2006年05月27日
日本王座を返上してから左瞼の怪我治療に専念していた本望信人が約7カ月ぶりにリングに復帰、フィリピン期待の成長株のヒムフレックス・ハカと東洋太平洋スーパーフェザー級タイトルを懸けて激突する。本望にとっては念願の世界挑戦に向けた最初の関門となるが、対するハカも世界ランカーの強敵。厳しい戦いになるのは必至だ。
プロ10年目を迎えた本望はそろそろキャリア集大成の時期、なんとしても近いうちに世界への切符を勝ち取りたいところ。そのためには今回の「東洋獲り」は確実に物にしておきたい。ブランクによる影響が気になるが、試合前から「しっかり練習してきたし、気持ちも乗っている」と調子は上々の様子。
対戦者のハカは、左ストレートが武器のサウスポーボクサーで、まだ22歳だが、26勝1敗1分と輝かしい戦績を誇る。母国で3階級制覇を成し遂げた上、スーパーバンタム級の元東洋チャンプでもあり、スーパーフェザー級ではWBA14位、WBC25位にランクされているフィリピン屈指の強豪。
1R、いつものように相手のパンチを見極めるようにゆっくりと試合に入る本望。それに対して前半タイプのハカは積極的に得意の左を伸ばしてくる。ワンツー、左のアッパー、それに加えて上下も打ち分けるなど実に多彩な攻撃で本望を果敢に攻め立てていく。本望はディフェンス能力に非常に優れている選手だが、このラウンドは終始ハカが優勢。
「KOで倒せる相手じゃない。後半のポイント勝負」と試合前に話していた本望は、2Rに入ってからジャブを突きながら徐々にペースを上げていく。一方のハカは本望のジャブに右をかぶせ得意の左ストレートを狙うが、本望はしっかりとガードを固め、クリーンヒットを貰わない。3R以降はほぼハカのパンチが見切れてきた様子で、ワンツーに加えて、練習してきたというボディブローから流れを作り始める。しかし、4Rにハカの強打を貰って左目付近をカット、古傷の右瞼ではなかったため大事には至らなかったが、場内を一瞬ヒヤリとさせた。
完全に自分のリズムをつかんだ本望、7Rからはテンポの良いフットワークも出てきて、ショートを主体に流石と思わせる安定したボクシングを展開する。ハカもしぶとく一発のカウンターを合わせてくるが、試合巧者はやはり本望。9Rには田中栄民トレーナーが「狙っていた」と言う、右から左フックのコンビネーション、さらに脇腹へのボディーブローなどを効かせ、スタミナが切れ始めたハカにほぼ何もさせない状態。
最終12Rでもヒットアンドアウェイを繰り返し、最後の30秒では相手をコーナーに追いつめてしっかりと見せ場を作ってポイントを奪い、そのままゴングが鳴らされた。
試合の判定はフィリピン出身のジャッジも本望に付けて3ー0の完璧な勝利、東洋太平洋タイトルの座を見事手中に収めた。勝者インタビューで本望は「最高です。やっぱり嬉しいですね」と喜びを語った後、「それでも久しぶりの試合だったんでもちろん不安もありました。相手も強いって聞いてたんでホントに後がない状態で試合に挑みました」とホッとした表情を浮かべた。
終わってみれば優位に立たれたのは序盤の数ラウンドほどという印象。中盤からは、相手に得意なボクシングをさせないという、いつもの本望ペースで試合を運んだ。復帰第1戦としては上々の仕上がり、これから視野に入ってくる世界戦に向けて試合を重ねていく中で、さらに「本望らしさ」に磨きが掛かっていくことだろう。最後には「世界に行くまでまだまだ頑張ります、応援宜しくお願いします」と意気込みを語ってリングを後にした。
本望の試合後の話
「必死でした、今までやった中で最強の相手ですね。1Rに出てこられてやばいかなと思って…。とにかく集中力を切らさずに相手のパンチをまずは見ようっていう感じで。カットしたのは手術した右瞼ではないですし、怪我は大丈夫でした。でもやっぱり怪我のことも心配だったし、久々の試合だったんで、一時期練習に身が入らないことがあったんですが、田中先生から『びびってんじゃねえ!』って渇を入れられて気合いが入りました。とにかくなんとしてでも世界戦をやりたいと思ってます!」
