2008年07月06日
NHKスポーツ大陸 約束された奇跡アトランタ五輪サッカーブラジル撃破を見て
今日は先日放送された番組の内容を紹介したい。 といっても12年程前の試合で最新情報とは程遠い。 筆者は当時の記憶がおぼろげに蘇ってくるが読者の方の中にはリアルタイムでご存じない方も居られるかも知れない。何とも月日が経つのは速いものである。 ご覧になっていない方を対象に番組を見ながらナレーションを文字起ししてみた。 予め情報として、
- 西野監督と対立しブラジル戦後スタメンを外された中田との話や、
- 先日日本を破ったバーレーン戦などをご存知の方ならばある程度お楽しみ頂けると思う。
- 又、日本サッカーのストロングポイントとしてスカウティングを見てみる
なども面白い。
ドーハの悲劇
ハンスオフト日本代表監督はドーハでほぼ確実と思われたW杯への切符を逃した。
当時、スカウティングスタッフとして帯同していたのが山本昌邦、西野 朗の両者であった。
しかしドーハの悲劇を味わった西野は逆に
「スカウティングをしてこの結果(予選敗退)スカウティングなしでは勝負にすらならなかった」
とその重要性を痛感したという。
アトランタ五輪
そうして向かえたアトランタ五輪、西野は監督の立場で山本昌邦はスタッフとして大会に参加。
アジア予選、中東各国は徹底した情報封鎖で対戦国のスタイルすら不明。
初の本格的なスカウティングの指揮を執ったのは加藤久(当時の強化委員長)
今の日本サッカー協会を実質的に取り仕切る小野剛も強化委員としてスカウティングに携わっている。
「中東代表団のバスを追跡したら動物園に行かれた」などの逸話も生み出したスカウティングは、この話からも読み取れる通り多くの無駄足を踏みながらの情報収集だった。反面、日本の情報は相手側に筒抜け。Jリーグからいくらでも収集することが出来る。
サウジアラビア戦 大会最終予選では「世界に行くんだ」という共通の目標を元に、イラク・オマーン・UAEとの連戦を2勝1分で凌ぎ、準決勝(どういうシステムだろうか?)で当時中東最強の呼び声高かったサウジアラビアを迎えた。攻撃のエースはアル・ドサリ。 スカウティング陣は彼の得意なプレーをビデオに編集し、日本のDF陣に叩き込んだ。対する日本のエースは前園。 西野はポジションごとの両チームの戦力を徹底比較し、「この試合互いにエースを止めたチームが勝つ」と語った。そして当時の日本としては異例の措置に出る。アルドサリを封じる為に攻撃枚数を1枚減らし白井博幸をマンマークで起用したのだ。 エース対決を先に制したのは前半4分にゴールを上げた前園。対するアルドサリにはスカウティングで導き出した結論通り、執拗に白井が纏わり付く。前半は狙い通り1-0で終了。 残り45分で25年ぶりの五輪本戦という状況で西野監督、前園の見方は一致していた。 「守りに入ったらやられる」。 もう一点を取りにいくサッカーを展開し後半12分、またしても前園が2点目を記録。しかし逆に日本選手は世界への重圧を感じ始め後半32分、とうとうサウジに1点返される。その後サウジのセットプレイ、同点弾となる強烈なヘッドをゴールポストで辛うじて弾いたのは若き日の中田英寿。その後もサウジの猛攻は絶え間なく続き試合展開は一方的なワンサイドゲーム。全員が必死に凌ぎ歴史的なアジア突破を果たした。
筆者の回想(試合は見たか思い出せず) もし前半0-1の逆の結果で折り返していたら、先日の日本VSバーレーン戦のように消極的、弱腰采配と揶揄される事態となりかねなかった。番組中西野は「攻撃の脅威で言えば後のブラジルより上。サウジの攻撃は本当に成熟して怖かった」と語っていた。結果を分ける神一重の判断だが、番組を見ていたら「当時の実力では日本よりサウジが上だったかもしれない」と思えてきた。“サウジの攻撃がエースに拠る弱点”を突く以外もしかしたら勝つ道はなかったのかも知れない。 マイアミの奇跡の知名度には遠く及ばないが日本サッカー史における功績の側面から見ると若手の海外移籍志望を芽生えさせる場としても経験をつめる五輪出場の道を開いたアジア予選突破こそが賞賛に値する成果と思える。 そんな偉業の裏に日本で初めて行われた本格的なスカウティングがあった。(何やら日本を褒めると自画自賛しているようで筆者が恥ずかしい気分になるのは内緒である。)
