2008年07月25日

[西川周作を守ろう]第1回 モンスターペアレントが日本サッカーをダメにする

西川周作を守ろう]第1回(全3回予定)
モンスターペアレントが日本サッカーをダメにする

子供に有害と叫ぶ人が有害だ

まず故意発言問題の整理をしておく。
主な対象となるのは「子供」に有害と主張する立場の方々である。そう、筆者が一番嫌いな方々だ。誤解を生むので限定しておくが、彼らのサッカーや子供を思う気持ちや愛情には無論敬意を持っている。また、今回の事例が一人の子供にも害が無いとも言わない。だが、忘れてはいけないのは有害を主張する方々も筆者もお互いに「子供当事者」ではなく第三者に過ぎない点だ。仮に今の子供達自身が将来大人になった時、「あのときの西川選手は模範となるよう罰則をもっと強くして欲しかった」と言うかも知れない。だが現状では「大人」が、「他者」である「子供」に有害で迷惑すると代弁して言っているに過ぎない。筆者の知る限り迷惑したと子供は発言していない。また突き詰めれば子供に有害だと言う方々は自分の「個人的教育方針への侵害」であるから(西川選手は)罰則の対象だと言う主張だ。それならば逆に、上記の主張をする大人が世にはばかる事が、「筆者の教育方針への侵害」だと主張したい。
子供は分かっていると思う。彼らは大人が思うほどバカではないし、幾ら大人間での悪意を規制した所で子供同士の悪意(虐め等)をどれだけ周囲が気付けているのかと言う事だ。子供が規制して欲しい悪意はもっと他にある。と、(第三者の)筆者は思う。上記の虐め、過度な学歴社会、連日報道される不祥事、汚職、偽装、責任転嫁。子供の前で楽しくなさそうに生活する「大人の見本」たる親の姿、そして何よりも将来に希望を持てない社会作り。それらをまず規制し罰するべきではないのか。
言いたいことを言う自由が(少なくとも筆者には)保証されている。だが西川選手にはJリーガーという立場上、今回の発言を制限すべき一線は当然ある。だが今回の処分は行き過ぎでは無いのか。厳しすぎる風潮や雰囲気こそ、子供たちの希望や自由ある将来に「有害」なのではないか。筆者はむしろ子供達が、今回の事柄で、「社会は言いたい事を言うと(悪意が無くとも)罰せられる」と社会の閉塞感を感じる可能性もある。


一方的な処罰より考えるきっかけとして欲しい

こんな意見もあるだろう。

「子供たちは善悪を判断する能力がまだ無いから西川選手に罰則を与え見本とせねばならない」

だが、コーチの指導を熱心に聞く素材が伸びるとは限らない。大切なのは物事を自分で考え、消化して実行する能力ではないのか。大人は、ただこう子供に聞けば良いのだ。

「今回の西川選手の行為をどう思う?」

こうやって子供に考えるきっかけを与え、自分で考え判断する力を育てる以外、大人に何が出来るというのか?。大人が一方的に罰し、「悪い事をするとああなる」と見せしめるより、何倍も子供の為になるのではないか。罰則を求める親たちや子供の周辺の方には、子供の「考える力」を育てる責任を放棄していないか逆に問いたい。未来の素晴らしい日本人サッカー選手を期待する筆者として、今の子供の「考える力」育成は外せない関心事である。

筆者は本当の所、子供たちには、プロサッカー選手はチームのために(時に当人がやりたくなかろうと)累積消化目的の警告行為すら求められる(可能性がある)ことを学んで欲しい。今回の行為だって監督が西川選手に指示をしていない保証はない。彼がそれは言わなかっただけかも知れない。むしろ私としては監督には「機会があれば(カード)貰って消化しておけ」と言っていて欲しい。それでこそ全力でチームを勝利に導く指揮官に相応しい(この辺はサッカー好みの問題だが)。筆者の好きなダウンタウンの松本氏も著作内で語っていたが、松本氏の教育上「有害」な行為に負けるほど、親の教育力が弱い証拠ではないのか。極論すれば、親の教育力の無さをツケを西川選手一人払わされている形とも見える(個人的には言いすぎだけど(笑))。過保護な親に、資源たる才能や社会の自由が必要以上に奪われるのは出来ればもう見たくはない。


