2008年06月08日
もっとボクシングを楽しみたい、もっとボクシングの魅力を知りたい。そんな方たちにオススメなのがボクシングを「読む」こと。ボクシングにまつわる歴史やさまざまなドラマと人間模様……。ボクシングについて書かれた活字を通して見識を広げることで、ボクシング観戦もますます楽しくなるはず。
写真週刊誌「フライデー」の現役記者・岩崎大輔氏が書いた「激闘 リングの覇者を目指して」(ソフトバンククリエイティブ刊)が話題だ。この本は、かつてボクシングが「キング・オブ・スポーツ」と呼ばれた時代から、名だたる日本人ボクサーの強豪を生んだフライ級に焦点を当てた1冊。
本書によれば、フライ級はもっとも日本人に馴染みが深く、ここ日本から多くの世界チャンピオンを輩出した階級である。戦後まもなく白井義男がフライ級で日本人初の世界チャンピオンとなって敗戦国の日本国民に大きな勇気を与えた。その後もファイティング原田、海老原博幸、青木勝利の「フライ級三羽ガラス」が日本のボクシング黄金期を支え、当時のボクシングは野球、相撲と並ぶ国民的なプロスポーツとなっていく。
そして時代は昭和から平成へ。日本人の体格が向上したこともあって、フライ級の上のスーパーフライ、バンタム級に辰吉丈一郎や薬師寺保栄、鬼塚勝也らタレントが集まるが、その後は人気にかげりが見え始め、日本のボクシングは低迷の一途を辿っていく。
しかしここ数年で、またしても「フライ級」を中心にボクシングがお茶の間の話題になり始めた。もはや説明不要、ご存じ亀田一家の登場である。長男の興毅、次男の大毅がフライ級を主戦場とし、現WBCフライ級世界チャンピオンの内藤大助は大毅との世界戦を争い、物議を醸した反則騒動もあった末に防衛に成功。「元いじめられっ子」「夫婦で月収12万円」など苦労人としての側面も手伝ってか、内藤は一躍「時の人」となる。
本書が面白いのは、時代の機敏を捉える写真週刊誌記者らしく世間を騒がず亀田家と内藤、そしてもう1人のフライ級世界チャンピオンにして亀田家と同じく協栄ジム所属の坂田健史という、平成の「フライ級三羽ガラス」を通して現在の日本のボクシング界の状況を綴っているところだろう。
一連の亀田家騒動に見る、ボクシング界にとっては難題とも言える「興行と競技」の両立の難しさを業界の内側から考え、そして幾度となく挫折を味わった内藤と坂田という2人の現役世界チャンピオンのこれまでの軌跡を辿り、ボクシングで世界の頂点に立つことの厳しさ、凄さを伝えるその目線は、著者のボクサーに対する尊敬の念が見てとれる。
ボクシングというスポーツの「光と陰」を率直に描き、そしてボクシングの奥深さを伝える1冊。ファンでなくとも純粋なスポーツノンフィクション、またはスポーツビジネス論としても面白く読めるはずだ。
posted by 角海老広報室 |14:34 |
ボクシング書評 |
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2008年06月01日
3Rに『小堀さん』が放った左のショートフックで、『アルファロ』がダウンしたん
だけど、見ていた場所からはタテ位置だったので、何だか突然倒れてしまったように
見えた。帰宅してから「よーし、ゆっくり見てやるぞ。」と録画したものを再生して
みたら、何とこれも同じタテ位置だったもんでひっくり返ってしまった。
違う角度からのリプレイもなくて、消化不良気味だったけど、27日の再放送でやっ
と納得できた。
『小堀さん』の左はコンパクトに、だけどとても鋭く『アルファロ』の顎を斜めに打
ち抜いていた。
「あれで、あれほどのダメージかあ」とあらためて驚いてしまった。
パワーじゃなかった。タイミングだったのだ。
SKY-Aの再放送は、全く新たに編集し直してあって、『小堀さん』の会場入りの
様子や、試合直後のインタビューなども織り込まれていて、なかなか面白かった。
『田中トレーナー』がとてもとても嬉しそうだったなあ。
試合開始のゴングは後楽園ホールのものより鳴りが悪く、少しこもったような音がし
た。入場のときのスモークがまだ残っていて、リング上はアメリカの場末の酒場での
賭けボクシングの様相を呈していた。まるでメジャーデビュー前の『ロッキー・バル
ボア』の試合のようだった。
リングに登場してからの『小堀さん』は、いつもと同じペースと手順でルーティーン
のストレッチをこなしていた。ジムでスパーリングを始めるときと全く同じ感じだっ
た。
カメラを向けられると、いきなり意識が飛んでしまうような彼が、2000人近くがワー
ワー騒いでるこの場ではなんで平気なんだ?
