2008年04月18日

西村卓朗の退場に想うこと

水曜日に、ナビスコカップがあった。
大宮アルディージャは、横浜FMと対戦した。

前日の夜に、西村卓朗選手から電話がある。

「明日、試合にでます」

今シーズンの卓朗は、グアムキャンプを終えて帰国してからコンディションを崩し、ずっと控え選手に甘んじていた。だから横浜とのカップ戦が今季初めての試合になった。しかし卓朗は、前半で二枚のイエローカードをもらって退場してしまう。昨シーズンから、三試合連続の退場処分という不名誉な記録を残してしまった。

一言で云えば、気負いがあったのだろう。

僕は、『サッカー批評』で「哲学的志向のフットボーラー 西村卓朗を巡る物語」を連載している。次の発売で5回目を数える。四回目の連載、「家族」が発売された後に、記事を読んだ卓朗からメールがあった。

「こんな風に書いてくれて、応援してくれている人も大勢いるのに今の自分の状況はほんと情けないです・・・。今週も途中で故障離脱をしてしまい明日からまたチーム練習に合流する感じです。でも今の状況もうまくいくために必要なプロセスだと確信しています。必ずなんとかしてみせます!」

このメールをもらう前に、僕は卓朗に「いずれカップ戦で使われると思うから・・・チャンスは必ずくるよ」というメールをした。これは、それに対する彼の返答でもあった。

彼のこうした頑張りを読者に伝えたくて、『サッカー批評』の編集長に連載の実現化をお願いした。また僕自身も、今まで経験したり学んだりしたことすべて注ぎ込んで、心を込めて文章を書いている。

火曜日の試合前日の電話で、卓朗と話を終えて携帯を切ってから、言い忘れたことがあった・・・と「ふと」思った。

「入れ込みすぎないように」と。

退場処分でチームは大敗。この現実に、「怒り」とか「疑念」とか「失望」とか、いろいろな思いをもったサポーターがいることだろう。確かに三度の連続退場は、誉められたものではないし、プロである限り、同じ過ちを何度も繰り返してはいけない。

僕は、たまに卓朗にこんなことを云う。
「サッカー選手の寿命は人生の中でとても短い。だから選手としてどうやって最後を迎えるのかが大切。そのためには、選手でいる間は絶対に諦めない。チャンスは必ず来るから」

だから僕は、今の彼の状況を心配してはいない。彼ならば、人に感動を与えられるプレーがきっとできるはずだ。そのための試練だとさえ思っている。おそらく彼も、そうだろう。

以下の文は、19世紀を代表するロシアの小説家ツルゲーネフのもの。

「疲れた人は、しばし路傍の草に腰をおろして、道行く人を眺めるがよい。人は、決してそう遠くへは行くまい。人間には、不幸とか、貧困とか、病気が必要なのである。なぜなら、人間は、すぐに高慢になるからだ」(イワン・ツルゲーネフ『猟人日記』)

そしてこの後続く文章が、僕は好きだ。

「乗りかかった船には乗ってしまえ」
 
僕は今、西村卓朗という一人のサッカー選手と共に船を漕いでいる。
たどり着こうとしている先にあるものは、何が待ち受けているのか。

最後の最後には、何がそこにあるのかを・・・僕は知りたいのだ。

文/川本 梅花

posted by 川本梅花 | 08:21 | 大宮アルディージャ | コメント(1) | トラックバック(1)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2008年03月22日

大宮対横浜FM戦を前に ヤマザキナビスコカップ第2節

3月23日、ヤマザキナビスコカップ第2節、大宮アルディージャ対横浜Fマリノス戦が行なわれる。20日に第1節の新潟戦を2対2の引き分けで終えた大宮は、怪我で治療中の藤本主税の代わりに内田智也が先発した。また、ルーキーの土岐田洸平が内田と同様に初先発を飾った。さらにベンチには、ルーキーの青木拓矢が入っている。右サイドバックには、村山祐介も今季初出場した。このように、カップ戦の重要性は、準レギュラークラスや新人の活躍の場であると言える。23日の横浜FM戦には、誰が使われるのかも見所であろう。

第3節	3月30日(日)	13:00	清水エスパルス	日本平	
第4節	4月2日(水)	19:00	名古屋グランパス	NACK	
第5節	4月5日(土)	13:00	大分トリニータ	NACK

日程を見れば、リーグ戦再開の最初の試合が、30日の清水エスパルス戦になっている。その次の試合が、ホームで、4月2日に名古屋グランパス戦があり、4月5日には大分トリニータ戦がある。この3試合が過密日程になっている。したがって、こうした日程をどうやって乗り切って、好成績を残すのかが、今シーズンの大宮を占うひとつの秤(はかり)になる。この秤は、選手層が特別に厚いわけではないチームの普遍的なものだろう。