本当の被害者は「何となく悪い気持ちになった」人達

また、子供を持たない方々(又は子供の教育に関心の無い方々)が規制を求める背景には、上記の大人それぞれが「自分が言いたい事を言えていないのに人様が言っているのは許せない」という日頃の蓄積したストレスなどの理不尽な「悪意」を多少なりとも感じる。そこで同じようにサッカーファンの方に尋ねたい。この社会全体の閉塞感は次世代の才能を伸ばすのに「有害」ではないのだろうか?。今回の処分を通して「正直何が悪いのか分からない」人も居るだろう。処分から「自分が悪いと思わない行いでも罰せられる可能性がある」と漠然とした社会に対する悪いイメージを少なからず持つだろう。ダシに使われる子供達よりも、そんな「何となく悪い気持ちになった」人達こそ実は被害者なのではないか。
筆者は才能ある人々(ここではJリーガー)には一般大衆よりも自由を与えて良いと思う。金銭、名誉、注目、賞賛、羨望。引き換えに彼らは大衆の期待というプレッシャー・ファンによるプライベートへの侵害・熾烈なポジション争いなど「有名税」を常に背負っている。自分がコンビニすら気軽に行けない程、(自分の知らない一方的な)知人に囲まれた生活など筆者なら送りたくない。勿論プロとして必要な最低限の常識というものは当然ある。今回の西川選手がそれを欠いていたという批判が出ることは否めない(←筆者的に苦しい言い回し)。だが、束縛は最小限にして、彼らの「仕事」に専念させた方が結果的に良いプレーを見て得をするのは大衆ではないのか。誰が何と言おうと、彼らは「特別」なのである。才能への敬意を見る側は忘れてはならない。子供たちも自由だけど責任もこなす、そんな格好いい大人としてのサッカー選手に憧れ、自らもサッカー選手を目指す動機になってきたのではないのか。

※以前の記事過去パンツを盗んだ奴は一人もWカップに出てないのか?の中でも「才能のあるものは麻薬を初めとした禁止薬物(ドーピング)にどうしても近い位置に居てしまう。」と書かせて頂いている。(興味があればご一読下さい。)

次回は1~2週間後の予定です


おまけ

下記のニュースなどを見るに昨今の保護者たちは少し行き過ぎている気がする。興味があればどうぞ

軽症でも安易に救急外来「コンビニ受診」減らそう

「白雪姫が25人」日本のモンスターペアレントを英タイムズ紙が紹介、欧米人の反応は…

英タイムズ紙原文


ブログの立場と執筆動機

西川周作選手が故意による警告受けたと公言した問題に触れてみたい。
既にサッカー協会の処分やクラブ側の対応も固まり、一旦決着を見た段階である。他のブロガーさん達も他の話題に移っている段階だが、逆にサッカーファンの意見は出尽くした時期とも言え今回の出来事を通して、透けて見えてくるファン側の対応にものを言いたい。

まず目に付くサイトには回ってみて色々な意見を読ませて頂いた。要約すると大体次のどれかに当てはめて良いかと思う。

  • 1.プレー自体は悪くない、公言したのが悪い

  • 2.プレー自体も公言したのも悪くない、行き過ぎた罰則は悪い

  • 3.プレー自体は悪くない、公言したのが悪い。だが西川選手を応援していく。

どの意見も一理あり、それぞれサッカーや西川選手に愛情を持って書かれている。だが、とりあえず数が少ない。サッカー全般のためにもっと色々な意見が有っていいのではないか。折角自由に書けるブログである。むしろもっと色んな意見が無いといけない。と勝手に使命感を感じ盛り上がった所で最近名前負けしている「激辛批評」というブログタイトルに合わせて次の意見をぶつけたいと思う。

「プレー自体は良い、公言も良い。擁護・罰則するのは普通。批判する方が悪い。」

若干思ってもいない脚色を載せ激辛風味を上乗せしているのは分かりやすくする為である(苦笑)。

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posted by karakuti |21:00 | 選手を守る | コメント(8) | トラックバック(0)
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2008年07月11日

アジア枠あなたは反対?賛成?

