2008年05月29日

Jリーグとスポーツ仲裁

前エントリーに書いたJリーグにおける今回のドーピング問題は、スポーツ仲裁裁判所(CAS:スイスに本部)が仲裁に入り判断することになったが、結果的に良かったように思う。


ひとつにはドーピングか否かということよりも、Jリーグ自体に不備がある、ということを指摘したことだ。日本スポーツ仲裁機構(JSAA)を疑うようで悪いが、JSAAが仲裁に入っていた場合にJリーグに対し以下に引用するような指摘をJSAAが出来たであろうか、という思いが拭いきれないからだ。

Jリーグ公式サイト:ニュースリリース:スポーツ仲裁裁判所(CAS)裁定結果について
http://www.j-league.or.jp/release/000/00002409.html
(以下引用)
Jリーグは、何が正当な医療行為であるかを判断するための詳細な条件を、実体的にも手続的にも、具体的に示す十分な措置をとっていなかった。
(引用終わり)

日本スポーツ仲裁機構(JSAA)が仲裁に入っていた場合、喧嘩両成敗と似たような、Jリーグも悪いけれど選手・チームドクター側もちょっと甘い部分があったよね的な、語弊があるかもしれないが日本的な裁定になっていたのではないかと思う。上記引用したような指摘、Jリーグ側を門前払いするようなことが言えたであろうか。川渕会長率いる日本サッカー協会と対峙するような事態をさける意識がJSAAに働いてしまうのではないかと談合が当たり前の社会に育った私などは邪推しまうのだ。これらは以下の点に続く。


もうひとつは、過去のことになるが、Jリーグが日本スポーツ仲裁機構(JSAA)が仲裁に入ることを拒否した事実。はっきりしたことは分からないが前エントリーで挙げた記事が指摘しているようにJリーグが日本スポーツ仲裁機構(JSAA)をどのように見ているかという問題。
下記に挙げる記事をざっと読むとJSAAは歴史も無く大変だなと思うが存在意義を失えば箱物行政と等しく無用の長物となってしまう。今回のCASの裁定はJSAA関係者に刺激を与えたのではないだろうか。
(皮肉だが、CASの裁定は期待するものとは違ったのだろうがJリーグがCASの仲裁なら受けるとしたことは正しい判断だったようだ)


スポーツ仲裁、CASとJSAAについて分かり易く書かれている記事。
独立行政法人 RIETI 経済産業研究所 http://www.rieti.go.jp/jp/index.html の中の以下のページ。
スポーツにおける仲裁とその発展-世界との関係、またその歴史- RIETI 経済産業研究所
http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/03100301.html

記事の中のスポーツ仲裁とは?の部分を一部引用する。
(以下引用)
当時は「スポーツ仲裁」という言葉すらなく、「スポーツ調停」と言われていました。新聞記者やマスコミ関係者は「“仲裁”は喧嘩の仲裁であり、裁判官のような人が客観的な立場から判断するのは“調停”だ」と考え、“調停”と訳していたのですが、「千葉すず事件」で各社のインタビューを受けた際に、“調停”の判断は両当事者を拘束しないが、“仲裁”の判断は拘束するので“仲裁”と訳すよう説明をした結果、今では、「スポーツ仲裁」という言葉が一般的になっています。スポーツをめぐるさまざまな争いについて第三者の中立的な委員がそれを判断し、当事者はその判断に従わなくてはいけない。これが「スポーツ仲裁」です。
(引用終わり)

前エントリーで挙げた記事だが改めて。
「国内版CAS」の意義権利意識を高める環境を : 日本トップリーグ連携機構
http://www.japantopleague.jp/column/sportswriter/sportswriter_0009.html


不確かな恐れがあるが、私が「スポーツ仲裁」を大まかに理解したのは、仲裁を受けることを了解する=仲裁判定(裁定)を受け入れ従う、ということだ。両者が仲裁を受けることを了解すること自体がハードルの高いことである。仲裁者への絶対的な信頼、信頼に足る歴史や良い意味での権威等、残念ながら現在のJSAAでは厳しいところが多いのだろう。
現状では、Jリーガーがスポーツ仲裁を望む場合スポーツ仲裁裁判所(CAS)に申し立てる以外に道はないようである。我那覇選手のような日本代表クラスの選手でも仲裁への道のりは厳しい。知名度の無い選手達には実質的に仲裁への道は閉ざされているのではないのか。その為にもJリーグ自体が今回の裁定の意義を考えるべきだろう。

