2006年08月04日
グレッグ・マダックスの新背番号「36」は初代サイ・ヤング賞投手の番号
7月31日のトレード期限数十分前、カブスからドジャースにトレードされたグレッグ・マダックス投手は、8月3日、シンシナティのグレートアメリカンパークで行なわれた対レッズ戦で移籍後初登板し、6回を投げて何とノーヒットの快投を演じました。そのあと、雨で46分間の中断があったため、マダックスはリリーフ投手に後を託して自身初のノーヒッターこそならなかったものの、今季10勝目をマークし、これで連続二ケタ勝利を19年に伸ばしました。 そのマダックスが新天地で背負った番号は「36」。カブスやブレーブスで見慣れた31は、今季11勝をマークしてオールスターゲームにも出場したブラッド・ペニー投手がつけていることもあって、新たな番号で心機一転を図ったようですが、実はこの36は、サイ・ヤング賞受賞4回を誇る大投手マダックスにふさわしいナンバーなのです。 1956年、当時ニューヨークの下町ブルックリンを本拠地としていたドジャースでこの36番をつけていたのは、30歳のアフリカ系アメリカ人投手ドン・ニューカムでした。 1946年にニグロリーグでの活躍を認められてドジャースと契約し、1949年にデビューを果たすと、長身からの速球とカーブを武器に初先発で完封を演じるなど17勝をマークして新人王を受賞。以後、兵役でチームを離れた2年間を除き、56年までの6シーズンでいずれも17勝以上をマークし、うち3度の20勝以上も記録。この間、二ケタ敗戦も50年の19勝10敗のみで、二ケタ勝利6シーズンでの平均.720(103勝40敗)の高い勝率を誇りました。 56年はニューカムにとって最高のシーズンでした。リーグ最多の27勝と勝率.794をマークし、防御率もリーグ2位の3.06でチームをリーグ2連覇に導き、その功績が認められて、ナ・リーグのMVP、そしてこの年から制定されたメジャーの最優秀投手賞サイ・ヤング賞の初代受賞者となったのです。当時、サイ・ヤング賞は両リーグから一人の受賞でしたから(両リーグからの選出は67年から)、文字通り16球団(当時)最高のピッチャーと認められたわけです。 以後、サイ・ヤング賞とMVPの同時受賞者はサンディー・コーファックス(ドジャース/63年)、ボブ・ギブソン(カージナルス/68年)、デニー・マクレイン(タイガース/同)、バイダ・ブルー(アスレチックス/71年)、ロリー・フィンガース(ブリュワーズ/82年)、ウィリー・ヘルナンデス(タイガース/84年)、ロジャー・クレメンス(レッドソックス/86年)、デニス・エカーズリー(アスレチックス/92年)と9人を数えますが、このうち新人王との「三冠」を手にしたのはニューカムただ一人です。 ニューカムはまたバッティングのよさでも有名で、実働10年間の主な通算成績は878打数238安打で打率.271、15本塁打、108打点で、うち打率3割台も4回記録。1955年には1試合2本塁打2回を含む7本塁打、打率.359をマークしています。 しかし、連続世界一を狙った56年のワールドシリーズでヤンキースに敗れたあと、ニューカムの運命は一変します。シリーズのあとの日本遠征でも中西太(西鉄ライオンズ)に特大の一発を浴びるなど、公式戦での大活躍がウソのようなふがいない投球内容が続き、翌57年もその不調を引きずって前年から勝ち星を16も減らす11勝に終わり、58年に開幕から6連敗を喫した段階でついにチームから見切りをつけられ、レッズに放出されます。 59年は13勝と復活の兆しを見せたものの、結局放出後は60年まで26勝27敗に終わり、60年途中にインディアンスに移籍して2勝3敗に終わったのを最後に、ニューカムのメジャー生活にはピリオドが打たれました。62年に日本の中日ドラゴンズで主に打者として81試合に出場して12本塁打を記録しましたが、その年で現役から引退しました。 60年代の中頃、ドジャースのオマリーオーナーのもとに、「ドジャースの選手用ジャンパーが売りに出ている」との連絡が入ります。調べてみると、引退後、アルコール依存症になり、生活に困窮したニューカムが現役時代の思い出の品を売っていたことがわかりました。 オマリーは球団事務所にニューカムを呼び出し、姿を現した彼の前に、黙って彼が買い取ったジャンパーを差し出しました。そしてニューカムを諄々と諭し、酒を断つことを誓わせると、断酒のためのリハビリプログラムに彼を送り込み、その後はフロントの一員として雇用したのです。 今年80歳になったニューカム氏は、現在もコミュニティー活動担当ディレクターとして活躍中で、ドジャースタジアムではパナマ帽にアロハシャツ姿の彼の巨体を必ず見かけることができます。ニューカム氏は球団の地域コミュニティー活動の責任者であり、また講演会で自身のアルコール依存症の経験を語ったり、チャリティーやリハビリプログラムへの援助活動などを行なっています。 マダックスはこのサイ・ヤング賞の大先輩がいる新天地で、あと21に迫った通算350勝の大記録に向けての再スタートを切ったのです。
posted by Ryo Ueda |20:43 |
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7月31日のトレード期限数十分前、カブスからドジャースにトレードされた

