2008年06月08日

開幕戦スイスに見る日本の課題

EURO2008開幕戦スイスvsチェコ

オーソドックスな話だがサッカーは中盤の展開が最も多くを占める以上
面白い試合とは実は中盤である。
この辺は中盤大好きな日本人の一人である
筆者が言っても説得力は薄いかもしれない(苦笑)。
ただ、必ずしも結果が見応えと比例しない所が悲しくもある。


スイスは非常に攻撃的でかなり先進的な守備で敵ボランチの位置(前線)から丁寧かつ執拗にプレスをかけ
自分たちのリズムの中でボールを奪取する。
この完成された守備はクラブチームレベルでもほとんどお目にかかれないほど美しい。

攻撃に関しても同様に美しく、しっかりと繋いでゴール前まで持っていくのだが
惜しむべくは最後の貰い手のタイミングとポジショニングが良くない。
ここにしっかりと勝負できるストライカーが一人いればどれだけ報われることか。
非常に残念な結果だが、ドイツワールドカップでも
「無失点での大会敗退」という
「完成された守備」と、「得点力不足」
がEORO2008でも再現されてしまうのか


試合内容

何度見てもすばらしい連携を見せるスイス。
これぞ先進的でサッカーの一つの到達点。
ミドルゾーンでのプレスは非常に高い予測能力に基づき
共通ビジョンの元に2~3・4人のチームメイトが的確に連動し
チェコのスペースと時間を奪う。
あれでは攻撃のアイデアが出ないチェコを責めるわけには行かない。

特筆すべきはただ一つ。
プレスが「90分持続可能」で、
体力配分が絵に描いた餅ではなく、非常に効率が良い点である。
巧みな守備で節約された余力を
攻撃時の運動量に振り分けられるのがスイス最大の強みであろう。

ここまでのサッカーが実現できた背景には同一監督の7年間という長期政権と
更に就任前からU17・U21監督を歴任し、事実上10年単位での
計画的育成を行ってきた成果だ。
敢えて先のドイツワールドカップを捨て駒、若い選手を育む為の苗床とすることで
今EURO、次のW杯での結果を得る算段であるはずだ。
筆者もそのビジョンや可能性を感じ、
ドイツ大会からスイス代表のファンになった口である。

クーン監督に全てを任せたスイスの舵取りと強敵に囲まれた環境や
結果の出ない代表の歴史をプラスに変えている所が素直に羨ましい。


攻撃

ボールを奪取した後も無駄に戻す事無く、
ボールホルダーへの献身的なサポートに支えられ
巧みにビルドアップして敵陣へ切れ込む。

欲を言えば常に真面目過ぎ、
相手のリズムを狂わせるプレイが出来ない。
いつでも一生懸命。
同じリズム。同じ展開。
折角の完成された組み立ても
相手が集中して守る時間帯を散らせなければ
得点の匂いを消されてしまう。

筆者が嫌いな
「攻撃は自由にやらせる監督」に対する高評価を
良く耳にするがスイスの攻撃を見ていると、
守備同様に作り込まれた攻撃から
オシムと同じく監督が攻撃にも手を加えている感じがする。
ただそれが諸刃の剣となり、
同じ色、同じ風味に塗られた攻撃には必要なアクセントが無い。
「自由に勝る攻撃無し派(筆者造語)」のファンの方が喜びそうな結果となった。


間の外し方

現時点ではどれだけ有能な攻撃指導力のある監督も
試合で実際に「しかけるタイミング」までは指導しきれないだろうから
最終的な「何時」を判断する力を選手に付ける(共通認識を作る)
練習方法は今後のサッカー指導の課題だと思う。


攻撃の効率上昇の意味では

  • 前々大会のフランスジダンや甲府時代の茂原のような規律の中に例外選手を置く

などの手法で攻撃のタイミングを効果的に操作できる可能性はある。

但し、スイスの最大の武器である連動性を大小はあれ犠牲にする以上
筆者としてはあまり乗り気な話ではない。
要は最後までシンプルなルールで通した方が苦労はしても
良いものが出来るだろうという事だ(突出したスターを排出できない事情もある)