乱暴に言えば、要はJリーグの稚拙さを国際的に指摘された結果となった訳である。鬼武健二チェアマンは「Jリーグは、本件発生以来、組織・規定の見直しをすでに図っている。」とコメントしているがもしそうならばこの機会をすでに図られた組織・規定の見直しについて周知させること等に利用すべきで「ドーピングか否かに言及されず、将来に禍根を残すことが懸念される。」など不満の強調をしている場合ではないと思うのだが。


こちらのブログ s-pod http://corticalscrew.blog.so-net.ne.jp/ の以下の記事はドーピング問題当時のものだが、その後(現在)鬼武チェアマンが言うとおりに問題はないのだろうか。
ドーピング事件について:s-pod:So-net blog
http://corticalscrew.blog.so-net.ne.jp/2007-05-13

親爺の親爺による親爺の為の40s' Blog の http://fc40.wablog.com/ 以下のドーピング問題当時の記事
我那覇“シロ”でも処分撤回せず :親爺の親爺による親爺の為の40s' Blog
http://fc40.wablog.com/209.html

選手会も大変そうである。
Jリーグ選手協会 | JPFA
[5.27] Jリーグ選手協会総会後の記者会見全文 2
http://www.j-leaguers.net/news/news.php?200805;2884

我那覇の弁護団、Jリーグに謝罪求める(サッカー) ― スポニチ Sponichi Annex ニュース
http://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2008/05/28/17.html
(以下引用)
今後は選手の金銭的負担を減らすためにも、Jリーグはスイスに本部を置くCASではなく日本スポーツ仲裁機構で仲裁を行うべきだと(我那覇の弁護団の望月浩一郎主任弁護士は)主張した。
(引用終わり)


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どこぞの会長のこと


「正当な行為か否かという焦点がぶれて、違う形の回答になったことに違和感がある。納得しづらい。」などとJリーグ側の視点での発言をおこない、後日誤訳騒動・裁定本文の解釈が異なるなどの点が指摘されると、

川淵Cは静観の構え…我那覇ドーピング問題:Jリーグ:サッカー:スポーツ報知
http://hochi.yomiuri.co.jp/soccer/jleague/news/20080529-OHT1T00080.htm
(以下引用)
裁定本文の解釈が異なる問題に関し「議論し合えばいいのでは」と静観の構えを見せた。
(引用終わり)

これでは、話にならないどころか話の邪魔である。日本代表の試合の感想コメントレベルで済まされる問題ではない。重要な問題に対してまでも日和見な発言をしているようでは老害と言われても仕方がない。

直接の当事者はJリーグであり協会でない。Jリーグを含めた日本サッカー協会が日本のサッカー会のドーピング問題を管轄していようが今回の件で矢面に立ち責任を負うのはJリーグである。協会とJリーグの問題(Jリーグの問題が協会の責任となる等)と、Jリーグと我那覇選手の裁定に関する問題とを区別せずに安易にコメントしすぎである。
協会の会長が直接責任を負う立場にある、というのであれば議論し合えばいい等の他人事のような発言はしないだろう。逆に、議論し合えばいいと言う立場の人間であれば、納得しづらい等の片方に寄った発言は今の段階でするべきではないはずだ。現状では今回の裁定について日本サッカー協会として公式回答なり立場なりを明確にしていない。

良くも悪くもその発言によって影響を与えてしまう立場の人間が、視点(立場)をころころ変えて発言している様を見ると、その影響力のみを利用しているとしか思えない。


今回の問題における日本サッカー協会とJリーグの立ち位置について私の解釈に誤り等あれば指摘して頂きたい。


以下の記事は日本サッカー協会内のページの連載もので、この回は川淵氏ではなく田嶋幸三氏が語られたことが書いてある。なんとも皮肉だ。

キャプテン川淵のウィークリーコラム | JFA | JFA
一流選手に必要な「言語技術」と「論理的思考」、そして、それを「具現化」する能力 ~サッカーのエリート教育~ (08.04.04)
http://www.jfa.or.jp/jfa/communication/2008/080404/index.html


