2007年10月10日
ドラマが起こる前に―ベガルタ対順大試合詳細レポート―
決戦前の風景 杜の都の聖地、ユアテック仙台スタジアム。本学蹴球部もリーグの際はよく利用するフクダ電子アリーナはこのスタジアムをモデルに作られたというが、観客にやさしいスタジアムであるという印象を受ける。ピッチとの近さ、地下鉄の最寄駅から徒歩4分、全て屋根に覆われたスタンド―。 試合当日の朝にそんな望郷の思いに浸りつつ、時計に目をやると午前9時20分を過ぎようとしていた。会場近くのカフェでのんびりと窓の外に目をやるとベガルタゴールドに身を包んだ親子連れが足早に過ぎ去った。まだ試合開始まで3時間あまりある。胸が高鳴る想いでゲート付近まで歩けば、既にシートを貼り列を形成するベガサポたち。今日の一戦、あつくなるな―。日差しが出てきたからなのか、それをみて何かを感じたからなのか。上着を脱がずにいられない自分がいた。 アウェーの装い ベガルタ仙台のサポーター席は7割が埋まったという印象。対する本学の応援席は、よくここまで来てくれた、というくらいの少数精鋭であったが、本学の選手たちの名を記した横断幕がはためく様子を見ると不思議と心強く思える。選手たちにもそう感じさせているのだろうか。 かすかなざわめきを残して静まり返った。「ウォウォウォー、ドン!」。太鼓と地鳴りのような声を背に、両チームの選手が入場する。時計はキックオフの時刻を示そうとしていた。 J2四位の力 本学のKICKOFFで試合が始まった。序盤、意外にも個で負ける本学が押し気味に試合を展開していく。ベガルタは主力が出ていないということもあり、選手間の連携が上手く機能せず、ボールの流れが悪かった。それでも左サイドからの中田洋介のクロス、大久保剛志の前線でのフリーランニングは危険をはらんでいた。8分、本学のコーナーキックを防ぐと高い位置で準備していた大久保を起点にカウンター。応援の声も一気に高まったが、本学も落ち着いて対応して決定的な形まで作らせない。15分過ぎまで、本学は相手の身体能力の高さ、球際の強さに苦しんで自分たちもペースに持ち込めなかった。 しかし、その後は本学もチャンスを演出できるようになる。中盤で上手くインターセプトをした福士徳文(スポ3)がサイドから駆け上がった田中順也(マネ2)にボールを預けると、田中がそのまま深い位置まで突破をはかりクロスを上げる。ゴール前で岡本が走りこんでいたが届かない。 守備からリズムを作る 一方守備の方もくさびのパスを前線に当てさせないように中盤のダイナモ・三浦旭人(スポ2)がコースを上手く限定し、それに伴って両サイドも流動的にスペースを消していく。その緩みのない守備網にベガルタも苦しんでいるのが明らかであった。何とか隙を作ろうと、ボールサイドを変えて攻めにかかるも本学も落ち着いて対応。ベガルタにこの時間帯はクロスすら上げさせなかった。 クロスまでの形が作れないと分かると、ベガルタは浅い位置から本学の裏のスペースを狙うロングボールを放り込む。22分、そのうちの1本に瞬発力のある大久保が反応。村上佑介(スポ4)がマークしていたが一瞬離されピンチになる。村上がすぐさま追いつき体を寄せてピンチを脱したがこのとき足を痛めた様子をみせる。ここで抜けるわけにはいかない―。そんな気持ちが彼の中にあったのだろうか。村上はすぐにまた走り出した。 サイドの攻防も興味深い。25分過ぎ、右サイドでボールを持ったベガルタ・関口訓充が突破をはかるが、対する本学の金子拓也(スポ1)も一対一で相手のミスを誘うクレバーなディフェンス。その3分後、今度は金子が一対一で関口に果敢に勝負を挑む。しかしここはボールコントロールが定まらず簡単に奪われ危ないところでもあった。 両チームがサイドでの攻防を見せるようになると、本学のファンタジスタへのプレッシャーが軽減された。29分、本学が中盤でボールを奪うと伊藤大介(スポ2)に繋ぐ。その伊藤は裏のスペースへ走りこんできた金子を見るなり絶妙なスルーパスを送る。惜しくも金子はオフサイドになるが、つながればキーパーと一対一の決定的チャンスとなったところだ。 プレッシャーの軽減は三浦にも展開する余裕を与える。高い位置でボールを奪うなり右へ左へボールを積極的に放り込む。パスの精度が上がらなかったことは否めないが、そのプレーからは両者同等のポゼッションを保てるようになってきた印象も同時に与える。 なかなか先制点が生まれない試合。ベガルタのこんなプレーからその必死さが窺える。41分、ベガルタの右からのコーナーキックでキッカーの関口が靴紐を結ぶためにかがんだ。少し時間がかかる様子を周囲に感じさせたかと思うと、後ろからするするっと駆け寄る中田を見るなりショートコーナーを敢行。当然本学の選手はその対応に間に合わず、ゴール前で若干慌てた様子を見せたが何とかこれを阻止。すぐさま本学もカウンターを仕掛け福士と田中のワンツーでゴール前のチャンスに持ち込めるかに見えたがカットされた。 