2008年12月19日

ガンバVSマンU戦は不公平だ!!。

「スピードの違い」はもう聞き飽きた

私は毎回試合後の選手のコメントを楽しみにしている。当然「記者」と言うフィルターにより編集されてはいるが
それでも言葉のチョイスや選手の試合感と私の感想と照らし合わせて、どの程度周りが見えている選手なのかを計る物差しとして楽しんだりしている。コメントにより普段見ることのできない選手の様々な個性が垣間見える所も面白い。欧州移籍など上を目指す選手。自分の役割に徹する選手。試合自体を楽しむ選手などなどである。

今試合はJと欧州クラブが(ある程度ベストメンバーの公式戦で)当たる希少な試合と言うのもあり、様々なメディアも注目のようで関連記事も中々の数だ。

ブログ、新聞、選手、監督コメントなどをまとめると、総じて「スピードの違い」に触れている。皆が同じように語るので一視聴者の私としては、若干マンネリ気味である(苦笑)。
偉そうな言い方をすれば、『そう言う開催前から分かりきっている事は私のブログのように試合前にUPしろ』と生意気な気持ちにもなる。更に言えば知性とは区別する能力の事であると言う。単に『スピードが違う』という区別しか付かない国民のサッカーレベル(観戦者、試合関係者共に)では永遠に欧州に追いつき追い越す事は不可能である。これは私の前回の記事も当てはまってしまう。4つに分ければそれで良いというものではない。

よってスピードはもうお腹一杯、閉口気味なので今回は少し別の角度からガンバ大阪対マンチェスターUを振り返ってみたい。


マンUの舐めた態度

まず色々なファンがいて、私は後半開始前にカメラにアピールをするC・ロナウドを見て激昂するタイプだ。それは嫌いな選手欄にロナウドを乗せている程元々印象が良く無いせいもあるが、自分で偉そうにJクラブを叱咤しておきながら、いざ欧州のプレイヤーに舐められたような態度(今回のロナウドの行為は単にファンサービスかも知れないが)を取られると、なにやら消化できぬ感情が沸きあがって来る。
スコアは前半で2:0と既に大勢を決し余裕を持つのは当然のことではあるのだが・・・・・。

ファーガソン監督は試合前に少なくともスタメン5選手を公表している。

この辺は監督の性格によるが、オシムさんは「相手に失礼である」として格下相手でも決してスタメンの公表などしなかった。(リンク先のトリニダード・トバゴが格下なのではない)

そしてロナウドの態度、舐められて当然の試合展開で有ったのは否めないが、私は日本サッカーに対する見くびられた態度を感じた。掻い摘んでいうと「マンUが思うほど、今回の結果ほど日本サッカーの現状は低レベルではない」という気持ちだ。マンUが本当にアジアを侮蔑したクラブであればパクチソンを獲得してはいないであろうから、彼らがその意味で欧州で最もアジアや日本を軽視するクラブでは決して無い。がゆえに欧州での日本在籍選手の(実力を反映しない)地位の低さが気になる所ではある。散々日本の実力をこき下ろしている私が腹を立てるのも変な話だが、欧州のサッカー関係者よりは日本サッカーの実情を(多少は)詳しいだろうと言う自負から来るものである。


不公平な前提

試合に関して言い訳をさせて貰えば、去年は浦和のポンテ、今年のガンバはバレー、二川を欠きとベストパフォーマンスとは程遠い状態だった。バレー移籍は少し前の出来事ではあるが、2年連続エースストライカーのシーズン途中での引き抜きに遭い、とてもじゃないが十分な応急処置など不可能だ。今シーズンは苦渋の選択から遠藤やDFミネイロをFW起用したり四苦八苦して急造した「攻撃ガンバ」だった。贔屓目に見ればこれは異常事態である。もしマンUと戦うのであればとりあえずそれなりのがたいの外国人FWと残りの枠も大分のエジミウソンのようなチームにフィットした外国人が欲しかった。

スタメンに外国人枠1のガンバ。スタメンに外国人7のマンU

内訳はwikiの通り

ファン・デル・サール オランダ
エブラ フランス
ビディッチ セルビア
C・ロナウド ポルトガル
アンデルソン ブラジル
ナニ ポルトガル
ギグス ウェールズ
テベス アルゼンチン

