2006年11月25日
ボクサーと怪我
97年エディ・タウンゼント賞受賞の名伯楽、角海老宝石ジムの「先生」こと田中栄民チーフトレーナーが選手のことやジムでの出来事、試合の裏側などを毎月語ってくれます!! ボクサーがリングに上がるまでにはさまざまな出来事がある。ロードワークやジムワーク、食生活などで自分のコンディションを試合までに作り上げていくわけだが、完璧な状態でリングに上がれるケースというのは、まあほとんどないと言っていい。 一番良くあるのは怪我をしてしまうことだ。しかし怪我をしたことがないというボクサーは世界中のどこを探してもいないだろうし、怪我はこの商売の付き物だという前提がある。練習中に怪我をする時というのはたいがい調子が悪い時だ。スパーリングで思うように行かず、むやみに大振りになって拳を痛めたりというようなパターンは非常に多い。そのほかダメージの蓄積やバッティングだったり、練習以外でも日常生活の中で不慮の事故だって起こり得る。とにかく怪我というのはしょっちゅうするもので、怪我とどうやって付き合っていくかもボクサーの実力のうちというわけだ。 だから実際に怪我をしたとしてもよほどの怪我でない限り、ボクサーはリングに上がる。もちろん金を稼がないと生活できないこともあるが、興行を潰すリスクを考えたらちょっとした怪我で試合をキャンセルすることなんてできないんだよな。 榎が秋田で試合をしていた時も足を故障していたし、本望にしたって前回のタイトルマッチの2週間前に瞼の古傷を切ってしまったがそれでもリングに上がった。小堀の場合は腕が上がらないほどの大怪我だったために9月の試合を延期したが、ボクサーならば多少の怪我は常に覚悟していないといけない。どの程度の怪我かは選手自身、ジムサイド双方で判断していくことだが、むしろ「この程度の怪我ごとき」という根性がないような選手は大成しない、これははっきり断言できる。 しかし一度リングに上がってしまえば、たとえ負けようが怪我は言い訳にならない。だからそうやって怪我との付き合い方や故障部分に負担をかけないようなボクシングを学んでいくことが大切だし、育てる側も大事に育てれば良いというものでもないんだな。100%のコンディションでリングに上がることができればさぞや強いボクサーは山ほどいるだろうが、そうは簡単に行かないところがボクシングの難しさでもある。その時その時のコンディションに合わせて自分の力を出し尽くせるボクサーが強いボクサーということだ。
posted by 角海老広報室 |17:05 |
田中栄民の徒然なるまま日々のこと |
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