2008年04月24日

『止め時』は、“やめどき”とも“とめどき”とも読める。 村木田一歩

20080424
ボクシングにおける“とめどき”とは、試合中のレフェリーストップとセコンドからのタオル投入のタイミングということになる。 このうちタオル投入の場合は、観客を含めてほとんどの人たちの納得が得られるが、 レフェリーストップのケースだと、止められた側のボクサーやセコンドから大きな不満が生ずる場合が度々ある。 だけど、試合の最中ボクサー自身は勿論、セコンドを含めた周囲の全てが、アドレナ リン大噴出で言わば舞い上がった状況になってしまうことが多いし、どうしても身贔屓な判断をしがちになるものだし、そもそもボクサーの健康に配慮すれば、早目早目の“とめどき”こそが望まれる。 次に、“やめどき”のこと。で、以下の『止め時』は“やめどき”と読む。 ボクサーがリングを去る理由には、実に様々なものがある。 周囲が最も分かりやすいのは、身体上・健康上の理由だ。外傷性のケガのみならず、視聴覚関係や脳のトラブルに直面してリタイヤすることもとても多い。それと年齢的なもの。全くの私見なのだが、それまで勢い一発でやって来たボクサーでさえも、32才頃になると過去を振り返り、将来を見据えて色々考える時期を迎えるのではないかと思っている。以前のビデオを見比べても動きの違いを知らされることにもなる。 その他の止める理由としては……。  ・なかなか負け越しが解消できなくて  ・戦績も芳しくなく、そんな折の微妙な判定に嫌気がさして  ・自分に対するジムの期待が段々薄れてきているような気がして  ・これ以上頑張っても上へ行ける気がしなくて  ・自信が過信に過ぎなかったと気づいて  ・一応タイトル戦まで行ったので  ・家族の反対が強くなってきて  ・子供もできたし、このままでは暮らしがきついので  ・仕事と両立できなくなって  ・他に自分らしさを発揮できる場所を求めて  ・とにかく限界! その一方で、なかなか“止めない”あるいは“止められない”ボクサーもたくさんい る。 頂点を極めたわけでもなく、自分でも極められると思ってもいないのに、止めないボ クサーがいる。 トレーナーや更には友人達さえも「そろそろ止め時じゃない?」なんて雰囲気なの に、それでも止めない。 そういう彼にとっては、自慢できるものではない戦績さえもそれほど気にかかるもの ではなく、とにかくボクシングが大好きで、あのカアーッと照らし出されたリングに上がるのがたまらないといった感じなのだ。 食べたいものも食べずに走って走って、トレーニングを重ね、5~10㎏も減量し て、同じように苦しんだであろうそんな相手を殴り倒そうというのがボクシングだ。 嫌がっている所を攻め、出血した傷口に更にパンチをぶち込もうとするのがボクシン グなのだ。 ボクサーの中には、サドとマゾが同居しているとしか言いようがない。 そして、減量やトレーニングに苦しんでいる自分を、ストイックでカッコいいと思え るくらいでなければ続けられないスポーツだし、その思いに強く執着すればするほど、ボクシングから足を洗えなくなるのだと思う。 そう考えると、止めると言って一度ボクシングから遠のいたボクサーが再びジムを訪 れるのもよく分かる話しだし、ずっと以前に引退したのに、ついつい後楽園ホールに足が向いてしまうっていうのも共感できるのだ。 だって、一度引退式をやってもらったにもかかわらず、またリングに立ったボクサー さえいるんだからね。 そんなボクサー達はみんな、「自分の努力が足りず、まだ限界に挑戦できていな い。」と思っているし、「まだ燃え尽きていない。」と感じているのだ。そう、この “燃え尽きていない”というのがキーワードなのだ。 燃え尽きたかどうかについての判断基準は、全てのボクサーの心の中に固有のレベルで存在するものなので、「これだけやったんだから。」とか 「ここまで来たんだから。」という周囲が抱いている常識的な判断や画一的な見解・ 思惑などが通用するものではないのだ。だから、ボクサーは、それぞれが“燃え尽き た”か未だ“燃え尽きていない”かについて一人でジックリ考えて、自分だけの『止 め時』を決めればいいのだ。 自分の部屋にはボクシングや音楽と映画に関したものが雑然と散らばっていて、大型 のアクオスもあるし、どこかに猫もまぎれていてとても居心地がいい。壁や天井にも 気に入ったボクシング関連のポスターがたくさん貼ってあるんだけど、このあいだボ ヤーッと眺めていたら去年の5月の角海老ボクシングのものが目が止まった。そして 顔写真が出ている4人のボクサー全員がもういないことに気が付いた。『渡邊一久さ ん』『木嶋安雄さん』『佐藤常二郎さん』『平野博規さん』。それぞれまるで性格の 違う思い出深いボクサーたちだった。4人には4通りの引退理由があったんだけど、 ボクサーの寿命は何て短いんだろうと感慨深いものがある。でも彼らはずーっとDVD の中に生き続けている。そうやって頑張ってた姿を残しておけるのは羨ましいとも思 う。自分も頑張った時期はあるんだけど、それは自分の記憶の中だけにしかないから ……。 何十年も前の話だけど、日本タイトルに挑戦した試合で、チャンピオンをKOに下し、新王者になったその日に、ベルトを返上し引退届けを出したボクサーがいた。彼はそ の夜「限界だ、もう十分地獄を見た。」と言って、青白く燃え尽きたのだ。 それから、あの『矢吹ジョー』は白く燃え尽きたし、『本望信人さん』は、去年まさに真っ赤になって燃え尽きた。 果たして君は、何色で燃え尽きるのか……。 ♪右利き用のビッグヘッドのストラトキャスターを逆さまにして使ってたジミ・ヘン ドリックスも異様にカッコ良かったなあ。  ただ、ギターにライターオイルぶっ掛けて火をつけたり、アンプをぶち壊すのは、 意味わかんなかったなあ。フーもやってたけど……。


posted by 村木田一歩 |10:46 | コラム-リングサイド | コメント(1) | トラックバック(0)
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この記事に対するコメント一覧
『止め時』は、“やめどき”とも“とめどき”とも読める。 村木田一歩

この記事を読んでジムは違うけど
辰吉を思いました

彼は現時点で試合ができる可能性はないと思います
そうなると彼は燃え尽きることができないような
いったい彼はどんな終わり方をするのか
すごく興味がありますね

posted by 731 | 2008-04-25 09:39

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