2009年05月22日

MLBの外野手

kairi1958-89933.jpg
(いわゆる“塀際の魔術”ではないが、外野手のアグレッシブなプレーの象徴といえる、1954年ワールドシリーズでのウィリー・メイズが見せた“ザ・キャッチ”。センターが140mもあったポロ・グラウンズでは、この打球が抜ければランニングホームランになる可能性があったから、これもホームランを「幻」にした好プレイといえるだろう)  ESPNの「スポーツセンター」で番組の終盤に流される「TOP10プレイ」には、メジャーリーグの好プレーもたびたび登場するが、いつも印象に残るのは、たとえホームラン性の打球であっても、最後の最後まで打球を追いかけ、時にはフェンスによじ登って必死にボールに手を伸ばす外野手が多いことだ。  だからメジャーでは外野手がホームランを「もぎ取る」シーンをよく目にする。オールスターゲームでバリー・ボンズのホームランを「幻」にしてMVPに選ばれたトリー・ハンター(エンゼルス)はこのプレーでおそらくナンバーワンだし、グレイディー・サイズモア(インディアンス)、カーティス・グランダーソン(タイガース)もトップテンの「常連」となっている。もちろんイチロー(マリナーズ)もこれがお得意だし、レフトを守っていたときの松井秀喜(ヤンキース)も何度かホームラン性の打球をフェンス越しにつかんだことがある(逆にやられたこともあるが)。  だが日本のプロ野球でこうした外野手のプレイを目にすることは比較にならないくらい少ない。それは無理もないことで、府中刑務所の塀よりも高い外野フェンスがそびえたつ札幌や福岡ドームをはじめ、日本の球場は、近年ほとんどがメジャー並みの企画に拡大されたにもかかわらず、依然として「総グリーンモンスター状態」が改善されていないからだ。  もちろん、センターと両翼は野球規則をクリアしていても、左中間・右中間のふくらみがない東京ドームなどでは、フェンスを低くすればホームランが乱発されると予想される。それに対しては、現在問題となっている日本プロ野球の「飛びすぎるボール」を国際規格に統一することである程度解決できるのではないだろうか。  日本の球場がフェンスを高くしたのは、かつては両翼90m未満の後楽園や川崎など狭い球場ばかりで、ホームランの粗製乱造を防ぐ意味に加え、マナーの悪いファンのグラウンド乱入を防ぐ目的があった(内野に張り巡らされたネットも同様)。だが、少なくとも両翼100m、センター121m以上の規格を確保した球場では、フェンスの高さは外野手がグラブをいっぱいに延ばしてホームラン性の打球をキャッチすることが可能な2.5mぐらいを上限にすべきだ。    かつては日本のプロ野球にも「塀際の魔術師」といわれた平山菊二や高田繁(現東京ヤクルト監督)らがホームラン性の打球をしばしば外野フライに変え、山森雅文(阪急)が西宮球場で弘田澄男(ロッテ)が放ったホームラン性の打球をフェンスによじ登って捕球したプレイは、アメリカの野球殿堂博物館で現在も「好プレイ・名場面集」のフィルムに収められ毎日上映されている。  新広島市民球場(マツダスタジアム)が内野も含めて総天然芝化したのに加え、外野フェンスの高さも2.5mに抑えたのは、まさに見識といえるだろう。カープはまさに「日本一」の球場を手に入れた(本当は甲子園を日本一にしたいが、リニューアル工事で内野に天然芝を敷かなかったので「二番目」に降格。もともとは内野に芝が敷かれていたんでっせ!)。  日本でもハンターやグランダーソン、サイズモアのように、最後の最後まで打球を追いかける外野手がもっと増えるように、外野フェンスの「総グリーンモンスター状態」の克服を、ファンはプロ野球組織や球団、球場管理者に強いメッセージを送るべきではないだろうか。


posted by kairi1958 |10:22 | Baseball/MLB | コメント(2) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2009年05月13日

単行本「戦火に散った幻のエース 巨人軍・広瀬習一の生涯」6月刊行予定

hirose


(戦時下の困難な時代に“エース”として巨人を支えた広瀬習一)



 本業のベースボール・コントリビューター(野球記者・野球史研究者)として、久々に大きな仕事を手掛けています。来る6月、書き下ろしの単行本が発売されることになりました。

タイトルは「戦火に散った幻のエース 巨人軍・広瀬習一の生涯」(新日本出版社)です。

 