途中交代したエバンズ(北アイルランド)やフレッチャー(スコットランド)もW杯出場国単位で言えば外国人である。(この辺ややこしいので間違っているかも知れない)


公平なサッカーは面白いのか

はっきり公平を規すのであれば対戦する両クラブのクラブランキングが低い方(この試合ではガンバ)のリーグルールに合わせて外国人枠を3人に限定して対戦する程度の枷が有ったとしてもおかしくはない。またマンUはこれでもプレミア内で比較的イングランド国籍選手は多い方のチームである。その他マンU(欧州王者)のパフォーマンスが落ちないようにと言う事であればガンバ(ACL王者)の選手交代枠を増やしたり、クラブW杯だけ外国人枠を増やしたりしても良い。(使いこなせるかは微妙だが)

更に言えば他競技同様に体重でハンデをつけても私はおかしくないと思っている。近年の研究されたサッカーは、個々の工夫で体格差を補いきれるほど未発達の競技ではなく、その傾向は年々強まっている。こんな状態での「平等」とは「体格に優れた人種を優遇する」という不平等ですらある。同じ能力の選手が二人いればフィジカルに優れた素材が生き残るのは明白だ。この傾向が進めば将来的にアフリカやカリブ系の祭典と化している陸上100m走決勝のように、特定の人種を競い合わせる競技と変貌しかねない。一応言及しておくが私が個人的にその様にハンデを導入したサッカーを楽しめるかはまた別の問題だ。


Jクラブが勝つためには

少し話が脱線してきたので修正するが、Jリーグファンの方の中にはアジア枠反対の方がまだまだ居る。そうではない方でもプレミアの外国人(EU籍)選手無制限のようにJリーグにアジア籍無制限を導入しようとしたら如何だろうか?。私は賛成だが、多分20%を切る少数派だろう。理由は多くの人が「そんな見知らぬアジア人だけのチームを見たいと思わない」か「日本人選手が冷遇される」など現実的な意見が多く、一理あるものが多い。細かな問題では、財政難クラブでの「薄給でアジア人選手の使い捨て」が起こらないか。また先細りの日本経済に頼ったJリーグ運営で、今後アジアの発展に乗り遅れないか。など等心配の種は尽きない。例えば50年後は日本代表クラスは全て中東や中国のサッカーリーグに引き抜かれている可能性だってある。消極的な意見だが、経済規模から言えば今後Jリーグの規模やアジアでの位置を維持するだけでもやらなくてはいけない事は沢山ある。

クラブW杯は一同に集まって定期的にアジアクラブと欧州クラブが対戦する場を提供しただけでも前進ではある。だがACL王者が勝利する本当の意味で面白い試合が出来るようになるのはまだまだ遠そうである。その道のりの険しさを思うと、クラブW杯も「ただ枠を作った」だけの簡単なステップアップにしか過ぎないのかも知れない。

ハンデの追加により試合が面白くなる余地があるのなら、アジアで開催されるクラブW杯は地元クラブの優遇有っても決しておかしくはない。すなわち欧州クラブ側外国人枠を1~2人にするのだ。マンUが勝つ姿を賞賛するJリーグファンの姿はどうしても若干の違和感が否めない。まずは形だけでも同じ土俵に上がり悔しがって欲しい。ガンバの善戦やマンUのプレーを称えるのはその後ではないだろうか。
私のような欧州サッカーファンは今回の試合結果はすっきりする所もあるが、私的にはそう単純な感情でもないらしい。仮にクラブW杯大会内では外国人枠は3人となったら、アジアクラブの勝率は上がるが、果たして大会は盛り上がるだろうか。
サッカーがアジアに根付いてくれば「欧州の外国枠はズルイ」という意見が当然出てくる時が来るだろう。

posted by karakuti |19:00 | 試合レビュー | コメント(9) | トラックバック(0)
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2008年12月13日