アジア枠が早ければ来年度より実現しそうな運びとなっている。そこで今日はアジア枠の創設について議論してみたい。

アジア枠創設を検討 Jリーグで来季導入目指す

長いですがざっと目を通して貰えるとアジア枠の現状が理解できるかと思います。間違いもあるかも知れません(苦笑)。


アジア枠反対派の方へ

ここからは賛成派の筆者が味方大量増殖を目論み説得力ある(←ウソ)見解を披露したい。

まず反対派で最も多い意見は、「アジア枠など制定したら金目当ての外国人やらW杯のスパイやらにJリーグが食い潰されデメリットの方が多い。」
と言ったものだろう。筆者も同感である(笑)。当然そう言った現象が起こり得るしそれ以上の悪質な、例えば先の茂原選手のような犯罪の他、様々な面に悪影響があるかも知れない。

ただサッカーに限った事を言えば、スパイも外国人も長期的には日本サッカーの為になる。例えば日本代表レベルに成長した田中達也はエメルソンの影響を身近で受けプレーを磨いた。更にアジアレベルの国に丸裸にされた位で敗退する力ではW杯ベスト8へは勝ち抜けない。ベスト8の階段の前に研究されつくしたアジア勢との対戦は丁度良いレベルだ。他にもアジアには素晴らしい選手は沢山存在するし、今後更に増えてくる。彼らを招き共に練習できることは日本人選手にとって大きなプラスである。私としては以前推したサウジのキーパーに他強豪リーグから誘いが無ければ是非来て欲しい。


アジア枠賛成の理由

さて、簡単な説明をした所で筆者が賛成する本題に入ってみたい。
内容は下記の5つを順に説明している。

アジア枠の賛成理由

  • 1.15歳以上の若手育成にも良い影響が期待できる

  • 2.日本指導陣の雇用先と向上

  • 3.アジア諸国のプロリーグ増加に向け、アジア枠を通してJリーグを知ってもらう

  • 4.Jリーグをアジアサッカーのショーウィンドウ化し欧州へのパイプを増やす

  • 5.日本人選手の再就職先や異なるサッカー文化で開花する選手が期待できる


日本サッカー界は近年ようやく「強くなるためには韓国の他にも切磋琢磨する相手が必要だ」という事に気が付いた段階である。。

今までは「アジア各国は弱い方が日本がW杯に行き易くなる」と言われる存在でしかなかったアジアの国々。「自分の贔屓のチームの外国人が引き抜かれる」憎たらしいだけのカタール。しかしもしかしたら昨年のG大阪、アウベスのカタールリーグ移籍も長期的には日本サッカーにとって「アジアにJリーグから引き抜ける基盤と財力を持つプロリーグが出来たのか」と喜べる出来事かも知れない。

例えばプロリーグの無い国の15歳以下の選手を、筆者の嫌いなメッシのように日本のスカウトがアジア枠としての商品価値を見込んで連れて来るかも知れないのである。そんな選手が国の代表レベルになれば当然、その国では話題になりサッカー人気が高まるだろう。カズも話していたが、「親が子にサッカーの道を歩ませる気になるかどうか」がサッカー界の将来に一番大事なのではないか。プロリーグを創設できない国の代替の役割をJリーグが担えれば、「将来はJリーガーになりたい。」とアジアの子供達がサッカー選手を志せるようになるかも知れない。

15歳前後の育成成功例を増やせば、例えばユースで日本の各年代トップレベルの子ですら、所属クラブではアジア枠の子の控えという事態すら有りうる。同年代の実力者は得がたい何よりの見本となるだろう。「世界には君達より上手い子が沢山居る」と指導陣どれだけ言うよりも「自分がアジアの子の控え」の方がずっと効く。

更に重要なのは指導陣の交流である。日本人コーチや監督志望の方々は欧州へ留学や研修されているが、いざ実践の場は欧州は元より、Jリーグも雇用規模は決して多くない。まして「自分のやりたい指導」をさせてくれるクラブなど更に望めない存在だろう。だが、アジア全体でプロリーグ数が増加すれば当然指導陣も不足する。この面で日本サッカー協会は“金”や“物”は無くとも“人”は出すという提案を加えるのはどうだろうか。要は「貴国でプロリーグ化を進めてくれるなら指導する日本人を斡旋しますよ」という話である。これなら少ない予算でもアジア各国のレベル向上に一役買えるかも知れないし、買い手となる国にとってもプロリーグ化が少しは買い易くなるはずである。日本側の得るものは、

1日本文化を深く理解した。
2実践で指導経験を摘んだ。
3アジア他国から助っ人を呼べる。
4外国人のケアにも長けた。

即戦力の指導陣である。これが将来の日本サッカーに害になるはずが無い。

この辺の話はまた別のネタとして取ってあるのだが、少しだけ例として乗せてみたい。
日本にとって実質短期的な利益があるのはこちらの側面ではないかと思っている。

EUでは監督もEU内で雇用しているが、日本では欧州と南米が主でアジア出身監督は非常に少ないアジア枠とは選手のみならず監督を初めとしたスタッフの出身国比率も変革する意味も持つものが理想である。そういやセパハンの監督切れ者だったなぁ。ってユーゴ系か・・・。

