2009年07月22日

小堀祐介インタビュー・2 インドに「自分探し」の旅へ

インドに「自分探し」の旅へ
――インドは確かにちょっと神秘的な国ですよね。よく「インドは呼ばれる場所」って言われてたりもしますし。行くのでなく呼ばれるっていう 「ああ、そんな感じかもしれません。僕、インドに呼ばれてるんですかね?」 ――そんな感じもしなくはないですね。で、出発はいつですか? 「一応7月末出発のチケットを取りました。3カ月間のオープンチケットです。ホントは観光ビザの最長期間の6カ月間行こうと思ったんですが、旅行代理店にいざ買いに行って『どのくらいの期間ですか?』って聞かれてビビってしまって…」 ――とりあえず3カ月で、と(笑)。旅の予定はあるんですか? 「何も考えてません。デリーから旅を始めて泊まるところからなにから何も決めてないです」 ――完全な放浪、一人旅ですね。沢木耕太郎さんの『深夜特急』なんかに影響を受けたりしました? 「ちらっと見ました。バックパッカーっていうんですか? 僕はそういう旅のジャンルがあることすら知らなかったですし、とにかくこれは自己鍛錬のひとつだと思ってとにかくお金を使わず、ベンチで野宿する勢いで行ってこようと思ってます」 ――なるほど。でも小堀くんは寝るのが唯一の趣味と公言してるぐらいですから、どこでも寝るのは特技じゃないですか? 「そうですね。どんな状況でも寝れますし、寝るのは大好きです。確かにこの趣味を活かすのに旅はもってこいですね。ホントどこでも寝れますよ。寝ることに関してだけは自信ありますから(キッパリと)」 ――寝ることも世界チャンピオン級だと(笑)。そういえば以前から高級枕が欲しいと言ってましたが、それなら高級寝袋を購入しないとですね 「あ、言われてみればそうですね。確かに寝袋に関しては少々お金がかかっても良いものを買いたいと思ってます。唯一寝袋が旅の友になりそうなんで」 ――インド以外にはどこか行きたい場所はあるんですか? 「まずはインドに3カ月行ってからですけど、気になってるのはペルーですね。世界遺産とか見たいとは思うんですけど、そこまで入れ込んだりしてるわけじゃないんですけど、なぜかマチュピチュだけは絶対見たいと思ってて」 ――これはまたスピリチュアルな場所ですね 「なんなんですかね? 僕もよく分からないんですけど、なぜかマチュピチュには惹かれるんですよね。だからせっかくなんで是非行こうと思ってます」 ――そうなると旅の期間はどれくらいなんですか? 「正直それも考えてません。1年でも2年でもいいんですけど…」 ――ホントに自由ですね(笑)。でも世界放浪なんて夢のような生活じゃないですか。ところで予算的には大丈夫なんですか? 「とりあえずインドには現金で20万円持っていこうと思ってます。でも逆に日本で生活するより全然安いですよね。少しくらいは貯金があるんで、当分はお金が続く限り、世界中を旅をしてみたいです」 ――確かにインドなんかは安宿も多いし、日本で生活するよりは全然安いですよね。20万円っていうと1カ月6、7万円ですね。 「そんなにも使わないんじゃないかと。とにかくこの旅で自分を厳しく追い込みたいんで、もう野宿は当たり前ですから」 ――どこでも寝てやるぞと(笑)。旅の目的はないと言ってましたが、さきほど言ったみたいにこれは「自分探し」の旅になるわけですか? 「はい、まさに自分探しです。自分では修行みたいなものだと思ってます。本当の自分が見つかるといいんですが… (笑)。でもボクシングのグローブは2セット持ってこうと思ってます」 ――そうなんですか? では現地でもボクシング交流をしたい? 「はい。自分はボクシングしかやってきてないんで、何か人と交流したりするならやっぱりこれしかないかなと思って」 ――元世界チャンピオンなわけですし 「インドで僕を知ってる人なんて絶対いないと思います(笑)。でも周りの人はみんな『治安が悪い』とか『危険だ』みたいなことを言うんで少し不安になってきてます。僕は高校を卒業してからボクシングしかやってきてないんで、世間のこととか社会のこととか、一般常識みたいなものはまったく分からないんで」 ――確かにボクシングから社会復帰のスタートがインドから始まるというのもすごく独創的だと思いますよ(笑)。でもたぶん海の向こうでは日本の常識さえも通用しませんから、逆に郷には入って郷に従えを素直に実践できるんじゃないんですか? 「ああ、そう言ってもらえると少し不安が解消されます。でもそうですよね、インドでは人が死んだらガンジス川に流すんですから。色んな意味で常識と価値観が覆されそうな気がします」 ――確かに生と死に対する価値観は日本とはまた違いそうですね。でもボクシングという世界は生と死を身近に感じる世界でもあると思うんですが 「その通りです。僕はボクシングでも死を意識したことがあるし、命を懸けることがどういうことかっていうのを身をもって体験したことが一番大きいと思います。世界チャンピオンという地位でも金でもなくて死ぬ気で何かに打ち込めたということが一番大きな経験だと思います。そう考えると、インドにはやっぱり呼ばれてるのかもしれません(笑)」 ――なるほど。確かに色々考えると深いところまで行ってしまいそうですが(笑)、きっと旅の中で不安になったり予想もしないことが起きたりすると思うんですよ。でも小堀くんの経験、つまりハートは人より強いはずだし、世界のトップを獲ったボクサーですからきっと厳しいことに対する免疫は人一倍あると思うんで、これもまた自分を鍛えるトレーニングだと思えば、旅路の困難も全然乗り越えられると思いますよ 「ありがとうございます。なんだか少し自信が出てきました。もうチケットは取ったので後は行くだけです。何か道が開けるといいのですが… 」 ――分かりました。最後に角海老宝石ジムのボクサーたちにエールをもらえますか? 最近はランカー勢も良い結果を出せていません 「うーん、正直言って見ていて物足りないんですよね。最近の子たちはボクシングを楽しみの一つっていうかファッションみたいな感覚でやってる感じがするんですよね。色んな格闘技がありますけど、やっぱりボクシングは違うんと思うんです、厳しさで言っても。だから最近の後輩たちを見ていても命を懸けてないのが分かるっていうか。僕がラスベガスで見たバレラとマルケスの世界戦は本気で凄まじかったですから。世界のトップはリングで死ぬ気でやってるからあれだけ試合も盛り上がるんですよね。だからもっとおまえら死ぬ気でやれ!とジムの後輩たちには言ってやりたいです」 ――ありがとうございます、チャンプ。手厳しいながらも、きっと後輩たちの心に響くメッセージだと思います。それでは気をつけて旅を楽しんできてください。きっと良い経験になると思います。無事に帰国できた際には(笑)是非また土産話を聞かせてください 「ありがとうございます。それでは行ってきます…… 」