 日米開戦前夜の1941年(昭和16年)夏、沢村栄治が兵役で全盛期の力を失い、大黒柱のスタルヒンも重病で戦列を離脱して危機に瀕していた東京巨人軍に彗星のように現れ、初登板でいきなりシャットアウト勝ち(巨人史上初、プロ野球3人目)を演じるなど、チームの救世主として大活躍。翌年には21勝をマークするなどMVP級の働きを見せながら、やがて兵役に取られ、激戦のフィリピン戦線で22歳の短すぎる生涯を閉じた広瀬習一投手の野球人生を、私が20年以上にわたって取材・調査を続け、このたび一冊の本にまとめたものです。
 

 千葉茂さんが、「あいつが生きて帰ってきていたら、巨人は『別所事件』なんか起こさずに済んだんだ」と、その若すぎる死を惜しんだ広瀬とは、いかなる才能の持ち主だったのか。輝かしい前途が待ち受けていたはずの未来を永遠に閉ざしたものはいったい何だったのか……。

 

 沢村栄治から上原浩治まで、ジャイアンツが輩出した20勝投手のなかで、もっともその名を知られていない広瀬の足跡を通じて、戦時下の野球界が直面した苦難、前途洋々だったはずの野球人たちがいかにして戦争の犠牲になっていったか……ぜひ、ご一読いただければ幸いです。

 

 正式な発売予定日、価格などはまたお知らせいたします。




hirose


posted by kairi1958 |11:05 | Baseball/MLB | コメント(0) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2009年05月09日

野村克也「MLB監督」への道!?

 先日、BS日テレで放映されているマーティー・キーナート氏(元太平洋クラブライオンズ子ライオン飼育担当=これは本当です)のトーク番組に、団野村氏(エージェント)が出演していたが、番組の終盤、「今後、メジャーに送り出したい日本人は?」の質問に対するダンさんの答えが興味深かった。 

「野村克也、ですかね」
 

 実はMLB中継を担当していて、メジャーリーグの球団で采配を振るうノムさんの姿を見てみたいと思ったことは少なからずあった。

・ブレない野球理論がある。

・選手育成がうまい。

・打撃、投手、守備すべてにおいてオーソリティーである。

・トレードで移籍してきた選手の活用に定評がある(野村再生工場)

 メジャー30球団を見渡しても、これだけの条件を兼ね備えた監督は、ボビー・コックス(ブレーブス)、トニー・ラルーサ(カージナルス)、ジム・リーランド(タイガース)など数えるほどしか見当たらない。ジョー・トーリ(ドジャース)はヤンキース時代から投手起用に問題があるし、昨年フィリーズを率いたチャーリー・マニュエルも、自ら「自分は投手育成・起用は苦手」と公言している。ジョー・マドン(レイズ)が、まあ準トップクラスといったところか。

 

 ノムさんの場合、メジャーで監督を務める際にネックになりそうなのは、言うまでもなく言葉の問題、それ以上に、過日の岩隈や田中をめぐる発言など、メディアを通じて自チームの選手やフロントを批判するやり方だろう。ひと昔前はヤクルト、西武監督時代の広岡達朗氏がよくこの方法で東尾修ら自チームの選手を批判し要らぬ軋轢を生んだものだが、これは周囲とのコミュニケーションがうまく取れない監督としてメジャーでは嫌われる。オフに話題になったトーリの著書「Yankee Years」への批判も、「本来公にすべきでないのが暗黙のルールであるクラブハウス(ロッカールーム)での出来事を公表した」ことに対して主に浴びせられている。

 

 オフレコ話が記事になるのは、取材した記者のモラルに原因がある場合もあるが、ノムさんの場合はテレビカメラが回っているオフィシャルな記者会見で、多分にご本人の“自己PR”も含めて、ボヤキと称した毒舌をまき散らすのが当たり前の光景になっている。

メジャーで比較的ノムさんに近いキャラクターの監督といえるのはリーランドだろうが、彼がメディアの前で選手を批判する場合にはもう少し遠まわしな表現、たとえば「大量得点差をつけられていつ試合でソロホームランを打っても、喜ぶのは選手とその代理人だけ」といった感じで、ノムさんほどストレートな物言いではない。
 