アジア枠は助っ人外国人枠だけではなく、育成部門、指導陣まで交流が広がってこそ真価を発揮するのではないか。

アジア諸国からのJリーグ

しかし蓋を開けてみるとアジア枠の理念実現には中々障害が大きい。思いつく範囲でこの位だ。

  • 1.アジア枠を作ってもサッカーレベルが低すぎて日本の刺激にすらならない国が多い

  • 2.ジャパンマネー目当てのアジア人にJリーグ枠を食い潰され、肝心な国内日本人選手の出場機会が犠牲になる

  • 3.アジアにはプロリーグを持つ国が少なく、逆に日本人が挑戦できるリーグが無い

  • 4.日本国内でも反対意見があるようにアジア各国の事情も賛成一色ではない(資金的問題が大きいのか)

他にもあれば是非コメント欄で書き込み頂きたい。

こんな各国事情の中、Jリーグはアジアでは羨望の的、各国に手本とされ目標とされる
「黒字で」「地域に根付いた」「企業色の少ない」「全国規模で」「チーム数の多い」純然たる「プロリーグ」である。しかもここ20年という短期間で成長させた点が「我が国でも」と希望を与えるらしい。黒字の所など特に実際はともかく(苦笑)、少なくともアジア各国のサッカー関係者にはJリーグはそう見える。選手の年俸やスタッフの待遇もカタールの王族やオイルマネー資本のクラブなどを除けば多分アジア一だろう。例えば韓国代表キャプテンでオールスターでも1位に選ばれるほどの選手が優勝争いも出来ないレベルのチームに出稼ぎに来ている所からも見て取れる。

アジア枠参加の条件としてプロリーグ化を済ませた国のみをに制定するかが確か課題となっていたと思う。日本人選手の受け皿としての機能を考えたら当然の事である。だが、多くの国がいきなりプロリーグ創設まではたどり着けないのが現状だろう。そこで、日本側だけがアジア国籍選手を受け入れる形でまずアジア枠を制定し、そこでの交流を通しJリーグに触れ合う中から、徐々にプロリーグの魅力をアジア各国に浸透させていくのはどうだろうか。長い目で見たら両国間のサッカーにとって十二分利益があるのではないか。その国のスター選手がJリーグでプレーする以上、放送権なども(安く設定すれば)売り先が増える。Jリーグの放送をTVで視聴した子供達がアジア各国でJリーガーを見る姿も夢ではない。「良い選手は皆Jリーグに行く」子供がそんなイメージを持ってくれれば筆者にとって何よりの長期的財産である。「アジア各国代表選手は自国所属よりJリーグ所属が多い」という状態を目指し、Jリーグをアジアのプレミアリーグ化を目指す。そんなビジョンを見越して筆者はアジア枠に賛成である。ただ、そこまでやっても浦和レッズの何倍もの資金を持つ巨大クラブが犇く欧州にはアフリカンパワーを始めトップレベルの選手は皆引き抜かれる。筆者は当面はその“引き抜かれる”状態に持ち込む事が目標だと思える。“アジアサッカーのショーウィンドウ”Jリーグがそう呼ばれれば必然的にアジア担当のスカウトはJリーグを優先的にチェックし、日本人の欧州移籍も増加する。しくじるとイングランドと同じようにアジアカップの予選で敗退するかも知れないけど(苦笑)。賛否両論あるかもしれないがJリーグをアジアのプレミア化は日本サッカー向上の一つの手段である。

最後に筆者としてはおまけ程度に考えているだけだが、日本人選手の活躍の場が国外にも広がる事である。当然ベテランの再就職先としてもカウントできるが、それ以外にも以前の松井の記事でも書いたように、異なるサッカー文化により開花する才能が有る。日本でもKリーグを経験ブラジル勢を連れて来たりしている。日本人選手もレベルは落ちようとも海外で外国人枠として戦うだけでも、置かれる立場の違いから伸びる素材があるだろう。

皆さんはどう思われるだろうか?