遠藤は水を運ぶ人になれるのか

4つのスピード

近年のサッカーで重要なのはスピードだと言われる。
山本昌邦氏によれば、それはさらに3つに分けられる。ランスピード、シンキングスピード、パススピードである。
私は最近のサッカーではこれにファーストタッチ、ボールコントロールスピードも別個に設けた方がよいのではないかと思う。良く「1タッチで裏に抜け出す動き」と言われるヤツが分かりやすいだろうか。
ここ1~2ヶ月ほど、近年に無いほど国内リーグを見る割合が高い。その理由はスペインリーグが余り魅力的ではなくなってきたからだ(その話はまた別の機会にしよう。)
そしてたまに海外の試合を見る。すると一番驚くのはなんと言ってもそのスピード、試合展開の目まぐるしい変化の速さである。
現ガンバ大阪監督の西野氏がオリンピック代表監督を務めていた時、ブラジル五輪代表を見て「3倍速のビデオを見ているようだ」と話していたが、感覚としてはまさにそれが正しい。
私には「同じ競技とは思えない。」日本のフットボールは「違うサッカー」なのだと気付かされる。その印象は今も昔も変わらない。勿論だからJリーグは詰まらないと底の浅い事を言うつもりは無い。私のサッカー観戦仲間とも話すのだが、「欧州サッカーと違いテンポがゆっくりの方が落ち着いて見られる」と言う理由で日本サッカーを好んで見る場合すらある。別の競技としてそれはそれで楽しめるのである。
ただ両者が真剣に雌雄を決するとなると、日本人としてどうひいき目に見てもやはり分が悪い。
圧倒的な初速、判断力、キック力、ボールコントロール速度の前に、日本の選手はひたすら自らが経験してきた「サッカー」の速度差を埋めようと、無駄に脳と身体を疲れさせてしまう。ここで言う『無駄』とは、誰でも初体験の行動は気を使い疲れるように、経験さえあれば消耗せずに済むという意味だ。
そしてこの4つのスピードはオシム氏も語るように同時に行える必要が年々高まっている。
要するに、『①トップスピードで疾走しつつ、②最短最善の状況判断に基づき、③最速のパスを、④最良の位置にコントロールする選手』でないと世界のトップクラブでは居場所が無くなるという末恐ろしい話である。


スピードの次の戦い

近年のプレミアなどを見ていると、トラップ、シンキングスピードは、(以前からサッカーを見ている私には)既に人間の反応の限界に到達してしまったか、限りなく近づいている気すらしてしまう。

強豪クラブ同士の対決では、4つのスピードを持つのは既に当然。次はそれを如何に『ハイプレッシャーの中、90分間持続させるか』という過酷極まりない戦いを繰り広げている。

岡田監督が、「呼吸商」というデータを導入するのはこの「後半の集中力」の削り合いに着目している証拠ではある。方向性は勿論間違っていないが、どれだけ優秀な体力、集中力、持続力を持ち合わせようと、大事なのはその使い方である。
完璧な90分間を生む事は誰にも出来ないし、もしそんな事が可能だとしたら、プラティニの言う通り、「全ての選手が完璧なプレイをしたらスコアは永遠に0対0」で、多分サッカーは退屈なものになってしまうだろう。

雑感として、日本代表は本当の強豪、即ちビッグネームの代表がコンディションとモチベーションを整えて臨んできた試合では、大概前半30分を持たずに先制される。これは不意を突かれたと言うより、この30分でまさに失点するほど「疲れさせられた」場合すらある。更に悪い事に、気持ちの入りすぎた日本が飛ばしすぎ、30分間で自滅してしまうパターンもある。
岡田監督がどれだけ工夫を重ね、選手の集中力消耗を軽減しようと、私にはこの30分をせいぜい45分に伸ばせたら素晴らしい成果だと思う。どちらにせよ前半中には失点することに違いは無い・・・・。そして強豪国相手に先制を許せば、それはほぼ敗北が決定したと言う事である。


専門家にならざるを得ない

本日の朝日新聞には稲本を語る記事があった。欧州に渡って8年。彼は守備のスペシャリストとして、1対1に磨きをかけチームの信頼を得ていると有った。
この記事を見て思ったのは、日本人は欧州では何かに特化しないと生き残れないという事実である。在日時から稲本は守備に活力のあるプレイヤーだったかも知れないが、それに増して攻撃での活躍も彼を印象付けていた。
しかし欧州の過酷な生存競争に晒される中、日本人のレベル(フィジカルや語学、国籍ハンデなど背景全てを含む)では外国人枠という立場も有ってか、「何でも屋」オールマイティにレベルの高い選手。としては生き残れないのである。