この意外性をもたらす方法は古い例えで
「組織VS個人の話」で言えば
圧倒的に組織の分が悪い。
どこのチームも選手に頼る以外の唯一の方法は選手交代程度である。
この
”ランダムサイコロ野郎”
“パルプンテボックス”
を個の力に頼らず
「意図的に組織の力で作り出せないものか」
というのが組織派の筆者の長年の夢でもある。
理由はそんな選手は常時、どの国にも居るものではなく、
更に悪いことに得点する上で必要不可欠(に近い)要素であるからだ。

「1選手の故障・不調・不在・不足」に左右されず構築できれば
弱小チームの組織攻撃にも華やかな魅力が宿り、
観客もよりサッカーを楽しめるようになる。

ここがオシムを初めとしたまともな監督筆者好みの監督が苦労している所でもある。
良い意味でのサッカー的KY野郎ならぬ、完成されたKYチーム。
近年の老獪なミランは(攻撃面ではなく全体では)まさにそれであった。


最後の決定力

仮にオシムジャパンが今だ健在であったとしても
必ずぶち当たったであろうこの「最後の決定力課題」は
言うなれば「人もボールも動くサッカー」を
完成させた先にある、「個に劣る組織的チーム」の永遠のテーマであろう。

ここに対する解は、

  • 1.ロナウドに代表される点取り屋(守備をしない屋)を例外的に導入する

  • 2.ローマのようにゴール前に入る人数をとにかく増やす

  • 3.山瀬のようにミドルレンジでも入る可能性のあるシュートを打てる選手を育てる

  • 4.前回大会のギリシャのようにとにかくCK&FK奪取を攻撃の目的とし、セットプレイで勝負をする

  • 5.今期のマンUのようにとにかく攻撃の質を高める(これは大多数クラブが無理)

  • 6.トゥーリオのように意外な攻め上がりを採用する

位がぱっと思いつくところだが
スイスの例で言えば、3が適当だろう。

更に有効にミドルシュートを放つには
敵最終ラインをペナルティーエリアにまで押し込み
ゴール正面のミドルレンジにスペースを作らなければならない。

現実的な手段としては例えば


 
敵陣奥深くから敢えて一旦逆サイドへセンタリング(パス)し、敵を振ってから、
”後方からギリギリまで気づかれないように走りこんできたMF”にヘディングで折り返す
 


などシュートの間(スペースと時間))を作り出す工夫が必要だろう。
現在のサッカーでちびっ子チーム中央を封じられたチームのバリエーションとしては正直必須だが、
これを有効に行えている(=戦術的に日頃から約束事として練習している感のある)チームはそれほど見かけない。

日本の話をすれば
オシム曰く
「日本人の優れた点の一つは数cm単位で位置取りを習得できる細やかさだ」
「私の国の選手では数mがやっとだった」
らしいが、もしクロスの精度が上がれば、この日本人のポジショニングの細やかさも生かすことができる。


残念ながら筆者の好きなスイスは
「最後の組み立て」に関しては
全体のチームの印象とは対称的にあまり先進的ではない。

当然チェコを始めてとしてスイスの対戦相手は、
ゴール前の守備に穴があるようなチームは少なく、
苦戦を強いられるのは責められないが
フィジカルやシュミレーション、セットプレイに頼らないスイスの攻撃はクリーンで本来のサッカーに近く、筆者にとっては魅力溢れる組み立てだ。
個人的には個に頼らない分バルサよりも美しい。


昨年の対戦で、中村俊介に
「俺たちがやりたい理想のサッカー」と言わしめたスイスは
きっとオシムも同じビジョンを保有していたと筆者は思う(考えるではない)。
再びオシムいわく
「必ずしも良いサッカーが勝つとは限らない」

