2006年10月20日
プロ23年目の今シーズンは、山本昌にとって充実したシーズンではないだろうか。特にペナントレース終盤の活躍は、目を見張るものがあった。チームが阪神の猛烈な追い上げにあっていた9月。2度の阪神との直接対決で、いずれも先発で登板し勝利。そのうちの1試合では、プロ野球最年長記録となる41歳1ヶ月でのノーヒットノーランを達成している。若手の先発投手が終盤に調子を落とすなか、1年間先発ローテーションを外れることなく投げ続け、2年ぶりのリーグ優勝に貢献した。
今回の日本シリーズは、山本昌にとって4度目の日本シリーズになる。そして2年前に見せた、あの悔しい顔以来の…。
2004年10月24日ナゴヤドーム。日本シリーズ第6戦。
3勝2敗と50年ぶりの日本一に王手をかけて、名古屋に戻ってきた第6戦。先発は、中日-山本昌、西武-松坂大輔。山本昌は、立ち上がりに1点を失い、その後もピンチを迎えるが、要所で踏ん張り追加点を許さない。打線は、2回と4回に松坂から1点ずつ取り、2-1で中日がリード。そして6回表西武の攻撃を迎えた。
この回の先頭打者カブレラが2塁打を放ち、無死2塁で和田一浩が打席に入った。フルカウントから和田がファウルで粘った後の10球目。山本昌が内角を狙ったスライダーは、少し甘めに入った。和田の振り抜いた打球は、左中間スタンドに消える。逆転の2ランホームランだった。
私は、和田にホームランを打たれたときの山本昌の顔が、今も忘れられずに強く印象に残っている。最近は、この日対戦した松坂を含め、打たれてもあえて表情を崩さず、ポーカーフェイスを保って気持ちをコントロールする投手も多い。そのことも強く印象に残った要因かもしれない。しかし、打球の行方を見届けた後に、歯を食いしばり顔をゆがめて悔しがったその姿。それは、私がそのシーズンに見た投手の中で、最も悔しさをあらわにした投手の姿だった。
結局、山本昌はこの回途中で降板。この試合で力投を見せた松坂は日本シリーズで自身初めてとなる勝利をあげた。逆王手をかけた西武は、続く第7戦を今シリーズのMVPとなる石井貴の好投でものにし、12年ぶりの日本一に輝いた。
実は、松坂と同様に、山本昌も日本シリーズで勝ったことがなかった。あの悔しい顔は、山本昌もまた相当の気持ちでこの試合に臨んでいたことを物語っていたように思う。しかし、その顔を見たとき、私は不謹慎にも少し嬉しかったことを記憶している。ああ、この悔しさが山本昌の選手寿命を延ばしてくれるんじゃないだろうか、と。だから、私はその後、どこかで西武が日本一になってくれることを願っていた。日本シリーズで勝てず、日本一にもなれなかった悔しさが、200勝という大記録に向かっている山本昌のこれからの原動力となることを期待して…。
あれから2年。
40歳を迎える選手としては異例の複数年契約を結び、2年間で18の勝ち星を積み上げた。現在191勝。200勝へのカウントダウンは1ケタとなった。今年は、ノーヒットノーランも達成した。複数年契約を結んだ際に、「200勝もそうだけど、日本一になりたい」と語った男が、2年越しの日本一を目指し、日本シリーズに臨む。
順当にいけば、山本昌は日本シリーズ5度目となる先発マウンドに立つだろう。日本シリーズの舞台で勝利投手になった時、山本昌はどんな素顔を見せてくれるのだろうか。そして日本一を手にしたときは? その姿を思い浮かべるだけで私は今からワクワクしている。2年越しの素顔の行方を。
posted by katsuspo |19:10 |
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2006年07月21日
昨日行われたオールスター前の最後の試合、阪神対巨人の一戦は、阪神の福原と巨人の上原による白熱した投手戦。試合のほうは、8回裏に阪神が関本の犠牲フライで挙げた1点を、阪神が球界に誇る新ストッパー藤川球児が守り、1-0で阪神が勝利するというものだった。
しかし、この息詰まる熱戦には、1-0と言う点差以上に今の阪神と巨人にある埋めがたい差があるように感じてならなかった。それを感じたのは、8回裏の1点を奪われた巨人の失点シーンである。