大学生相手になかなか前線にボールが運べないベガルタ。それを見て、ベガルタのサポーターも一斉ブーイングをして不満をあらわにした。ハーフタイムを告げる笛が、そのボリュームを一層高めた。 流れが本学にやってきた 午後2時過ぎに後半は始まった。ファーストシュートは本学の田中が強引に持ち込んで生まれたのだが、それを口火に序盤から本学の攻撃は開始する。後半4分、高い位置でボールを持った伊藤が岡本に落とすと、その岡本が低いクロスを上げる。それが中にいた森英次郎(スポ3)につながると、森が脇から飛び出した田中に繋ぎ、田中がシュート。ボールはバーの上を越えた。 ベガルタもチャンスはあった。カウンターから金子慎二がペナルティエリアで上手い形で受けたが、素早く戻った本学の守備陣のプレッシャーを受けてか、シュートを打てるところで躊躇しチャンスを潰してしまう。またベガルタのサイドチェンジはボールのスピードやタイミングが早く、効果的に思われたがボールを受けてからのリアクションが遅く、上手く足元に納めた頃には本学のディフェンスが整っていた、という様子も多い。 本学の反撃開始! そんなベガルタを横目に、本学は伊藤と岡本を中心に攻撃の形を作る。7分過ぎ、伊藤のスルーパスに絶好のタイミングで飛び出した岡本。もはやベガルタの守護神・荻原と一対一も同然だった。しかしボールを受ける際に胸か頭か一瞬迷い飛び出した荻原と接触。岡本のファールとなったプレーだったが、これに渡辺広大は興奮し、一時騒然となったが審判に諌められると、急にしゅんっとなった渡辺が滑稽に見えてならなかった。 後半12分、本学は守から攻に転じた。これまでディフェンスで奮闘してきた岩澤大介(スポ1)に替え、スピード感のある突破を見せる慶田光彦(スポ4)を投入。島嵜がボランチから最終ラインに下がり三浦のワンボランチへ。ついにこの試合本学は勝ちにきた―。選手にもそれがすぐに伝わり、急に動きが活発になる。ベガルタも油断していたのか、それに呼応するようにプレッシャーが甘くなる。14分には右サイドでフリーになった岡本が中にいた福士にボールを上げると、その福士がシュートするもバーの上。その3分後、伊藤が起点となり、最後はペナルティエリア内から岡本がシュート。荻原が弾くも岡本の前にこぼれる。今度は岡本がキックフェイントを入れて再度シュートを放ち、決定的だったがゴールにはならない。 本気になったベガルタ 試合は時間の進度とともにヒートアップしていく。中盤での伊藤と富田晋伍の激しいマッチアップ、両監督がテクニカルエリアまで飛び出す回数が増加―。そして迎えた後半20分、ベガルタは大久保、金子に替え、梁勇基(リャン・ヨンギ)、中島裕希を投入すると一気に試合の流れを引き寄せようとした。 梁と中原はこれまで出ていた選手よりもパワー、スピード、迫力が明らかに違う。交代してすぐのチャンスに中島が深いところまで突破をはかると、それに森が対応。しかし、森は中島のパワーに吹っ飛ばされた。主審は中島のファールを示したが、ベガルタの応援席の前ということもあり一斉にブーイングが起こる。その後、島嵜、村上が中島の対応を担うが25分、村上もペナルティエリア付近で中原に当たり負けをして本学はピンチに陥る。ここで守護神・松本拓也(スポ1)の好判断で飛び出してセーブ。ピンチは脱したが、ベガルタは本気になっていた。 ピンチが続く本学に、吉村監督もベガルタのサポーターに負けず劣らない激を飛ばす。しかし、一度流れがベガルタに傾くとなかなか立て直せない。サイドからのクロス対応まで手が回せなくなると、本学は両サイドから幾度となく上がってくるクロスの対応に追われた。 それでも徐々に落ち着いてくると今度は逆にチャンスの連続。伊藤、岡本、田中を中心にベガルタのディフェンスを苦しめ、森も積極的にミドルシュートを狙う。39分には、慶田が右サイドでドリブルを仕掛ける。40分には、伊藤が蹴ったコーナーキックに三浦が合わせる。荻原はそれを何とか弾くもゴールの角に当たりゴール前にいた岡本の元へ。触れば入る、そんな絶好の場面だったが岡本はふかしてしまいボールはバーの上を越えていった。 その後も、両チームともに必死にカウンターなどで攻め立てるが、ついに90分では決着がつかず延長戦に突入した。 余力を出し切る延長戦 延長戦前半、先制点を取らなければという思いからか、頭からエンジン全開で両チームとも走る。特に本学の金子は左サイドのDFでありながらも積極的な攻撃参加を見せ、ペナルティエリア付近で急にスピードを上げると、前線にいた選手と短いパス交換をしてエリア内に侵入。ここでカットされたが、気迫溢れるプレーだった。 ベガルタもまだ余力のある中島が起点となって高い位置でボールを回し、機を見てチャンスを作る。しかし、肝心のパスが精度を欠き十分な形を作るまでには至らない。激しいボールの奪い合い、両チームに訪れる決定機に、観客全員が思わず見入ってしまったのか、スタジアムは静かになってしまった。