2007年05月01日
ROAD TO LONDON
そこは、外界とは遮断された異次元だった。客席の雰囲気はサッカーや野球のそれとは一線を画し、どちらかといえば小学校の運動会で我が子を応援する父兄のような印象だ。初めてそれを目の当たりにした時、新しい風が吹きぬけた。 田頭剛、という選手がいる。彼は先日行われた第40回世界体操競技選手権大会第2次選考競技会(兼第24回ユニバーシアード競技大会日本代表決定競技会)に出場した選手だ。人数は決して多くない本学体操競技部。だが、一人一人のレベルは高く、エリートチームと揶揄されることもある。そんな本学の体操の特徴は「きれい」なところ。そして柔軟な演技力だ。 そういった意味では田頭はまさに異端児だ。名は体を表すという、まさにその言葉どおり田頭は硬い演技を見せる。それでも二年で大舞台に立つのは将来有望な選手の一人であることを意味している。 高校時代の大舞台とはわけが違う。日本のトップと争うのだ。同じ会場ではアテネ五輪金メダリストの富田洋之や塚原直也、米田や鹿島もいる。もちろん報道陣や関係者も熱い視線を送る。そのせいか、会場内の温度は相乗的に上がっていき暑苦しかった。 一日目、田頭の体は重かった。一昨日まで体調が良くなく9℃近くまで出る風邪をこじらせたのだ。さらに一日目最後の跳馬、着地の時に左足を捻挫。ほろ苦いデビューだったに違いない。初日は20位で終わった。 二日目、この日でNHK杯、ユニバ代表が決定するということで周囲は一層熱がこもっていた。もちろん、田頭もそれを肌にひしひしと感じていた。 「このままじゃ、終われない」 今日の田頭は違かった。じんじんと痛む足をかかえ、病み上がりで重りを背負っている感覚を覚えながら、一瞬の集中力は研ぎ澄まされていた。オンとオフの違いを、田頭の精神の「剛」を初めて感じた。 結局、順位としては39位で終わった。しかし、それでも彼は充実感と達成感のある表情をしていた。ちょっぴり不満足をスパイスに。そう、世界選手権での浅田真央のような感じだ。「課題は、もっと難易度の高い技が出来るようになること。種目としてはあん馬。上手くいったと思っても13点しかいかんかった」と広島弁を交えながら話す彼の表情を見れば、人間性の素晴らしさを感じずにはいられない。 次は東日本インカレが彼の主戦場。きっと更なる飛躍が期待できるはず。剛という名のとおり、猛々しさのある演技を魅せてくれ!
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2007年04月20日
三澤拓。確かな成長
今回はある人を紹介したい。 三澤拓 知らない方も多いと思う。だからこそ伝えたい。その思いで先日順大スポーツの三面に載せた僕の記事を「蔵出し」してみた。ぜひ読んでいただきたい。 プロローグ 今年の1月26日、ワールドカップキンバリー大会カナダシーズンで、スキー回転種目の銅メダリストが誕生した。彼の名は三澤拓(健康2)。幼少の頃、交通事故で片足を失った。自分の境遇を特別視されることを極端に嫌う三澤は、「インカレで、他の選手から、『上手い』と言われたことがうれしい。片足だからってことじゃなくて、技術の面で言われたからね」と、満面の笑みを浮かべて語るも、その笑顔の影に様々な苦悩があった。 見えない重圧 自分でも気づかないほど、見えない重圧があった。今シーズンのスタートは昨年の12月中旬に北海道で行なわれた本学スキー部合宿。常に海外でのシーズンスタートを余儀なくされていた三澤だったが、今回は国内ということで移動の負担が少なく、常に一緒にしてきた部員たちとの合宿だったこともあり、最高のシーズンのスタートをきった。しかし、「北海道でゲットしたものが吹っ飛んだ」と話すように、その後、長野の代表国内合宿で調子を落とし、精神的にも追い込まれた状態になり、不安を抱えたまま渡米した。 幻の記録 渡米後、三澤の調子は戻りつつあった。それでも北海道でのイメージとは程遠い。そして迎えたワールドカップアメリカアスペン大会。大会四日目の回転種目第一戦で信じがたいことが起こった。なんと一本目終了時、三澤はラップ(1位)タイムを叩きだした。この時は、さすがに三澤も困惑。「回転は得意種目。ただ、好調とは言えなかった。それでも一番のタイムで。自分でも驚いた」と、三澤はその時の様子を振り返る。ワールドカップ初勝利の期待が一気に膨らんだが、二本目のゴール直前、旗門不通過というミスを犯し失格。幻の記録となった。 自信と確信 過去最高は四位入賞。三澤は、翌日の回転種目第二戦で一本目三位、二本目四位と、ここに来て安定して好成績を出す。さらに、苦手なスーパー大回転でも六位入賞。三澤の中に自信と確信が生まれた。「メダルに絡める。」会場をカナダのキンバリーに移したカナダシリーズ最終種目の回転。一本目の七位から二本目三位と逆転。ミスを恐れず攻めにいった三澤は、見事ワールドカップ初表彰台を掴んだ。三澤は「今までやってきたことが間違ってなかった。そして自分の環境も間違ってなかった。だからみんなに感謝したい」と話す。彼は、確実に頂点へと駆け上がっている。彼の成長から目が離せない。
posted by juntendo |01:56 |
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