posted by 角海老広報室 |19:25 |
試合レポート |
トラックバック(0)
2006年05月27日
角海老宝石の暴れ馬、日本フェザー級チャンピオンの渡邉一久が18戦全勝で同級1位の小林生人(横浜光)を挑戦者に迎えた初めての防衛戦。「この試合は自分が目指すビッグマッチへの通過点にしか過ぎない」と強気の発言が注目された渡邊だが、王者として圧倒的な力の差を見せつけてトップコンテンダーの挑戦者を下し、夢に向かって一歩前進することができるのか…。
渡邉と言えば毎試合ヒートアップする大応援がお馴染みの光景だが、初防衛戦のこの日も地元・山梨からバス5台に分乗したたくさんの仲間たちが、後楽園ホールの赤コーナーサイドを埋め尽くした。そんな大観声に応えるべく、渡邉もド派手な入場で会場を盛り上げる。
渡邉の名前がコールされると突然場内が暗転、真っ暗闇の中に掲げられたライターの灯りが揺れる中、渡邉が姿を見せたのはなんと2階席から。一久コールが鳴り響く会場をいつものレゲエビートに乗りながらゆっくりとリングインする。
実は渡邉と挑戦者の小林はお互い顔見知りという間柄。しかも渡邊のジムメイトで日本スーパーフェザー級チャンピオンの小堀佑介を介して知り合ったということで、双方とも試合前から「やりにくい」と漏らしていたという。しかし、どっちにとっても負けられない大一番であることには変わりない。ゴングは私情に関係なく打ち鳴らされた。
1R、負けん気の強いファイター同士、両者打ち合いを恐れず前に出る。ガードを固めた小林を、ノーガード気味の変則スタイルの渡邉が笑顔を見せながらしきりに挑発する。驚異的な身体能力に裏打ちされた瞬発力とスピードに、思い切りの良さが持ち味の渡邉は、ジャブを突きながらタイミングを見て左右の大きなコンビネーションを叩き込む。小林はしっかりとガードを上げてワンツー主体の応戦、序盤から激しい攻防となった。
2Rに入って渡邉は加速。飛び跳ねるようなステップから上手く左で相手をコントロールして、要所では上下強弱を付けた多彩なパンチを繰り出して押し込む。その勢いに押され気味の小林だったが、ラウンド終盤に渡邉のアッパーに合わせたカウンターの右のショートを放ち、これが見事にクリーンヒット。渡邉がバランスを崩して腰を落とす。あわやの場面に場内も騒然となるが、渡邉はなんとか踏ん張った。そのままラウンド終了、チャンピオンがゴングに救われた格好だ。目の覚めるような小林の強烈な一発、それでも倒れなかった渡邉の根性といい、スリリングな展開に場内も興奮気味。
気になる2Rのダメージだが、どうやら大丈夫そうな様子。3R以降からは田中栄民トレーナーの「左で試合を作れ」という指示通り、ジャブを効果的に使って試合を組み立てる。リーチでは小林の方が上回っているが、踏み込みの早さとタイミングでそれを補い、差し合いを制していく。そして出るべき所は思い切り出る。こうした試合勘は抜群のチャンピオン、特にフック系のコンビネーションがよく当たっている。
試合中、渡邉はバッティングのアピールをしてみたり、スリップをさせたり、威嚇するような素振りを頻繁に見せるが、これも相手を混乱させて自分のペースに引きずり込むための心理戦。変幻自在の多彩な攻撃、こうしたトリッキーでクレバーなスタイルも渡邉の特長である。一方の小林は、攻守兼備の堅実なボクシング。右ストレートには相当な自信があるようで、大振りの渡邉のカウンターを狙っていこうという構えだ。
ほぼ互角の展開だが、やはり手数と勢いではチャンピオン。特に相手にロープを背負わせた時の追い込みは凄まじい。猛烈な突進力でガードの上からでも激しく連打を叩く。6R中盤には1RでKO勝利した前回のタイトルマッチを思い起こさせるようなラッシュを仕掛け、小林がぐらつく。小堀に憧れてボクシングを始めたという小林もどうしてもベルトが欲しい。気迫では渡邉に負けず劣らず、時折手応えのあるカウンターを返して良い場面を作る。しかし、後半に入っても各ラウンドで見せ場を作るのは経験で勝るチャンピオンの方。
