2008年04月30日
『‘08チャンピオンカーニバル』村木田一歩
1月5日から4ヶ月にわたった今年のチャンピオンカーニバルも、4月20日のウェルター級の一戦で幕。例年通り、年明けの最初は角海老ジムの興行で、1月はこれを含め2試合、2月は4試合、3月が1試合で4月が6試合の計13試合が終わった。去年の12月に全階級の組み合わせが発表された時点でそれぞれの勝負の行方を予想していたんだけど、その結果は以下のとおり。(敬称略) MM………黒木―三澤(黒木の判定勝ち)→○ LF………嘉陽―国重(嘉陽の判定勝ち)→○ F…………吉田―清水(清水の判定勝ち)→○ SF………河野―相澤(河野の判定勝ち)→○ B…………三谷―大場(大場の判定勝ち)→○ SB………下田―山中(下田の判定勝ち)→○ Fe ………粟生―榎 (榎の判定勝ち) →引き分け SFe……… 小堀―松崎(小堀のKO勝ち) →小堀の判定勝ち L…………中森―石井(中森のKO勝ち) →石井のKO勝ち SL………木村―松本(木村のKO勝ち) →○ W…………湯場―沼田(湯場のKO勝ち) →沼田のKO勝ち SW………石田―川崎(石田のKO勝ち) →○ M…………江口―鈴木(江口の判定勝ち)→○ 自分にとっての番狂わせは、ライト級とウェルター級の試合だった。最近の『中森さん』の勢いは半端じゃなかったからね。世界戦の予定もないのに『長嶋健吾さん』がタイトルを返上してしまった具体的な理由は知らないけど、『中森さん』との戦いを回避したのか、ケガなのか? ホールには来てたけどね。 その『中森さん』は序盤若干優位に試合を進めていたにもかかわらず、「行ける!」と思った瞬間の判断が彼を炎の人に変えてしまって、攻撃一辺倒になった途端をやられたのは、去年暮れ『湯場さん』と戦った時の『あきべえさん』の場合と同じだと思う。その『あきべえさん』は、4ヵ月後の4月21日『上石剛さん』との復帰戦でも全く同じ轍を踏んでしまってとても残念だけど、二人ともリング上でもう少しクールに戦えば随分違ってくると思うな。 余談。『あきべえさん』が1RKOされた翌日スーパーウェルターのOPBFタイトル戦があったんだけど、『日高和彦さん』をあと一歩のところで仕留め逃した『柴田明雄さん』も『日高さん』をグラッとさせた後の詰めで舞い上がってしまい、赤コーナーに押し込んでからの15~16発の連打のうち13~14発が空振りかスカみたいなパンチだったもんなあ。 『沼田康司さん』には6回戦の頃から注目していたもんで、そりゃあ勝って欲しいとは思っていたけど、『湯場さん』のキャリアの前では今回はチョット難しいだろうなと予想していたから、正直タマゲタ。翌日ネットで映像を見たんだけど『沼田さん』は序盤いつもの試合運びとは違って、足を十分に使い、ゴツイけど柔軟性のある上体を揺すりながら出入りを繰り返し、距離を計りながら『湯場さん』の動きを見極めていた。 あんな事もできるんだあ。 このまま暫く行くのかなあと思っていたら、3Rの後半から突然にプレスをかけ始め、いつもの『沼田さん』が登場してきた。反対に『湯場さん』のパンチには日頃のキレがないように見えた4R、『沼田さん』は『湯場さん』の若干不用意な左をかわしざま「ゴツ!」と右フックを顎付近に叩き込んで、ダウンを奪った。勝負は既にここで終わっていた。カウントエイトくらいで立ち上がった『湯場さん』には『あきべえさん』に倒された時以上の甚大なダメージが残っているのは明らかだった。『沼田さん』は冷静な連打でコーナー近くで『湯場さん』にとどめを刺した。 初めのダウンを奪った時、『沼田さん』はレフェリーに指図されることもなく、自らゆっくりとニュートラルコーナーに歩いて行ったし、再開された時も、いきり立ってがむしゃらに倒しに行くということもなく、『湯場さん』のダメージを推し量るようにしてから、クールな攻撃に入っていった。こんなファイターはそういないと思う。 C・C出場者の中では最多KO数を誇る3階級制覇のチャンプを撃破したんだから、当然MVPだと思っていたら何と『木村登男さん』だと。『松本憲亮さん』との試合でも『木村さん』の試合運びは惚れ惚れするような職人仕事のようだったけど、彼はちょっと前に防衛記録の件で100万円も貰ったことだし、そもそも今回のC・Cではランク8位が相手だったことから考えても、『沼田さん』の衝撃度の方が圧倒的だと思うんだけどなあ。納得いかないなあ。選考委員の人たちは本当にこの試合を見たのかな。