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posted by 野口 弘宜 |15:27 | 対談・インタヴュー | トラックバック(0)
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2009年07月20日

小堀佑介インタビューPART1 「引退後は旅人に!?」

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初防衛戦でナミビアのパウルス・モーゼスに破れ、いったんは再起を決意したものの、首、肩にヘルニアが見つかり先日正式に引退を表明した前WBC世界ライト級チャンピオンの小堀祐介。日本人4人目となるライト級での世界王座獲得という快挙を成し遂げた小堀の早期引退を惜しむ声も多いが、果たして現在の小堀の心中はいかに――。 ――ご無沙汰してます、チャンプ。今日は色々聞かせてください。まず自分のボクシング人生を振り返ってみていかがですか? 「いやあ、満足してます。もうホントに十分っていうぐらいやりましたから」 ――小堀くんは今年1月のモーゼス戦でタイトルを失った後にいったんは進退を保留しましたけど、その後再起を決意して… 「そうです、試合が終わった直後はどうしようか迷ってたんですけど、色々な人と話したりするうちに自分もやるっていう気になって練習も再開して。それでまだジムにも2回ぐらいしか行ってないころに、ある朝起きたら首と肩が痺れてまったく動かなくなってしまって… 」 ――そうだったんですね。それは今まで経験したことのない症状だったんですか? 「初めてでしたね。ムチウチとかとは全然違う感じで、なんだこれ?って」 ――それで病院に行ったわけですね? 「はい。そこでMRIを撮ってみたら、首と肩に3カ所ヘルニアが見つかって… 」 ――なるほど。どう思いました? 「いや正直怖かったです。体が動かなくなってもいいと思ってリングには上がってきたんですが、やっぱりボクシングは命を削ることなんだって思ったし、このままボクシングを続けたらどうなっちゃうんだろうって。その瞬間これ以上はできないなって思って、だからホッとしたのと同時にやっぱり怖かったです」 ――特に小堀くんのボクシングは本当に激しい打ち合いですから… 「そうなんです。首と肩にヘルニアを抱えて世界のトップを獲れるほどボクシングは甘い世界じゃないですから」 ――世界と戦うのは命がけだと? 「ベストコンディションでなければ無理です」 ――なるほど。それで引退を決めた後の心境はどうでしたか? 「いまは少しスッキリしてます」 ――いまは、と言うのはそれまではスッキリしてなかった? 「いや、引退を決めた直後は次の人生に向かってすごく前向きな気持ちだったんですが、少し経ってちょっと精神的に不安定になってしまって… 」 ――それはまたどうして? 「内面との格闘というか… … 。例えば自分はなんで生きてるのかとか色々考えてしまってほとんど鬱みたいな状態で。自己嫌悪もひどかったし、なんだかすごく深いところまで行っちゃって。もう限界ギリギリでした」 ――なるほど。哲学的な自己探求というか、つまり「自分探し」のような感じなんでしょうか? 「まさにそうです。自分はなぜ生まれて、なにをすべきなのか、みたいな。考えても答えは出ないんで、結局後輩を連れて酒ばかり飲んでました」 ――酒に逃げてたわけですね? 「ボクシングも辞めて練習もないんで余計に…… 」 ――そうですか(笑)。それでいまはスッキリしてるのはなぜでしょう? 