ブラジル戦 代表メンバー そして掴んだ五輪本戦の切符、神の悪戯か対戦相手は当時五輪最強ともいえるブラジル、今話題のOAを戦力で劣る日本が使わないという決断を当時の指導陣は下した。五輪前に行われた世界選抜VSブラジル(多分五輪代表)を視察した西野はあまりのレベルの高さに「今日の情報は選手に与えない」と判断せざるを得なかったと言う。その日からブラジルの穴を探すスカウティングを粛々と開始。 しかしスタメンは当然の事ながら、控えまで調査し数百時間を費やしても弱点の影すら見えない。更にOA枠に当時ブラジル最高の選手と言われたリバウドが召集されることになった。 しかしこれが逆に日本には攻略の糸口を掴むきっかけとなった。 スカウティング陣がリバウドは右足でプレーさせれば怖くないことを発見。裏に走るベベット、破壊力抜群のキック力を持つロベルトカルロス、等への対策を練習メニューに取り込み、GK川口を始めとした選手に反映させていった。実際試合当日の川口が神がかり的セーブを連発できたのは、このスカウティングに基づくブラジル攻撃陣への対策が糧となり生まれたものかもしれない。 対ブラジルの戦術としてスカウティングから導き出した答えはマンツーマンディフェンス。各自が責任を持ち止めると言うものだった。 当然ブラジルがフリーランニングでマークを外せば全ては水の泡と化す。 五輪前の練習試合からブラジル戦を想定し徹底して攻撃の枚数を削った西野に対し、前園、城、中田など攻撃陣は当然猛反発。「ボールを獲れない守備では攻撃にならない」と口論となる。協会関係者の中にも「(そんな繊細な戦い方をしなくとも)胸を借りるつもりで真っ向勝負で負けても良いのではないか」という声もあった。 しかし西野はフランスW杯に繋げる為にとことん勝利に拘ることに決め、「選手に1試合でも多く経験させる」為の超現実的な戦い方を選んだ。 迎えた試合当日1996.7.21。 前半開始から日本選手全員が守備に奔走し、懸命なマンツーマンの守備がブラジルの突破を防ぐ。 選手たちはスカウティング通りに守り続け何とか前半を0-0で折り返す。 また実は、唯一日本が狙っていた攻撃が左サイドからゴール前への単純なクロスを繰り返す事だった。 この戦術の元となったのが当時の強化委員の一人、松永英機が掴んできた下記の情報だった。 本大会前ブラジルを3試合スカウティングした結果守備が不安定であり、 若手のジーダとOAの右CBアウダイールの連携は未成熟。 更に左CBのロナウドは右(日本の左サイド)からのクロスの際マーク対象を見失う弱点があることを着実なスカウティングで掴んでいた。 そして生まれた得点は日本が左から挙げたクロスをアウダイールとジーダの隙間へ落とし連携ミスを誘い、止めはCBロナウドが見失った伊東が決めた。 正に狙い通りの形から生まれるべくして生まれた得点。 OA枠による未成熟な連携、DF(ロナウド)の癖、それが合わさるほんの僅かな弱点を何度も何度も突き、結果的に物にした。 お手元に試合映像がある方はこの点を注意しながら再度視聴してみるのも面白いだろう。番組中の僅かに紹介されたVTRでも日本が執拗に左サイドからクロスを上げ続けていた。
その後
その後の日本はそれまでの25年間が嘘だったように、五輪への連続出場を続けている。そして今年北京五輪を控えている。
前日本代表監督のイビチャ・オシムはこう語っている
「日本のスカウティング技術は正確で素晴らしい」
自らの指導キャリアをスカウティングから始めたオシムならではの重みある言葉である。
その他関連情報 山本昌邦氏の週刊サッカーダイジェストの連載コラム確か「人間力」などでもこの話題に触れた事がある内容はバックナンバーとなる。 そのた直接関係は無いが「FOOTBALL WORLD アテネ経由ドイツ行き」というコラムなども当時のスカウティングスタッフとしての経験から形成された指導者の片鱗を垣間見ることが出来、脈々と日本サッカー界に受け継がれる財産とも言うべきノウハウを知ることが出来る。 筆者の文とは異なり、読みやすく文章力のある方である。
08.07.08 お見苦しい誤字脱字構成を若干修正しました。←自分で読み返してあまりにおかしいのでびっくりした(苦笑)
posted by karakuti |04:03 |
日本サッカー |
コメント(7) |
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NHKスポーツ大陸 約束された奇跡アトランタ五輪サッカーブラジル撃破を見て
非常に興味深い逸話ですね。
スカウティングという言葉は知っていましたが、これほどまでに緻密で重要なものだとは思いもしませんでした。
posted by (@@) | 2008-07-06 22:06
NHKスポーツ大陸 約束された奇跡アトランタ五輪サッカーブラジル撃破を見て
この番組を見逃したので、非常に参考になりました。
掲載ありがとうございます。
こういう裏面を知ると、日本は(サポーターの期待する速度はさておき)
やはり着実に進歩してはいるのだなあと考えさせられますね。
posted by ありがとうございます | 2008-07-07 19:22
コメントありがとうございます。
(@@)さん
訪問ありがとうございます!。
こんな文を見て頂けて反応を返して頂けるだけで励みになります。
表にはあまり出ませんが
現チェルシーのテン・カテもバルサの2冠シーズンを支えた素晴らしいスカウティングの功績を讃えられています。(←実は他の人を知らない(苦笑))
何か研究成果を世に公表してしまうと更に対策されかねない分野なので情報として得難い箇所なのかもしれません。
時々更新してますんで、また気軽にコメント下さい!
