2008年12月12日
無類のボクシングファン、格闘技好きで横綱審議委員会委員も務める脚本家・作家の内舘牧子さん初のノンフィクション。多くの人たちに取材を敢行し、「人間が夢を追いかけることの意味」を探る著作の中で、内舘さんは己を極限まで犠牲にして戦う、ハングリースポーツの代名詞といわれるボクシングにも大きなスポットライトを当てている。
内舘さんは角海老宝石ボクシングジムとの親交も深い。代表作でもあるNHK朝の連続ドラマ小説『私の青空』ではボクシングジムが舞台のドラマだったため、エキストラで多くの角海老ボクサーが出演している。
著作の中では同じ秋田出身で、19歳の頃から応援し続けている榎洋之を取り上げている。ボクサーたちが夢を追い続けるために費やす労力、努力、犠牲…、そして夢を掴めるのはほんの一握りであること。内舘さんは榎の歩みを通してボクサーの心の葛藤や辛く厳しくとも夢を追いかけ続ける心の内を、ボクシングファンならではの的確な視点で描いていく。
そのほか原田政彦氏、浜田剛史氏をはじめ、角海老宝石ジムからはご存じ田中栄民トレーナー、榎のパートナーである木内勲トレーナーほか多くのボクシング関係者への丹念な取材からボクシングという特殊な世界の実情を伝えており、ボクシングファンならば絶対面白く読めるはず。
また、自ら長年の会社員生活から脚本家へと転身した内舘さんならではの現実的な視点を通して、「人間と夢」の関係を多くの職種の人物を通してさまざまな角度から分析しており、人生で立ち止まった時に読みたい1冊でもある。
posted by 角海老広報室 |16:36 |
ボクシング書評 |
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2008年09月15日
2007年1月に現役を引退した坂本博之は世界チャンピオンにこそならなかったが、その事実は坂本博之というボクサーを評価する際にそこまでの意味を持たない。「和製デュラン」「平成のKOキング」と呼ばれ、4度にわたる世界挑戦では何度もベルトに手が触れた。
常に倒しに行くシンプルで豪快なボクシングスタイル、どんな時でも決して諦めない心、いくら打たれても後ろに下がらない熱い戦いぶりは、坂本の人生そのものであり、坂本博之という男の生き様だった。
不動心・坂本は間違いなく日本のボクシング界が生んだ大きなカリスマである。坂本はリングの上で自分の生き様を表現してみせることで、人々にたくさんのメッセージを発信し続けた。だからこそ坂本の戦いは勝敗を越えて多くの人々を魅了し、感動させてきたのである。
今から約10年前に出版された「坂本博之 不動心」(日本テレビ刊)は、そんな坂本が初めて自らの人生を綴った自伝記。この頃の坂本はデビューから6連続KO勝利、わずか2年で日本ライト級を獲得して初の世界戦を控えた26歳当時。
物心を付く前に両親が離婚、毎日食べる物にも困り「ザリガニだって食った」という文字通りハングリーな生い立ち。それでも坂本は弱音を吐くことなく、気丈に生きてきた。
幼少期を過ごした福岡の「和白青松園」でボクシングのテレビ中継に映る、スポットライト浴びて華やかなリングに立つボクサーを見たのは小学生の時。ボクシングとの出会いは「体中がどんどん熱くなり、生まれて初めて味わう興奮だった」と言う。そしてプロボクサーとしてデビューした坂本は、生まれて初めて自分が輝ける場所を見つける。
本書は、坂本の熱い戦いの源流ともいえる坂本の人生の記録である。どんな逆境でも諦めずに前を向いて進んできた坂本の強い信念は、こんな冷めた世の中だからこそ逆に響いてくる。ボクシングファンならずとも多くの人に読んでもらいたい1冊。
posted by 角海老宝石広報室 |17:37 |
ボクシング書評 |
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2008年06月08日
もっとボクシングを楽しみたい、もっとボクシングの魅力を知りたい。そんな方たちにオススメなのがボクシングを「読む」こと。ボクシングにまつわる歴史やさまざまなドラマと人間模様……。ボクシングについて書かれた活字を通して見識を広げることで、ボクシング観戦もますます楽しくなるはず。
写真週刊誌「フライデー」の現役記者・岩崎大輔氏が書いた「激闘 リングの覇者を目指して」(ソフトバンククリエイティブ刊)が話題だ。この本は、かつてボクシングが「キング・オブ・スポーツ」と呼ばれた時代から、名だたる日本人ボクサーの強豪を生んだフライ級に焦点を当てた1冊。
本書によれば、フライ級はもっとも日本人に馴染みが深く、ここ日本から多くの世界チャンピオンを輩出した階級である。戦後まもなく白井義男がフライ級で日本人初の世界チャンピオンとなって敗戦国の日本国民に大きな勇気を与えた。その後もファイティング原田、海老原博幸、青木勝利の「フライ級三羽ガラス」が日本のボクシング黄金期を支え、当時のボクシングは野球、相撲と並ぶ国民的なプロスポーツとなっていく。
そして時代は昭和から平成へ。日本人の体格が向上したこともあって、フライ級の上のスーパーフライ、バンタム級に辰吉丈一郎や薬師寺保栄、鬼塚勝也らタレントが集まるが、その後は人気にかげりが見え始め、日本のボクシングは低迷の一途を辿っていく。
しかしここ数年で、またしても「フライ級」を中心にボクシングがお茶の間の話題になり始めた。もはや説明不要、ご存じ亀田一家の登場である。長男の興毅、次男の大毅がフライ級を主戦場とし、現WBCフライ級世界チャンピオンの内藤大助は大毅との世界戦を争い、物議を醸した反則騒動もあった末に防衛に成功。「元いじめられっ子」「夫婦で月収12万円」など苦労人としての側面も手伝ってか、内藤は一躍「時の人」となる。
本書が面白いのは、時代の機敏を捉える写真週刊誌記者らしく世間を騒がず亀田家と内藤、そしてもう1人のフライ級世界チャンピオンにして亀田家と同じく協栄ジム所属の坂田健史という、平成の「フライ級三羽ガラス」を通して現在の日本のボクシング界の状況を綴っているところだろう。
一連の亀田家騒動に見る、ボクシング界にとっては難題とも言える「興行と競技」の両立の難しさを業界の内側から考え、そして幾度となく挫折を味わった内藤と坂田という2人の現役世界チャンピオンのこれまでの軌跡を辿り、ボクシングで世界の頂点に立つことの厳しさ、凄さを伝えるその目線は、著者のボクサーに対する尊敬の念が見てとれる。
ボクシングというスポーツの「光と陰」を率直に描き、そしてボクシングの奥深さを伝える1冊。ファンでなくとも純粋なスポーツノンフィクション、またはスポーツビジネス論としても面白く読めるはずだ。
posted by 角海老広報室 |14:34 |
ボクシング書評 |
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