開幕戦からの5試合を、どういう風に戦うのかーーー例えば、新しい選手を何人か起用して、チームの底上げとサブメンバーの活性化をはかるなどーーーどんなやり方で過密日程を乗り切るのかが、樋口監督の腕の見せ所である。

ところで、新スタジアムのNACKは、ピッチとスタンドの距離が近く、本当に見やすいサッカー専用球技場だ。記者席で試合を見ていても、選手たちの細かい動きもよくチェックできる。芝生も整備されてパスサッカーを基本にしたチームには最高の状態である。それに比べて、仮のスタジアムとして昨年使っていた「駒場スタジアム」のピッチは、凸凹(デコボコ)で最悪な状態だった。ある試合で、カウンターサッカーが基本の対戦相手の監督が、「大宮にとって好条件でないピッチの駒場を選んでくれて、うちとしては、有り難かった」と言ったほど、パスサッカーを基本にするチームには、有り難くない環境だった。

20080322-00.jpg
そんな思い出がある駒場スタジアムだが、時々、懐かしくなる時がある。 それはどうしてなんだろうか・・・と考えてみても、なかなか答えが見つけられない。そうした個人のいろんな想いを振り返るためにも、僕は、サッカーを見るためにスタジアムに足を運ぶのかもしれない。 日曜日の午後、「NACK5スタジアム大宮」で会いましょう! 文/川本 梅花


posted by 川本梅花 | 02:05 | 大宮アルディージャ | コメント(0) | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2008年03月20日

青木拓矢(大宮)への期待

20080320-00.JPG今季、大宮アルディージャに加入した新人選手の中に、青木拓矢というボランチの選手がいる。彼の名前を聞いて、彼がどんなプレーヤーかすぐに頭に浮かぶ人は、高校サッカーやユースサッカーを見ている人だろう。

今季の大宮アルディージャには、7人の新人選手が加入した。その中で大学生が5人いるが、彼らはすべてセレクションの結果入団した選手たちだ。実は、大宮の今季のスタウティングは、高校生が中心だった。高校選手権に出場した有望な何人かの選手と入団交渉したのだが、青木拓矢は大宮を選んだ。彼は、ボランチというポジションに必要な資質をすべて兼ね備えていると言える。志木の練習で青木のプレーを見て思ったことは、視野の広さと展開力を持っていること。それにミドルパスの正確さと、人への当たの強さ。グッと横から相手に身体を入れて、ボールを奪うプレーは必見だった。

青木は、高崎FC、FCホリコシ、FC前橋に所属する。当時から本格派ボランチとして注目を集めていた。その後、前橋育英高等学校に進学、山田耕介監督に抜擢されレギュラーで使われる。青木が2年生になってから、前橋育英高等学校は2年連続して全国高校選手権出場した。

18歳の期待の大型ボランチ、それが青木拓矢だ。
大宮に入団して先輩選手たちとの初めての顔合わせの時に小林慶行が青木の年を聞いて、
「巳年って・・・おい!俺と、ひとまわり違うのかよ」
と叫んだそうだ。

ところでこの間、佐久間元監督と話をしていて、〈J1になって大宮に入団した選手とJ2の時に入団した選手〉の違いについての話になった。佐久間氏によれば、「大宮が2011年を目標に、優勝できるチームにするためには、J1にいるこの時に入団した選手が中心にならないとチームが深化しない」と話していた。そのための補強として、青木に目をつけたと言える。青木は、大宮以外にもC大阪や札幌からオファーがあったのだが、彼はどうして大宮を選んだのだろうか。志木での練習の後に、青木から話を聞いた。

「大宮以外にもオファーがあったんですが、地元(高崎市出身)から近いので、自分ががんばって試合に出られるようになったら、スタジアムで、特にホームで、親に見せることができると思ったんです。それに大宮のスカウトの方が、何度も何度も練習場に来てくれて・・・大宮だったら行きたいと思いました。大宮のサッカーは、自分がやりたいサッカーでした」

青木を大宮に入団させたのは、スカウトの熱意だったようだ。実は青木は、大学進学をずっと考えていたという。

「高校3年の始めは、大学に行ってサッカーをやりたいと思っていました。ですから、僕がプロにいくことになったら、周りの人は、〈お前がプロに行くのかよ〉って言ってましたね。特に、高校2年生の頃には、怪我で試合にでれなかったので。高校の山田監督が、大学に行くよりも、お前はプロに行った方がいい、と話してくれました」