「なぜだか分からないんですが、自分は昔からインドに行きたいと思ってて、だから引退した時の会見とかでも『インドに行く』って言ってたんですね。まあ冗談だと思った人たちも多いと思うんですけど、とりあえず本当にインドに行ってみようと決めたら、なぜだか気持ちが少し晴れたんですよね。インドに行って何かしたいとかもないし、特に目的もなくいのになんでインドに行きたいかも分からないんですが、自分にとってインドには原点というか初心というか、自分の中ですごくフラットな場所だと感じるんです。だからインドに行ってみたら何か道が開けるかもしれないと思って、とりあえず旅に出ることを決めたんです」


posted by 野口 弘宜 |19:58 | 対談・インタヴュー | トラックバック(0)
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2009年07月15日

7/2 最強後楽園ライトフライ級初戦 
同級3位・斉藤 直人(角海老宝石)VS 同級7位・須田拓弥(沼田)

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 タイトルマッチの切符を懸けて各階級の日本ランカーたちが戦うトーナメント『最強後楽園』に出場した日本ライトフライ級3位の斉藤直人。同級7位の須田拓弥との初戦は7月2日に行われたが、昨年6月に現日本チャンピオンの嘉陽宗嗣(白井・具志堅スポーツジム)とのタイトルマッチを引き分けた須田の圧力の前に攻めきれなかった斉藤は最終6回終了後、2-1の僅差の判定負けを喫した。  序盤からフットワークを使って積極的に動いていく両者。ジャブを軸に出入りのある互い似たようなスタイルで攻防が続く中、先手を取ったのは斉藤。2R終盤に右のストレートが須田の顔面を打ち抜いてダウンを奪う。しかしダウンはしたものの須田のダメージはさほど深くなさそうで、次の3Rには両者距離を縮めて打ち合う場面も増えてくる。  7位の須田にとってはタイトル再挑戦の願ってもないチャンス。そのチャンスをモノにすべく、須田の勢いが強まったのはここからだった。4Rに入って須田は距離を詰め、前に出て先手を打つという直球勝負に打って出る。ラウンド中盤には右、左、右の3連打を見事に命中させて斉藤の腰を沈ませるなど、徐々に圧力を増していく。  これに対して斉藤は防戦をしながらパンチを打っていくが、前に出る須田、後ろに下がる斉藤という印象はぬぐえない。結局、試合はこのまま最終6Rを迎えてしまうのだが、斉藤としては打ち合うならもう少し踏み込む勇気を持つべきだし、アウトボクシングでサバき切るならばもっとクレバーに立ち回る必要があるだろう。前に出るという明確な意志を持って戦った須田に対して、斉藤のボクシングはどこか煮えきらないボクシングに見えた。  最終回では斉藤に上位ランカーの意地と最後の踏ん張りを期待したかったが、須田の勢いは止まらず、右を出したところにカウンターの左フックをもろに見舞われたのが試合の印象を決定づけたといったところか。  内容的に見れば判定がスプリットだったのも理解できるほぼ互角の戦いだったが、この僅差は斉藤がこれから本気でチャンピオンになりたいのなら、ポイント以上に大きいように思える。  先日引退した同門の前世界ライト級チャンピオンの小堀祐介を取材した際に、小堀はジムの若手に対して「ボクシングは命がけのスポーツ。死ぬ気が足りないから見ていて物足りない」と手厳しいエールを送っていた。  斉藤をはじめ、ここ最近良い結果を残せてない角海老宝石のランカー陣には、日本のボクシング界に名を刻んだ偉大な世界チャンプ小堀が残したこの言葉の意味をしっかりと噛みしめてほしい。


