2006年09月22日

ボクサーという人種

97年エディ・タウンゼント賞受賞の名伯楽、角海老宝石ジムの「先生」こと田中栄民チーフトレーナーが選手のことやジムでの出来事、試合の裏側などを毎月語ってくれます!!


そういえば角海老にいた前田(宏行、3階級制覇元日本チャンピオン)がついにK-1デビューしたな。試合は残念ながら途中で怪我をしてしまいTKO負けだったんだが、前田はなかなか頑張ってたぞ。あれは怪我さえなければ勝てた試合だったな。人気や認知度で言えばホントに大きな舞台だから、前田には是非ともボクシングの強さをアピールしてもらいたい。


しかし前田にしてもそうだけど、戦うことの魅力を知ってしまうと引退してもきっと血が騒ぐんだろうな。特にボクサーという人種はその傾向が強いじゃないかって思うんだ。もちろん格闘家も本気で強くなりたいっていう奴が多いのは分かってるし、俺はボクシング以外の格闘技に否定的な意見を持ってるわけじゃないよ。

ただボクシングっていうのはたとえ日本チャンピオン、もしくは世界チャンピオンになったって有名になれるわけじゃないし、金持ちになれるわけでもない。メディアだってテレビは深夜にしか放送されないし、専門誌があるだけだ。そう考えれば、いまの世の中で格闘技をやろうと思ったらまず思いつくのは PRIDEやK-1だろう。山本KIDや魔裟斗をはじめカリスマファイターやメディアの露出も多い。やっぱり普通は華やかな舞台に行きたいじゃないか。

そんなボクシング低迷の時代の中で、あえて他の格闘技じゃなくてボクシングをやろうと思うのはどんな奴か。まあ一言で言ってしまえば変人だな。人気や金じゃなくてただ純粋に「男は強くてなんぼ」、そんな考え方を持ってる変わり者。根っから戦うことが大好きで、腕っ節でしか自分を表現できない不器用な人間たちだよ。前田にしろ坂本にしろ辰吉にしろ、結局戦うことが大好きで大好きで仕方がないんだよ。


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そんな人間たちだよな、ボクサーっていうのは。だからどこのボクシングジムもそうだろうけど、今の時代には珍しい本当に変わった若者たちが集まってきてる。でも考えてみれば、インターネットなんかで世の中はどんどん便利になってきたけど、その一方で親殺しや子殺しのニュースがありふれて、社会が本当に「なんでもあり」の時代になってきてる。 そう考えると俺はむしろ世の中の方がおかしい、変わってるんじゃないかって思うんだよ。ボクシングをやるような若い奴ってのはそんな世の中から見れば変わり者だけど、人間的にはしっかり生き甲斐を持って、周りに流されず自分の価値観だけを信じて生きてる実はまともな連中なんじゃないかなって。 ボクシングの世界でトップを取って一つ得られるとしたら、この競技の長い伝統と歴史が認める「日本で一番強い男」、もしくは「世界で一番強い男」っていう名誉と称号だけだ。古くさいかもしれないけど、そんな馬鹿みたいな男たちがいたっていいんじゃないか。たとえボクシングでトップを取ることができなくても、ボクシングを通して得られる厳しいけれどもこの純粋で濃密な経験っていうのは、その後の人生の大きな糧になるはずだ。ボクシングをやめて、前田のように舞台を変えて戦う者もいれば、新しい人生と格闘する者もいる。どんなに不器用だとしても結局自分さえ見失わなければ心配はいらない。ボクシングっていうのはそういうことを教えてくれるスポーツでもあるんだよ。


■田中栄民プロフィール
http://www.kadoebi.com/boxing/trainer/tanaka/

posted by 角海老広報室 |16:36 | 田中栄民の徒然なるまま日々のこと | コメント(0) | トラックバック(0)
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