青木は、大宮に入団してから、3月9日~3月12日に熊本で行われた、U-19(FIFA U-20ワールドカップ2009)日本代表候補トレーニングキャンプのメンバーに選出された。選ばれた理由として、U-19日本代表に選ばれて〈カタール国際ユースサッカー大会〉に出場したことが大きい。カタールの経験が、青木にサッカー選手として色々なことを学ばせようである。

「外国人の選手は、寄せとか、判断力の速さとか優れていました。あとは、止める、蹴る、運ぶという基礎が本当にしっかりしていて、ボールタッチとか上手いので、それは学ばなければいけないと思いました。大宮の選手は、上手い人がたくさんいるし、ディフェンス面でも強い人がいるので、最初はそうしたプレーを見て、吸収していけたらいい、と考えています。大宮は、ボランチの選手がたくさんいて、いろんなタイプの選手がいるので、勉強になりますね」

自分のどのプレーを見て欲しいと思うのか、という問いには「ボールの配給を見てもらいたい」という。さらに「気持ちでプレーすることが一番大事なことだと思います」とも話す。また「まずはチームで試合に出られるようになること。そこからが、始まりですよね」と謙虚さも忘れない。

青木には、新しい時代の風を大宮に運ぶ人に是非なって欲しい。

文/川本 梅花


青木 拓矢(あおき たくや)選手のプロフィール

■生年月日
1989年9月16日(18歳)
■身長/体重
179cm/72kg
■きき足
右足
■ポジション
MF
■出身地
群馬県高崎市
■サッカー歴
1999
高崎西FC
2000
FCホリコシ(現アルテ高崎)
2002
前橋Jr.ユース
2004
第16回高円宮杯全日本ユース(U-15)サッカー選手権大会
関東大会3位 全国大会ベスト8
2005
前橋育英高校サッカー部
2006
第85回全国高校サッカー選手権群馬県大会 優勝 全国大会出場
2007
第86回全国高校サッカー選手権群馬県大会 優勝 全国大会出場

■代表歴
2001
U-12ナショナルトレセン
2005
U-16ナショナルトレセン
2007
U-18日本代表
2008
U-19日本代表(カタール国際ユースサッカー大会 優勝)


posted by 川本梅花 | 02:04 | 大宮アルディージャ | コメント(0) | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2008年03月19日

『フットボリスタ』(No.68)の掲載記事について

20080319-00.jpg今週の海外サッカー週刊誌『フットボリスタ』(「スクワッド」)は3月19日(水)に発売する。

今号の表紙は、欧州の得点王をひた走るC.ロナウド。

「欧州一のゴールゲッターは“ストライカー”ではない。主戦場はサイド。そして、いくら持ち過ぎと言われても激しいタックルが飛んできても、いつも魅せてかつ抜きにかかる。それでいてゴール前に飛び込んでは誰よりもシュートを打ち、誰よりもゴールを奪っているのだ。自らの足でCL8強を呼び込んだC.ロナウドは、今週もチームをリーグ首位へ返り咲かせるゴールを挙げた。2冠へ、そして欧州ナンバー1ストライカーの称号もその足下にある。規格外のウインガーが今季、欧州の真の主役になるだろう」(footballostaのブログ、スポナビPLUS「Oめてボリスタ」より抜粋)

そして、連載12回目を迎えたサッカーの本と映画の批評コラム、川本梅花の「フットボールのアフォリズム」は、35ページに掲載されている。今回取り挙げた映画は『ベルンの奇蹟』、本は『ブンデスリーガ ―ドイツサッカーの軌跡―』。ドイツサッカー史の中で、最もドイツ人の記憶に残っている試合と言われるスイスW杯決勝戦、対ハンガリーとの一戦は、「ベルンの奇跡」と呼ばれる。この出来事が、ドイツ人にとってどれだけ影響力を与えたのかを、映画と本の中から探り出す。

最初にドイツ人の哲学者ニーチェの以下のアフォリズム(箴言)を引用した。

「情熱から意見というものが生じる、精神の怠惰がこれを信念に硬直化させるのだ」(『人間的、あまりに人間的』フリードリッヒ・ニーチェ)

サッカーコラムや記事の中で、ニーチェのアフォリズムを最初に引用したのは、ジュネーヴに住んでいた時に『スポナビ』に書いた、「ザールブリュッケンからの風」という記事だった。これは、ドイツの3部や4部リーグでプレーする5人の日本人を取りあげたもの。そこでは、全体を通してニーチェの『善悪の彼岸』をテーマにして執筆した。ニーチェのアフォリズムは、事象の本質を見事に言い当てていると思う。


