2007年12月17日
「サウスポー」
世の中の殆どの道具や機械は、実は右利きの人向けに作られている。 ハサミ、自販機のコイン投入口、縦書きの書物、電卓やパソコンのキーボード、パチンコ台のハンドル、エレベーターのボタン、洋服のファスナー、ドア、キッチンのレイアウト等々枚挙に暇がない。今は知らないが、自分が子供の頃、野球の左利用のグローブは、右利きのものよりかなり割高だった。 事ほど左様に、左利きの人はマイノリティであるがゆえに、長い間冷遇されてきた。 だから、親たちは、自分の子供たちに左利きの兆候が現れると、懸命に右利きに矯正しようと努める。 ところが、ことスポーツの世界になると、この一般生活上ではハンデとされている左利きが、希少性のゆえと、その種目のグラウンド構造上の利点、更には利き腕を押す力より引っ張る力に利用させる方が有利と判断されるなどのケースにおいて、右利きより優位に立つ場合がある。 そんな場面では、意図的にサウスポーに転換させるということも多い。 野球で言うと、イチローや松井秀喜だな。 現在日本のプロボクサーは、約2,500名いるが、そのうち8回戦以上を戦うことのできるA級ボクサーは約500名。更にそのうちチャンピオンを含めたに日本ランカーが全13階級で157名、また、世界とOPBFのチャンプ、それに15位以内の世界ランカーが別に36名いる。 (11月末現在、重複分は除外) それで、これらを合わせた日本のトップボクサー計193名の中にサウスポーが何人いるのか調べてみたら、29名もいた。これは数値的には15%ということになるのだが、実は何とボクサーの7人に1人がサウスポーだということを知って大いに驚いた。 通常人の左利き比率を考えると、これがいかに大きな数値だかが理解できる。 更に詳しく見てみると、上記のチャンピオンを含めた日本ランカー157名の中には25名のサウスポーがいるのだが、面白いのは、ミニマムからスーパーバンタムまでの6階級74名の中には7名しかいないのに対して、フェザー級以上83名には18名ものサウスポーがいることだ。 何と22%、5人に1人がサウスポーなのだ。 そして、フェザー級以上の7人のチャンピオンのうちの実に5人がサウスポーボクサーで、オーソドックスのチャンプは『小堀佑介さん』と『石田順裕さん』の二人しかいない。 これに対し、バンタム級以下にはサウスポーのチャンピオンは一人もいない。 今、日本のボクシング界は、軽量級以下はオーソドックスが主流で、それより重いクラスは、サウスポーの天下と言うことができる。 更に、更に特筆することがある。それは、「帝拳ジム」のこと。 老舗の名門「帝拳」は日本のトップボクサー193名の中に、何と15名という大量のボクサーを送り込んでいるが、そのうちの6名がサウスポーなのだ。これは40%に相当し、平均15%のサウスポー比率からすると頭抜けた数値になっている。 生来の左利きばかりを集めているとも思えないので、ジムの方針として練習生を積極的にサウスポーに転換させているのではないかとも推察できるし、そもそもボクサーの親が、プロになる以前のアマ時代の息子をサウスポーに矯正しているとも考えられる。優秀なアマチュアが多く集まる「帝拳」ならではの顕著な傾向のようだ。 そう言えば、ずーっと以前『下田昭文さん』にサインを貰った時、彼は右手で書いてくれたなあ。 色々考えてみると、ボクシングにおいて、サウスポーはその希少性からして、まず最初のアドバンテージと言っていいのかもしれない。それから、大きいパンチは利き腕による一撃が最も有効なのは当然だが、実はジャブも本来の利き腕によって数多く、力を込めて打つスタイルが望まれつつあるのかもしれない。そして、それはもうジャブではなくなる。 ならば、最後の疑問。サウスポー同士は、お互いにやりにくいのか? それも確認すべく、12月6日のウェルター級のタイトル戦を見に行った。 早いラウンドでの『牛若丸あきべえさん』のドカドカ攻撃をうまくいなしきれたら、3階級も制覇している『湯場忠志さん』の経験のほうが優位ではないかと思っていたが、何と1R開始10秒ほどで、『あきべえさん』の右を食らって、あっという間に『湯場さん』がダウンしてしまって、場内もう大騒ぎ! 「うーん、若さと勢いが勝ったか。」と思ったが、『湯場さん』の足は思いのほかしっかりしていて、目に戸惑いの色もなく、そこで改めてプライドと闘争心のスイッチを入れたようで、鬼のような反撃が始まった。『あきべえさん』も一気にカタを付けてしまおうと左右のフックをブン回す展開となり、二人の拳が交差するなか、『湯場さん』の左クロスが炸裂した。 まさに波動砲の如く炸裂した。この辺りで開始30~40秒か。 かろうじて立ち上がった『あきべえさん』だが、明らかに『湯場さん』よりダメージが大きく、膝の柔軟性を失っていた。若さが前面に出過ぎてしまった結果だった。 『湯場さん』は、いつもの冷静で冷酷なスナイパーのように『あきべえさん』を攻めた。 いまだ回復途上の『あきべえさん』もひたすら相手の顔面を狙い、二人ともボディには全く目もくれない。『あきべえさん』が段々とヘロヘロになっていった次の瞬間、2発目の波動砲が発射され、『あきべえさん』がロープに吹っ飛ばされ、万事が休した。 『湯場さん』はゆっくりニュートラルコーナーに歩を進める。カウント8でも立ち上がれず、目を泳がせている『あきべえさん』にセコンドからタオルが投げ入れられた。何故だか黒い色のタオルだった。観客もボクサーもセコンド陣も、皆が大慌ての1分30秒だった。 金平会長の2個分もあるデカ頭の大巨人『ワルーエフ』が見に来ていた。 “サウスポー同士はやりにくいのか”という課題には結局何のヒントも得られず、“そんなの関係ねえ”というのが、この日の回答だった。
posted by 村木田一歩 |13:44 |
コラム-リングサイド |
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この記事に対するコメント一覧
「サウスポー」
ムラキダさんのコラムだけのアイコンを作ってください。
posted by 名無し | 2007-12-17 17:41
「サウスポー」
アメトーークでやってた左利き芸人を見ましたね
posted by アメトーーク | 2007-12-17 20:12