どういう神経してるんだ?
【1R】
オオッ、『アルファロ』のコンビネーションがいいぞ。ボディブローやらアッパーや
らいろいろ持ってるとこ見せびらかしてるぞ。
リーチは『アルファロ』の方が10cm長いってことだけど、彼の左ジャブは数字以
上に伸びてきて『小堀さん』の顔面をビシッと刺してくる。
気を付けろ! 8オンスの“レイジェス”は効くぞ。
アレッ!『小堀さん』が珍しく相手のパンチを避けようとしてるぞ。
あんなにダギングやらウィービングしてるのは見たことがないぞ。
そうか、『アルファロ』のパンチが強いんだ。
と、次の瞬間「ドヤーッ」って感じの右のロングフックが『アルファロ』の顔面に叩
き込まれた。
オーッ、『アルファロ』がよろめいたぞ。
カクカクした足運びだぞ。そうか彼は、腰と膝の柔軟性がないんだ。
二人とも、まず様子を見るって感じじゃない。
お互いに1Rから倒しにいってるぞ。
とんでもないことになってるぞ。
『小堀さん』そんなにブンブン振って大丈夫かあ。
どっちか先にクリーンヒットしたら、それでお終いだ。
みんな心臓バクバクだぞ。
【2R】
『アルファロ』に追い足がなかったもんで、助かったなあーっ。
一つ前の左はとどいておらず、最後の右も浅かったので『小堀さん』と観客全員が命
拾いした。
相打ちのような展開の中で、『アルファロ』の左が、チョットだけクリーンにヒット
したもの。
KO率90%というのはダテじゃないのだ。
45秒経過時点での紙一重の行き違い。
「もはやこれまでか、やっぱ世界の壁は……。」
『小堀さん』は、「トーチャン、どうしよう。」って感じで、ニュートラルコーナー
から『田中トレーナー』を見やった。
スタッフから「あと2分!あと2分だぞ!」の声が上がる。
時間があり過ぎるぞ。
あの時『小堀さん』は、瞬間「ヤバイ!」と感じて、次には「応援してくれた人に顔
向けできなくなる。」「負けたらタカトビしなくちゃ。」と思ったそうだ。
そして、負けることがとても怖くなったという。
案の定、『アルファロ』はクールな面構えで決めに掛かってきた。
だが、実はこの時『小堀さん』は、ヘロヘロではなかったのだ。
そして、あの怒涛の反撃が始まった。
ブンブン右を振っていく。右ストレートからの左フックという、今日のテーマ“逆ワ
ンツー”も忘れていない。
全く引かない。手負いの鬼のようだ。「コボリー!お前は男ぞおー!」
「お前、俺のパンチが効いてないのか。」と『アルファロ』が戸惑いながら打ち合っ
てた次の瞬間、残り1分50秒あたり、つまり試合再開10秒ほどのところで、『小堀さ
ん』の左が“バスン”と命中。
『アルファロ』は、さっきと同じようにまたカクカクッとなった。
これは効いた。間違いなく1Rのより効いた。
場内が“ゴワーッ”と湧き立った。
『アルファロ』の攻めが一段落した。
これで一息入れられる。
「コボリー、休めー!」と自分は怒鳴った。
ボカボカの殴り合いになったら、タイトに振ってくる『アルファロ』の方に分がある
と思ったから。
それぞれいいパンチを貰った者同士に、わずかばかりの休息の時間が過ぎていった。
そして、残り55秒、またしても『小堀さん』の左が炸裂した。
この夜一番のパンチだったんじゃないかな。
ハッキリとしたダメージを受けて後ずさりし始めた『アルファロ』を『小堀さん』は
追いまくった。
形勢は一瞬で逆転して、もう場内大騒ぎ!
『アルファロ』は明らかにクリンチで休みたがっていた。
『小堀さん』は脱ぎにくいセーターを、無理やり脱ぐようにもがいてクリンチを解き
たがっている。
チャンスだと思っている証拠だ。ガンガン行きたがっているんだ。
試合後『アルファロ』は「2Rにもっと攻め込むべきだった。」と、インタビューに
答えていたらしいけど、それは違うと思う。
『小堀さん』の左を喰らってからは、君はそれどころではなかったはずだよ。
最後の10秒ほどは、二人とも鬼のようだった。『アルファロ』もさすがに根性のある
ところを見せていた。
インターバルで『小堀さん』はいつものように頭を軽く左に傾けながら、上目使いに
『田中トレーナー』の話を聞いていた。
マイクが「ひだり」という言葉を拾っていた。
一方『アルファロ』の方は、右目の下が赤く腫れて、明らかにダメージを負っている
ようだった。
左フックだ。『小堀さん』の左フックが効いてるんだ。
この時点で既に『アルファロ』は、相当まいっていたんじゃないのかな。
3Rでは『小堀さん』が「えっ、君これくらいで倒れちゃうの?」って感じだったか
らね。
【3R】
アッ、『アルファロ』がまたアッパー打ってきた。必死にペースを取り戻そうとして
るんだ。
始まって30秒ほどのとろで、出たっ!