8回裏、先頭バッターの鳥谷敬が、セカンドの右横をライナーで痛烈に抜けるヒットを放つ。1塁ベースを回ったところで打球の行方を見た鳥谷は、そのまま2塁に向かい、悠々セーフとなった。球足が速かったが、セカンドの頭上を越すような右中間真っ二つという打球でもなかったので、これはシングルヒットかなと思われた。センターの高橋由伸は、多少左中間寄りにシフトをとっていたのかもしれず、全てを責められないかもしれないが、最初の1歩の動き出しが早ければと思うシーンであった。ここまで無失点できていた上原にとっても、疲れが出てくる試合の終盤でノーアウト2塁になったというのは、精神的に堪えたであろう。阪神にはリードすれば豪腕ストッパー藤川球児がいる。1点も許せない状況なのは誰よりも肌で感じていたはずである。
次の打者矢野輝弘は、上原の初球に送りバントを簡単に成功させた。“簡単に”という表現は少し失礼かもしれないし、むしろこの場面できっちりと決めた矢野をほめるべきかもしれない。しかし、ファーストやサードが猛然とダッシュしてプレッシャーをかけるような動きはまったく見られず、バッテリーにも送りバントを簡単には決めさせないというような工夫を見ることができなかったのも事実である。こうして、1アウト3塁、犠牲フライでも1点が入る状況となった。
そして、決勝点の場面。関本健太郎がセンターに犠牲フライを打つ。少し浅い打球だったが、センター高橋のバックホームはピッチャーマウンドにあたって減速し、鳥谷の手がわずかに早くホームにタッチし待望の1点が入った。この場面の高橋のバックホームを指摘する声も多い。確かに打球の浅さから考えれば、ノーバウンドで投げていれば刺せるべき状況だったし、試合後の原監督もそのようなコメントを残している。しかし、それよりも私が疑問を感じたのは、キャッチャー阿部の関本に対するリードだった。あの場面、巨人バッテリーは、初球にストレートを投じて犠牲フライを打たれている。関本は、初球から積極的に振ってくる思いっきりのいいバッターである。そういうバッターに対して、なぜ初球にストライクゾーンのストレートを要求したのか? 阿部の構えた位置はもっと内寄りで、上原の投げたボールは少し中に入ってしまった。しかし、それを差し引いたとしても、初球のストライクゾーンにストレートは、どう考えても危険な選択だったと言わざるをえない。上原というピッチャーは球の勢いではなく、コントロールと球の切れで勝負するピッチャーである。決してストレートで押すピッチャーではないはずだ。しかも調子がよかったとしても、8回という終盤になれば、球の勢いは多少なりとも衰えている。実は、先頭バッターの鳥谷に打ったボール、矢野が“簡単に”送りバントを決めた初球のボールも、ストレートだったのである。こうなると、関本への初球の入り方は、あまりにも注意を欠いたものだったといえないだろうか。
もちろん、ここまで無失点に抑えてきた巨人バッテリーは評価されるべきだし、1-0という試合を考えれば、むしろ責めるべきなのは攻撃面とも言える。ただ、1点も許せない状況なのは、グラウンドにいる誰もが理解していたのだろうが、プレーにその理解が表現されていたかというと、残念ながらそうとはいえなかった。鳥谷の2塁打、矢野の送りバント、関本の犠牲フライ。8回の失点は、バッテリーだけでなく内外野、ベンチを含めた、記録に残らない巨人のミスであった気がしてならないのである。
楽天の野村監督は、よく“無形の力”という言葉を使い、形には見えない一つ一つのプレーの重要性を説いている。記録には現れないようなきめ細かいプレーをきっちりとできるようにする。その完成度が1点を争うような重要な場面でチームの力として生きてくる。ヤクルトの監督時代に、巨大戦力を誇る巨人に対して掲げた『弱者の野球』というのは、まさに“無形の力”をつけることであった。以前の巨人は、“無形の力”などかすんでしまうような巨大戦力で勝ち抜いてきた。しかし、以前のような巨大戦力ではない今の巨人の試合では、この記録に現れない“無形の力”の存在が、目立つようになった。巨人は、この“無形の力”の足りなさを痛感し、取り込んでいかなければ、中日や阪神に追い付いていくことは難しい。昔は巨人に対して掲げられた『弱者の野球』。今、それを巨人が学び、実践していかなくてはならないというのはなんとも皮肉な話である。しかし、そういう時期に巨人はきているのではないだろうか。この日の8回の攻防を見て、そんな気がしている。
posted by katsuspo |04:29 |
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