韓国スポーツ考察(旧「データから見る韓国野球(2013年度版)」)

朴柱奉と日本バドミントン界の10年

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先日のトマス杯・ユーバー杯において、日本代表は男子優勝、女子準優勝という快挙を成し遂げました。それと関連してとても良い記事がありました。

バドミントン男子団体、世界一までの「10年計画」
http://sportiva.shueisha.co.jp/clm/othersports/2014/05/27/10_1/

中国、そしてマレーシアを破っての男子優勝で突如としてバドミントンは脚光を浴びることとなりましたが、最高の形で結実した強化策は、実はアテネ五輪の惨敗後から開始されていたという内容のコラムです。

その立役者のひとりがパク・チュボン(朴柱奉/「パク・ジュボン」と表記される場合も有り)ヘッドコーチです。折角なので上のコラムに載っていない内容を交えながら今回のエントリーを書いていきます。

アテネ五輪、韓国は4つのメダル(金1 銀2 銅1)を獲得しました。いまだこの競技でメダルを獲得できなかった日本は、韓国ウォンに換算して年俸1億2000万ウォンに車と住宅、子どもの養育費付きでアテネ五輪韓国代表の臨時コーチのパク・チュボンをヘッドコーチとして招聘しました。目標はドーハアジア競技大会でのメダル獲得でした。

そして迎えた06年、ドーハアジア競技大会で日本女子がひとつの奇跡を起こします。1980年代以降、アジア競技大会及び世界選手権の団体戦で1度も勝てなかった韓国を相手に3-2で勝利を収めたのです。

☆2006年ドーハアジア競技大会予選リーグ韓国戦試合結果

1単 ×森かおり 0-2(10-21/9-21) イ・ヒョジョン
1複 ×潮田玲子 前田美順 0-2(12-21/13-21) イ・ギョンウォン イ・ヒョジョン
2単 ○広瀬栄理子 2-0(21-16/21-18) イ・ヨヌァ(イ・ヨンファ)
2複 ○小椋久美子 末綱聡子 2-1(21-17/13-21/21-19) ファン・ユミ ハ・ジョンウン
3単 ○米倉加奈子 2-0(22-20/21-15) チョン・ジェヨン


あくまでも予選リーグでしたが、ここでの逆転勝利が利いて決勝トーナメントで日本は銀メダル、韓国は準決勝で中国に敗れ銅メダルとなりました。他にも小椋・潮田組が女子ダブルスで銅メダルを獲得し、パク・チュボンのコーチ招聘時に立てられた目標は達成されました。十分な成果を残したパク・チュボンは引き続き日本代表を引っ張って行くこととなります。皮肉にもパク・チュボンの母国を打ち破った日にトマス杯・ユーバー杯の快挙への道が拓かれたのです。

その後のバドミントン日本代表の躍進は先ほどのコラムに詳しいので割愛します。

上のコラムには「引退後は各国のコーチを務めていた」とありますが、パク・チュボンは日本のコーチをする前、韓国以外の2ヶ国でコーチ経験があります。彼のコーチとしての遍歴を少し確認してみましょう。

彼を最初に招聘したのはイギリスです。イギリスの招きに応じ、パク・チュボンは97年に韓国体育大学助教授を辞職してイギリス代表のコーチに就任、同時にデュモントフォート大学の博士課程に入学します。コーチとしてのハイライトは99年の全英オープン。当時混合ダブルス世界ランキング1位のキム・ドンムン、ラ・ギョンミン組をイギリスのサイモン・アーチャー、ジョアン・グード組が撃破しました(このイギリスペアは後にシドニー五輪で銅メダル獲得)。

しかしパク・チュボンはその年をもってイギリスを去ります。

パク・チュボンが続いてコーチに就任したのは、今回トマス杯の決勝で対戦したマレーシアです。韓国の報道によると、イギリスでの年俸が5万ドル+授業料補助だったのに対し、マレーシアは年俸20万ドル及び住居・車の提供、学費の補助を提示したそうです。バドミントンが盛んなマレーシアでは「チュボンバーガー」まで存在したと言われています。

パク・チュボンはマレーシアのヘッドコーチを退任した後、現地でバドミントン教室を運営していましたが、04年のアテネ五輪を前にして母国に帰り、一時的に代表チームのコーチに就任します。アテネ五輪後は、韓国代表や韓国の実業団の動きに先立ってパク・チュボンと接触した日本代表が彼の招聘に成功しました。これは迅速に動いたバドミントン協会を評価すべきでしょう。

