2008年03月19日
『フットボリスタ』(No.68)の掲載記事について
今週の海外サッカー週刊誌『フットボリスタ』(「スクワッド」)は3月19日(水)に発売する。 今号の表紙は、欧州の得点王をひた走るC.ロナウド。 「欧州一のゴールゲッターは“ストライカー”ではない。主戦場はサイド。そして、いくら持ち過ぎと言われても激しいタックルが飛んできても、いつも魅せてかつ抜きにかかる。それでいてゴール前に飛び込んでは誰よりもシュートを打ち、誰よりもゴールを奪っているのだ。自らの足でCL8強を呼び込んだC.ロナウドは、今週もチームをリーグ首位へ返り咲かせるゴールを挙げた。2冠へ、そして欧州ナンバー1ストライカーの称号もその足下にある。規格外のウインガーが今季、欧州の真の主役になるだろう」(footballostaのブログ、スポナビPLUS「Oめてボリスタ」より抜粋) そして、連載12回目を迎えたサッカーの本と映画の批評コラム、川本梅花の「フットボールのアフォリズム」は、35ページに掲載されている。今回取り挙げた映画は『ベルンの奇蹟』、本は『ブンデスリーガ ―ドイツサッカーの軌跡―』。ドイツサッカー史の中で、最もドイツ人の記憶に残っている試合と言われるスイスW杯決勝戦、対ハンガリーとの一戦は、「ベルンの奇跡」と呼ばれる。この出来事が、ドイツ人にとってどれだけ影響力を与えたのかを、映画と本の中から探り出す。 最初にドイツ人の哲学者ニーチェの以下のアフォリズム(箴言)を引用した。 「情熱から意見というものが生じる、精神の怠惰がこれを信念に硬直化させるのだ」(『人間的、あまりに人間的』フリードリッヒ・ニーチェ) サッカーコラムや記事の中で、ニーチェのアフォリズムを最初に引用したのは、ジュネーヴに住んでいた時に『スポナビ』に書いた、「ザールブリュッケンからの風」という記事だった。これは、ドイツの3部や4部リーグでプレーする5人の日本人を取りあげたもの。そこでは、全体を通してニーチェの『善悪の彼岸』をテーマにして執筆した。ニーチェのアフォリズムは、事象の本質を見事に言い当てていると思う。
〈MOVIE〉 『ベルンの奇蹟』 監督/ゼーンケ・ボルトマン 出演/ルーイ・クラムロート、ペーター・ローマイヤー、サーシャ・ゲーペル DVD発売中 ¥3,990(税込) 発売・販売元/エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ 【あらすじ】 第二次大戦終結から9年が経過した工業都市エッセンが舞台。サッカードイツ代表は、1954年のスイスW杯に出場を決める。開催地は首都ベルン。主人公の少年マチアスは、地元選手のヘルムート・ラーンを慕う。ラーンが代表に選ばれてベルンに旅立った後、主人公は、11年間ソ連に抑留されていた父の帰国を母から知らさせる。やがて少年は、ある行動に出る・・・。この映画は、戦後のドイツ人に再生と勇気と希望を与えた奇蹟の物語を描いている。
〈BOOK〉 『ブンデスリーガ ―ドイツサッカーの軌跡―』 ウルリッヒ・ヘッセ・リヒテンベルガー/著 秋吉香代子/訳 ¥3,360(税込) 発行/バジリコ 【あらすじ】 20世紀のドイツの歴史は、サッカー史の中にまで暗い影を落とす。本書の筆者は、「そのことを忘れないように心がけてきた」と打ち明ける。そうした想いを前提に、ドイツサッカー発祥からブンデスリーガの誕生、さらに日韓共催W杯までのドイツサッカー史を詳細に解説する。 映画は、見応えがあり感動する作品。本は、読み応えがあり感銘を受ける。 作品を見る前に、読む前に、是非、『フットボリスタ』のコラム「フットボールのアフォリズム」を読んでみてください。 文/川本 梅花
posted by 川本梅花 |00:34 |
『フットボリスタ』 |
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今週の海外サッカー週刊誌
〈MOVIE〉
〈BOOK〉
『フーリガン』のプロットは以下。
