイドを迎えた。
試合後、試合では涙を見せることのなかった花崎主将は涙を流し、SO川本はベンチに伏したまましばらく動くことが出来なかった。ケガを押して出場したCTB増田、試合中チャージに走り回り、執念のトライを奪ったLO立石…。多くの選手が涙を流さずにはいられなかった。春シーズンに好成績を残し、大きな期待感を抱かせたチームにとってはあまりにも早すぎる終戦であった。 あくまでも結果論であることは重々承知しているが、やはりこのチームに影響したのは対抗戦初戦の日体大への敗戦であるように思う。それまで春・夏シーズンと強豪校に相次いで勝利し、波に乗っていたチームの勢いがこの試合の敗北により、少し停滞してしまったように見えた。そこから対抗戦優勝のためには一戦も落とせないという思いから、一戦一戦での勝利をより重視したのだろう。
春シーズンに見せていた、バックスにテンポ良く展開しリスクも伴いながらトライを狙うゲーム運びから、ペナルティーを獲得したら手堅くショットを狙い、着実に点差を離すゲーム運びへのシフトが顕著になっていった。(もちろん新ルールへの対応がその要因の多くであることは間違いないが)そこからチームが一定の手ごたえ(特にディフェンス面)を感じながらも、リスクを冒した結果手に入るような、言ってみれば「一皮むける」経験が体験する機会が少なかったように思う。結果、いきなりリスクを冒すことを強いられる局面が一回戦で訪れたその時に、十分に対応できなかったのかもしれない。(後半のキックゲームに苛立ちの声をあげる観衆がいたのも本来ではあってはならないことだが、一方では気持ちの面では仕方ないとも実際に思えてしまう)昨年度以前であれば一発勝負の緊張感の中、試合ごとに成長することが出来ただろう。事実、昨年度早慶戦で零封を喫したチームが、選手権決勝まで進んだのは着実に試合ごとにステップアップした結果である。だが、今年は…。
結果だけ見れば、今年のチームは対抗戦4位、大学選手権1回戦敗退に終わった。だが、花崎主将を中心に4年生の連体感は素晴らしいものがあった。特に今年は部員同士での声援がカテゴリーを問わず、大きいように感じた。チームが一つになることを目標にし、掲げた“One”のスローガン。その目標に恥じない堂々とした好チームであった。成績だけを見た者は何か言うかもしれないが、チームで時を共に過ごしてきた者であればこのチームの良さは十分過ぎるほど身に沁みているだろう。だからこそ残念な結果であった。4年生の悔しさを受け継いだ3年生以下がどう来年度のチームを作り上げていくか、その終着点こそが花崎組の本当の集大成となるのかもしれない。 ※これを持って、本年度の蹴球部の取材は終了となります。今まで拙いものを読んで頂きありがとうございました。来年度以降も熱を持って取材していく所存です。今までに引き続き、慶應スポーツをこれからもよろしくお願いいたします。(なお、ご感想やご意見、また写真データに関してのお問い合わせ等ございましたらkeispo@yahoo.co.jpまでお願いいたします。)
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posted by 流王 友彬 |00:02 |
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あともう少し時間があれば―。試合の結果、そして慶大蹴球部の歴史は変わっていたかもしれない。だが、冬空の秩父宮で鳴り響いたノーサイドの笛は花崎組の終焉を告げた。チームとしての連体感が際立っていた好チームは、同じ対抗戦1位の帝京大との大学選手権1回戦でその姿を消すこととなってしまった。
前半は一進一退の攻防が続く。戦前の予想通りキックの応酬が続き、一瞬たりとも気が抜けない展開に。先制したのは慶大。敵陣でのチャンスを掴んだ前半21分。ペナルティーを獲得し、手堅くショットをSO川本が決める。前半24分にはスクラムから帝京大SH滑川の好判断からトライを奪われてしまうが、ディフェンスでは高い集中力と自慢のタックルで帝京大を耐え切る。逆に、アタックではゴール直前まで迫るも帝京大の強い接点を生かしたディフェンスを崩しきれず前半は3-7で折り返す。