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posted by karakuti |20:07 | アジア枠 | コメント(8) | トラックバック(0)
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2008年07月06日

NHKスポーツ大陸 約束された奇跡アトランタ五輪サッカーブラジル撃破を見て

今日は先日放送された番組の内容を紹介したい。
といっても12年程前の試合で最新情報とは程遠い。
筆者は当時の記憶がおぼろげに蘇ってくるが読者の方の中にはリアルタイムでご存じない方も居られるかも知れない。何とも月日が経つのは速いものである。

ご覧になっていない方を対象に番組を見ながらナレーションを文字起ししてみた。
予め情報として、

  • 西野監督と対立しブラジル戦後スタメンを外された中田との話や、
  • 先日日本を破ったバーレーン戦などをご存知の方ならばある程度お楽しみ頂けると思う。
  • 又、日本サッカーのストロングポイントとしてスカウティングを見てみる

なども面白い。


ドーハの悲劇

ハンスオフト日本代表監督はドーハでほぼ確実と思われたW杯への切符を逃した。
当時、スカウティングスタッフとして帯同していたのが山本昌邦、西野 朗の両者であった。
しかしドーハの悲劇を味わった西野は逆に
「スカウティングをしてこの結果(予選敗退)スカウティングなしでは勝負にすらならなかった」
とその重要性を痛感したという。


アトランタ五輪

そうして向かえたアトランタ五輪、西野は監督の立場で山本昌邦はスタッフとして大会に参加。
アジア予選、中東各国は徹底した情報封鎖で対戦国のスタイルすら不明。
初の本格的なスカウティングの指揮を執ったのは加藤久(当時の強化委員長)
今の日本サッカー協会を実質的に取り仕切る小野剛も強化委員としてスカウティングに携わっている。

「中東代表団のバスを追跡したら動物園に行かれた」などの逸話も生み出したスカウティングは、この話からも読み取れる通り多くの無駄足を踏みながらの情報収集だった。反面、日本の情報は相手側に筒抜け。Jリーグからいくらでも収集することが出来る。


サウジアラビア戦

大会最終予選では「世界に行くんだ」という共通の目標を元に、イラク・オマーン・UAEとの連戦を2勝1分で凌ぎ、準決勝(どういうシステムだろうか?)で当時中東最強の呼び声高かったサウジアラビアを迎えた。攻撃のエースはアル・ドサリ。
スカウティング陣は彼の得意なプレーをビデオに編集し、日本のDF陣に叩き込んだ。対する日本のエースは前園。

西野はポジションごとの両チームの戦力を徹底比較し、「この試合互いにエースを止めたチームが勝つ」と語った。そして当時の日本としては異例の措置に出る。アルドサリを封じる為に攻撃枚数を1枚減らし白井博幸をマンマークで起用したのだ。

エース対決を先に制したのは前半4分にゴールを上げた前園。対するアルドサリにはスカウティングで導き出した結論通り、執拗に白井が纏わり付く。前半は狙い通り1-0で終了。


残り45分で25年ぶりの五輪本戦という状況で西野監督、前園の見方は一致していた。
「守りに入ったらやられる」。
もう一点を取りにいくサッカーを展開し後半12分、またしても前園が2点目を記録。しかし逆に日本選手は世界への重圧を感じ始め後半32分、とうとうサウジに1点返される。その後サウジのセットプレイ、同点弾となる強烈なヘッドをゴールポストで辛うじて弾いたのは若き日の中田英寿。その後もサウジの猛攻は絶え間なく続き試合展開は一方的なワンサイドゲーム。全員が必死に凌ぎ歴史的なアジア突破を果たした。


筆者の回想(試合は見たか思い出せず)

もし前半0-1の逆の結果で折り返していたら、先日の日本VSバーレーン戦のように消極的、弱腰采配と揶揄される事態となりかねなかった。番組中西野は「攻撃の脅威で言えば後のブラジルより上。サウジの攻撃は本当に成熟して怖かった」と語っていた。結果を分ける神一重の判断だが、番組を見ていたら「当時の実力では日本よりサウジが上だったかもしれない」と思えてきた。“サウジの攻撃がエースに拠る弱点”を突く以外もしかしたら勝つ道はなかったのかも知れない。
マイアミの奇跡の知名度には遠く及ばないが日本サッカー史における功績の側面から見ると若手の海外移籍志望を芽生えさせる場としても経験をつめる五輪出場の道を開いたアジア予選突破こそが賞賛に値する成果と思える。
そんな偉業の裏に日本で初めて行われた本格的なスカウティングがあった。(何やら日本を褒めると自画自賛しているようで筆者が恥ずかしい気分になるのは内緒である。)