『小堀さん』の例の、距離を測りながらの、グローブクルクル!
これは、調子のいい時や、勝てそうだなと感じた時の、彼独特のパフォーマンスなの
だ。
ということは、どうすれば相手を倒すことができるか、その答えが出たっていうこと
かあ!
直後にワンツーが決まる。
オオーッ!これだー!『小堀さん』が乗ってきたぞ! 本当に倒すつもりだぞ!
残り1分15秒。来たーっ!
一つ前に薄く当てた左フックと同じ感覚で、もう一度右ストレートから返しの左
ショートフックが、今度はまともに当たった。
流れの中で決まった。
みんな半狂乱!
『アルファロ』は左手を捻りながら倒れた。これはものすごく効いてるっていう証
拠。
ニュートラルコーナーで『小堀さん』は二度『田中トレーナー』の指示を仰いだ。
「トーチャン、行っていい?」
『田中トレーナー』は多分突き上げた親指を逆さまにして、「行けっ!ぶちのめ
せ!」と指示を出したに違いない。
カウントエイトで何とか立ち上がった『アルファロ』は、胸で十字を切った。
「神様、助けて!」
そこからの『小堀さん』の連打が凄かった。何がって、今までなら、「どれか当た
れ」って感じのブンブン大振り大作戦だったのが、小さく回転の速いフックとスト
レートを混ぜて、そのパンチの殆どを当てていたからね。あんなこともできるんだ。
感動したなあ。
往時の『ファイティング原田さん』を彷彿させるようなラッシュだった。だけど、ラ
イト級だぜえ。
その間『アルファロ』は、結局ただの一発のパンチも返すことができず、レフェリー
に抱きかかえられた。
FINISH ! FINE ! THE END !
【エピローグ】
2Rのインターバルの時までは、それほどではなかったのに、試合が終わった後の
『小堀さん』の右目は見たことないほど腫れあがっていた。
いつ腫れたの? 『アルファロ』のパンチも半端じゃなかったんだ。文字通りの激闘
だったのだ。危なかったんだ。
レフェリーがストップをかけた途端、リングサイドのカメラマンたちが一斉にロープ
際に上がってしまったので、リング上がどうなってるのか全く見えなくなってしまっ
た。録画で見たら、中は中で大変な事になっていたけど、場内はもっと大変だった。
本当に凄いことになっていった。
観客まるごとが、異次元へ吹っ飛んで行ってしまったようだった。
「俺もこんなにハシャグことがあるんだ。」と自分に驚いた。
控え室に続く通路で、セミファイナルで『モセス』に負けた『ヤウゲン・クルーグ
リック』が『小堀さん』に「コングラッチュレーション!」と声を掛けた。『小堀さ
ん』は丁寧に頭を下げていた。
ニカラグアからやって来た記者が言ってた。
「階級を上げたばかりの初戦だっていうのに、なんて奴なんだ。」
「今日貰ったパンチだったら、どの選手でも倒れる。」
この試合で、チャンピオンはブルーのグローブを選び、『小堀さん』は黄色を選ん
だ。
黄色は手が長く見えて、パンチが伸びるように感じるからなんだってさ。なるほどな
あ。
狂乱の結末だったせいか、新チャンピオンのグローブを外すためのハサミが紛失して
しまって、その結果『小堀さん』はズーッとその黄色いグローブをはめたままだっ
た。
そのせいで、本当にそのせいで、何とその黄色のグローブに巻かれてあったグローブ
テープをゲットすることができた。
切断されなくて、きれいに巻き戻された後、二本をグジュグジュにしたのが無造作に
捨てられてあったのを、ツテを頼って、貰い受けたんだ。
グジュグジュのかたまりをほぐして、二本のヒモにするまでに30分以上かかった。
今、自分の部屋に下がっているんだけど、その所々にオレンジのマジックで“WB
A”とサインされた痕跡が、しっかりと残っている。
見てると、今でもジーンと胸に来る。
これは一生の宝物。死んだ時、棺の中に入れてもらおうと思っている。
翌日からのあれやこれやで、23日に会ったとき『小堀さん』は、かなり参っている様
だった。
それでどうやら、しばらく一人旅に出るようだ。
どこかで『小堀さん』を見かけても、声は掛けない方がいいかも知れない。
多分『小堀さん』はボクサーじゃなくなっていると思うから。
posted by 村木田一歩 |16:51 |
コラム-リングサイド |
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