お互いハードパンチャーということもあり、KO決着も予想されたが試合はついに最終10Rまでもつれ込む。後は気持ちの勝負、精神力の戦いになる。しかし、ここでもチャンピオンが底力を見せた。ラウンド中盤と終盤に小林をコーナーに追いやって左右のストレート、フックを振り回す。ガードもままならない状態の小林に対して最後まで攻めの姿勢を渡邊が見せ、そのまま試合終了のゴングが鳴らされる。
判定は3-0でチャンピオンの勝利、渡邉が見事初防衛に成功した。勝者インタビューで渡邉は「体を犠牲にするからには強い相手とやりたい。この次にはみんなが求めるビッグマッチ、それをやるまではボクシングやめられないです」と話し、初の高校6冠、現在日本フェザー級3位の粟生隆寛選手(帝拳)との防衛戦をアピールした。また会場のファンたちにも「応援団がいなかったらボクシングはやってません。自分のためじゃない、これは俺の体でできるみんなへの恩返しなんで」と一久節で締め、場内からは大きな歓声が沸いた。
渡邉の試合後の話
「2Rのカウンターは効きました。終わっちゃうのかな、と思った。でもなんとか意識がすぐ戻ったんで良かったです。別にヒールってわけじゃないけど、挑発したりして自分の世界に引き込まないと勝てないんですよ。田中先生は『倒せる』って言ってたんだけどそういうイメージが湧かなくて。今日の試合は向こうが友達っていうこともあってモチベーションも上がらず、自分で採点すると51点くらいかな。やっぱり次は粟生君とやりたいです。技術じゃ勝てないんで、心理戦も含めてその時はもっと豪快に行きますよ」
posted by 角海老広報室 |19:16 |
試合レポート |
トラックバック(0)
2006年05月27日
97年エディ・タウンゼント賞受賞の名伯楽、角海老宝石ジムの「先生」こと田中栄民チーフトレーナーが選手のことやジムでの出来事、試合の裏側などを毎月語ってくれます!!
5月はなんといっても日本、東洋、世界のタイトルマッチが5試合もあったからな。ジムとしても非常に忙しかったよ。木嶋は残念だったが、4本のベルトを持ち帰ってきたという結果には満足していいと思う。そういう意味では今月は話のネタも多いから試合を中心に色々と振り返ってみようか。
まずは一番目立ったという意味では一久(渡邉)の試合だったんだろうな。派手な入場やラフなスタイルばかり注目されるけど、あの試合の課題は実は「ジャブ」だったんだよ。
練習でもジャブを中心にやったんだけど、ミット持ってても初めは「パスン、パスン」って情けない音しか出ない。それで「おい、お前ジャブ全然ダメじゃん」って小馬鹿にしてやったら、悔しがって真剣にやるようになった。これは一久を指導するコツなんだけど、あいつは基本的にすごく負けず嫌いだから、プライドに障るようなことを言われると「なんだよ、ちきしょう!」って逆に頑張るんだ。ただ、たまに「なんで小堀さんには怒らないで俺ばっかなんすか!」って突っかかってくるけどな。
まあそこもあいつのかわいい所だけど、とにかくあいつは褒めすぎるとすぐ調子に乗るから、一久ファンのみんなもあまり奴をおだてすぎないように気を付けてくれ(笑)。
そんなことで試合をもう一度見てもらえると分かるけど、相手の方がリーチはあったが、一久のジャブの方が良く当たってる。ジャブはリーチじゃなくて踏み込みとタイミングで打つことを言い聞かせた。フルラウンドまでもつれた試合だったけど、ジャブをしっかり覚えたことはあの試合の一番の収穫だったかもな。
次に小堀。小堀は着実に強くなってるぞ。一度タイトルマッチができなくて腐った時期を経験してきてるから精神的にもタフになったし、試合も盤石だった。足を使ったり賢いボクシングもできるようになってきて、これからが本当に楽しみな選手だ。ただあいつは「さぼり癖」がいまだに抜けない(笑)。ちょっと目を離すとすぐどっかに遊びに行っちゃう。今はなんだか沖縄へ一人旅に出かけたみたいで、ちゃんとジムに戻ってきてくれるといいんだがね……。
