2009年06月11日
番外編「カネを払ってでもぜひ見たかった選手」①ルー・ブリッシー
日曜日までは「カネを払っても絶対見たい選手」は都合によりお休みします。 番外編「カネを払ってでもぜひ見たかった選手」として今日紹介するのは、1947年からアスレチックス、インディアンスでプレーした左腕投手ルー・ブリッシーだ。 先日、NHK-BSで放送されていた「This Week in Baseball(TWIB)」を見ていると、メモリアルデイの特集でブリッシーがインタビューに登場していた。1924年生まれだから今年で85歳。メジャーでの通算成績は 44勝48敗、防御率4.07だが、1949年には自己最多の16勝をマークし、オールスターゲームにも選ばれている。 彼の名前を初めて知ったのは、もう30年以上前、八木一郎さん(当時セ・リーグ企画部長)の著書「誇り高き大リーガー」に掲載されていたエピソードだった。余談だが、予備校生時代に買ったこの本には、現在の仕事をするようになってからもたいへんお世話になった。2004年にイチローがジョージ・シスラーの年間最多安打記録を破ったとき、シスラーのエピソードが最も詳しく紹介されていたのは、依然として(もしかしたら現在も)この本だった。 大学在学中、現在も史上最高のサウスポーの呼び声が高いレフティー・グローブの再来として、その才能をメジャーリーグで半世紀にわたり監督を務めた名将コニー・マックに認められ、卒業後のアスレチックス入りが内定していたが、第二次大戦が勃発すると兵役に志願してヨーロッパ戦線に派遣され、そこでドイツ軍の攻撃により負傷、左脚の脛を粉砕骨折する重傷を負い、治療に当たった医師は左脚切断の診断を下した。 だが除隊後のアスレチックス入りを依然としてめざしていたブリッシーは必死に切断回避を訴え、医師もその強い気持ちをくんで切断手術は回避した。だが、骨折部分はジグソーパズルのようにバラバラになっており、ブリッシーはその後、23回にも及ぶ手術に耐えなければならなかった。 1946年7月、23回目の手術を前にして、フィラデルフィアのアスレチックス球団事務所に松葉杖をついたブリッシーが姿を現す。マック監督は翌年の春季キャンプ参加を約束するが、球団事務所にいた誰もが、ブリッシーが実際にマウンドに立つことは不可能だと考えていた。 だがブリッシーは23回目の手術を終えると、同年12月、アスレチックスと契約し、翌年春ようやくプロ野球選手としてのスタートを切った。開幕ロースター入りこそならなかったものの、傘下マイナーで25勝をマークし、9月28日にメジャー昇格を果たした。 マック監督の最晩年、往年の栄光がすっかり色あせ、Bクラスやテールエンドが定位置となっていたアスレチックスにあって、ブリッシーは1948年に14勝、49年には16勝をマークし、その後インディアンスに移籍し、53年限りで現役を退いている。 決してメジャーリーガーとして超一流の成績を残したわけではないが、戦場で再起不能寸前の重傷を負いながら、不屈の闘志で23回もの大手術に耐え、ついにメジャーのマウンドに立ったブリッシーの姿は、戦争で傷ついた多くの傷痍軍人、そしてアメリカ人にとって大いなる励みとなった。 ブリッシーは現在、不自由な左足を押して、イラクやアフガニスタンで傷ついた元兵士たちが入院している病院を慰問して回り、彼らの社会復帰に手を差し伸べている。 「グローブの再来」とまで呼ばれたブリッシーがもし戦場で傷つくことなく、無事メジャーリーグに登場していたら、おそらく殿堂入りに値する数字を残しただろうといわれている。それほどの才能を通算44勝の投手にしてしまった戦争の悲劇に思いをはせる一方で、傷だらけの体で自分の夢を実現させ、いまは孫ほどの年齢にあたる傷痍軍人たちの「カムバック」を支援しているブリッシーの人生には、殿堂入り級の称賛が与えられるべきだろう。 でも、やはり個人的には、ブリッシーを万全のコンディションでマウンドに立たせてあげたかった。そうなれば、アスレチックスやメジャーリーグ全体の歴史も変わっていたかもしれない。 (ブリッシーの通算成績一覧) http://www.baseball-reference.com/players/b/brisslo01.shtml?redir
posted by kairi1958 |22:29 |
Baseball/MLB |
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