ブラジル戦

代表メンバー

そして掴んだ五輪本戦の切符、神の悪戯か対戦相手は当時五輪最強ともいえるブラジル、今話題のOAを戦力で劣る日本が使わないという決断を当時の指導陣は下した。五輪前に行われた世界選抜VSブラジル(多分五輪代表)を視察した西野はあまりのレベルの高さに「今日の情報は選手に与えない」と判断せざるを得なかったと言う。その日からブラジルの穴を探すスカウティングを粛々と開始。
しかしスタメンは当然の事ながら、控えまで調査し数百時間を費やしても弱点の影すら見えない。更にOA枠に当時ブラジル最高の選手と言われたリバウドが召集されることになった。
しかしこれが逆に日本には攻略の糸口を掴むきっかけとなった。
スカウティング陣がリバウドは右足でプレーさせれば怖くないことを発見。裏に走るベベット、破壊力抜群のキック力を持つロベルトカルロス、等への対策を練習メニューに取り込み、GK川口を始めとした選手に反映させていった。実際試合当日の川口が神がかり的セーブを連発できたのは、このスカウティングに基づくブラジル攻撃陣への対策が糧となり生まれたものかもしれない。

対ブラジルの戦術としてスカウティングから導き出した答えはマンツーマンディフェンス。各自が責任を持ち止めると言うものだった。
当然ブラジルがフリーランニングでマークを外せば全ては水の泡と化す。
五輪前の練習試合からブラジル戦を想定し徹底して攻撃の枚数を削った西野に対し、前園、城、中田など攻撃陣は当然猛反発。「ボールを獲れない守備では攻撃にならない」と口論となる。協会関係者の中にも「(そんな繊細な戦い方をしなくとも)胸を借りるつもりで真っ向勝負で負けても良いのではないか」という声もあった。
しかし西野はフランスW杯に繋げる為にとことん勝利に拘ることに決め、「選手に1試合でも多く経験させる」為の超現実的な戦い方を選んだ。

迎えた試合当日1996.7.21。
前半開始から日本選手全員が守備に奔走し、懸命なマンツーマンの守備がブラジルの突破を防ぐ。
選手たちはスカウティング通りに守り続け何とか前半を0-0で折り返す。

また実は、唯一日本が狙っていた攻撃が左サイドからゴール前への単純なクロスを繰り返す事だった。
この戦術の元となったのが当時の強化委員の一人、松永英機が掴んできた下記の情報だった。
本大会前ブラジルを3試合スカウティングした結果守備が不安定であり、
若手のジーダとOAの右CBアウダイールの連携は未成熟。
更に左CBのロナウドは右(日本の左サイド)からのクロスの際マーク対象を見失う弱点があることを着実なスカウティングで掴んでいた。

そして生まれた得点は日本が左から挙げたクロスをアウダイールとジーダの隙間へ落とし連携ミスを誘い、止めはCBロナウドが見失った伊東が決めた。
正に狙い通りの形から生まれるべくして生まれた得点。
OA枠による未成熟な連携、DF(ロナウド)の癖、それが合わさるほんの僅かな弱点を何度も何度も突き、結果的に物にした。
お手元に試合映像がある方はこの点を注意しながら再度視聴してみるのも面白いだろう。番組中の僅かに紹介されたVTRでも日本が執拗に左サイドからクロスを上げ続けていた。


その後

その後の日本はそれまでの25年間が嘘だったように、五輪への連続出場を続けている。そして今年北京五輪を控えている。
前日本代表監督のイビチャ・オシムはこう語っている
「日本のスカウティング技術は正確で素晴らしい」
自らの指導キャリアをスカウティングから始めたオシムならではの重みある言葉である。


その他関連情報
山本昌邦氏の週刊サッカーダイジェストの連載コラム確か「人間力」などでもこの話題に触れた事がある内容はバックナンバーとなる。
そのた直接関係は無いが「FOOTBALL WORLD アテネ経由ドイツ行き」というコラムなども当時のスカウティングスタッフとしての経験から形成された指導者の片鱗を垣間見ることが出来、脈々と日本サッカー界に受け継がれる財産とも言うべきノウハウを知ることが出来る。
筆者の文とは異なり、読みやすく文章力のある方である。

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posted by karakuti |04:03 | 日本サッカー | コメント(7) | トラックバック(0)
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