確か今期昇格したモンテディオ山形の小林 伸二監督が
『うちでは守備も攻撃も上手い選手は獲得できない。どちらかしか出来ない選手をうまく組み合わせてチームを作るのが監督の仕事』と語っていた。
言うなれば、欧州で生き残っている日本人選手はこのレベルである。
彼ら欧州組みのパフォーマンスには敬意を払っているし、スペシャリティを身につけ助っ人として居場所を確保していることには素直に頭が下がる。
だが自分が監督として起用する立場になると、相手次第で出したり引っ込めたり、使い所の難しい選手となり必ずしも万能ではない。
稲本なら中盤でのエースキラー、中村ならセンタリング、松井ならサイドをえぐる、中田浩二なら左サイドの抑え。彼らはチームを機能させるためのパーツに過ぎず、圧倒的に必要なチームの心臓部にはなれない。

稲本を機能させるには彼の攻撃面を補えるだけ能力の高いボランチが必要だし、中村にはボールポジッションを維持できるチーム総合力と優秀なFW、松井には巧みに彼を使いこなす指揮者か、強力にバックアップできるサイドバック、中田には一人でこじ上げられるウイングか、値段のつく運動量と攻撃性を持った右サイドバック、が必要だ。


欧州組の女房役が居ない

彼らが日本代表に入ったとき、最高のパフォーマンスを出すのには、各所属クラブ以上の仕事をして貰うのが一番だ。だが、それは他選手との相性や動機、コンディションなどがピタリと一致しなければ難しい奇跡と言うものである。まずはクラブチームで彼らがこなす役割と同一のものを代表で発揮できる。そんな環境整備に注力する方が現実的である。しかし、上の4人見てもらえば分かるが誰一人として共存しないのである。彼らを使う為に必須の対となるパーツは日本には無い。もし日本にセスクが居るならば稲本は存分に存在価値を発揮できるだろうし、アネルカやアデバヨールが居れば中村の左足は報われる。
夢のような高望みを止めにしても、日本国内の選手は大半が欧州サッカーの経験が無い。欧州サッカーを知らなければ必然的に欧州組がどんな特性のパーツなのか本当には分からない。これは致し方ないことではある。Jリーグとは必要なパーツ自体が異なるのである。
だが岡田監督は普段Jリーグという「別のサッカー」での役割をこなしている彼らから欧州組の相手役を選定せざるを得ない。4つのスピードに慣れる欧州組を用いるにしてもその生かし方となると、何とも苦しすぎるのである。これが欧州組が代表にフィットしない、コンディション以外の要因である。単純計算でフィールドプレイヤー10人の半分である5人を超える欧州組が生まれれば、欧州サッカーを基本とした日本代表を作れるかと言えば、この「パーツの相性」の問題がそれを阻んでしまう。欧州組が日本サッカーと宝(必ずしもそうではないが)と仮定すれば、その女房役の欠如。これが日本サッカーの課題の一つである。代表は宝の持ち腐れを起こし、監督は苦渋の決断で必要以上に国内組を優先せざるを得ない。オシムはチーム初動期間に敢えて欧州組を招聘せず、「欧州組は私の代表では新しいパーツになれ」と所属クラブ以外の生き残りを求めた。だかこの手法は欧州組の適応能力の潜在量を的確に把握した上での洗練された融合技術であり、全ての監督が行えるベーシックな芸当ではない。
目の前の岡田ジャパン。ここはフィジカルで最もハンデのあるFWに関しては諦め、『FWだけが足りないフランス』のように「FW不足のジャパン」と呼ばれる位置を(まずは)目指すとしても、中田や稲本の守備と、中村・松井の攻撃を繋ぐ選手が必要不可欠なのである。