「主人公マットは、ジャーナリスト志望の大学生である。ある日彼は、寮の同室人が犯した麻薬売買の罪をかぶって大学を放校処分される。やがて彼は、姉を頼ってイギリスへ渡る。そこには義兄の弟ピートがいた。ピートは、フーリガン・ファーム(コアなサポーター)のリーダーであった。マットは彼らの仲間たちと親交を深める。物語は、FAカップでの対戦相手がライバルチームに決定した日から、加速度を増して終焉へと向かう」
『エーコとサッカー』の内容は以下。
「著者ピーター・P.トリフォナスは、トロント大学で倫理学や文化研究を講じる。本書では、イタリアの記号学者ウンベルト・エーコのサッカーに関する論述をもとに、著者が文化現象としてのサッカーとサッカーをめぐる言説を解読していく。サッカーという記号を通して、メディアや大衆が作り出す様々な“フェイク”を暴き出す。それは記号学者による“記号論的なゲリラ戦”と言えるものだ」
そして、今号で引用したアフォリズムは、イタリアの記号学者ウンベルト・エーコのものです。彼は「私はサッカーが嫌いなのではない。サッカーファンが嫌いなのだ」と表明します。“サッカー ファン”とは、自閉的なマニア主義へと陶酔する者と言います。人はサッカーを戦争になぞって語り、ただサッカーが行われているという一つの現実を、狂信的愛国主義から生じた別の記号に置き換えてしまう。「そこには嘘や虚偽がある」とエーコは主張するのです。
「私はある意味では、世界を衛生化してくれるのは戦争のみという未来派の主張に同意するのだが、ひとつだけ小さな修正条件がある。志願した人間だけが戦争をするのなら、ということだ。残念ながら、戦争は乗り気になれない人々まで巻き込んでしまう、したがって、道徳的な意味において、観るスポーツよりも下等なのである」(ウンベルト・エーコ『ワールドカップとその虚飾』)
是非、読んで下さい。
ところで、『フットボリスタ』編集長の木村浩嗣氏が、1月末から3月までの2ヶ月間、東京都府中市にある府中スポーツガーデンで、小学5・6年生を対象に「木村サッカー教室」を開いています。木村氏は、スペインサッカー協会の指導者ライセンスを取得していて、スペインのサラマンカに住んでいた時に、8年間、少年サッカークラブの監督をされていた経験の持ち主です。
初日の練習は、雪が降る中、行なわれたのですが、練習後に、スペインの少年サッカーの育成法や下部組織の構成、さらにはバルセロナとビルバオに見られる育成環境の違いなどの話をうかがいました。この模様は、『ジュニアサッカーを応援しよう!』(カンゼン)の3月発売号に掲載されます。発売日など詳しいことは、後日お知らせします。
文/川本梅花
『アザー・ファイナル』のプロットは以下。
「日韓W杯決勝戦、ブラジル対ドイツの一戦が行なわれた2002年6月30日に、FIFAランキング202位のアジアの小国ブータンと203位のカリブ海に浮かぶ小さな島モントセラトによる、“裏W杯決勝”と呼べる最下位決定戦があった。この作品は、その準備段階から実際の試合までを追いかけたドキュメンタリー。商業主義の色合いが強くなったW杯とは違って、素朴さというサッカーの持つ別の側面を見せてくれる良作」
『サッカーの詩学と政治学』の内容は以下。
「本書は、カルチュラル・スタディーズという文化研究の視点からイギリスなどの学者たちが記したサッカー文化の研究論書。サッカーが生みだす現象が、イデオロギーや人種やジェンダーといった問題と、どのように関連しているのかを分析している。現代サッカーは、選手やファンが作り出す“美的な要素(詩学)”と社会を形成するイデオロギーに関わる“政治的な要素(政治学)”が絡み合って成立する。著者たちはポスト・コロニアリズムの立場から刺激的な論考をつづる」
そして、今号で引用したアフォリズムは、パレスチナ系アメリカ人の文学研究者であるエドワード・サイードのもの。これは、イラク開戦直前の彼の発言です。
「この方法は決してうまくいきません。民族の意志や思想の力は消去不能です。思想の力とは何か。それは平等、共存であり、続けられる生活ということです。環境・土地・社会の問題を問わず、これが守るべき原則なのです」(エドワード・サイード)
是非、読んで下さい。
文/川本梅花


