2010年01月19日
内山高志の世界戦に思う
内山高志(ワタナベ)が新チャンピオンとなった1月11日のWBA世界スーパーフェザー級タイトルマッチは、長年低迷が叫ばれる日本のボクシングがエンターテインメントコンテンツとしていまだ魅力的であり、求心力を持ち得るものだと再認識できる素晴らしい試合だったように思う。そこには技術があり、迫力があり、熱狂があり、そして分かりやすさもあった。 現在の日本の格闘技の中でもっとも世間に認知されているK-1と総合格闘技(MMA)においても、最近はボクシングに対する比重が高まっているような気がする。格闘技界の最大イベントと言ってもいい大晦日の「Dynamite!!」でラストマッチを行い、宿敵アンディー・サワーに勝利して引退した魔裟斗が10代の頃にヨネクラボクシングジムに通っていたことは有名な話であり、ボクシングスキルは魔裟斗の強さの土台となっていた。そしてMMAにおいても山本KID徳郁や五味隆典、川尻達也といった人気の高いファイターの多くがスタンドでのボクシングが持ち味だ。 そうした格闘技界の流れを踏まえたうえで、先日の内山のタイトルマッチは最近のK-1やMMAの試合と比べてなんら遜色のない、良質なエンターテインメントであったのは間違いない。 前王者のホルヘ・リナレスをまさかの1回KOで沈めて王者となったニュースター、ファンカルロス・サルガドと内山のハイレベルな打ち合いには、いつどちらが斬られるか分からないスリルがあり、スーパーフェザーという中量級の迫力も伴ってボクシングの魅力がフルスイングした試合だった。 そして試合を通してサルガドを封じ込めた内山が、最終ラウンドでもポイントアウトせずにあくまでKO勝利にこだわり、それを達成することによってこれ以上ないエンディングを演出したことは、アマチュア出身の内山が見せたプロフェッショナリズムだった。 さまざまなエンターテインメントが溢れるいまの世の中、ボクシングが良質なコンテンツたり得るためには、ライトなファン層にも伝わる圧倒的な説得力を持った「本物同士の殴り合い」なのではないだろうか。サルガドの実力を疑問視する声もあるようだが、この試合にはボクシング最高峰の戦いである世界戦のクオリティーがあり、その大舞台を最高の形で締めくくった内山には文句のない称賛が与えられてしかるべきだ。 WBAスーパーバンタム級に挑戦して残念ながら僅差の判定で敗れた細野とのダブル世界戦となったこの日の興行は、ゴールデンタイムでテレビ東京が中継して視聴率は8%だったそうだ。この数字を楽観視はできないが、悲観的になるほどの数字ではないような気がする。休日のゴールデンタイムならば、むしろ健闘と言っても良いのではないか。 日本のエースであるWBC世界バンタム級チャンピオンの長谷川穂積と同様、内山は間違いなく世界と渡り合える本物のボクサーだ。内山に関して言うならば、名だたるビッグネームがひしめく中量級で世界的なビッグマッチを組むことも夢ではない。すでに初防衛戦の相手として帝拳の粟生隆寛、リナレスの名前を挙げた内山だが、是非とも防衛を続け、ゆくゆくはラスベガスの舞台を目指してほしい。 惜しむべきはスーパーフェザー級で日本タイトルを獲り、ライト級で世界を獲った角海老宝石の小堀佑介との日本人最強対決が小堀の引退により実現せずに終わってしまったことだ。お互いがお互いを意識はしていたはずだし、ハードパンチャー同士のこの2人の世界戦が実現していたら、きっと日本のボクシング界の歴史に残る一戦に、そして極上のエンターテインメントとなったはずだろう。 フリーライター 野口 弘宜 角海老宝石ボクシングジム公式HP http://www.kadoebi.com/boxing/
posted by 野口 弘宜 |14:26 |
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