20080319-03.jpg〈MOVIE〉
『ベルンの奇蹟』
監督/ゼーンケ・ボルトマン
出演/ルーイ・クラムロート、ペーター・ローマイヤー、サーシャ・ゲーペル
DVD発売中 ¥3,990(税込)
発売・販売元/エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ

【あらすじ】
第二次大戦終結から9年が経過した工業都市エッセンが舞台。サッカードイツ代表は、1954年のスイスW杯に出場を決める。開催地は首都ベルン。主人公の少年マチアスは、地元選手のヘルムート・ラーンを慕う。ラーンが代表に選ばれてベルンに旅立った後、主人公は、11年間ソ連に抑留されていた父の帰国を母から知らさせる。やがて少年は、ある行動に出る・・・。この映画は、戦後のドイツ人に再生と勇気と希望を与えた奇蹟の物語を描いている。

20080319-04.jpg〈BOOK〉
『ブンデスリーガ ―ドイツサッカーの軌跡―』
ウルリッヒ・ヘッセ・リヒテンベルガー/著
秋吉香代子/訳
¥3,360(税込)
発行/バジリコ

【あらすじ】
20世紀のドイツの歴史は、サッカー史の中にまで暗い影を落とす。本書の筆者は、「そのことを忘れないように心がけてきた」と打ち明ける。そうした想いを前提に、ドイツサッカー発祥からブンデスリーガの誕生、さらに日韓共催W杯までのドイツサッカー史を詳細に解説する。

映画は、見応えがあり感動する作品。本は、読み応えがあり感銘を受ける。

作品を見る前に、読む前に、是非、『フットボリスタ』のコラム「フットボールのアフォリズム」を読んでみてください。

文/川本 梅花


posted by 川本梅花 | 00:34 | 『フットボリスタ』 | コメント(0) | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2008年03月18日

西村卓朗ファンのTさんへの手紙

西村卓朗選手のファンのTさんから何度か手紙をもらいました。それに対する返信をブログ上でしました。僕にとってとても励みになる手紙で、うれしく、有り難かったです。

数日前に、「ココログ」から「アメブロ」にブログを引っ越ししました。

以下がそれです。

サッカーライター川本梅花のBLOG

「アメブロ」の方では、サッカーとは関係ないことも書こうと思います。この「スポナビ」では、サッカー中心で行きます。「西村卓朗ファンのTさんへの手紙」は、「アメブロ」の方に載せてあります。

読者のみなさん、今後ともよろしくお願いします。

文/川本 梅花

posted by 川本梅花 | 06:18 | 日常雑記 | コメント(0) | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2008年03月16日

『ジュニアサッカーを応援しよう!』(Vol.8)の掲載記事について

20080316-00.jpg『ジュニアサッカーを応援しよう!』(Vol.8)「カンゼン」が、3月5日に発売された。そこでは以下の記事を執筆した。

■「プロのスキルは15歳までに身につける
ーースペイン 15歳までに戦術眼を身につけろ!ーー」

海外サッカー情報誌『フットボリスタ』の編集長、木村浩嗣氏が、1月から3月まで府中の少年サッカークラブでコーチをされている。スペインの少年サッカーの指導ライセンスを持っている木村氏は、スペインでやっていた練習のマニュアルをそのまま実践している。

〈木村サッカー教室〉にお邪魔して、練習を見学した後で、スペインでは練習方法や指導法など木村氏に色々な話を訊かせてもらった。それをまとめたものが、今回『ジュニアサッカーを応援しよう!』に掲載した内容である。スペインの基本は、パスサッカーなので、練習内容もパスゲームが中心となる。日本でやられている内容とは練習法が違っていた。子どもたちにはスペースを意識させようと、バリエーションに富んだ練習をやっていた。

僕はその後、取材から1ヶ月経ってから子どもたちのスキルアップ度を確認するために、再び練習場に足を運んだ。スペインでのやり方を見学させてもらって、とても参考になった。それがたとえ、子どものサッカーであっても・・・。

少年サッカー、スペインサッカー育成法、などに興味のある読者は、是非読んでください。

文/川本 梅花


posted by 川本梅花 | 01:27 | 雑誌掲載紹介 | コメント(0) | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2008年03月15日

『サッカー批評』ISSUE 38 への掲載記事について

20080315-01.jpg『サッカー批評』(issue38)が、3月10日に発売された。

今回は、三本の記事を書いている。

1)川本梅花の「サッカー読本」117ページ

Vol.3『サッカーの上の雲』と『サッカー馬鹿につける薬』の間に
ーサブカルチャーを笑えー

「手に血がつかない人殺しでは、痛みはわからんのだ」
(クワトロ・バジーナ『起動戦士Zガンダム』より)