posted by 野口 弘宜 |16:01 | 試合レポート | トラックバック(0)
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2009年07月08日

6/24 日本ライト級8回戦 加藤 善孝(角海老宝石)VS 熊野 和義(宮田)

6/24 日本ライト級8回戦 加藤 善孝(角海老宝石)VS 熊野 和義(宮田)
 タイトルマッチまであと一歩に迫っている日本ライト級1位の加藤善考が6月24日、同級6位の熊野和義(宮田)と対戦。しかしトップランカー加藤に対してアップセットを狙う熊野が気迫を見せて善戦し、両者一進一退の攻防の末、8回フルラウンドを戦い抜いた。判定の結果は加藤が77-77、77-75、78-75の僅差で辛勝した。  加藤はこの試合に向けて「最後のツメが甘い。相手が効いた時にしっかり詰めることが課題」と話していた。つまりチャンスをモノにする決定力がまだ自分には足りない、そう言っていた。この加藤の自己分析は、タイトルマッチを近い将来に見据えたうえでのもので、その点で今回の熊野戦は加藤にとってトップランカーとして勝利することはもちろん、その先のタイトルマッチに向けた「決定力不足」という壁を乗り越えられるかが試される場でもあった。  序盤は加藤がジャブ、ボディー、フックと左を効果的に使って試合をコントロール。特にボディーへうまくパンチを入れて、下から上の攻撃をまとめて、2回には右ストレートで熊野の顔面打ち抜くなど立ち上がりは上々。一方の熊野は右の単発を狙いながら、頭を入れて距離をつぶす混戦狙いか。  加藤にチャンスが訪れたのは4回序盤だった。熊野をロープに押し込んでボディーの連打から顔面へ左右の連打をたたき込む。体勢を入れ替えてたまらず距離を取る熊野が一瞬ヒザを付くがこれはスリップの判定。さらに加藤が詰め寄るが、熊野に粘られて仕留め切れず。  結局5回も加藤も攻め続けるが、熊野は守勢に転じず踏ん張った。常にパンチを出し続け、加藤の勢いを止めると、逆に加藤がロープに押し込まれる場面も増える。6、7回には熊野の鋭い右が加藤の顔面を何度も捕らえた。加藤も手は出し続けているし、見栄えも悪くない。7回終盤にはカウンターの右をタイミング良くヒットさせたが、フルラウンドを戦っても決着は付かなかった。  判定は僅差ではあったが、加藤の勝利は納得できる内容だった。しかし勝ったものの、課題であった「決定力不足」をクリアできたかと言うと、むしろ課題がより浮き彫りになったのではないか。試合の中でチャンスはそう何度も来ない。この一戦ではやはり4回の場面、あそこで一気に詰められていればダウンを取れた可能性もあったはず。  加藤には厳しい言い方かもしれないが、タイトルを狙う立場ならばやはり物足りなさを感じたのも事実。試合前に加藤自身が「すべてで圧倒して勝ちたい」と言っていたが、タイトル前哨戦として考えれば、加藤の言う通りすべてで圧倒した勝ちたかったところだ。  とりあえず厳しい戦いだったが利を収めたことではなにより。今後タイトルマッチが現実味を帯びてくるのは間違いない。それまでにどう「決定力」を身につけていくのか、加藤にはベルトを巻くためにももう一踏ん張りを期待したいところだ。


