2007年06月05日

2007年5月3日のことを僕は忘れない

長年ボクシングを見続け、自他共に認める大のボクシングファン、村木田一歩氏の独善コラム!

長い間ボクシングと関わっていると、それぞれが忘れがたい試合の記憶を持っているものだ。観客としてなら、古い年代の試合から最新のバトルまで、日本国内から海外の試合まで。タイトルマッチの場合もあれば、4回戦の場合だってありうる。ボクサーなら、自分の試合の場合が多いのかも知れない。

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リングから降りて、控え室に戻る道を『本望さん』はエンエン泣いていた。もう少しやらせて貰えれば、前半の負け分をチャラにできたのに、自分の傷つきやすい顔面が悔しくて、もうボクシングが出来ないのが悲しくて・・・。まるでけんかに負けた子供のようだった。『矢吹ジョー』は白くなったが『本望さん』はエンエン泣いた。 いつもクールだった『本望さん』。あんな『本望さん』は見たことがない。レフェリーに最後のストップをかけられた時、膝を落とし、有明コロシアムの天井に向かって「アアーッ!」と大声を上げて、リングでデングリ返った。やっとこさ青コーナーに戻って来た時も、ロープにもたれながらヘナヘナとしゃがみ込んでしまった。その時、ジムのオーナーが「本望!泣くな!」と怒鳴った。『本望さん』は「ハイ!」と大声で気合を入れ直して、立ち上がった。最後の最後で僕は知った。『本望さん』は、実はこの上なく熱い人だったのだ。トレーナーの『田中さん』は、なんにも言わないで『本望さん』の体を拭いていた。僕は、青コーナー近くで全部見ていた。心にしみた。ボクシングを見てて感動したことは幾度もあるけど、泣いたのは多分初めてだな。 あの日、第8ラウンド。もう止められるのが分かって『本望さん』は鬼のように打ち合った。鮮血で顔面真っ赤にされて、首がヒン曲がるほど殴られても『本望さん』は、ダウンはおろか、ガクッともしなかった。何度かバレロの足が揃い、「ここで一発強いのが当たれば」とか、「この瞬間に左アッパーが当たれば」とか、あとほんの一瞬の幸運があったなら、バレロを倒す場面さえあったと思ってるんだけど、どお? 次のファイナルの試合も世界戦だったけど、3ラウンドに一番後ろの高い席の方から、唐突に何と何と”ホンモ!ホンモ!”のコールが起こった。僕と同じ気持ちの人達がいたんだ。また、じわっと目がうるんで、前の試合の『本望さん』が戻ってきたよ。それに比べて、今リングの上で行われているのは、あまりに違ったボクシングだった。僕は「今日は視野の狭い観客でいい」と思って、4ラウンドで会場を後にした。


posted by 角海老広報室 |13:53 | コラム-リングサイド | コメント(0) | トラックバック(1)
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