サブカルチャー系の二人の書き手の本を取りあげた。ひとつは、小田嶋隆の『サッカーの上の雲』。もうひとつは、WEB.サポティスタの編集長、岡田康宏の『サッカー馬鹿につける薬』(共に「駒草出版」から)。これらサブカル系の書き手の本は、タイトルをどこか別の本から取ってきているものが多い。小田嶋の本は、司馬遼太郎の『坂の上の雲』から。岡田のそれは、呉智英の『バカにつける薬』からのもの。両者は、サブカルという系列に身を置きながら、書き手としてのスタンスは異なっている。そうしたことに注目して、二つの本を批評した。

2)「哲学的志向のフットボーラー 西村卓朗を巡る物語」130ー133ページ

第四回 「家族」

「わが身はわが心を養い わが心はわが身を導く」(西村孝次)

1.詩人のような言葉を持った祖父

2.父への叱責と、あるプロ野球選手のメンタルケア

3.母からの長い手紙

この連載も四回目になるのだが、今回のアフォリズムは、西村卓朗選手の祖父の残したもの。祖父は、文芸評論家の小林秀雄の従弟だった英文学者。『サロメ』を書いたオスカー・ワイルドの全集を日本で初めてひとりで翻訳した人。ここに登場する卓朗の父と母は、実際に取材してみて、とても味がある人物だった。最後の母からの手紙は、多くの読者に是非読んでもらいたい、と願っている。ちなみに、2.に登場するあるプロ野球選手とは、ソフトバンクの小久保裕紀のこと。

3)「日本代表の存在価値 日の丸の重みは変わったのか?」16-25ページ

証言1.ラモス瑠偉
横山謙三との出会い、そしてドーハへ
日本代表は、日本リーグの選抜じゃない
フランスW杯とドイツW杯、中田英寿のプレー
自分が日本代表に選ばれる選手だと証明してやる

証言2.松永成立
お金では買えないものを得るために戦う
ドーハのチームは大人のチームだった
君たちの最終目標は何なのか

証言3.名良橋晃
最初の目標は、海外でプレーすることだった
レギュラー組とサブ組
サポーターの声援でW杯に出場できた

証言4.山本浩(NHKアナウンサー)
Jリーグ以前の代表への認知度と国際試合
ラモスとカズの日の丸への想い
「サッカー道」という呪縛からの開放
第一世代のプロ化と第二世代のプロ化
代表とクラブとの天秤の重さ
監督が変わっても日本のサッカーは急激には変わらない

これは、ラモス氏から山本アナまで、すべてを通して読んでもらえれば、代表の価値の歴史的変遷がつかめると思う。実は、企画の段階で、三浦カズ選手や都並監督、さらには三浦アツ選手、福西選手、服部選手に取材を申し込んでいたのだが、現役でプレーしていたり指導している人々にとって、立場上、何らかの形でも「日本代表」を語るのは難しいということだったので、彼らへの取材は諦めた。そこで、選手を引退した人を中心に取材することになった。僕としては、先に述べた選手たちへの取材は諦めていない。なんとしても、彼らの言葉をどこかで引き出して、「日本代表の存在価値」をもっと深く探って行きたいと考えている。

この項で最後に用いた言葉がある。

「過去は未来で 未来は過去 時は積み重なっていくのではなく 失うものである」

この意味を、もう少し本文のどこかで説明できればよかった。

それは、別の機会にゆだねたい。

是非、読んで下さい。

文/川本 梅花


posted by 川本梅花 | 02:05 | 『サッカー批評』 | コメント(0) | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2008年03月12日

大宮アルディージャ対アルビレックス新潟 Jリーグ第一節

大宮アルディージャ対アルビレックス新潟 Jリーグ第一節

-新しい風はどこから来たのか-

 オレンジ色は、黄色と赤色の中間の色。大宮のクラブカラーはオレンジで、新潟のクラブカラーはオレンジとブルー。スタジアムの両チームのゴール裏の座席は、この日、オレンジ一色に染まっていた。

私は、オレンジ色のユニホームが好きで、特に大宮のオレンジが気に入っている。

 ただ、そのオレンジのユニホームは、昨季はどこに向かって進んでいくのか不安だった。だから、オレンジのユニホームの行き先を、最終節まで固唾をのんで見守っていなければならなかった。今季は、新監督に樋口靖洋を迎えて、大宮に新しい何らかのスタイルが導入されるかもしれない、という期待感があった。そして、3月9日。NACK5スタジアム大宮。アルビレックス新潟を迎えて、大宮の開幕試合が行なわれた。

