2012年02月06日

1/31 角海老ボクシング『On Your Marks』 観戦記

二階堂雅
1月31日に後楽園ホールで行われた今年一発目の角海老ボクシング『On Your Marks』は、オール4回戦という大胆な試みながら上々の客入り。デビュー間もない選手たちが気持ちの入ったフレッシュな戦いを連発し、「4回戦だけで興行が成り立つのか」という命題に対しても確かな手応えを感じることができた。  4回戦の選手は当然ながらプロボクサーとしてはまだまだ未熟だ。体の使い方や佇まいからしてまだボクサーとは言えないような選手も多いし、さまざまな面で未熟だ。しかし「だからこそ成熟したプロボクサーたちにはない魅力があるのではないか?」というのがこの日の興行の裏テーマだったのではないか。  例えばこの試合がデビュー戦となったSバンタム級の二階堂雅と丸山俊紀(横浜さくら)の試合は、言ってしまえばディフェンスという概念のない殴り合い、パンチの貰い合いという未熟なボクシングそのものではあったが、ただただ己の気持ちをぶつけ合う不器用なボクシングに最初は苦笑いの観客も、次第に2人の熱に火をつけられて、会場全体で大きな盛り上がりを生んだ。  また、12試合中6試合がKO決着で、短いラウンド数ながらKO率は高かった。フィジカルの弱さ、ディフェンスの甘さからお互いふとした場面で効いてしまうシーンが多く、逆に観る側からすれば展開が読みづらく、それが観戦を飽きさせない要素になっていた。  加えてメインで登場したSライト級の岡田博喜や、ボディ一発で1R速攻KOを飾った中村槙太郎、勢いのあるボクシングで存在感を見せたバンタム級の宮坂航ら、今後の活躍が期待できそうなルーキーを発掘することもできた。  4回戦のみの興行では物足りなさを感じるかと思ったが、むしろ「ならでは」の魅力を堪能することができ、メイン前にはヘビー級の藤本京太郎が、東洋太平洋S・ミドル級チャンピオン清田祐三(フラッシュ赤羽)と3Rのスパーリングを披露。エキシビジョンながらも重量級の迫力のある動きが見られ、終わってみれば十分満足な興行内容だった。


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2012年01月12日

大晦日のボクシング観戦

 2011年の大晦日はトリプル世界戦に加えて元K-1ヘビー級チャンピオンで角海老宝石ジムに移籍した藤本京太郎のデビュー戦もあり、テレビの前でボクシング三昧の年末を楽しむことができた。
 
 大阪府立体育会館ではWBCミニマム級王者の22歳・井岡一翔と京太郎がともに快勝。一方、横浜文化体育館ではWBAフェザー級8位の細野悟(大橋)が王者・セレスティノ・カバジェロ(パナマ)に挑戦するも3-0の判定負け。しかしWBAスーパーフェザー級王者の内山高志は、同級暫定王者の強豪ホルヘ・ソリス(メキシコ)を完璧なボクシングで完封し、11Rに左フック一発でソリスをマットに沈めて見事V4とタイトル統一を達成した。

 個人的なMVPは、これで世界戦5連続KO勝利の内山。右拳の怪我により11カ月ぶりの復帰戦となったが、印象的だったのは右が使えなかった間にパワーアップした左だ。右拳を負傷した三浦隆司とのV3戦を左1本で戦い抜いた内山だが、パッキャオやガンボアらとも戦ってきたソリスとの差し合いを制した鋭いジャブ、そしてコンパクトな軌道から最短距離で打ち抜く左フックはKOパンチにもなった。それに加えて復活した右拳も今まで同様に破壊力抜群。上下を打ち分けるテクニック、ディフェンスに関しても危なげな場面は皆無でほぼパーフェクト。全方位でコンプリート感が高まった内山のボクシングは最後まで圧巻だった。

 この日のもう1人の世界王者、井岡のV2戦は同級10位ヨードグン・トーチャルンチャイ(タイ)と。わずか1R98秒でのKO勝利ということで、正直もっと見たかったが、いくら実力差があったとしてもダウンが少ないミニマム級で、世界ランカーを相手に1R速攻のKO劇にはびっくりした。

 しかし史上最短7戦目で世界タイトルを獲った井岡の佇まいは22歳のヤングルーキーのそれではなかった。王者らしく堂々と、しっかり圧力をかけて距離を支配し、無駄のない動きで一気に攻め立て、最後はワンツーから左フックでトーチャルンチャイのとどめを刺した。この若さでこの安定感、これからキャリアを重ねていく中で一体どこまで進化するのだろうか。井岡一翔、全く末恐ろしい選手だ。次戦とも噂される同級WBA王者の八重樫東(大橋)との統一戦が実現すれば、かなり注目度の高いビッグマッチになるのでは。

 そして我らが京太郎もデビュー戦をオーストラリアのマイケル・オドネルと戦い、フルマークの判定勝利。試合後にKOで勝てなかったことをファンに詫びた京太郎だが、6勝14敗と戦績は振るわないものの、20戦のキャリアがある相手からダウンを取っての完全勝利は、デビュー戦としては十分だったのでないか。