遠藤は水を運ぶ人になれるのか

その現時点での最有力は以前当ブログで「攻撃センスなし」と書いたガンバ大阪の主役、遠藤選手である。
オシムに訳の分からぬFW起用をされている姿を見て、当時は『何故(センスの無い)遠藤を?』と思いもしたが、
Cロナウドがウイングとして地位を築いた後、更にゴールゲッターとして開花したように、オシムは年齢的には伸び白に疑問符の付く遠藤を慣れないFWで虐め抜くことで、資質を刺激していたような気がする。その甲斐あってかG大阪のFW不足か先のACLで遠藤はFWに近い役回りをこなしていた。何やらここ1・2年彼のポジションは徐々に上がっている気がする。献身的な運動量(を提供しようと言う姿勢)、流れを読む目、粘り強い精神力など彼が持つ能力は決して低くない。
ただPKに代表される動かないプレースタイル(観察眼の高さに頼りすぎるプレー)をオシムは咎めると言うか惜しんでいたのだと思う。「遠藤が動くようになれば使える」と考え、彼に黒子をさせようとプランしていたのではないだろうか。
使われる側と使う側の両方の立場を経験した彼こそ、欧州組に水を運ぶ選手となるに相応しいのかも知れない。
明日のクラブW杯、遠藤選手の活動の量と質に注目して観るのも面白い。

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posted by karakuti |07:55 | 日本サッカー | コメント(6) | トラックバック(0)
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2008年12月12日

アジア枠の続き

かなり久しぶりの更新となる。
ユーロ以降最近はサッカーをしっかりと見る余裕が無く、ながら見が多くて、色々と思うことは有るのだが、記事にするほどの動機を見出せないでいる。ただ情報だけは最低限仕入れつつ、試合も細々と月に1~6試合程度は見ているので多少は流れが見えているとは思う。
最近はJリーグ33・34節、入れ替え戦、昨日のクラブW杯初戦、今日のチェルシー・CFRクルイ戦、など見ながらアーセナル戦を少々。と少し多めに眺めた(私の感覚では観たまではいかない)ので書きたくなった。

今日は以前のアジア枠の記事の際、同時に執筆しておいた未公開のものを加筆しての場つなぎである。書いてから半年近く経過しているので内容に不備があるかもしれないが、ご容赦願いたい。

読んだ方が何かを考えるきっかけや刺激になれば幸いである。


アジア枠とEU枠の違い

ドイツW杯の敗因の分析や強豪国との様々な側面からの比較により、最近言われるようになった事柄がライバルの存在である。日本の場合は韓国が昔から宿敵とされて来たが、他のライバルとなると中々一つに絞れない。裏を返せば韓国以外はW杯予選で当たるだけの存在に今までは近かった。

これがヨーロッパでは各国の歴史的因縁、サッカー間の宿敵、伝統やら逸話やらとにかく密に交流がある。インフラや市場規模の差もさることながら、欧州とアジアが最も違う点はやはりサッカーに対する情熱だろう。EUでは他の面で隔たりが有ろうとも欧州各国のサッカー人気は大体一定水準を超え、EU枠の制定も十分スムーズに行える下地が出来上がっていたと言える。極端な話アジアでは、放って置いたら永遠にサッカーが一定の文化的地位を獲得しない国もあるだろう。

こうした背景と下積みを元にEU枠創設されボスマン判決以後欧州サッカーに無くてはならないものとして機能している。

更に付け加えるならば、戦後処理の差である。2回の世界大戦を乗り越え「苦痛に満ちた和解の道」を共に歩んできた成果も少なからずあるだろう。ドイツフランスの共通教科書など良い例となる。

この本は、両国の「教科書検定」を正式にパスし公立校でこれ一冊で歴史を教えられる本である。しかも両国版の違いは記載言語がドイツ語かフランス語かだけである。これを最も歴史認識の違いが激しい日本と中国間で実現している姿を想像すれば筆者の言う「苦痛に満ちた和解」の意味を読み取って頂けると思う。まだまだお互いに面と向かって戦争について話せるほどアジア諸国と日本の関係は修復されてはいない。

今回の記事に韓国・オーストラリアしか名前が挙がらず経済的に最も蜜月な関係で距離も近い中国が並んでいないのも、歴史認識とからめたくはないが、残念な事だ。この面ではサッカーのプロリーグ化と経済的リーダーシップを日本が取る事を(日本人にとっては)今だ良しとしない国すら有るかも知れない。EU枠などのシステムに目が行ってしまうが、欧州からまず何よりも先に見習うべきは大戦後の和解努力を始め、国同士の交流や歴史認識の見直しではないのか。そんな気さえしてしまう。謝罪をすれば終わり。ではなく、そこが全ての始まりである。もしかしたら同じクラブの日本人と中国人が同じ教科書で学んだ思い出を話題に盛り上がれる時代が来るかもしれない。というか、いつか筆者を含め以下の世代が来させて欲しいと疑いなく心から思う。