■監督は、誰をFWに起用したのか

 樋口監督は、この日の試合に向けて、二つの攻撃軸をテーマにしていた。ひとつは、前線のアグレッシブなプレスからボールを奪ってのショットカウンター。もうひとつは、両サイドバックが高い位置取りをして、MFが中央やサイドに切り込むところで、FWが相手DFの裏のスペースを狙う。

 こうした攻撃を実現するのには、誰がFWのポジションを務めるのか、が、問題となる。まず、常に足下からプレーをスタートしようとするデニス・マルケスは、必然的にサブメンバーになる。次に、ポストプレーを得意とする森田浩史も外される。そうすると、DFの裏へチャレンジできる選手となれば、練習試合でスタメンに起用されていた吉原宏太とペドロ、さらにベテランの桜井直人、新人で開幕ベンチ入りが噂されていた土岐田洸平が挙げられる。

 樋口監督は、この日の開幕において、練習試合と同じように吉原とペドロのふたりのFWを起用してきた。彼らふたりは、監督の指示通りにDFの裏へ何度もチャレンジしていた。また、ペドロは、中央でボールを受けた時に、足下の技術を使って相手のアタックをかわし、ボールをキープする役割もこなしていた。ただし、フリーになっていた周りの選手がいたのに、ボールを持ち過ぎるプレーが幾度かあった。味方を使って自分もスペースへ抜けるようなプレーをすれば、彼自身の得点も増えてくるはずだ。

■ 新監督と新入団選手は、大宮に新しい風を吹き込めるのか

 実は、昨年の監督の第一候補者は、現監督の樋口靖洋だった。しかし、オファーを出した時に、すでにモンテディオ山形と契約延長していたので実現しなかった。そこで元監督のロバート氏にオファーを出す結果になったのだ。大宮にとっては、2年越しのラブコールだったのである。樋口監督を推薦したのは、前監督の佐久間氏。彼らは、監督ライセンスを受講していた時の同期。外部から大宮に新しい風を入れる必要があると考えていた佐久間氏は、理論派の樋口氏ならば、得点力不足という攻撃面での課題を克服してくれるかもしれない、と、考えたという。

今季の大宮には、大卒、高卒、ユースからの新加入者が7人いる。

GK 清水慶記(流経大)
DF 塚本泰史(駒澤大学) 川原達也(東洋大学)
MF 土岐田洸平(法政大学) 青木拓矢(前橋育英高校)
FW 市川雅彦(法政大学) 渡部大輔(大宮ユース)

 30歳前後の主力メンバーを多く抱える大宮は、世代交代も今季のテーマのひとつだ。上に挙げた新加入のメンバーを見てもらうと分かるのだが、渡部はユースからの昇格。青木は、U-19の日本代表候補で高卒。他の5人の選手は、大学卒で大宮に入団した。大学出の選手たちは、スカウティングの結果、入団したのではない。実際にスカウトされたのは、青木ただひとり。大卒の選手は、セレクションを行なって、そこで振るいにかけられて選ばれた者たちだ。いわゆる、「雑草育ち」だと言える。

 そんな中から、いち早く頭角を表したのは、開幕戦で後半に出場した土岐田洸平。試合後、土岐田に初出場の感想を訊いた。

「サイドは上手い具合に崩せていたんですけど、ニアで待っている選手がいないので、それをやってくれと。あと、前線の選手が疲れているかもしれないので、守備をしっかりやってくれ、と監督から言われました。初出場して、プレーは完璧ではなかったんですが、そこそこはやれたと思っています。こんなにサポーターが近いスタジアムや、お客さんがこんなに入っているスタジアムでやったことがなかったので、本当に、気持ちが良かったです。緊張は、めっちゃしました。ピッチに入る直前には、足とか震えていましたし。主税さんが、〈お前上手いプレーできないんだから、気持ちで行け!〉と言ってくれました。それで、気が楽になりました。後半になってから、ディフェンスの裏に飛び出す動きが少なくなっていたので、自分はそれが持ち味だから、それをやろうと思っていました。試合に使われる予感はなかったですね。今度は、是非、得点を取りたいです」

 樋口監督は、「若手を育てながらチームを勝たせる」という難しい命題にどのように取り組むのだろうか。そして、今季、何人の若手が起用されるのだろうか。這い上がってくる彼らの頼もしい姿に期待したい。

