2006年11月10日

[榎洋之]ナデル・フセイン戦を終えて

東洋太平洋タイトルマッチの初防衛戦で世界の強豪、ナデル・フセインを相手に判定ながらも試合内容では圧倒し、見事な勝利を収めた榎洋之。念願の世界挑戦をついに視野に捉えた榎にその心中を聞いた。


-初防衛戦お疲れさまです。長いブランクや怪我など不安な要素も多かったと聞いていますが、試合は完全勝利と言ってもいい内容でしたね

「有り難うございます。周りからは格上、格上って言われてたし、ほとんどの人が自分が負けると思ってたみたいです(笑)。痛めていた拳(腱断裂)を手術したんで練習期間もあまりないし、ブランクも8カ月と長かったんで不安は不安でした。ギリギリでしたけど逆に練習は集中してやれたんで自信はありました」

-初めて世界のトップランカーと拳を合わせてみてどうでしたか?

「自分はジャブだけは絶対的な自信を持ってるんですけど、フセイン選手は差し合いでもかなり対等に渡り合ってきたんで、少しびっくりしましたね。それが世界基準っていうことだし、自分の得意な部分ももっと磨いていかないといけない。あとはやっぱり経験値ですね。上に行けば行くほどそうだと思うんですが、どんな逆境でも冷静さを失わない。常に自分より落ち着いてました。試合の主導権を握っていたのは分かってたんですが、判定の結果は2?3ポイント勝っただけなんですよ。もっと取ってただろうと思ってビデオを見たんですが、自分が感じてるほどの差はなかった。立ち振る舞いで巧くごまかされてるっていうか。それも実力なんですよね。世界はそういう舞台だし、そういう点では勉強になりました」

榎洋之
-判定で勝利が決まった瞬間は珍しく飛び上がって喜んでいましたが、あの時の心境について聞かせて下さい 「これに勝てば世界に挑戦する資格があることを証明できる相手だったんで。勝利が確定した瞬間は自分のボクシングが世界に通用することも分かったし、やっと認められたっていうか、そういう気持ちで思わず喜んじゃいました。でも今振り返ってみれば判定じゃなくて倒さないといけない相手だったと思うんですよ。あのボクシングでも絶対に倒せたはずだし、世界チャンピオンはそんなに甘くないと思うんで」 -そういう意味では反省点もあった? 「そうですね。最終12ラウンドはポイントで勝っていたのが分かってたんで、とりあえず大きなパンチを貰わずに逃げ切ろうって気になっちゃったんですね。世界戦がやりたいなら、ああいう場面でも攻め続けなきゃいけないと思う。倒せない相手じゃないし、最後まで狙っていかないと。それにはもっとスタミナもつけないと。まだまだ強化していく部分はあります」 -ただ今回の試合が自分のボクシングに対する大きな自信になったのではないでしょうか? 「それは間違いないです。今までスピードがないからダメだって言われることが多かったんですけど、確かにそれは事実ですよ。もちろんスピードを付ける努力はしていますが、スピードがないならないなりにやれることはあるんです。そう思ってずっとやってきて、あの試合では自分のボクシングを良い形で表現できたと思います。そしてこのままやっていけばいいっていう自信にもなったし、迷いもなくなりましたね」
榎洋之
-さて、フセイン選手に勝ったことでランキングも上位(WBA3位、WBC6位)に食い込み、いよいよという期待が高まっていますが 「9月に27歳になったんでこの1年の間にやれればいいと思ってます。年齢、キャリアから見ても今がピークだと思ってるんで」 -日本のフェザー級では全戦全勝のホルヘ・リナレス選手(帝拳ジム)も世界戦線に名を連ねていますが 「リナレスですか……(苦笑)。世界戦の前なのか後なのかは分かりませんが、リナレスとはいずれやらないといけないと思ってます。強い選手なのは知ってますが、通用しない相手だとも思わない。リナレスに勝って世界チャンピオンになれば、それこそ誰も文句は言わないだろうし。やる時はお手柔らかにお願いします(笑)」 -榎選手は常々「応援してくれる人たちのためにボクシングをやっている」と言っていますが、世界の頂点に立ちたいという個人的な願望はないのでしょうか? 「昔は最強になりたいとかそういう地位や名声に憧れたのも確かです。でも地元の秋田の人たちや、昔からずっと応援してくれる人たちがたくさんいて、その人たちが支えてくれるから、こうやって好きなことでメシが食えてるんですよ。そういう人たちがいてくれるから自分は強くなってきたし、それは今でも同じです。応援してくれる人たちがいてこその自分なんです。それが僕にとってのプロ意識だと思ってます。世界王者はボクシングの最終地点。そこまでやり通すことがみんなに対する礼儀だし、何かをやり残して終わることはしたくないんです」 -初防衛戦を見ていて結局勝敗を分けたのは技術的なことではなく、榎選手の勝ちたいという気持ちがフセイン選手のそれを上回っていたからのようにも思えました。世界戦もそれと同様に最後はどちらの思いが強いのか、ということが勝負を決めるように思うのですが、その辺の気持ちの部分を聞かせて下さい 「その通りだと思います。世界レベルになれば技術的に大きな差はないわけで、お互いが長い間歩んできたボクシング人生を背負って舞台に上がるわけですよね。そうなると最後は世界タイトルというものに対してどちらの思いが強いのかという勝負になると思います。1度だけのチャンスだと思うし、応援してくれる人たちの本気の思いを背負ってその舞台に上がるわけだから、気持ちで負けることは絶対にしたくない。その時は世界のベルトを巻くのにふさわしい心を持ってリングに上がりたいと思います」 -プライベートでも最近入籍されたと伺っています。奥様のサポートもあり、ボクシングに集中できる環境が整ったことで、「世界獲り」が家庭でも至上命題になるかと思いますが 「はい、そうなんです(苦笑)。さらに実は来年の頭に父親になります。彼女は自分が足の怪我をして一番辛い時期に支えてくれた女性なんです。ボクサーの妻としての覚悟もできたようで安心してます。ただあまり幸せ過ぎて満たされていると勝負には勝てないのでその辺は自重しながら……(笑)。子供が出来て家族を持つことが怠け者の自分には良いプレッシャーにもなるし、やっぱり応援してくれる人たちに加えて、自分を支えてくれる家族のためにもなんとしても世界王者にならないと」
榎洋之
-ご家族のためにも頑張って下さい。これからの榎選手に期待しています。今日はどうもありがとうございました。最後にファンの皆様に一言 「はい、僕の試合に観に来てくれる方々や後援会や秋田の皆様、いつも本当にありがとうございます。絶対に世界王者になりますので、これからも引き続き応援宜しくお願いします!」


■榎洋之プロフィール
http://www.kadoebi.com/boxing/players/index.cgi?n=335

posted by 角海老広報室 |21:23 | コラム-KNUCKLE IS THE SOUL | コメント(0) | トラックバック(0)
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