 ボクシング自体もキレのある攻撃的なスタイルで見ていても面白いし、日本人ではめったに見られない重量級はやはり迫力がある。まだまだ荒削りにしろ、高いポテンシャルを持った選手であるのは間違いない。2戦目後にはオーストラリアへ武者修行に行くそうで、日本ではほとんど前例のない階級とあって逆に今までの常識にとらわれずにどんどん海外に打って出るなど、日本のボクシング界をかき回すような存在になってもらいたい。

 しかし、ボクシング観戦を満喫したおかげで充実した年の瀬を迎えることができた。各局の目玉番組との視聴率争いは厳しいかもしれないが、ファンとしてはこの大晦日ボクシングをぜひ毎年恒例のイベントに、とお願いしたいほどだ。プロモーターとテレビ局ががっつり組んで年末に大きな試合をやる、という流れが出来れば選手やファンにとっても夢のある舞台が生まれるような気がするのだが… 

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2011年12月21日

コット×マルガリート2に興奮

 12月3日に行われたWBCスーパーウェルター級タイトルマッチが凄かった。WOWWOWなどでご覧になった方も多いと思うが、3階級制覇の同級スーパー王者・ミゲール・コット(プエルトリコ)と挑戦者・アントニオ・マルガリート(メキシコ)の一戦だ。

 ご存じの通りこの2人は2008年7月にWBA世界ウェルター級のタイトルマッチで対戦し、チャンピオンのコットの猛攻を浴びつつも驚異的なタフネスを見せたマルガリートが11RTKO勝利で王座を奪取。当時ウェルター最強の呼び声が高かったコットは初黒星を喫したが、この試合は有数の名勝負として記憶に残っているはずだ。

 この一戦以降、コットはマニー・パッキャオに破れはしたものの、WBAスーパーウェルター級のタイトルを獲って3階級制覇を達成。一方のマルガリートはシェーン・モズリー、コット同様にパッキャオと、大物相手に2連敗を喫した。

 対照的な2人だが、果たしてコットが初黒星の相手にリベンジできるのか、もしくは後がないマルガリートが1年ぶりとなるリングで華々しく再起できるか。いずれにしても約3年半ぶりに両雄が拳を交える因縁の「コット×マルガリート2」は、パッキャオやフロイド・メイウェザーらスーパースターたちがひしめく中量級戦線での生き残りをかけた一戦だ。

 時の流れは両者の刺青の数に現れていたが、試合はお互いの実力が真っ向からぶつかり合う、戦前の期待を裏切らないほどの「再」名勝負となった。スピード、回転、フットワーク、ディフェンスと総合力で勝負するコットに対して、相変わらずの打たれ強さと馬力で距離を詰め、インファイトを仕掛けるマルガリート。

 初戦と似たような展開となったが、とにかく息が詰まるほどの攻防で両者のパンチが途切れることはない。これに会場も大歓声で応え、2人の戦いは世界最高峰のエンターテインメントシティー、ラスベガスを大いに沸かした。

 しかし今回は王者コットが素晴らしい。ワンツースリーからフォー、ファイブまで行けるほどの高速の連打、前戦のようにロープに詰められた時の対策もしっかりしており、インファイト、アウトボックスを自在に操縦してマルガリートを追い詰めていく。マルガリートももちろん素晴らしいファイターで、特にロープ際のボディなどは凄まじいのだが、リスクを取りながら前に出る戦法はやはり被弾することが多く、中盤までに試合を決められればマルガリート、終盤までもつれればコットといった試合展開。

 コットは中盤以降は極力中間距離で戦いながら、マルガリートの突進を巧くさばいていく。そして3Rにコットの左フックで切れたマルガリートの右目が大きく腫れ上がり、9Rには壮絶な打ち合いの末にその目はほぼふさがった。10R開始直前にレフリーが試合を止めてコットの勝利が確定し、王座防衛とマルガリートへのリベンジを果たした。

 試合続行をアピールするマルガリートの残念そうな顔が印象的だったが、2人のラティーノのプライドがぶつかり合った、まさにボクシングの醍醐味が凝縮されたと言っていい見応えのある試合だった。コットの次の標的が気になるところだが、弱冠21歳で同じくメキシコのヤングスター、WBCスーパーウェルター級王者のサウル・アルバレスとの統一戦は是非実現してほしいところ。パッキャオ対メイウェザーの世紀の一戦とともに、中量級の世界戦線からは当分目が離せそうにない。