■ 今度は、パープルが相手

 最近、私が気になっている色は、パープル。部屋のソファーにおいてある4つのクッションの内、ふたつはパープル色。テーブルクロスもパープルが基調になっているストライプ模様。だからと言って、パープルとクラブ名につくチームが気になっているわけではない。ちなみに、『ウイニングイレブン』の「マスターリーグ」のチームカラーは、オレンジ色なのだ。

ところで試合は・・・2対0で大宮の勝ちだった。


文/川本 梅花

posted by 川本梅花 | 00:29 | 大宮アルディージャ | コメント(1) | トラックバック(1)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2008年02月13日

『フットボリスタ』連載記事No.63

『フットボリスタ』に連載している、サッカーの映画と本の批評コラム「フットボールのアフォリズム」の第11回が、13日(水)の発売号に掲載されました。今回の映画は『フーリガン』、本は『エーコとサッカー』を取りあげました。

フットボリスタ
『フーリガン』のプロットは以下。

「主人公マットは、ジャーナリスト志望の大学生である。ある日彼は、寮の同室人が犯した麻薬売買の罪をかぶって大学を放校処分される。やがて彼は、姉を頼ってイギリスへ渡る。そこには義兄の弟ピートがいた。ピートは、フーリガン・ファーム(コアなサポーター)のリーダーであった。マットは彼らの仲間たちと親交を深める。物語は、FAカップでの対戦相手がライバルチームに決定した日から、加速度を増して終焉へと向かう」

『エーコとサッカー』の内容は以下。

「著者ピーター・P.トリフォナスは、トロント大学で倫理学や文化研究を講じる。本書では、イタリアの記号学者ウンベルト・エーコのサッカーに関する論述をもとに、著者が文化現象としてのサッカーとサッカーをめぐる言説を解読していく。サッカーという記号を通して、メディアや大衆が作り出す様々な“フェイク”を暴き出す。それは記号学者による“記号論的なゲリラ戦”と言えるものだ」

そして、今号で引用したアフォリズムは、イタリアの記号学者ウンベルト・エーコのものです。彼は「私はサッカーが嫌いなのではない。サッカーファンが嫌いなのだ」と表明します。“サッカー ファン”とは、自閉的なマニア主義へと陶酔する者と言います。人はサッカーを戦争になぞって語り、ただサッカーが行われているという一つの現実を、狂信的愛国主義から生じた別の記号に置き換えてしまう。「そこには嘘や虚偽がある」とエーコは主張するのです。

「私はある意味では、世界を衛生化してくれるのは戦争のみという未来派の主張に同意するのだが、ひとつだけ小さな修正条件がある。志願した人間だけが戦争をするのなら、ということだ。残念ながら、戦争は乗り気になれない人々まで巻き込んでしまう、したがって、道徳的な意味において、観るスポーツよりも下等なのである」(ウンベルト・エーコ『ワールドカップとその虚飾』)

是非、読んで下さい。

ところで、『フットボリスタ』編集長の木村浩嗣氏が、1月末から3月までの2ヶ月間、東京都府中市にある府中スポーツガーデンで、小学5・6年生を対象に「木村サッカー教室」を開いています。木村氏は、スペインサッカー協会の指導者ライセンスを取得していて、スペインのサラマンカに住んでいた時に、8年間、少年サッカークラブの監督をされていた経験の持ち主です。

初日の練習は、雪が降る中、行なわれたのですが、練習後に、スペインの少年サッカーの育成法や下部組織の構成、さらにはバルセロナとビルバオに見られる育成環境の違いなどの話をうかがいました。この模様は、『ジュニアサッカーを応援しよう!』(カンゼン)の3月発売号に掲載されます。発売日など詳しいことは、後日お知らせします。

文/川本梅花




posted by 川本梅花 | 17:30 | 『フットボリスタ』 | コメント(0) | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2008年02月01日

鈴木啓太はこのように語った ―接近・展開・連続の真実―

日本対ボスニア・ヘルツェゴビナの後に

鈴木啓太はこのように語った ―接近・展開・連続の真実―

キリンチャレンジカップ2008、日本対ボスニア・ヘルツェゴビナ戦が、1月30日、国立競技場で行なわれた。試合は、2得点をあげた山瀬功治の活躍などで、3対0と日本代表が完勝した。試合後の記者会見では、背広姿の岡田監督が登場する。これから記すものは、オシム前監督の記者会見でも行なったことだが、「誰がこの質問したのか?」という疑問に答えようと思う。会見での岡田監督の返答は、『スポナビ』の記録を参照されたい。

質問者:大住良之
――チリ戦に比べて良くなった点、タイ戦(2月6日のワールドカップ3次予選)に向けて必要なことは?
岡田監督:チリ戦は久しぶりのゲームで、(以下略)。