その他経済面でも、近年は中国からプレミア所属の選手も出始め躍進する中国経済の観光客と放映権マネー目当てでの獲得もあるとささやかれている。Jリーグも世界的金融危機の中、最も裕福な浦和レッズですらどうやら人件費削減を余儀なくされている様子。ここに至って中国など金銭的な面でも無視できる対象ではない。現行のアジア枠構想に最大貿易相手国である中国が入っていないのは何とも歯がゆいし、「何故?」という疑問で一杯である。


アジア枠の課題
続いてアジア枠の課題について言及してみたい。まず問題となるのが、各国の思惑が実は異なっていることである。今回のアジア枠の制定に関してもKリーグの事務総長キム・ウォンドンさんはKFAニュースのこの記事の中でこう語っている

『アジア枠制定は日韓中で同時でなければならず、Jだけが先行するというのはありえません。考えてみてください。もし先にJがアジア枠を設ければ、極端な話、韓国から18 名の選手がJ1に流れるわけです。J2も含めれば合計33名。一方的な流出は釣り合いが取れませんし、Kにとって国内リーグに空洞化を招く危険性もある。』

私はこの主張は最もな意見だと思う。アジア枠の理念にはアジア全体のサッカー界の発展と交流、さらには娯楽としてのサッカーの充実、スポーツを通しての国民生活の質の向上まで影響を与えうる代物である。
導入時期に関して意見の一致を見ないまま、他国と余計なしこりを残しながら始めては、本末転倒。有益な交流どころかJリーグによる一方的なスターの奪取になってしまう。いずれはクラブ予算規模の違いから結果的にJリーグがアジアの中心になって欲しいし、くれるはずだとも思う。その為にアジア枠は日本サッカーにとって良いことだ。とは思うが、日本の一人勝ちでは依然としてライバルが足りず、世界に勝てる力は磨けないままである。良く引き合いに出される小柄な体格の国メキシコもプリメーラ・ディビシオンでは北中米カリブ海と地理的にも近い中南米から有力選手をかき集め、W杯ではここ4大会連続ベスト16、決勝トーナメント進出を果たしているが中南米は世界的なサッカー選手輸出国が多数有り一方的な搾取とはなり得ないのであるから、日本と韓国とは事情が違う。ましてや比較的条件の近い韓国、オーストラリア程度との連携で躓いていては、それを観たアジア諸国のアジア枠への参加に悪影響が出かねない。ハードルを上げて申し訳ないが初めてだからこそ、アジア枠は、参加国が「共に発展する利益ある構想」として成功して見せなければならないのである。その為には時間については妥協しようではないか。私の死後になろうともより良くアジアと日本のサッカーが育つ方向へ一歩づつ向かえば良いのである。ここは急いでアジアの選手をかき集めるよりも、各国共に発展できる方法を模索する必要を感じている。

次の問題は、アジア各国の多様性である。EUとの主な違いでも、時差、距離、気候、文化、経済基盤、リーグ開催時期、等の様々な違いがある。
中でも地理的隔たりは、Jクラブも総じてリーグ・ACL予選の両立に苦しんでおり、筆者が思うに欧州組の代表アジア予選参加が乏しいのもこの要因が含まれている気がする。中東など地理的に欧州からの方が近く、先日もバーレーン戦など欧州組をこれ幸いと招集しテストしていた。特に顕著なのが西アジア(中東諸国など)と東アジア(日本・中国・韓国など)の移動距離である。この「横に長いアジア」は例えば日本サウジ間の対戦では標準的な世界地図の経線で単純に経線6~7本分の直線移動距離がある。地球を横移動なので当然時差も100%近く変わってくる。日本-シリア 片道15時間日本-オーストラリア 片道18時間(時差は少ない)
筆者が知る話ではACLをせめて西アジア・東アジアに分け、両方の優勝者をACL決勝で戦わせる形で移動負担の軽減と、決勝戦に華を持たせてはどうか。という意見があった。誰が決めたか知らないアジアという形に捕らわれず、日本サッカー界にとってプラスの形に変えて行こう。という積極的な意見だ。筆者も基本的に悪くないと思う。今回のアジア枠発表も当然ではあるがこの「東アジア」の国々である韓国・オーストラリアだけが上がったのはこの側面もある。