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2011年12月08日

下川原、コーチが破れる 今年最後の『角海老ボクシング』

コーチ義人
 今年最後の自主興行となった12月2日の「角海老ボクシング」は波乱含みの展開となった。元K-1ヘビー級チャンプでボクシングに転向した藤本京太郎のプロテストで始まったこの興行、結果だけ見れば4勝2敗と悪くないが、この2敗が大きかった。    勝てば一気に上位ランキング入りが期待されたSバンタム級のコーチ義人は同級5位の中島孝文(ドリーム)に4回TKO負けを喫し、そしてメインで登場したウェルター級2位の下川原雄大がノーランカーの尹文鉉(ドリーム)にまさかの判定負け。奇しくもドリームジム勢に目玉と言っていい2試合で破れ、角海老ファンにとってはほろ苦い後味の残る興行だった。  昨年の全日本新人王で角海老生え抜き、弱冠20歳のコーチに関しては、過去11戦の中で戦ってきた相手とはキャリアで勝る格上ランカーの中島を相手に、どこまでその実力が通用するかが注目された一戦だった。持ち前のスピードとキレを活かしたボクシングで勝負したコーチだが、9月の月間MVPを獲得したばかりの中島は立ち上がり間もなくしてコーチの攻撃をほぼ読み切って4回に2度のダウンを取ってレフリーストップを呼び込んだ。  これが初黒星となったコーチだが、色んな意味で現在の自分の立ち位置が分かったはず。角海老きっての若きルーキーには、この敗戦をバネにより一層の奮起を期待したいところだ。  一方、メインで登場した下川原は、Sライト級の坂本大輔とウェルター級の長島謙吾の角海老ボクサー2人を相手に連覇している尹と対戦。チームメイトのリベンジと、自身のタイトルマッチに向けて格上ランカーの実力差を存分に見せつけてもらいたかったのだが、この日の下川原は最後まで良いところを出せずじまい。初回から尹のカウンターの右でダウンを喫してペースを乱され、そのままズルズルと持ち直すことができずに判定に持ち込まれた。尹はフリッカー気味で左のガードを下げた下川原を見事に狙い打ちし、何度も強打を被弾させた一方、下川原は一向にリズムが掴めずに空回り、最後まで自分の距離で戦うことができなかった。  この試合でウェルター級のランキングがどうなるかが気になるところだが、下川原がこのまますんなりタイトル挑戦とはいかないのではないか。それがプロボクシングの厳しさである。この悔しさを乗り越えるためには、もう一度自らのボクシングを見つめ直し、下川原にはどうにかしてここから這い上がっていてもらいたい。  この2敗以外には、フェザー級8位の緒方勇希、同じくフェザー級の関豪介、Sバンタム級の大橋健典、ウェルター級の鎌田卓の4人が勝利。京太郎も無事プロテストに合格し、ヘビー級で世界チャンピオンを目指していくことをリングの上で誓った。  これで今年の興行日程は終了、2012年最初の『角海老ボクシング』は1月31日を予定している。


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2011年11月20日

防衛ロードで突き抜けろ 日本チャンピオン・加藤善孝に期待

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 10月4日の日本王座決定戦で同級2位の稲垣孝(フラッシュ赤羽)を判定で破り、晴れて日本ライト級チャンピオンとなった加藤善孝。長らくチャンピオン不在の状況に甘んじていた角海老宝石ジムにとっては、約3年ぶりにベルトが戻ってきたこの戴冠劇は喜ばしい限りだが、強敵たちが待ち構える加藤の防衛ロードは決して易しい道ではないのもまた事実だ。  稲垣戦後に佐藤直樹トレーナーが「これが現時点の実力」と評したように、チャンピオンとしての足元を安定させるためには、加藤には今まで以上の努力が求められることは間違いない。  試合から1カ月経った現在、加藤本人に心境を聞いたところ、「前回の稲垣戦は納得できる内容じゃなかった。これから毎戦厳しい試合が続くので、練習量を増やして良い勝ち方ができるようにしていきたい」と話し、喜びに浸る余裕がないことを自覚している。そして、「チャンスに攻めきれないこと。まとめる力を身につけたい」と課題を挙げた。  加藤はこの試合でいずれも単発の右の強打で2度稲垣をぐらつかせた。本来ならばそこから連打をまとめてダウンまで繋げたいところだが、最後まで詰め切ることはできなかった。相手を効かせた時に、そこから一点突破をするための瞬発力や連打をまとめる回転力を手に入れることは、本人が言うようにここ最近の加藤の課題だろう。まとめる力、それすなわちダウンを取る力であり、勝敗を分ける力でもある。  チャンピオンの防衛ロードは辛く厳しい。しかしその辛く厳しい防衛ロードを歩き続けることで大きく成長するボクサーも多い。元WBA世界ライト級チャンピオンの小堀佑介は2006年1月に日本チャンピオンになって以来、2年間にわたり6度の防衛に成功。その時々のトップコンテンダーたちとの戦いの中で突き抜け、世界の頂点にまで上り詰めた。これから毎戦がタイトルマッチという今までとは一つ上のステージで戦う加藤もこれを機会に大きく突き抜けてほしい。  「ひとまず自分がやってきたことを形にすることはできた。ここからさらに上を目指していきたいし、まずは『国内最強』と言われるようになりたい」と加藤はこれからの意気込みを語る。最初の防衛戦は来年早々に、2009年12月に一度対戦して2-1の僅差判定負けを喫している階級1位の近藤明広(日東)を挑戦者に行われる予定だ。


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