2006年05月27日

タイトルマッチの裏側

97年エディ・タウンゼント賞受賞の名伯楽、角海老宝石ジムの「先生」こと田中栄民チーフトレーナーが選手のことやジムでの出来事、試合の裏側などを毎月語ってくれます!!


5月はなんといっても日本、東洋、世界のタイトルマッチが5試合もあったからな。ジムとしても非常に忙しかったよ。木嶋は残念だったが、4本のベルトを持ち帰ってきたという結果には満足していいと思う。そういう意味では今月は話のネタも多いから試合を中心に色々と振り返ってみようか。


渡邉一久&小堀佑介
まずは一番目立ったという意味では一久(渡邉)の試合だったんだろうな。派手な入場やラフなスタイルばかり注目されるけど、あの試合の課題は実は「ジャブ」だったんだよ。 練習でもジャブを中心にやったんだけど、ミット持ってても初めは「パスン、パスン」って情けない音しか出ない。それで「おい、お前ジャブ全然ダメじゃん」って小馬鹿にしてやったら、悔しがって真剣にやるようになった。これは一久を指導するコツなんだけど、あいつは基本的にすごく負けず嫌いだから、プライドに障るようなことを言われると「なんだよ、ちきしょう!」って逆に頑張るんだ。ただ、たまに「なんで小堀さんには怒らないで俺ばっかなんすか!」って突っかかってくるけどな。 まあそこもあいつのかわいい所だけど、とにかくあいつは褒めすぎるとすぐ調子に乗るから、一久ファンのみんなもあまり奴をおだてすぎないように気を付けてくれ(笑)。 そんなことで試合をもう一度見てもらえると分かるけど、相手の方がリーチはあったが、一久のジャブの方が良く当たってる。ジャブはリーチじゃなくて踏み込みとタイミングで打つことを言い聞かせた。フルラウンドまでもつれた試合だったけど、ジャブをしっかり覚えたことはあの試合の一番の収穫だったかもな。 次に小堀。小堀は着実に強くなってるぞ。一度タイトルマッチができなくて腐った時期を経験してきてるから精神的にもタフになったし、試合も盤石だった。足を使ったり賢いボクシングもできるようになってきて、これからが本当に楽しみな選手だ。ただあいつは「さぼり癖」がいまだに抜けない(笑)。ちょっと目を離すとすぐどっかに遊びに行っちゃう。今はなんだか沖縄へ一人旅に出かけたみたいで、ちゃんとジムに戻ってきてくれるといいんだがね……。
イーグル京和&本望信人
続いてイーグルと本望だが、この2人は5月のダブルMVPだな。2人ともフィリピンの強敵を相手に厳しい試合を良く戦い抜いた。イーグルが戦ったマヨールは今までで最強の相手。4Rまでは完全に取られてた。イーグルは基本的に自分で試合を組み立てる能力に優れていて、トレーナー的なセコンドは付けずに戦うタイプなんだけど、さすがにあの時は混乱してどうやって戦っていいか分からない表情だった。あんなに追いつめられたイーグルは初めて見たくらいだ。 だから5R前に会長と「相手は大振りで倒しにきてる。イーグルは目が良いから、パンチをかわしてカウンターを取りにいく」っていう作戦を立てた。イーグルも納得してそれを切り口に試合を立て直し、後半になって見事形勢逆転させた。選手とセコンドが一体となって勝利を掴んだ試合だったな。ボクシングは個人競技のイメージが強いけどやっぱりチームワークなんだってこと。その点、うちのセコンドは世界一のチームだよ、これは本気で思ってる。 それにしてもマヨール……、予想以上に強かった。これからイーグルの強敵に成り得る選手だけに今後の動向をよく注目しておかないと。 最後に本望。あいつは俺がずっと見てる選手だから思い入れもあるし、半年以上のブランクがあったのに本当に良く頑張った。試合の3週間くらい前に古傷の左瞼をカットしてしまい、それでも本望は野球のキャッチャーマスクを被ってスパーリングしてたんだ。相手のフィリピン人も強い選手だったし、本望はタイトルマッチっていうだけじゃなくて、古傷やブランクというプレッシャーもあった。しかも今だから話すけど、実は試合中にあいつは意識を失ってたんだよ! 俺がインターバルで色々アドバイスを出すだろ。ところが、あいつは「はあ?」って感じでよく分かってない風なんだ。「おい、聞いてんのか!」って怒鳴ったら「すいません、よく覚えてないんです…」って言うんだよ。見た目よりも良いパンチを貰っていたようで、ところどころで記憶が飛んでるんだ。普通はそこで気持ちが折れるんだが、本望はあきらめずに自分のボクシングを見失わなかったことで、タイトルを獲ることができた。本望は技術のある選手に思われるが、あいつの真骨頂はあのハートの強さなんだ。努力と根性が今の本望を作ったと言ってもいい。とにかく内容的にも奥が深いボクシングを見せてくれたし、あいつにはなんとか世界を獲らせてやりたいと思ってるよ。 今月は見応えのある試合が多かったからこんな話になってしまったが、試合の裏にも色んなドラマがあることを少しでも分かってもらえれば嬉しい。来月からもう少しジムの様子なんかも含めて話せたらと思ってる。しかし、あんまり喋りすぎると選手には怒られちゃうかもしれんな…(苦笑)。


■田中栄民プロフィール
http://www.kadoebi.com/boxing/trainer/tanaka/

■渡邉一久プロフィール
http://www.kadoebi.com/boxing/players/index.cgi?n=337

■小堀佑介プロフィール
http://www.kadoebi.com/boxing/players/index.cgi?n=338

■イーグル京和プロフィール
http://www.kadoebi.com/boxing/players/index.cgi?n=328

■本望信人プロフィール
http://www.kadoebi.com/boxing/players/index.cgi?n=336

posted by 角海老広報室 |18:44 | 田中栄民の徒然なるまま日々のこと | コメント(0) | トラックバック(0)
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