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ありがとうございますさん
コメントありがとうございます!。
そうですね。ジーコジャパンの敗退以後、日本サッカーの進歩を実感できることって中々無い気がしますが、指導陣のノウハウなど見え難い所では有るのかも知れませんね。
祖母井さんの所も昨シーズン、見事1部昇格を決めましたね。。
http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/080304/index.html
彼らのような指導陣の人材育成が実は重要なのかも知れません。
また宜しければ書き込んで下さいね!
posted by 管理人 | 2008-07-08 03:33
NHKスポーツ大陸 約束された奇跡アトランタ五輪サッカーブラジル撃破を見て
>準決勝(どういうシステムだろうか?)
2グループに分かれてその上位2チームが決勝トーナメントに進む、というレギュレーションでした。
アトランタ行きの枠は3つだったので、準決勝に勝てば自動的にアトランタ行き、負けても3位決定戦に勝てばアトランタです。
日本はこの試合の後、決勝では韓国と対戦し、チェ・ヨンスのゴールによって敗れました。一方負けたサウジは3位決定戦に見事勝利し、アトランタへ出場しています。
posted by マグナカルタ | 2008-07-09 07:39
NHKスポーツ大陸 約束された奇跡アトランタ五輪サッカーブラジル撃破を見て
× 伊藤 → ○ 伊東 ですね。
このチームに小倉が怪我せずに参加できていたら、と思うと今でも残念に思えてなりません。
蛇足ながら、このチームの内情は金子達仁の著作に詳しく出ていますね。西野さんもぎりぎりのところでチームマネジメントしていたのがよくわかります。
posted by サカヲタオヤジ | 2008-07-09 09:36
NHKスポーツ大陸 約束された奇跡アトランタ五輪サッカーブラジル撃破を見て
はじめまして、
諜報戦は隠密裏が鉄則。
得意げにネタばらしをするからには、スカウティングに頼らなくてもという”驕り”があるのでしょうか?
我が国が世界で互して行くには無理がありそうですorz
番組を興味深く見ていましたが、知らなくても、、、
ライバル国に知らせなくても良い内容だったと思います。
幸い”在日枠”は撤廃されたようですが、”アジア枠”なるモノを新設し、国内リーグにライバル国の選手を招き入れる。
やっとアジアのレベルから抜け出そうと藻掻いているのに、何ともまあ太っ腹なんでしょう。
日本の持っているモノを全て公開し、アジアのレベルを押し上げる。
素晴らしい理念でありますが、バリボーの二の舞って気がします。
尤もあちらは男女とも金メダル、世界制覇を成し遂げてるンですけどね。
posted by あるぱか | 2008-07-09 21:44
NHKスポーツ大陸 約束された奇跡アトランタ五輪サッカーブラジル撃破を見て
マグナカルタさん
コメントありがとうございます!。
そういうシステムでしたか!。
予選でのカップ戦方式は珍しくて混乱してしまいました(苦笑)。
番組ちら見ですがサウジ強そうだったので出場は喜ばしいです。
また宜しければ気軽にどうぞ!
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サカオタオヤジさん
いらっしゃいませ!
おおっと。伊東ですね。早速直しておきます。
小倉は以前某番組の前園や城との対談でも怪我を悔やんでましたね。
良くも悪くも個性の強いメンバーでしたから纏める方は苦しかったでしょうね。
著作は折角お勧めいただいたので機会を見つけて読んでみたいと思います。
このブログでお勧め頂く著作はどれも面白いので密かな楽しみです。
今となってはその位の活気が若手に欲しい所です。
ペンネームはもしや先日お邪魔させて頂いたサイトのブロガーさんでしょうか?
時々更新してますのでまた気が付いたらどうぞ。
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あるぱかさん
いらっしゃいませ!
<<得意げにネタばらしをするからには、スカウティングに頼らなくてもという”驕り”があるのでしょうか?>
そうなんですよ!
私も唯一気になったのはそこで、何やら黙っていた方が良いことの様な、ファンとして見れて幸せなような、、、、複雑でした。
番組内でも現地人に成り済まして秘密練習に潜入したとか暴露してましたから、今後日本人スタッフは
顔写真入りで警戒されるかもしれません(苦笑)。
バーレーンの監督も先日の敗戦前岡ちゃんが視察してた事を聞いたら「しまった」って感じで絶句してました(笑)。
実は今アジア枠の記事を書いた所なんですよ。
明日にでもアップしますのでまた訪問してくださいね!
posted by 管理人 | 2008-07-11 03:50