 岩隈の途中降板や田中将大のリタイアで問題になった「投手の酷使」は、ノムさんがメジャーでやりたくてもやれないだろう。松坂大輔(レッドソックス)の例をあげるまでもなく、あちらは「過保護」と呼べるほど先発投手の球数に制限を加えているから(単に投球数だけを目安にするのはどうかと思うが)、もし監督がいたずらに先発投手の投球回数を引き延ばせば、GMから必ずクレームが入る。

 王貞治さんもジャイアンツ、ホークスでの監督時代を通じて「投手酷使」を批判され続けた。ただ、プロの監督は「勝利」という結果を出すために雇われているわけで(そうとは思えない監督も神奈川方面のチームにいるが=笑)、絶対的なエースが自分のチームにいれば、それについ頼りがちになるのは三原脩、水原茂、鶴岡一人といった歴史的名将の時代から、監督の本能だ。むしろ「ローテーション」「分業制」(当時としては不完全なものではあったが)を推し進めた藤本定義や川上哲治が当時としては「異端」であり、その流れを汲む落合博満も、日本シリーズで山井を交代させたことで批判を受けた。
 

 日本で監督が特定の投手を「酷使」する体質がいまだに残っているのは、やはりフロントの「弱さ」に問題があると思う。選手を起用するのは監督だが、「契約」しているのはフロントだという「線引き」をきちんと経営者が監督との間に行ない、フロントから権限を委託されたトレーナーや専属ドクターなどの「コンディショナー」が、選手の試合出場の可否を進言し、それにフロントも監督も選手も従うシステムを12球団が共通して持たなければ、ノムさんの“ボヤキ”はいつまで経っても収まらないだろう。
 

 正直な感想を言えば、球団設立の際、エクスパンション(拡張)ドラフトによる既存11球団からの選手の供出もなく、オリックスとの分配ドラフトでも、有望な選手はあらかじめ思いきりプロテクトされての出発で、まあよく序盤とはいえ首位に立てるチームが出来上がったものだと思う。結局、岩隈や田中が「酷使」されるのは、他に頼れるピッチャーが見当たらないからだし、その原因はスタート時における上記の「アンフェアさ」がいまだに影響していることを、ファンは決して忘れたり見逃したりしてはならないだろう。

 

 それにしても、ノムさんの場合、アメリカで監督になるよりも、日本で高校野球の監督になるほうがはるかに困難だという事実のほうが問題だろう。なにしろプロ経験者の場合、「最低2年間、高校での教諭勤務」を高野連が条件として定めているので(プロ未経験者の場合、こんな「足かせ」はない)、ノムさんや王さんなど高校卒のプロ経験者は、まず大学に入学し、教職課程を取るところから始めなくてはならないのだ。このハンディは将来絶対撤廃されるべきもので、プロ未経験者を含め、プロ・アマ共通の「指導者ライセンス」制度確立が必要だろう。

 個人的にはメジャーで采配を振るうより、田舎の高校野球部で甲子園を目指すノムさんの余生を見たい気持ちが強いんですけどね。

posted by kairi1958 |14:30 | Baseball/MLB | コメント(2) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2009年05月08日

「ベースボーロジー10」(野球文化學會創立十周年記念号)5月末刊行です!

 私が幹事を務めている野球文化學會の論叢(ろんそう=年刊論文集)「ベースボーロジー10」が、来る5月末に刊行されます。

 學會創立十周年記念号となる今号には、下記のラインナップが揃いました(順不同/なお題名やラインナップが変更になる場合もあります)。


・脇村春夫(日本高野連前会長/湘南高校野球部・東大野球部OB)
「日本高等学校野球連盟会長在任六年間を顧みて」


・功力靖雄(筑波大学名誉教授・野球部元監督)
「我が国における高校野球界の盛衰を検証する~一世紀に近い歴史の“甲子園大会”を中心にして~」


・池井 優(慶大名誉教授/野球文化學會初代幹事・現顧問) 
「江川事件再考―三十年目の回顧」


・松原隆文(野球史研究者)
「ボールフォアとジム・バウトン」


・鈴木俊彦(フリージャーナリスト) 
「ああ懐かしの草薙球場!~一野球狂の起点となった故里の土」


・松崎仁紀(アメリカンフットボールウォッチャー)
 「『ベースボール傑作選』を読む その2 アメリカ文学にみる野球の文化社会学的考察」


・竹内通夫(元全日本女子大学野球連盟理事長)
 「わが国における女子野球の歴史~明治・大正期を中心にして」


・矢部正和(東大野球部OB)
 「野球物理学リタラシー(8)投球動作における―球速を生み出すプロセス―」


・澤宮 優(ノンフィクション作家)
 「プロ野球人・多田文久三の足跡~投手、捕手、先乗りスコアラー、審判、コーチ、評論家、そして野球史の〝語り部〟としての生涯~」
   澤宮優「野球人の伝説―豪腕投手と強肩捕手を兼ねた異色選手・多田文久三」/「多田さんの思い出」
   上田龍「多田さんとの出会い」