 ---------------------


私自身は英語その他外国語は駄目なのでCASの原文をあたっていないが、いくつかの報道や伝えられたコメント、サイト、ブログなどを見つつ判断し書いている。

CASの裁定原文にあたられた方からCASの裁定の解釈について前エントリーにコメントを頂いている。posted by 普通の人 | 2008-05-29 15:28のコメントを参考にされたし。

Jリーグの参考訳に目を通してみたが(裁判所的な)裁定文という以上に分かりにくいのではないか。
「・・・になることもあるかもしれないところ、・・・」など訳という以前に日本語としてどうなのかと小一時間。
Jリーグ公式サイト:ニュースリリース:スポーツ仲裁裁判所(CAS)裁定結果について
http://www.j-league.or.jp/release/000/00002409.html
スポーツ仲裁裁判所(CAS)裁定書の(Jリーグ参考訳はこちら)のページ

こちらのブログ 蹴球道楽主義 http://www.plus-blog.sportsnavi.com/trops/ の以下の記事でJリーグの参考訳について疑問を呈されている。
我那覇ドーピング問題|蹴球道楽主義|スポーツナビ+
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/trops/article/20

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posted by kakukatari |21:21 | コメント(4) | トラックバック(1)
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Jリーグとスポーツ仲裁

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本問題が解決するかしないかは、
日本がWCでられるか出られないかより
遥かに重大な問題だと思います。

今後とも注視して行きたいです。

posted by とと | 2008-05-30 10:34

Jリーグとスポーツ仲裁

コメント投稿者ID :

スポナビで江藤高志さんという方が、ネイティヴの力を借りて翻訳問題に取り組まれていました。問題点が整理され、とてもわかりやすく説明されていました。すでにご覧になったかと思いますが念のため。度々失礼。

>http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/jleague/column/200805/at00017403.html

posted by 普通の人 | 2008-05-30 17:43

Jリーグとスポーツ仲裁

コメント投稿者ID :

>とと
ここではクラブ側の問題に触れていない。色々な視点があると思う。

>普通の人
記事を示してくれるのは有難い。
こうした記事を出すことがスポナビの価値だと思う。良い記事であるし今後もスポナビには良いライターを使ってもらいたいと思う。

posted by kakukatari | 2008-05-30 21:17

Jリーグとスポーツ仲裁

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原文とJリーグ訳を並べて、何をどう訳したか考えながら裁定書を読んでみました。

なぜ皆さん興味があるのに原文に当たらないんでしょうか?
他人の裁定書の解釈がどんなレベルのものなのかは英語が苦手な人ほど自分であたっておかないと判断できないと思います。


Jリーグ参考訳はみんなが言うほど悪くないと感じています。
淡々と訳している感じ。

ただし会長、チェアマンの発言は恣意的に都合のいいところを切り取ってきており論外。
裁定書を部下に読ませ要約だけ聞いたのか、わかっていて煙に巻こうとしているのかどちらかでしょう。


「翻訳ということだけで見れば」、我那覇選手サイドの見解には実は少し抵抗があります。
単語や特定のパラグラフを切り出して意味を考えることは重要ですが、文章の意味は文章の流れの中で考えるもの。その解釈で全体の文章の流れがきれいにつながるのか、文章構成上どんな意味があるのかが一番重要です。
(我那覇選手サイドでの裁定書の全文翻訳ってありませんかね。どなたかご存知ありませんか?)

もちろん我那覇選手サイドにはものすごく強い思いがありそれが翻訳(解釈)に表れてしまっているわけですがやはり抵抗は感じます。


我那覇選手がCASに求めたのはそもそも何だったのでしょう?

なぜCASはこういう構成の文章を書いたのでしょう?

2007年WADA規程のもとでの事件なのになぜ「治療にあたった医師の見解は大きい重みを持ってはいるものの決定的なものではない」と書き、そのうえ「2008年において申立に係る違反行為が生じていたとすれば、当該治療の医学的な再評価を行うであろう独立の医療専門家機関からのTUEについての遡及的な承認を求めることを要求されていた。」と書いてあるのでしょう?

制裁に関係するWADA規程とJリーグの制裁に関する規定の違いは何でしょう?


我那覇選手は無罪ということだけは確実ですが、いろんなこときちんと押さえていかないとピントがずれたチェアマンと変わらないと思います。


長文失礼しました。

posted by たーぼ | 2008-05-31 01:43

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