続いてイーグルと本望だが、この2人は5月のダブルMVPだな。2人ともフィリピンの強敵を相手に厳しい試合を良く戦い抜いた。イーグルが戦ったマヨールは今までで最強の相手。4Rまでは完全に取られてた。イーグルは基本的に自分で試合を組み立てる能力に優れていて、トレーナー的なセコンドは付けずに戦うタイプなんだけど、さすがにあの時は混乱してどうやって戦っていいか分からない表情だった。あんなに追いつめられたイーグルは初めて見たくらいだ。 だから5R前に会長と「相手は大振りで倒しにきてる。イーグルは目が良いから、パンチをかわしてカウンターを取りにいく」っていう作戦を立てた。イーグルも納得してそれを切り口に試合を立て直し、後半になって見事形勢逆転させた。選手とセコンドが一体となって勝利を掴んだ試合だったな。ボクシングは個人競技のイメージが強いけどやっぱりチームワークなんだってこと。その点、うちのセコンドは世界一のチームだよ、これは本気で思ってる。 それにしてもマヨール……、予想以上に強かった。これからイーグルの強敵に成り得る選手だけに今後の動向をよく注目しておかないと。
最後に本望。あいつは俺がずっと見てる選手だから思い入れもあるし、半年以上のブランクがあったのに本当に良く頑張った。試合の3週間くらい前に古傷の左瞼をカットしてしまい、それでも本望は野球のキャッチャーマスクを被ってスパーリングしてたんだ。相手のフィリピン人も強い選手だったし、本望はタイトルマッチっていうだけじゃなくて、古傷やブランクというプレッシャーもあった。しかも今だから話すけど、実は試合中にあいつは意識を失ってたんだよ! 俺がインターバルで色々アドバイスを出すだろ。ところが、あいつは「はあ?」って感じでよく分かってない風なんだ。「おい、聞いてんのか!」って怒鳴ったら「すいません、よく覚えてないんです…」って言うんだよ。見た目よりも良いパンチを貰っていたようで、ところどころで記憶が飛んでるんだ。普通はそこで気持ちが折れるんだが、本望はあきらめずに自分のボクシングを見失わなかったことで、タイトルを獲ることができた。本望は技術のある選手に思われるが、あいつの真骨頂はあのハートの強さなんだ。努力と根性が今の本望を作ったと言ってもいい。とにかく内容的にも奥が深いボクシングを見せてくれたし、あいつにはなんとか世界を獲らせてやりたいと思ってるよ。
今月は見応えのある試合が多かったからこんな話になってしまったが、試合の裏にも色んなドラマがあることを少しでも分かってもらえれば嬉しい。来月からもう少しジムの様子なんかも含めて話せたらと思ってる。しかし、あんまり喋りすぎると選手には怒られちゃうかもしれんな…(苦笑)。
posted by 角海老広報室 |18:44 |
田中栄民の徒然なるまま日々のこと |
トラックバック(0)
2006年05月15日
WBC世界ミニマム級王者・イーグル京和が2度目の防衛戦にして最強の挑戦者を迎えた。同級1位の指名挑戦者でフィリピン出身の24歳、ロデル・マヨール(三迫)は22戦全勝17KO(アマチュア戦績124戦120勝4敗)というトップコンテンダー。その名に恥じない驚異的な戦績を誇り、無敗の勢いのまま待ちに待った初の世界タイトル挑戦で王座奪取を目指す。一方、イーグルにとってもマヨールは絶対に避けては通れない相手、防衛に成功すれば絶対王者により近づくことは間違いなく、さらにその先にある統一王者の夢も見えてくる。両者にとっての本当の大一番、最大の正念場と言える見逃せない一戦となった。
テクニックと総合力のイーグルか、勢いと一発のマヨールか。ラスベガスで行われてもいいほどの屈指の好カードに後楽園ホールは超満員、試合前から世界戦特有の緊張感が会場を包み込む。両者の出身国であるタイ、フィリピン、それに日本を加えた3カ国の国歌斉唱の後、いよいよ世紀の一戦のゴングが鳴る。
