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全英オープンのステンソンとミケルソンのマッチレースに思う 〜スポーツの境界線〜

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深夜、何気なく見始めたつもりが最後まで見届けていた。 ゴルフの全英オープン最終日、ヘンリク・ステンソンとフィル・ミケルソンのマッチレース。 全英オープンは、マスターズ・全米オープン・全米プロゴルフと並ぶ4大メジャーの1つで、最も歴史あるトーナメント。テニスで言えば、ウィンブルドンのような感じ。 海岸沿いの風景、自然の地形そのままの凹凸あるコースは、素朴かつクラシック。青木功さんの特徴ある声と、マルちゃんこと丸山茂樹さんのひそひそ声がコースの雰囲気に妙にマッチングする。 ゴルフを見ることは多くないけど、全英オープンの中継は毎年見ている気がする。決して食い入るようにではなく、気分で視聴終了するくらいの気軽さで。 松山秀樹は予選落ちした。予選突破した日本人選手も目立った活躍を見せることはできなかった。だけど、ステンソンとミケルソンのマッチレースは、僕に途中棄権を許してくれなかった。 ステンソン12アンダー、ミケルソン11アンダーでスタートした最終日。2人の素晴らしい技術と精神力に酔いしれた。 不利な状況から絶妙のリカバリーでパーパットをねじ込む、ミケルソンの技術と集中力。ボギーで追いつかれた後に、ロングパットのバーディパットを2つ沈めて突き放す、ステンソンの精神力。差を縮めたいミケルソンが、イーグルチャンスにつけてプレッシャーをかける。ステンソンはラフからピンそばにつける絶妙なアプローチで、逆にプレッシャーをかけ返す。不利に見える状況を引き戻してしまう応酬に、相手のミス待ちなんて望めない。この日のステンソンとミケルソンにいたっては、カップにボールが入るまで有利も不利もなかった。 スタートから大きくスコアを伸ばした2人のマッチレースは、終わってみればステンソン20アンダー、ミケルソン17アンダー。ステンソンの20アンダーは大会記録を塗り替え、2人に続く3位のスコアは6アンダー。いかに、2人が異次元のゴルフを見せていたかがわかる。

時に、「◯◯なんてスポーツじゃない」といった言葉を目にする。ゴルフについてもしかり(ここでいうスポーツは、生涯スポーツではなく、競技スポーツを指す)。確かに、陸上競技や水泳のように、肉体の極限をタイムや距離で競うものとは性質が異なるかもしれない。でもその一方で、球技や道具を使った競技もスポーツとして広く認知されているのも事実。そして、サッカーはスポーツだけど、ゴルフはスポーツじゃない。野球はスポーツだけど、カーリングはスポーツじゃないとなると、少し違う気がしてしまう。 元々、スポーツは人間が一定のルールで娯楽性を高めるように作った遊びに過ぎない。言ってしまえば、サッカーだってただの球蹴りであり、野球だってただの球打ち。だけど、その遊びを純粋に打ち込む人達の姿。極めた人達が見せてくれるその遊びの面白さ。それは、いつしか遊びという枠を越え、時に感動を巻き起こすドラマを生みだしていく。それが、競技スポーツの姿ではないのかなと思う。その視点で見れば、求められる運動能力に多少の差異さえあれ、サッカーも野球もゴルフもカーリングもさして変わらない。極限の緊張の中で、ピンそばにピタリとつけるゴルフのアプローチショット。40m先の1点を射抜くカーリングのスーパーショット。少なくとも私は、そこにサッカーや野球から得られるのと同種の感動を覚えることができる。 見る人が見れば、ゴルフはただの球入れで終わってしまうかもしれない。しかし、何百ヤード先の穴に数打で入れ、時に生い茂った草むらから球を掻きだす。それを極めんとするステンソンとミケルソンが見せた究極の球入れ。それは、ゴルフをやったことがなくても、ゴルフに興味がなくても、ただただ「上手いな」と感嘆する技術であり、「すごいな」と圧倒される精神力だった。そして、そこには素晴らしいドラマがあった。ゴルフがスポーツか否かなんて議論することなど憚られるくらいに。 見事なマッチレースを演じた2人の名優。そして、珠玉の雰囲気を作り上げた名脇役のギャラリー達。彼らから教えられたような気がする。個人の主観として、スポーツか否かの境界線を述べることは自由だろうね。でも、その主観は、素晴らしいプレーや選手の姿が生み出すドラマに触れた途端、打ち砕かれる程度のものなんだよと。

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