質問者:石川とら(保昌)
――トップにFW3人を入れるスタメンだったが、タイ戦でも攻撃的にいくのか?
岡田監督:これはまだ分からないですけど、恐らくタイの戦い方として、(以下略)。

質問者:朝日新聞記者
――合宿からショートパスだけでは駄目だとおっしゃっていた。今日の試合では、長いパスやサイドチェンジも出ていたが、どう評価するか?
岡田監督:合宿でもショートパスだけ、ということではなかったし、(以下略)。

質問者:テレビ朝日記者
――得点を取るためにあたって、アタッキングゾーンでの具体的な指示は?
岡田監督:今日の相手に関してはハーフタイムに、(以下略)。

質問者:テレビ東京記者
――GKを2人使い分けたが、タイ戦では?
岡田監督:今のところGKに関しては、第1GKは川口だと思っています。(以下略)。

質問者:北海道新聞記者
――山瀬が2ゴール挙げたが、どう評価するか
岡田監督:山瀬は指宿のキャンプから非常に調子が良かったです(以下略)。

質問者:共同通信記者
――アジア予選に向けて、ここまでの手ごたえは?
岡田監督:一番びっくりしたのは、このチームは代表チームにもかかわらず、ひとつのチームになっている(以下略)。

質問者:石川とら
――オシム前監督が試合を見ていたことについては?
岡田監督:オシムさんが来られることは聞いていましたが、今日はお会いもしていませんし、そういうところに注意を払うゆとりはありませんでした(以下略)。

質問者:後藤健生
――ゲームの一つ一つに狙いがあると思うが、今日のゲームの狙いは何だったのか。チリ戦と比べてどうだったか。また、チリ戦を踏まえて狙いは変わったのか?
岡田監督:一応、僕の中でテーマは持っています(以下略)。

オシム前監督と岡田監督の会見での受け答えの違いは、はっきりとしている。オシムの場合は、記者とのコミュニケーションを活発にすることで、他文化間に生じる埋められない両者の溝を明らかにしようとする。考えや受け取り方の両者の違いを明確にすることから、オシムは、コミュニケーションというものが始まると考えていたようだ。それが、記者であっても誰であっても分け隔てなくということなのだろう。

一方、岡田監督は、「ここまでしか話さない」と決めて記者会見に出席しているように思われる。それはなぜかと言えば、質問に対してこちらが想定される範囲の答えしか返ってこないからだ。ただし、さすがにサッカーを見る目は確かなものがある。岡田が、ハーフタイムで選手に出した指示が、試合の中で日本に流れを呼び込んで得点に繋がることになった。

「2列目が飛び出したらフリーになるけど、中央は難しいと。サイドに振って、1人出れば中央が空くと。それくらいの指示で、2列目は、特にトップ下の選手は、サイドの選手がフリーでボールを持てるので、サイドにボールが出たときにサポートではなく、2トップに絡むように、という指示くらいです。」

さて、岡田ジャパンのキーワードである「接近・展開・連続」に関して、鈴木啓太に話を聞くことができた。「岡田監督から〈接近・展開・連続〉について具体的に何か言われたのか」という問いに、鈴木は次のように答えた。

「まったくないです。それは捉え方というか、見方というか・・・。まあ、どんなサッカーのレベルであっても、その言葉はあてはまると思います。サッカーの質を上げるかどうかが問題なので、その言葉自体には意味がないというか・・・。その言葉は、基本的な部分であって、岡田監督が、メディアの人に分かりやすく伝えるために言葉に表しただけですよね。サッカーの質を上げるために、そのこと(〈接近・展開・連続〉)を実行していくことが勝利への鍵になる、と僕は捉えています。それは、ブラジルやイタリアは、当たり前にやっていることで、サッカーの質を上げていくことが大切で、ただそれを(〈接近・展開・連続〉)やればいいということではないと思います。具体的に(〈接近・展開・連続〉について何かを)言われたことはありません。」

面白いのは、サッカーライターやジャーナリストが、「この試合は、〈接近〉が行なわれた」とか、「次は〈展開〉が見られる」という評論があちらこちらで見られることだ。真実は、岡田監督によるメディアを使った〈接近・展開・連続〉という「キャッチコピー」に踊らされたということ。それが、他でもないメディア自身だったということだ。だからと言って、〈接近・展開・連続〉のスローガンは今のところまだ有効なようだ。ただ今回は、岡田監督の方が、メディアより相当にしたたかだったのである。

文/川本 梅花

posted by 川本梅花 | 02:15 | サッカー日本代表 | コメント(4) | トラックバック(1)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加