1R開始早々、左利きのオーソドックスという変則スタイルのマヨールが王者の出鼻をくじく形で距離を詰め、左右の大きなパンチをぶんぶんと振り回してくる。マヨール最大の武器である伸びのある左フックがいきなり王者の顔面を捉え、イーグルの頭が一瞬後方に揺れる場面も。これに対してチャンピオンも果敢に応戦、試合は序盤からお互いのグッドパンチが激しく交錯する思わぬ打撃戦となり、息をつかせないハイレベルな攻防に場内もどよめく。
そして2R、勢いが増したのは挑戦者・マヨールの方。ガードの上からでも連打を見舞い、1分すぎにはカウンター気味に入った左フックがクリーンヒット、見る見るうちにイーグルの右目部分が腫れ上がる。この時点で王者の表情は一変し、これまで試合中に時折見せていた微笑みが完全に消える。
消耗戦を避けたいマヨールはさらに王者を攻め立て、ロープに追いつめて強烈なボディーへのラッシュ。イーグルはぐらつきながら必死でそれをこらえる。抜群の動体視力を持つ攻防一体型のイーグルがここまで打たれるのは見たことがなく、挑戦者の勢いに為す術がない予想外の苦戦を強いられる。
3R以降、なんとか突破口を見い出したいイーグルは、マヨールの圧倒的なプレッシャーの中からもスピーディーなコンビネーションを繰り出していくが、どれも決定打にはならない。それよりもマヨールの左が王者の顔面を揺らすシーンが多くなり、焦りが見える王者には大振りなパンチが目立ち、なかなか自分のペースをつかむことができない。さらに5R終盤には偶然のバッティングから右目に加えて左目の上をざっくりとカット。出血も激しく、両目の視界が効かないイーグルは絶対絶命のピンチに。必死で応援する観客も不安そうな表情。
しかし、会場には妻の貴子さんと2人の息子も観戦に来ている。母国タイでの極貧生活から苦労して掴んだジャパンドリームをそう簡単に手放すまい。ダウンしてもおかしくないパンチを何度も貰いながらも王者の気持ちは決して切れていなかった。
そろそろ終盤という8R以降から、中盤まで我慢のボクシングで堪え忍んだイーグルは、トップギアで戦い続けてきたマヨールのスタミナが切れ、手数が落ち着いたところを見て攻勢に打って出る。リーチで6センチ上回るマヨールのロングパンチも視界不良ながらもほぼ見切れてきた。マヨールの打ち終わりを狙ったコンビネーション、右の強打が当たり出す。
一方の挑戦者も必死で食い下がる。フィリピン・セブ島で生まれ育ち、幼い頃に両親が離婚、子供の頃から車の洗車や魚の行商で2人の弟を養ってきたというマヨール。母国では英雄・マニー・パッキャオの後継者と目され、この日の試合もフィリピンでは生中継されている。お互い貧困という途上国の現実から拳だけで成り上がった者同士、気迫と気迫がぶつかり合う壮絶な打ち合いとなる。だが、こうなってくると前半に体力を消耗しているマヨールの分は悪く、総合力ではやはりチャンピオンの方が上。10Rからは接近戦でのボディー攻撃に的を絞り、序盤のロスを盛り返す怒濤の攻撃でマヨールを追いつめる。
そして迎えた最終12R1分すぎ、ガードの隙間をピンポイントで狙った右ストレートがマヨールの顎を打ち抜く。ふらつく挑戦者に対してすかさず距離を詰め、左のジャブからボディー、右ストレートとコンビネーションを打ち込み、なんと王者が最後の最後でマヨールから大逆転のダウンを奪う。イーグル陣営が歓喜に沸く中、そのまま試合終了のゴングが鳴り、勝敗は判定に持ち越された。
判定結果は3-0で勝者イーグルの名がコールされる。場内が大歓声に包まれる。勝利を称えるスタッフや関係者に交じって、応援に駆け付けた大相撲の大関・千代大海もリングに上がり、イーグルを抱え上げて祝福する。
過去にないほどの苦戦を強いられ、逆境の中でも諦めずに勝機をひたすら待ち続けたイーグルの精神力は見事としか言いようがない。そして、会場からは対戦相手のマヨールにも惜しみない拍手が送られた。勝者インタビューでイーグル自身が「今日は難しかった」と答えるほど、最強の挑戦者にふさわしいファイティングスピリットと質の高いボクシングを見せ、その実力が世界トップクラスであることを証明したマヨール。今後が大いに期待されるボクサーであることは間違いない。