それまでも日本の実業団チームでは、YKKのリオニー・マイナキー(インドネシア/現日本代表コーチ)やトナミ運輸のパク・ソンウ(朴星宇/韓国)のように事実上兼任コーチとして在籍する選手がおり、90年代後半以降の日本のバドミントン発展を語るとき外国人の寄与は外すことができません。

ただ、それでも近年で男子が大きな国際大会でここまでの偉業を果たしたのは初めてです。今回の躍進は単に韓国人コーチであるパク・チュボンひとりの成果だったのでしょうか。

今回の代表コーチ陣を見ると、舛田圭太と佐藤翔治の名前を見つけることができます。彼らはパク・チュボンがヘッドコーチを務めている時代に代表選手として活躍しました。

舛田は早い段階から世界での勝負を強く意識していた選手だと思います。北京五輪では男子ダブルスでベスト8に進出し、09年に引退して代表コーチに就任しています。明るく熱い性格は彼のブログからも伝わってきます。
佐藤は現代表で男子最年長の佐々木翔と同級生で、12年のロンドン五輪まで出場して引退、代表コーチに就任しました。

五輪に3大会連続で出場した彼らが現代表の兄貴分的存在としてチームを盛り立てていることも国家代表に良い影響を与えているように思います。パク・チュボンヘッドコーチの10年間は彼の意志を引き継ぐ日本人コーチたちの誕生と成長でひとつの形ができあがったのではないかと思います。

無論、今回のトマス杯優勝とユーバー杯準優勝はコーチたちのおかげだけではありません。ジュニアからの育成に力を入れてきたバドミントン協会の助力、そしてそれに応えて成長した田児賢一や桃田賢斗ら選手たちの努力無しにしては語ることができません。

来月10日~15日には東京でヨネックスオープンジャパン2014が開催されます。トマス杯・ユーバー杯で活躍した選手たち、あるいは今回代表から漏れた選手たちが、自国開催の試合で上位に進出することができるかどうか。トマス杯優勝とユーバー杯準優勝でバドミントンが注目されている今だからこそ、この大会での日本人選手の活躍がメディアでのバドミントンの扱いを変える可能性を持っています。

北京五輪の頃、女子ダブルスの小椋・潮田組は注目度が高かっただけでなく世界で戦うことができる実力を備えていました。しかし期待が異常に高まっていたために、ベスト8という結果にもかかわらず、それまでのバドミントン協会のイメージ戦略が頓挫することとなってしまいました。今年のヨネックスオープンジャパンで日本人選手に求められる成果はその実力以上のものだと思います。そのプレッシャーを力に変えて期待に応えて欲しいと思います。

それにしても、世界卓球の時にも感じたのですが、スポナビブログのブログテーマの偏りは少し残念に思います(もちろんここ以外ならブログを書いている人もいますが)。ここでブログを開設している人にそれらの競技の経験者は少ないのかもしれません。しかし私のように体育の授業で少しラケットを握っただけの人間でもちょっと調べればこういう感想程度の文章なら書くことができます。

特定競技以外では快挙ですらあまり報じられないメディアに対して不満を持つ人もいるようですが、それは私たちスポーツファンにも問題が無い訳ではないと思います。ミーハーと言われても感動を文章として書き留めることも時としては必要なのかもしれません(今回のブログ、ミーハーな上、知ったかぶりですいません)。

最後に、舛田コーチのブログのリンクを貼って今回のエントリーを締めくくりたいと思います。コーチとして、そして元選手としての熱い感情が伝わってきます。

http://ameblo.jp/keitamasuda/entry-11862360331.html

(※記事の「共通ジャンル」を「バドミントン」に設定するとSPORTS NAVIのサイトの「他競技」に表示されないらしいので、しばらく「バドミントン」ではなく「その他のスポーツ」に設定しておきます。)→5/29 共通ジャンル1を「バドミントン」に変更しました。



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ニュース、その他スポーツ等
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アジア競技大会
ユーバー杯
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伊達と申します。学生時代韓国に留学したことがきっかけで韓国野球に関心をもつようになりました。
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韓国メディアが積極的に外国語で情報を発信する一方で、日本や中国のメディアなどでもそれぞれの立場から韓国スポーツの話題が積極的に取り上げるようになりました。しかしどちらも表面的な報道が多く、その本質に迫っているケースは少ないように感じます。
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