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posted by 野口弘宜 |18:39 | 試合レポート | トラックバック(0)
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2009年07月08日

6/24 日本スーパーフェザー級8回戦 
同級3位・秋葉 慶介(角海老宝石)VS 東上 剛(ドリーム)

6/24 日本スーパーフェザー級8回戦 
同級3位・秋葉 慶介(角海老宝石)VS 東上 剛(ドリーム)
日本フェザー級3位の秋葉慶介が6月24日、同級ノーランカーの東上剛(ドリーム)と対戦。故障明けのブランクからか、この日の秋葉は動きにキレがなく、反応が鈍い。思わぬ伏兵を相手に苦戦を強いられ、格上相手に特攻ばりに攻め続けた東上の勢いを止められず、試合は8回判定の結果、78-76、79-74、79-74の3-0で破れる波乱の結果に秋葉はうなだれた。  秋葉は今年2月に練習中に肋骨を骨折、今回の東上戦は本来3月に予定されていたが、秋葉のケガによって延期されていた。この試合を見る限り、秋葉は100%復調しているとは言い難い。  序盤から手を出し合っていた両者だが、先手を打ってくる東上に対して秋葉も左右のコンビネーションなどで応戦するが、試合勘が戻っていないのか、どうにも良いリズムが続かない。一方の東上はしっかりガードを上げて秋葉の攻撃をブロック、手数と勢いでペースをつかみ、3回には左右のフックで秋葉を猛攻するなど、打ち合いに定評のある秋葉相手でも引き下がらない戦いを見せる。  中盤に入って試合はさらに乱打戦の展開へ。お互い足を止めて打ち合う場面が増えるが、決定打はいずれも出ないが、ポイント的に見れば、手数と勢いで東上有利。秋葉も連打を繰り出し必死で応戦するが、東上の秋葉対策は万全で秋葉の攻撃はことごとくディフェンスされてしまう。  試合はノーランカー東上が階級3位の秋葉を追い詰めるという予想外の展開。東上は万全の準備をしてきたと思われる素晴らしい仕上がりで、終盤に入ってもスタミナは切れず、前に出てひたすらパンチを出し続ける。秋葉もなんとか挽回しようと必死で攻勢に出て、最終8回には最後の一発を期待させる見応えのある激しい打ち合いをで場内を沸かせたが、ラウンド内では決着が付かず、結局判定負けとなった。  勝負事に運は付きものだが、はたして今回の番狂わせが偶然だったかと言うとそうとも言い切れない。それでは勝敗を分けたものはなんだったのだろう。確実に言えることは、ノーランカー東上は秋葉戦をステップアップの大きなチャンスとみて、玉砕覚悟で挑んできた。そして秋葉対策も入念に行い、アップセットをしたたかにもくろみ、できうる最大の準備をしてきたはず。  それに対して秋葉は故障明けなうえ、ノーランカーとの対戦という「おいしくない」試合に、例えば現WBC世界フェザー級チャンピオンの粟生隆寛(帝拳)を追い詰めた20007年7月の日本タイトルマッチと同じようなモチベーションを感じられたのかどうか。東上との戦いは、すでにタイトル挑戦の経験を持つ秋葉にとって意味を見いだしにくい試合だったのかもしれない。勝利に対するどん欲さという面で両者を比べた時、東上の方が明らかに秋葉を上回っていたことが試合にも影響したのではないか。  ノーランカーとの試合を落としてしまったことで秋葉に突きつけられたのは、どんな時でも100%の力を出し続けなければ勝つことはできないというボクシングの厳しい現実だ。そして秋葉はこの壁を乗り越えなければ、ベルトはもちろんタイトル再挑戦さえも遠いはず。秋葉にはいま一度原点に立ち返って、ボクシングに対してもっともっとハングリーに取り組み、再浮上を狙ってほしい。


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posted by 野口弘宜 |18:34 | 試合レポート | トラックバック(0)
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