イーグルはマヨールを破ったことで長期政権への期待が高まり、さらにこの階級ではリカルド・ロペス以来となるWBA王者との統一戦という新たな夢に向かって前進する。
イーグルの試合後の話
「マヨールの伸びのある左が強くて苦労した。そこまで準備ができていなかったので、少し混乱もしていた。前半はそれにどう対応していいかをずっと考えていた。ただ視界も悪かったし、無理をしないように自分のペースを取り戻すことを努力した。だんだんパンチも見えてきて、打ち終わりを狙うようにパンチを出していった。ボディー攻撃も手応えがあった。とにかく負けたくないという気持ちだけ、最後は気持ちの勝負だったと思います」
posted by 角海老広報室 |18:58 |
試合レポート |
トラックバック(0)
2006年05月15日
今年1月に強敵・真鍋圭太を2RKO勝利で破り、日本スーパーフェザー級王者の座についてから約3カ月半。同級1位・藤田和典(倉敷守安)を挑戦者に迎えた新チャンピオン・小堀佑介の初防衛戦。
いまだ「チャンピオンになった実感が湧かない」と公言している小堀だが、ジムの中でも「日に日に強くなってる」(鈴木真吾会長)という声が聞かれるほどの角海老宝石期待の成長株。チャンピオンにとって一番難しいとも言われる初防衛戦で、階級1位の最強挑戦者を退け、安定王者の地位を築くことができるか注目される一戦。
試合は1Rからファイター同士ということもあって、打っては離れ、また打ってという激しいせめぎ合いの攻防が続く。しかし、やはり小堀の仕上がりが良い。フットワークを使い、ジャブを効果的に突いて距離を取ったかと思えば、足を止めて打ち合う時は打ち合うという臨機応変な戦いぶりで試合を運んでいく。
普段は豪快な激しいボクシングが魅力の小堀であるが、この試合では細かいジャブや足を使った技巧派の顔をのぞかせ、チャンピオンになったことで心身ともに充実し、ボクシング自体も一皮も二皮もむけた印象。
両者ほぼ互角で始まった試合は3R、小堀が左右のコンビネーションをガードを無視して叩き込み、見せ場を作る。一方、これが2度目の日本タイトル挑戦となる、元東洋太平洋暫定王者でもある藤田もここは踏ん張りどころ。必死でパンチを返しラウンド終盤には激しい打ち合いとなった。
4Rに入り、小堀はさらに攻勢を強める。上下をうまく打ち分け、アッパー、フック、ストレートと立て続けに右の強打を見舞う。
5Rにも小堀の硬軟織り交ぜた攻撃は冴え、藤田は終始防戦を強いられる展開に。
そして迎えた6R、開始から30秒ほど経った時、小堀が小気味の良いジャブからのコンビネーションで返しの右フックが藤田の左こめかみを完璧に打ち抜き、よろけたところをさらにたたみ掛けてダウンを奪う。実に藤田にとって、これがプロ25戦のキャリアの中で初めてのダウン。立ち上がる藤田に対し、小堀はここで一気にラッシュ。最後はまたしてもコンビネーションからの得意の右フックが藤田の顔面をもろに捉え、6R1分7秒、レフェリーが試合を割って止めた。
小堀が両手を高々と掲げて勝者の名乗りを受け、初防衛戦を見事なKO勝利で飾った。
試合終了後、KO初防衛に沸く後楽園ホールの観客に対して、小堀の勝者インタビューが行われたが、前回のタイトルマッチ同様口べたは変わらず。困惑した表情でインタビューを受ける小堀に場内からの暖かいエールが飛び交うと、リング上で照れ笑いを浮かべ歓喜に浸っていた。
小堀の試合後の話
「初防衛戦だったけれど、特別なプレッシャーは感じなかった。いつも通りの精神状態で結果的にはそれが良かった。藤田選手はガードが堅い印象があったので、ガードの上からでも手数で勝負するつもりで、KO狙いというわけではなかった。相手は回転のある強いパンチ打ってきたけど、2ラウンドでだいたい見切れてた。ダウンを奪った右フックは流れの中から出てきたもので、特に狙ったタイミングじゃなかった。これからも一つ一つ防衛したい。やっと今日から僕にとってのゴールデンウィークが始まります(笑)」
posted by 角海老広報室 |18:41 |
試合レポート |
トラックバック(0)