今回発表のアジア枠も比較的地理的にも経済的にも近隣国で文化もアメリカ寄りの国、そう見ると非常に小さく、言うなれば「アジア枠。但しアメリカ派金持ち国限定のね」である(なんてこった)。ただ当分は地理的に近い東アジア諸国から創設していく形が良いだろう。

アジアには今だプロリーグの無い国、又は有っても機能が弱い国も多い。そう言った国にプロリーグを作り、さらにその国のプロリーグからJリーグへ、また日本人がその国のプロリーグへ。相互の選手移籍が実現し初めて、アジア枠の理念である”アジア全体の底上げ”と”日本の世界ランキングの上昇”が見えて来る。要は日本サッカー協会は自分だけの都合でアジア枠の必要性に気が付いた後、初めてアジア各国に目を向けようやく気が付いたのだ。「EU枠を真似する前にアジアにJリーグのようなプロサッカーリーグを増やさねばならない。」事に。そこで当然壁となるのが各国の

  • 1.資金

  • 2.サッカー人気

  • 3.インフラ

の余りのギャップである。一見プロリーグが存在する国でも規模や内容ではとてもプロと言えないものだって存在するだろう。


今後の展望

要は各国有力者に“金”をどうやって出す気にさせるかなのである。その方法を考えるのに手っ取り早いのが、自分に置き換えて考える事ではないか。読者の方々も、年に何回かの週末には贅沢ながら一消費者として好きな商品を買われるだろう。同じようにアジア各国の有力者、サッカーファンにスタジアムを含めたインフラ整備など莫大な金額の投資をさせる気になるだけプロリーグ化を「魅力的に見える商品」に仕立て上げなくてはならない。その意味から少ない予算や労力の中で大きなものにして行くには様々な工夫が必要ではあるが、上の項目”アジア枠賛成の理由”でも出てきた「指導者の斡旋」も簡単に例えると、「このPCを購入頂ければご自宅まで『無料セットアップ』に伺います。」と売り込む事で敷居を低くするアピールだと思っていただければ分かりやすいかと思う。

今週引退した川渕元チェアマンにも人生の最後の仕事として、日本サッカーではなく今度はアジアサッカーの為に、アジア枠普及の先頭に立って貰うのも悪くない。彼はJリーグ創始者として上記の理由で各国から尊敬を集められるだろうし、筆者から見ると「理念と夢で金を出させる名人」である。こう言った人材中々今の日本には稀有である。
更にアジア枠創設の暁には、まず手始めにEU・EFTAのように西アジアを刺激して、日本を中心とした「東アジア枠」を見せびらかし、対抗心に火をつけて西アジア枠の制定を働きかけるのが良いかも知れない。勿論将来的には2つを融合するのが今の所目標ではある。どちらにせよ小規模でもアジア枠を設ける事ができれば枠そのものが「プロリーグ化」を始めサッカーの更なる普及をを売る際の商品になり得る。使い方は勿論、「あなたの国の子もJリーグに」である。

筆者はこの程度しか思いつかないが他にも良いアイデアがあれば是非書き込んで頂きたい。ではまた間が空いてしまうかもしれないが別の話題で更新してみたい。。

後は枠数を何人にするかだが、筆者は無制限で構わないと思う。プレミアでもイングランド国籍の選手が追いやられてはいるが例えばマンUでは12名である。日本人の観客が最も多い以上無制限でもこれほど増えないのではないかと予想する。それよりも制限しなければならないのは人件費減らしを目的とした不当な低賃金での雇用である。アジア枠の最低年俸は日本人選手より引き上げて然るべきだろう。枠そのものよりも賃金規制でコントロールする方が良い外国人を多く集められ、良い刺激になるだろう。

筆者がここで書いたような形で、アジア枠全般が上手く運ぶとは到底思えない方も居るだろう。多分それは正しい。様々な予期せぬ障害が当然発生するだろうし、利点も蓋を開ければ懸念材料にすらなるかも知れない。所詮EU枠の真似。それではオリジナルは超えられない。しかし筆者にとってはJリーグが出来てもレベルの停滞が叫ばれる昨今、現状のままでは超えるどころか、サッカー先進国との差は開いていくのではと憂いている・・・・。

posted by karakuti |06:05 | アジア枠 | コメント(8) | トラックバック(0)
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