美しいサッカーと勝つサッカーは違う。
更に言えば美しさの定義も、見る人によって異なる。


まとめ

今回の試合も1点先制された後のスイスは
それまでの華やかさが嘘の様にぎこちなく、
糸が切れた操り人形のように選手がバラバラに解け、
監督もまた立て直す術を持っていなかった。

フライの負傷や、フォルランテン投入直後のイエローなどの不運もあったが、
厳しい見方をすれば逆境を跳ね返す勝負強さを育めなかった。
筆者に言わせれば、日本やスイス、フランス、(一昔前の)デンマークなどなど
経済先進国のサッカーに良く見られる
理想が高すぎて”ショー・サッカー”化してしまい、
勝敗を最優先に考えられなくなる「病の一つ」である。


ちなみに筆者やモウリーニョ(多分岡田監督も)は「」と取るが、
オシムやライカールトにとっては「到達点」だろう。
どちらが良い正しいとは言えず、個人の好みの問題である。


良いチームを作り上げる能力と的確な選手交代を行う能力は一致しないが、良くも悪くもスイスは監督に頼りすぎているのだろう。
忠実に監督のサッカーを行うが、一度窮地に陥ると自ら状況を打開する「賢い不服従」を実践できる試合感の熟達した考える力を持つ選手を欠き、
対窮地用のスペシャル・ワンを育成していない。
選手選定から行っている以上、共に監督の責任ではある。
特にスイスは長期育成の時間的猶予がある分その責は重い。

ただそんな中、スイス3番のマニャンは失点後も含め90分を通して素晴らしいプレーを見せてくれた。
例えば仮の話だが、
事前に監督が「窮地には彼を使う」という約束事をチーム全体に布石として打っておけば、
失点後あれほど崩れなかっただろう。
これは昨年の対日本戦の敗けで課題として修正がなければおかしかった。

全体的にレベルこそ異なるが、まるでオシムジャパンを論評しているような内容だが(笑)。


おまけオマーンvs日本


対照的に当試合の数時間前に行われたオマーンvs日本は、
対アジアに照準を合わせすぎ、現時点での即戦力たる個の力に頼りすぎた顔ぶれとなってしまった。
内田などの例外もあるが、あれでは「ジーコジャパン」の再来を見ているようだ。


例えば

  • 1.アジアを90%の確率で突破できるチームと
  • 2.ワールドカップのベスト16に40%の確率で進めるチーム

ではどちらが上なのだろう。

筆者はイタリアのように相手が強者のときに力を発揮し、同等以下では苦戦するチームが好みだ。引いて守られると弱いタイプである。

よって極論すればワールドカップ出場は2~3大会に1度で十分である。
但し出場したら2回に一回程度ベスト16に入ってもらいたい。

もうすこし判り易く言えば、
「育成は最低8年、出来れば12年周期の計画で行え」
ということだ。
日本の様々なハンデや現状から言えばこれですら
大それた案だと筆者は感じている。


個の力を前面に出しドイツW杯で敗れた日本だが、
逆に「組織的過ぎるサッカーで点を取る」事もまた大きな壁である。
クーン監督の最後の締めくくりとして今大会のスイス代表の今後に注目していこう。(おまけで今後の岡田ジャパンも)


皆さんはどう思われますか?
長い文章で要領を得なくて申し訳ないですが、
書き込み大歓迎です。
(荒れそうな内容の無いのは悪いですが削除します。)

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posted by karakuti |06:12 | EURO2008 | コメント(1) | トラックバック(0)
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開幕戦スイスに見る日本の課題

コメント投稿者ID :

日本代表は守備は構築してると思いますが、攻撃は選手まかせですね!

ジーコは守備も構築しませんでしたから。選手まかせで・・・・

攻撃構築はコーチの大木さんでしょうから、まだ時間かかると思われます。
具現化できるかわかりませんが・・・

posted by ブロ夫 | 2008-06-10 10:50

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