2005年11月14日
[本望信人]世界への決意
日本スーパーフェザー級王者の本望信人が王座を返上し、満を持して世界を目指す。同級の最多防衛記録となる8度の防衛に成功、もう日本に倒すべき相手はいない。本望がいよいよ世界を舞台に「勇往邁進」する。 「やるからにはもちろん獲る気でやりますけど、それ以前に純粋にボクサーとして自分の力がどこまで通用するのか試してみたい、そういう思いが強いですね。自信はもちろんあるけれど、もし通用しなければそれまでだったというだけなんで。自分の限界まで挑戦してどこまで行けるのか、まずはそれを知りたいですね」 世界への挑戦が容易ではないことを承知の上で、自らを必要以上に大きく見せることをしない本望らしい語り口だが、「世界を獲る」ということの前に「自分の力を試したい」というのは本望の正直な胸の内だろう。スーパーフェザー級での本望のランクは現在WBA3位、WBC6位。その上にはビセンテ・モスケラ(WBA王者、パナマ)、マルコ・アントニオ・バレラ(WBC王者、メキシコ)、エリック・モラレス(メキシコ)、マニー・パッキャオ(フィリピン)ら中南米、アジアの強豪たちが名を連ねる。本望はこれから渡り合うであろう彼らをこう見る。 「明らかに今までとは違うレベルの選手たちだと思います。けれども何かが大きく違うというわけではなく、スピード、パンチ、ディフェンスなどすべての面で一つ上の力を持っているということ。総合力っていうんですかね。それが世界の基準なんだと思いますよ」 さて、そうしたレベルの選手たちとこれから戦っていく上で、本望は何を課題にしていくのだろうか。 「世界に挑戦するからと言って何か特別な事をするつもりはありません。あくまで僕の持っているものを今以上に磨いて、それを世界の基準まで持っていくだけです。自分のスタイルを変えるつもりはないし、変えたら意味がない。今まで通りのやり方でどこまで通用するのか、そういうことです」 曲がりなりにも本望は8度のタイトル防衛に成功した「難攻不落」の日本王者。「自分のスタイルを変えるつもりはない」と言うのも、自分のボクシングに自信を持っているからこそ。本望のボクシングスタイルに関しては一般的に「アウトボクサー」とされることが多いが、本人はそれを否定する。 「アウトボクサーだと自分で思ったことは正直一度もないんです。対戦相手の出方によってその時ベストなスタイルでボクシングをしているだけで。必要ならばインファイトだってしますよ。先日の大之伸くま選手との防衛戦で序盤打ち合うべきじゃなかったって言う人がいるけれど、大之伸選手はパンチ力というよりは手数の多いタイプのボクサー。先にポイントを取っておくことが大切だと思ったから、打ち合うことを選んだんです。その時その時のベストな選択をする、そういう判断力と対応力が自分の強みだと思ってます」 判断力と対応力。本望のボクシング技術を読み解く鍵はそこにある。試合中、本望の対戦相手はことごとくやりづらそうな表情を浮かべ、自分のボクシングができずに、気がつくと本望ペースで試合が進んでいく。表面的には本望の強さというよりは相手が自滅しているかのような印象を受けるが、そうではない。相手の長所を潰し、得意な事をさせないのが本望のボクシングの基軸であり、それは本望が相手のボクシングを見抜く目と、出方次第で対応できるだけの多くの引き出しを持っているからこそ成せる技術と言える。「ナチュラルな強さに頼ってるだけじゃ上には絶対に行けない。僕はパンチもそんなにないし、スピードだって一流とは言えない。だから判断力や対応力、試合の組み立て方とか、基礎技術がない分そういう所で勝負する。いつもギリギリですよ。楽な試合は今まで一つもなかったですから」 本望の戦績は32戦26勝5KO4敗2分。KOファイターではないが故、必然的に最終ラウンドまで戦うことを余儀なくされる。スタミナを付けるためにはロードワークなど地味なトレーニングの積み重ねが基本。本望のボクシングのもう一つの土台、それは古くさい言葉かもしれないが「努力と根性」に尽きる。田中栄民トレーナーは本望をこう評価する。 田中 「実は本望って元々そんなに素質があるボクサーじゃない。ジムの若い奴なんかでも本望より上手いボクサーはたくさんいる。でも、本望はそれを補うだけの努力を人一倍するし、辛くて地味なトレーニングを毎日できる根性と精神力がある。単純なことかもしれないけど、努力と根性がボクサーにとっては大切な要素なんだよね」 日本タイトルを獲ったのは今から3年前の25歳の時。以来バイトをやめボクシング中心の生活を送っている本望。 早朝のロードワーク、その後は地元大宮のスポーツジムでウェイトやバランストレーニング、そして夕方からジムワーク。週6日休まず続ける。 「バイトをしてたらやっぱりプロボクサーと言えないじゃないですか。僕は胸を張ってプロボクサーですって言いたいんです。プロ意識を持つことも大切なことだし、プロとしてできる限り努力するのは当たり前の事です」さらりと言いのけるが、その「当たり前の事」ができないボクサーが多いのも事実だ。果たして本望がそこまでボクシングに没頭できる理由とはなんだろうか。 「ボクシング少年というわけではないですが、子供の頃からボクシングは好きでテレビでよく見てました。勝ったボクサーも、負けたボクサーも凄いと思いましたね。僕は昔から自分に自信が持てない性格で高校時代も本当に普通というか……。それで強くなれば何か自分が変われるんじゃないかって思って16歳でボクシングを始めたんです。実際まだ自分に自信も持ててないし、何も変わってません(笑)。だからもっともっと強くなりたい、ホントにそう思うんです」 強くなることでいつか変われるはず。10代の頃から抱き続けてきたそんな願望は今、世界への思いに形を変えて、本望の中でふつふつと煮えたぎっている。 「日本タイトルを獲って防衛記録を作ったからといって達成感が全くないんです。やっぱりボクサーである限り目指すのは世界。本当はもっと早くできたら良かったんですけど、今28歳なんで30歳までには世界戦をやりたいですね。もう試合する国は日本でなくても構わない。アジアだろうと南米だろうとアメリカだろうと、世界でやれるならどこへでも行きますよ」
posted by 角海老広報室 |18:04 |
コラム-KNUCKLE IS THE SOUL |
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