後半に入るとペナルティーからじわりじわりとその点差を広げられる。後半2分には、ダイレクトタッチからこの日苦しんでいたスクラムを組み、それをそのまま押しこまれトライを奪われる。反撃の機会を狙う慶大は、「質量で勝る相手」(林監督)帝京大とのコンタクトを避け、陣地を推し進める狙いからキックゲームを展開する。だが、帝京大FB船津の好キックもあり、いたずらに時間は経過し、気づけば試合時間残り10分の段階で3-20と厳しい状況に追い込まれてしまう。ここから目の色を変え、バックスに継続しながら、展開した結果、後半32分にWTB三木、後半39分にLO立石と次々にトライが生まれ、1トライ1ゴールで逆転可能な6点差まで追い上げる。(17-23)だが、ディフェンスの手堅い帝京大から1トライ奪うには十分な時間と力は残っておらず、無念のノーサイドを迎えた。
試合後、試合では涙を見せることのなかった花崎主将は涙を流し、SO川本はベンチに伏したまましばらく動くことが出来なかった。ケガを押して出場したCTB増田、試合中チャージに走り回り、執念のトライを奪ったLO立石…。多くの選手が涙を流さずにはいられなかった。春シーズンに好成績を残し、大きな期待感を抱かせたチームにとってはあまりにも早すぎる終戦であった。
あくまでも結果論であることは重々承知しているが、やはりこのチームに影響したのは対抗戦初戦の日体大への敗戦であるように思う。それまで春・夏シーズンと強豪校に相次いで勝利し、波に乗っていたチームの勢いがこの試合の敗北により、少し停滞してしまったように見えた。そこから対抗戦優勝のためには一戦も落とせないという思いから、一戦一戦での勝利をより重視したのだろう。
春シーズンに見せていた、バックスにテンポ良く展開しリスクも伴いながらトライを狙うゲーム運びから、ペナルティーを獲得したら手堅くショットを狙い、着実に点差を離すゲーム運びへのシフトが顕著になっていった。(もちろん新ルールへの対応がその要因の多くであることは間違いないが)そこからチームが一定の手ごたえ(特にディフェンス面)を感じながらも、リスクを冒した結果手に入るような、言ってみれば「一皮むける」経験が体験する機会が少なかったように思う。結果、いきなりリスクを冒すことを強いられる局面が一回戦で訪れたその時に、十分に対応できなかったのかもしれない。(後半のキックゲームに苛立ちの声をあげる観衆がいたのも本来ではあってはならないことだが、一方では気持ちの面では仕方ないとも実際に思えてしまう)昨年度以前であれば一発勝負の緊張感の中、試合ごとに成長することが出来ただろう。事実、昨年度早慶戦で零封を喫したチームが、選手権決勝まで進んだのは着実に試合ごとにステップアップした結果である。だが、今年は…。
結果だけ見れば、今年のチームは対抗戦4位、大学選手権1回戦敗退に終わった。だが、花崎主将を中心に4年生の連体感は素晴らしいものがあった。特に今年は部員同士での声援がカテゴリーを問わず、大きいように感じた。チームが一つになることを目標にし、掲げた“One”のスローガン。その目標に恥じない堂々とした好チームであった。成績だけを見た者は何か言うかもしれないが、チームで時を共に過ごしてきた者であればこのチームの良さは十分過ぎるほど身に沁みているだろう。だからこそ残念な結果であった。4年生の悔しさを受け継いだ3年生以下がどう来年度のチームを作り上げていくか、その終着点こそが花崎組の本当の集大成となるのかもしれない。
※これを持って、本年度の蹴球部の取材は終了となります。今まで拙いものを読んで頂きありがとうございました。来年度以降も熱を持って取材していく所存です。今までに引き続き、慶應スポーツをこれからもよろしくお願いいたします。(なお、ご感想やご意見、また写真データに関してのお問い合わせ等ございましたらkeispo@yahoo.co.jpまでお願いいたします。)

式後は、アタック練習を中心に入念にセットプレーの確認を行った。全体練習終了後も、熱心に居残りで練習を行なったAチーム。中でも、花崎選手、川本選手は最後まで黙々と練習を行っており、その姿が非常に印象的であった。
▼以下コメント(取材の都合上、全員でないことはご了承下さい)
PR廣畑選手
「杉田くんも来てくれて、やる気をもらった。結果を出すだけ。結果を出さないと誰も認めてくれないんで。」