延長戦前半が終わると、すぐにエンドを交換。あと15分で勝者が決まる―。また自然と応援が沸いてきた。 午後3時10分、最後のKICKOFFの笛が鳴った。ここまでくると気迫の勝負。走ることには慣れている本学は岡本、田中、伊藤が疲れの見えるベガルタのディフェンスをさらに苦しめ、金子の長いドリブル突破は攻撃のアクセントになった。もはや足が止まっていたのはベガルタのほうであった。大学生相手にここまでやられたという焦燥感は彼らの体を一層重くする。 ドラマは終了3分前から始まった そして迎えた延長後半残り3分、ドラマが生まれた。ピッチ中央左サイドでボールを受けた駒ヶ嶺克好(スポ2)が中央にいた伊藤にパスを送ると、その伊藤がすかさずペナルティーエリア付近で待ち構えていた岡本にはたく。岡本はそれを受けるなり、身をひるがえして右足を振り抜いた。ボールは力強くゴールネットを揺らし、本学は先制した。ベガルタの選手たちもやられたという表情は見せたが諦める様子はない。吉村監督も喜ぶ選手たちに早く戻れというジェスチャーをする。危ない予感は確かにあった。 残り2分、キックオフ直後から梁から中島、田ノ上信也と簡単に繋がれ一気にピンチに陥る。ペナルティーエリア手前中央付近でボールを持った田ノ上はそのままエリア内へ侵入。松本との一対一も落ち着いてゴール右隅にボールを流し込んであっという間に同点とされた。 突然訪れた得点の応酬にスタンドのボルテージは上がる一方。はやる本学、追加点の欲しいベガルタ。時計の針が残り1分に差し掛かろうとした頃、右サイドでボールを持った森が中央にいた田中へボールを預けると、エリア内のスペースをめがけ走る13番・岡本がいた。田中はその岡本へ絶妙なスルーパスを送ると、そのまま岡本へ綺麗につながり仙台GK荻原と一対一になる。岡本がそっとボールに触り自らタイミングをはかり再び右足を振った。そのボールがゴールになった瞬間、本学の選手は歓喜のあまり岡本に走り寄り抱き着くと、ベガルタの選手は崩れるように倒れ込む。スタンドからは歓喜の悲鳴が鳴り響いた―。 試合を振り返って 試合終了後吉村監督は記者会見の場で「大学生でどれくらいできるのか。それを楽しみにしていた。ディフェンスの戦術が上手く機能し、90分で1点も取られなかったことが、選手たちにとんでもない自信を与えた。プロを目指すためには良い経験になった」と、疲れを見せてはいたが充実感に溢れた表情で語った。 またJ1と11月4日に戦うことに関してでた質問には、「できる分析をしようと思う。個のレベルが(本学よりも)はるかに上。だからこそ、個vs個よりもディフェンスの時の戦術。頭を使ってストロークポイントの前でボールを回すというところを生かす。ボールの速度だけが勝てると思っていますから」と語った。 敗れたベガルタの望月達也監督は、「結果に関しては非常に残念。順大さんの最後まで粘り強かったサッカーに敬意を表したい。ゲームに関しては、失点の隙を突かれて負けたというのが強い。勝つというための切り替え、(サッカーの)きれいさだけでは勝てない。(試合に対する)タフさが欠けていた」と悔しさを滲ませた表情で振り返った。 118分ゼロで抑えた守護神 この日、最もミスのない安定したプレーをしていたのは松本だった。この試合を振り返って松本は「(J2との試合ということもあって)厳しい試合になることは分かっていた。だからと言って最初からひいてもしょうがない(という思いだった)。試合中はとにかく簡単なミスをしないように心がけた。怖いと思ったのは後半30分過ぎから。中原さんの高さや、セットプレーで上がってきた渡辺さんとか。ベンチのトップの選手も入ってきたらリズムが変わるんじゃないかと多少の不安はあった。村上さんが積極的にリーダーシップをとってくれていたが、(後半39分に交代して)抜けてしまってからは、佑さん(島嵜)が中心になってまとめてくれた。自分はとにかくボールをサイドに散らそうと心がけた」とこの試合を振り返った。 終わりに― 「本当は来るつもりなかったんだけど…」。そんなことを試合前こぼしていたベガサポがいた。もし、そのベガサポにこの120分が終わったあとに話をきくことができたのなら、なんと応えてくれるのだろうか。本学の試合ぶりを称えてくれるのか。それとも、本学のあとにサポーターに挨拶に行ったベガルタの選手たちにブーイングを浴びせたように、ひいきのチームの批判を爆発させるのか―。どちらにしても、彼にとっても熱い試合はこうして終焉を迎えた。
正直、長くてすいません。今どういうスタンスで書いて行こうか悩み中で、今回は極端に詳細に書いてました。批評などしていただければ助かります。
posted by juntendo |03:27 |
天皇杯 |
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