2歩も3歩も譲らせて、4月のMVPにするから、ここでは殊勲賞で我慢我慢ということなの? 『沼田さん』はタイトル戦の翌々日には後楽園ホールにやって来て、『日高さん』の控え室に挨拶に行ってたけど、殴られた跡など全く無く、いつもの普通の顔をしていた。今のところ日本で一番名前が売れていないチャンピオンなもんで、ファンから囲まれたり握手を求められるということもなく、観客に紛れて普通に試合を観戦していた。 今回のC・Cの中で注目度が一番大きかったのは、言うまでもなく『榎さん』と『粟生さん』の一戦だったけど、引き分けという裁定は妥当だと思っている。自分がそれぞれの陣営の人間と想定して2回ビデオを見返したんだけど、違った結果になったからね。それにしても、まあ図ったようなドロー劇だったなと感心している。あの試合、よりリスクのあった、つまり負けた時のダメージが大きかったのは、間違いなく『榎さん』の方で、一挙に引退まで追い込まれる可能性だってあると思っていた。ならば、むやみに『粟生さん』を追い過ぎてスタミナを消耗させるのは得策ではないし、するどい左カウンターを喰らう危険を冒してまで右フックにこだわらなくてもいいのではないかと思っていた。だから、あの戦法で大正解!その点からすると、余裕のあったのは『粟生さん』の方で、もし負けても日本チャンピオンに再トライする機会はすぐに訪れるはずだから、本当はもっと攻めていくのではないかと思っていた。そこら辺りが打撃戦のきっかけだろうと思っていたんだけど……。 以前ある人から聞いた話なんだけど、江戸時代、本当の果し合いを見た人の話。映画のように向かい合うなりいきなりガアーッとは斬り合えず、物凄く長い時間対峙していたんだと。西部劇のガンマンの決闘の場合だと、とにかく早撃ちが勝負の分かれ目というのは理解しやすい話だけど、刃物の斬り合いとなると、なかなか最初の一太刀が振り出しにくいというのも何となく想像できる。二人の試合には、そんな抜き身による勝負みたいなところがあって、研ぎ澄まされた殺気が凄くて自分はとても面白かった。 技能賞は『下田昭文さん』ということだが、個人的には徐々に相手にやる気をなくさせる抱きつきバッティング戦法を強い意志で耐え抜き、常に的確にパンチをヒットさせ続けた『清水智信さん』にこそ相応しいと思う。予想通り今回のC・Cの中で一番見所の乏しい盛り上がらない試合だったけど、これからはフライ級のタイトル戦も面白くなるに違いない。 それから、派手なダウンシーンこそなかったが、SF級の『河野さん』と『相澤さん』のパンチの交換はホント見ごたえあったなあ。 『川崎さん』は、まだ燃え尽きていないんだ、いいなあ。 1月5日『小堀さん』は、眠むそうだった。彼は、4回戦の頃から「2連敗はカッコ悪いからなあ」という理由で練習に励むようなところがあって、つまり、何かモチベーションがはっきりしていないと頑張れないタイプなんだな。その点『真鍋圭太さん』とのタイトル戦は凄かったからね。その『小堀さん』が世界戦だってことで、最近はエラク気合が入っているらしい。『ホルへ・リナレス』とのガチのスパーリングは記者たちがタマゲルほどだったとか。以前ビデオで『エドウィン・バレロ』とのスパーを見たけど、『小堀さん』は相手が誰であろうとビビるというようなことがまるで無いボクサーで、初めの日に『バレロ』に結構やられたのに、「今度はボコボコにしてやります」って言ってたので、「どうだった?」と聞いたら「この間よりもっとボコボコにやられました」って普通に言ってたとのこと。彼に勝たせる、つまり彼を必死に頑張らせるには、負けたらインタビュー有り、勝ったら無しという条件にしたらいいんじゃないかと思うんだけど……。 『小堀さん』も『沼田さん』も体内に溶鉱炉を備えたクールなファイターだけど、あんまり人にいじられる事は好きではないところも良く似ていているので、遠くから見ていてあげるともっと伸びると思うな。 残念だったのは『大場さん』と『三谷さん』、『黒木さん』と『三澤さん』の試合に立ち会えなかったこと。 東京以外で行われた試合は、B級とW級、M級の3試合。12人のチャンピオンのうち (SFe級は空位)10人までが首都圏ジムのボクサーということになった。
posted by 村木田一歩 |17:07 |
コラム-リングサイド |
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