LO立石選手
「やるしかないんで、出れない人の気持ちもぶつける。」
FL伊藤選手
「無心でやったります!」
NO8小澤選手
「負けれないんで、何があっても勝ちます。」
SH花崎主将
「引退する気はないんで、お正月まで突っ走ります。」
SO川本選手
「明日で引退しません!帝京戦の次の日、笑ってここでみんなで練習出来るように、体張ってやるだけです。」
CTB増田選手
「僕は復帰戦。手はぶっ壊れてもいいんで、1点差でもいいんで勝ちたい。」
「悔しい」―。試合後、多くの選手が何度もこの言葉を口にした。最大で21点差まで離されたライバル早大に対し、一時は4点差まで迫るも最後は20-31と突き放された。黒黄をまとったジュニアチームは、地力で勝る相手に「力の差」(林監督)を見せつけられ、秩父宮の芝に屈した。
試合前、花崎主将を始め多くの部員に見守られながら、気合いの入ったアップを行った慶大。勢いそのままに試合に入った。試合序盤からFWを中心に積極的に相手にプレッシャーをかけると、たまらず早大がダイレクトタッチ。ラインアウトを起点にアタックを仕掛けた結果、ハンドの反則を誘う。これを前半11分にFB和田が冷静にショットを決め先制する。
だが、風下に立っていたことと早大WTB井口の好キックが重なり、大きく陣地を下げられるとそこから徐々に形勢が不利になっていく。セットプレーからの早大が得意とする早くて強いアタックに翻弄され、次々とトライを許す。結局、前半15分以降はほとんどボールを持ってアタックを仕掛けることが出来なかった結果、3-24と大きく点差を離された。
見ている誰しもがビックスコアでの敗戦を覚悟したが、グラウンド上の選手たちは誰も諦めていなかった。慶大キックオフで始まったハイパントの応酬のこぼれ球をFL阿井がきっちりキャッチ。素早く展開したボールをWTB金本が対面を交わし、中央まで持っていく会心のトライを挙げる。
その後も、SO川崎が大きく陣地を引き戻すキックを放つと、No8明本も相手ボールをチャージと次々と好プレーが生まれる。後半5分に14点差を11点差に詰める重要なPGをFB和田が決めると、試合は完全に慶大ペースに。後半17分には、インゴールぎりぎりまで迫ると、SO川崎が意表を突くキックパス。これをWTB保坂が抑え、20-24と怒涛の追い上げを見せた。
残り時間は20分、点差は4点と1トライで逆転可能。十分試合を引っくり返せる、言わば試合の「要所」を迎えた。だが、結論から言えば、“チャンピオンチームであり、大舞台での勝ち方を知る早稲田”と“初めて決勝の舞台に挑戦した慶應”との差から戦い方に違いが生じ、それが直接結果に結びついてしまった。急に点差を意識し始めたのか、慶大はミスが徐々に目立ち始める。一方、後半序盤はほとんど良いところのなかった早大だが、慶大の一瞬の隙を突き、流れを一気に取り戻す。後半25分に途中からFBに入った井口が自陣から慶大の高くなったタックルを掻い潜り、ビックゲイン。そこから生まれたセットプレーからのチャンスを確実に取り切り、点差を再び11点差まで離した。ディフェンスでも危ない局面で高い集中力を見せ、加点を許さずそのままノーサイドとなった。
シニアチームと同様、手ごたえをつかみながらも残念な結果に終わった早慶戦。だが、入れ替え戦に回った昨季から一転、初めて決勝の舞台にたどり着いたジュニアチームの功績は計り知れない。今季も若きチャレンジャーがジュニアチームで活躍し、多くの選手がシニアチームに昇格するチャンスを掴んだ。また、その好成績は「いい雰囲気を与えてくれて、すごいまとまっていていい状態」(花崎主将)にチームを導いた。
この快進撃の中でも4年生の果たした役割は大きい。帝京大との準決勝、試合終了直前にFL大口が挙げた逆転トライは「諦めないこと」の大切さを教えてくれた。ケガに悩まされたSO川崎はラストシーズンにして、初めて黒黄をまとった。「最後まで諦めずに、頑張っていたら結果は出る」ことをその身で証明してみせた。4年生全員が憧れの黒黄を目指しながら、チームの勝利に貢献し続けた結果、掴んだ“準優勝”という栄誉。そんな彼らに対して、見守る部員達も試合中絶えずその名を呼び、純粋に声援を送り続けていた。この敗戦、彼らの悔し涙を無駄にしないために―。チーム一丸となって、1週間後に控えるビックゲームに臨んで欲しい。