・鈴村裕輔(野球文化學會幹事/アメリカ野球愛好会代表補佐)
 「野球害毒論争の社会思想史的分析」

・戸部良也(フリージャーナリスト)
 「ベロビーチ ドジャータウンの思い出」

・大倉徹也(放送作家/「純パの会」代表)
 「『ホークスの70年』と『惜別と再会』と、そして極私的長話」


・尾形昌勝(野球文化學會幹事)
 「山内はディマジオ、金田はジョンソン、稲尾はグローブ」


・平松忠俊(野球史研究者)
 「長嶋賞なぜ無いの?君は日本最恐打者ミスター・プロ野球の偉大さを分かっているか」その二          


・上田 龍(野球文化學會幹事/ベースボール・コントリビューター)
 「東京ジャイアンツ史上初の新人初登板初完封投手・廣瀬習一の輪郭~“幻のエース”の足跡を追い求めて」


・朝西知徳(教諭・高校野球部監督)
 「全盲の大学野球部監督・本田修平氏の記録」


・中間茂治(教諭・高校野球部監督)
 「理想の教育、高校野球を求めて~全国初、衛生看護科 硬式野球部誕生」


・塩崎俊一(ジャーナリスト)
 「WHATよりWHYこそ球界進化への道」

・2008年度 野球文化學會制定「野球出版・報道文化賞」選考経過・授賞理由
 受賞作「東京ジャイアンツ北米大陸遠征記」 著者・永田陽一氏受賞の弁


・追悼 山内一弘さん/田村大五さん 
諸岡達一(野球文化學會初代幹事・顧問)、池井優、大倉徹也、牧啓夫(野球文化學會幹事)、藤田啓二(野球文化學會幹事)ほか

 なお、ご購入いただいた方には、賛助会員として、来る6月中旬に開催予定の野球文化學會十周年記念総会(有料)の案内状をお送りいたします。

『ベースボーロジー10』購読ご希望の方は「野球文化學會」への賛助会費をご送金ください。
・賛助会費──「野球文化學會」の賛助会費は1口1500円です。
1口1500円の納付につき、「ベースボーロジー」1冊をお送りします。 賛助会費の口数はいくらでも(何冊/バックナンバーも含めて)でも大歓迎です!
 『ベースボーロジー』の送料は「野球文化學會事務局」が負担いたします。

 バックナンバーは1号から9号まですべてそろっています(各1500円/万が一品切れの際は返金いたします)。内容は下記の學會公式ウエブサイトをご参照ください。
http://yakyubunkagakkai.web.infoseek.co.jp/baseballogy%20front.html

 

 
・振込先──ゆうちょ銀行(金融機関コード9900) 店番019 店名〇一九(ゼロイチキュウ)店
 当座預金 0108736 受取人名 ヤキュウブンガガッカイ 
 (郵便振替振替番号 00160-6-108736)
※送金手数料はご負担をお願いいたします'
 

 ご希望の号数をご氏名・ご住所とともに下記の「野球文化學會」公式メールアドレスまでご一報ください。
 yakyubunkagakkai@infoseek.jp

 郵便振替の場合は振替用紙の通信欄でお知らせ願います。入金確認後発送いたします。


※直接購入は、東京・神田神保町の古書店「ビブリオ」店頭でどうぞ。品切れの場合は取り寄せも可能です。

(「Biblio(ビブリオ)」HP)http://www.biblio.co.jp/
'野球・スポーツ関連古書・資料の専門店として、野球文化學會会員もお世話になっているお店です。

 賛助会費をお納めいただいた順番に発送いたします。なお、刊行予定日が変更になる場合もございますので、予めご了承ください。

 

 今回も素晴らしい論文が揃いました。ぜひ多くの皆様にご購読いただけますよう、お願い申し上げます。

 

野球文化學會公式ウエブサイト
http://yakyubunkagakkai.web.infoseek.co.jp/index.html

posted by kairi1958 |22:02 | Baseball/MLB | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加