花崎主将
「帝京さんの胸を借りるつもりで頑張りたい。帝京さんとはいずれどこかで確実に当たると思っていた。自分たちのラグビーをするだけです(以上・抽選直後)途中から当たるんじゃないかなあと思ってました笑。(慶大の抽選順は第3グループの9校中、8校目でした。)ケガ人が復帰して、強い相手と出来る。苦手意識はないんで、しっかり戦いたい。あと2週間弱、万全の態勢で臨みたい。(勝負のポイントは)一概には言えないが、スクラムは前にやられましたがそれ以外は。ラインアウトは得意な相手なので、やりやすい相手。Bチームも勝ったので、自信をもって引っ張っていきたいです。12月20日で引退しても後悔しないように。」
林監督
「1回戦がピークですね、一長一短があります。いい部分ですが、強い相手にケガ人なく臨める。ケガ人がちゃんと揃う。強いチームにチャレンジする側としては王者にチャレンジするのには早い方がいい。これが決勝だときついですからね。(ポイントは)気持ちですね、優勝の余韻があるチームに、昨日の明治みたいにいけば勝機がある。あとはセットプレーとエリアマネジメントです。外国人が活躍できないように、強みを出させないように。自分たちが対抗戦で戦ったようにしたいですね、ただ帝京も良くなっている。(自信のほどは)51%です笑。」
帝京大・井本副将
「しっかり戦っていきたい。自分たちが自分たちのラグビーをするだけ。」
※なお近日、大学選手権直前特集「To be ONE for No.1」をアップする予定です。そちらもお楽しみにしていてください。
3ヵ月に渡って熱い戦いを繰り広げた対抗戦の最終戦が冬晴れの熊谷で行われた。良い流れで大学選手権を迎えるためにも結果はもちろんのこと内容も求められる成蹊大との一戦。怪我人が多発しベストな布陣ではなかったが、出場した22人の全ての選手が力を出し切り、69-0の完勝となった。
「前半は我慢」という指揮官の予想とは反して、終始慶大ペースとなる。前戦で大きな課題となり、マッチスローガンでもあったブレイクダウンで圧倒し続けた。立ち上がりにラックから抜け出す形でSH花崎主将がトライを決めると、「4年生の先輩に借りを返す」と強い気持ちで臨んでいた下級生が勢いづく。密集から素早く玉を出し、勢いのあるパス回しで展開をしていく慶大らしいアタックでWTB三木が2トライを奪った。さらに早い段階から一丸となってプレッシャーをかけ続けていた慶大は、30分にインゴール手前で相手のファールを誘う。これを圧巻のスクラムで押しこみトライを決める。PR廣畑・川村、LO西川などスクラムのキーマンが欠け、FW陣の半分が早大戦には出場していないメンバーであっただけに、このスクラムトライはチームにとって大きな意味を持つトライとなったであろう。
26-0で迎えた後半。風上に立ったこともあり、林監督が「及第点」と語るFB仲宗根のキックで大きくゲインしていく。ひたすら敵陣でのプレーが続いた慶大は精神的にも有利に立つ。7分に相手ボールスクラムのターンオーバーに成功し、これを仲宗根のトライに結び付ける。更に1トライを重ねた15分には、今季対抗戦初出場となり「チャレンジ」精神で戦っていたLO立石が力の独走を見せ、左隅にラックを作る。そこからバックス陣がしっかりと繋げていき、最後は今日4トライ目となる三木がグランディング。その後もキックパスからのトライ、復調を見せるラインアウトからのトライと様々なアタックを見せ、69-0でノーサイドを迎えた。結果とともに得た大きな収穫。それはジュニアチームの選手が対抗戦出場のチャンスをしっかりと生かし、活躍を見せたことであろう。「チームの底上げ」を証明し、次に繋がる納得の勝利で最終戦を飾った。
この結果を受けて今季対抗戦の結果は4勝1分2敗の4位。決して満足のいく数字ではないが、花崎組の目標はあくまでも「日本一」。強豪が集う大学選手権では厳しい戦いが彼らを待ち受けているであろう。しかし、長い時間共に戦った花崎組は今まさに「ONE」を体現している。ONEの力で悲願の日本一へ、花崎組の最終章がついに幕を切る。
トライの瞬間、閑静な住宅街に囲まれたグラウンドは絶叫とため息に包まれた。4点リードされ迎えた後半終了間際、チーム一丸で運んだボールを最後はFL大口がグラウディング。シニアチームが自力優勝を消滅させられ、ジュニアチームが初戦つまづいた因縁の相手に引導を渡した。
「意図的に風下を選択した」前半。セットプレーの不安定さから、要所でのプレーでことごとく後手に回ってしまう。前半15分に、ラインアウトでプレッシャーをかけられノックオン。組んだスクラムも崩れ、タッチに出されラインアウト。そこからNo8に持っていかれそのままトライ。ロースコアが予想された試合で自分たちのミスから早々と先制される。
反撃したい慶大はFWが相手ボールに積極的にチャージにいき、相手のキックミスを誘う。だが、敵陣に入ってもハンドリングエラー、ペナルティーが相次ぎ得点に結びつけることが出来ない。マイボールラインアウトもことどくスティールされ、ほぼ真正面のショットも外れ、嫌な雰囲気が漂い始めた33分、最悪の事態が起こってしまう。帝京大に自陣に長く侵入されると、手薄になっていたインゴール左側に向けてパントキックを放たれる。ここで数的有利に立っていた帝京大アタック陣に対し、思わずノーボールタックル。これが認定トライとなり、前半は0-12で折り返す苦しい展開を強いられる。
だが、この展開を誰よりもラグビーを知る林監督が見逃すはずがない。思ったプレーが出来ず、下を向いていた選手たちに「12点なら何とかなる」と発奮させ、再び闘志に火を付けた。また、セットプレーの不安定さを見るや否や、リザーブのLO三輪谷に前半途中からラインアウトコーチとシニアチームの西川、村田と共に後半のラインアウトプランを話し合うよう指示。花崎主将と共に見つめる中、異例のハーフタイムでのラインアウト練を実行する。
だが、帝京大もこのまま終わるチームではない。力強い突破で慶大に襲いかかる。ディフェンスでたまらずペナルティーを犯してしまい、PGを16分、28分と2本決められ、気づけば4点リードとなっていた。しかも、後半35分頃には自陣インゴール手前で帝京大スクラムのピンチに。さすがの指揮官も危機感を覚えた局面で慶大が驚異的な集中力を見せる。スクラムから展開したボールに一丸となってプレッシャーをかけ、相手ボールを見事ターンオーバーすると、SO川崎が相手陣地深くまで入るロングキックを蹴り込む。その後、試合を通して走り回っていたLO立石が猛然とチャージをかけると、たまらず相手もミスキック。獲得したマイボールラインアウトをLO三輪谷が何とかキープすると、SH藤代、WTB三木、CTB濱本とつないで出来たラックからPR藤本が抜け、最後は4年生FL大口が誰も止められないほどのスピードでインゴールへ飛び込み、試合の趨勢は決した。
セットプレーでは劣勢の場面もあり、余計なペナルティーも多く、決して100点満点の試合ではなかった。だが、今日の最大の成果は1トライ差の惜敗に終わらず、勝てる試合を落とした引き分けにも終わらず、それぞれが諦めずに体を張り勝利を手にしたことだ。その達成感から試合後多くの選手が涙を流したほど、この勝利はチームにとって大きな価値があった。そして、決勝は早大と対戦することが決まり、これ以上ない格好の相手と秩父宮で再度相まみえることになった。
それが点に結びついたのが前半27分。早大のダイレクトタッチのミスからのラインアウトを起点に、SO川本が相手を引きつけたところをCTB竹本が抜け出し、FB和田とつないで、最後はWTB出雲が待望のトライを決めた。PR川村の負傷交代というアクシデントがあったが、タックルも効果的に決まり、1点差リードで折り返す「手ごたえある」(花崎主将)前半となった。
前半終了間際に負傷したCTB竹本がそのまま交代し、迎えた後半。4分に早大WTB田中の個人技でトライをとられると、その際タックルにいったラインアウトのキーマンLO西川が負傷し、交代を余儀なくされる。
しかし、敵陣でプレーした際には確実にペナルティーを獲得し、8分、19分とPGで加点し、17-17の同点に追いつく。
だが、問題はこの後のキックオフだった。キックオフボールの処理は中途半端になったところを早大に奪われ、ゲインを許す。そのままSO山中の突破からHO有田にトライを奪われる。このプレーで「早大を勢いづけてしまい」(林監督)、徐々に早大が試合の流れを掴む。慶大はそれまで何とか食らいついていたブレイクダウンで徐々に劣勢になっていき、セットプレーも安定さを欠き始める。何人も選手が負傷交代した事態も重なり、自分たちのプレーが出来なくなる。後半32分には、マイボールラインアウトのミスから、最後はWTB田中に振り切られ点差を広げられる。慶大もアタックを仕掛けるもターンオーバーを許し、後半42分にはマイボールをジャッカルされたのが起点となり、WTB中濱にダメ押しのトライを奪われ、ノーサイドとなった。
敗戦という結果は残念ではあるが、大学ラグビーではトップレベルの早大に途中まで好勝負を演じたことは大きい。慶應らしいプレーが十分に発揮出来ていた60分までは、17-17と同点であったことが何よりの証拠だと言えるだろう。
「しっかりブレイクダウンから球を展開していけば早稲田相手でもチャンスになる」(花崎主将)ことがわかり、自分たちの力を出し切れば、強豪相手にも十分通用することを確認できた。ただ、改めて均衡したゲームでのミスの怖さも思い知らされた。後半20分のキックオフの処理ミスからトライを奪われ、試合の流れを持っていかれ、結果ダブルスコアまで離されてしまった。こういったミスを防がないと「(大学選手権では)優勝は出来ない」ことも痛感させられる一戦となった。ケガ人が多いことが気がかりではあるが、ここからどれだけチーム一丸となって、毎試合「80分間最後まで慶應のラグビー」(HO柳澤選手)が出来るか。日本一を目指すために、今ここが花崎組の正念場であろう。
慶大キックオフで始まった前半。初めは堅さからか慶大にペナルティーが多く、自陣でのプレーが続く。だが、FWの強い接点を生かした東海大のアタックに対し、慶大は低く、鋭いタックルでゲインさせない。たまらず東海大がBKに展開したところをWTB保坂がインターセプトし、自陣からそのまま走り切り先制トライを挙げる。17分には、CTB篠原、CTB落合、WTB金本と倒れずにきれいにつなぎ、LO三輪谷が最後にグランディング。フィットネスとスピードが合わさったトライで点差を広げる。その後は、マイボールラインアウトの不安定さから相手ボールでのプレーが続くが、東海大はミスが重なるなどペースがつかめず。前半は17-0で折り返した。
後半に入っても終始慶大が試合を支配し続ける。一時は東海大に2トライ連続で奪われるも、直後の東海大のキックオフボールの処理を途中出場のLO石川がチャージ。相手のペナルティーを誘うと、慶大はPGを選択。至近距離で放たれたボールは不運にもポストに弾かれてしまうが、このこぼれ球をしっかり追いかけていたLO三輪谷がそのままトライ。このプレーに指揮官も「(同様のシーンがあった帝京大戦から)学んでいる」と満足顔。ディフェンスでも、東海大の自陣からでもFW、BK一体で展開してくるアタックにも低いタックルで対応。32-12とジュニア選手権・最終戦をきっちりと締めくくった。
これで、ジュニア選手権を3位で終えることになった慶大。ジュニアでも初戦惜敗し、Aチームも自力優勝を断たれた「やりたかった」相手・帝京大との決勝トーナメントでの再戦が決定した。そして、内容も伴った勝利を収めたことで、今後の大一番にも「いい雰囲気で向かっていける」。
林監督
「(勝って)良かった。勝たなければいけない東海、勝っても(次の)トーナメントにいける慶應。こういうところでしっかり勝つのがチャンピオンの資質。こういう試合でベストを尽くせることが大事。プランもきちっといき、ゲームコントロールも出来た。東海の自陣からつないでいく戦い方に対応でき、エリア勝ちした。嫌だなと思ったのは、前半終わりの自陣で釘付けにされたぐらい。タックルも決まっていて良かった。早稲田戦入りのメンバー入りのチャンスもあるぞということでモチベーションを上げていたので、熱を感じた。個人とチームのチャレンジがあった。全体として良かった。
ポストにあたったトライがうれしかった。5-5で引き分けた帝京戦から学んでいるなと感じた。帝京戦ではキックがポストに当たっていても、竹本しか追いかけていなかった。そのビデオを何度も見せていたので。(試合前には)今日の試合の雰囲気が早稲田戦につながってくるという話をしていた。これでいい雰囲気で向かっていける。ジュニアチームもステップアップしている。(ジュニアは次)帝京と出来るのがうれしい。帝京とやりたかった。Aチームの仇がとれる。リベンジして勝って、早稲田に勝ちたい」。





