2008年12月14日

体操W杯決勝前半、男子レポート

【男子ゆか】
SHATILOV(イスラエル)
 3本目のシリーズであるテンポ宙返り~かかえ込みトーマス以外はひねり系でそろえてきた。各着地が一歩ずつ動いてしまう。しかし、身長の高い選手で雄大さを感じる演技であった。

内村航平(日本)
 日本からかけつけてくれた多くの声援を受けての登場。北京五輪種目別決勝で思うような演技構成を実施できずに不本意な成績であったが、1本目の後方宙返り2回半ひねり~前方宙返り2回ひねりを決めて波に乗った。後ろとびひねり前方屈身2回宙返りひねり、そして後方宙返り3回ひねりの着地を見事に止め、素晴らしい実施を見せ、観客を魅了した。

HYPOILTO(ブラジル)
 1本目の後ろとびひねり前方伸身2回宙返り一回ひねりは圧巻であった。北京五輪でまさかの失敗をした最後の後ろとびひねり前方かかえ込み2回宙返りの着地もまとめて見事に北京の借りを返した。

KOSNIDIS(ギリシャ)
 伸身新月面宙返りで入り、終末技はかかえ込み新月面宙返りという後方系の強い選手であったが、その終末技で前に崩れてしまう。

THOMAS(イギリス)
 2本目の組み合わせのシリーズで、3つ目の技が予定していたものでなくなってしまい、価値点を下げてしまった。終末技の後ろとびひねり前方かかえ込み2回宙返りは見事に着地を止めた。

BOUALLEGUE(チュニジア)
 今大会唯一のアフリカ勢の選手。2本目の後方2回半~前方伸身宙返りひねり~後方2回ひねりで手を着いてしまう大過失を犯してしまい、得点を伸ばせず。

FAHRIG(ドイツ)
 チリの選手が棄権したため、繰り上がりで出場。1本目は昨日決めていた前方伸身宙返り2回ひねり~前方かかえ込み2回宙返りのはずであったが、高さがあり過ぎたのか蹴りが合わず、2回宙返りにならずにしりもちをつき、ラインオーバーもしてしまう。他にもミスが出てしまい、残念な結果に終わった。

WAMMES(オランダ)
 1本目をかかえ込み新月面宙返りにした構成であったが、2本目の後ろとびひねり前方屈身2回宙返りで手を着いてしまう。全体的に着地が不安定でBスコアも落としてしまい、上位に食い込めず。

 HYPOLITO選手が北京で獲得できなかった金メダルを獲得。2位には見事に内村選手が入り、世界大会の二つ目の個人メダルを手にした。3位には一番目の演技者だったSHATLOV選手が入った。ミスが目立ち、ミスをしなければメダル獲得というやや残念な印象もあったが、優勝したHYPOLITO選手の演技はやはり世界のトップクラスの構成と安定感を誇り、十分賞賛に値する。また、内村選手は今回最高のBスコア(9.4)をマークし、美しい体操をアピールしたい日本チームの目標を達成したといえよう。

■内村選手インタビュー
 特に優勝を狙っていたのではないのですが、まずは自分の満足できる演技が目標だったので、それができてよかったです。国内の練習からひねりの着地は安定していたので、今日はいつもどおりの演技ができたと思います。出場は日本を出発する4日前に決まり、最近の練習はすでに新ルールの構成にしていたので、いきなり構成を今のルールに戻し、通し練習は1回しかしてない状況でスペインに来たので、その中での今日の出来というのは嬉しいです。自分の中では、やはり北京五輪の後に自信がついてきたのが大きいのではないかと思います。(北京の種目別で自分の演技ができずにゆかのメダルを逃したので、この大会で雪辱を果たす気持ちがあったのかの問いに対して)そいういう気持ちはないです。北京では個人総合で銀メダルを取っていますし、やはり個人総合の銀メダルの方が嬉しいですから。

【あん馬】
SMITH(イギリス)
 北京五輪銅メダリストが最初に登場。しかし、北京の種目別決勝と同じく、一把手上の下向き転向でひざを曲げてしまう。それでも高難度を連続した構成を何とかまとめた。

SELATHURAI(オーストラリア)
 オーフス世界選手権銀メダリスト。北京五輪出場こそならなかったが、今回も素晴らしい演技を見せた。馬背での下向き転向720度は非常に特徴的であり、またシュピンデルの捌きも素早く、アピールポイントを多く持った構成であった。

BERTONCLJ(スロベニア)
 一腕上の上向き全転向と下向き全転向を構成に入れており、かなりユニークな構成。しかし、その下向き転向技で落下。

SELIGMAN(クロアチア)
 交差から倒立に上げるところで勢い余って倒れてしまい落下。この選手の見せ場の一つであるだけに残念であった。旋回はかなりスピーディーで大いにアピールした。

TRUYENS(ベルギー)
 手足が長い選手で捌きは大きさを感じるものの、この選手も交差から倒立に上げた後に前に倒れてしまい、前に動いて粘ったものの結果的に落下。また、モギリニーでも落下。一気に点数を下げてしまった。

BERKI(ハンガリー)
 北京五輪出場はならなかったものの、豊田国際2年連続出場で日本には馴染みのある選手。二人連続で交差からの倒立で落下しており、いやなムードではあったがきれいに決めて、後半の下向き転向720度から終末技のシュテクリA倒立2回ひねり3/3までの連続でもミスのない演技。この段階でSELATHURAYを抜いてトップに立った。

ZHANG(中国)
 北京五輪金メダルメンバーではないが見事な演技を見せた。交差からの倒立技は正交差からと逆交差からの二つ入っており、振りの大きさを感じさせた。そして、その後は旋回の大きさ、スピードが素晴らしく、北京五輪優勝者のXIAO QIN選手と十分対抗できる質であった。途中、馬端での下向き転向720度でややバランスを崩したように見えたものの、その圧倒的なスピードですぐに修正した。そして得点はAスコア、Bスコア共にBERKI選手を上回った。

KEATING(イギリス)
 SMITH選手同様にイギリス躍進の象徴となっている選手で、前半はスピードのある旋回で美しくこなしたものの、シュピンデルで落下。価値点としては高いものを持つ選手だけに残念であった。

 ゆか同様、ノーミスの3選手がメダルを獲得する結果となった。しかし、16点台による優勝争いであり、上位選手はレベルの高い演技を見せた。特筆すべきはこの3選手は北京五輪に出ていないことである。この選手たちの活躍により、ワールドカップ大会での価値は非常に高まった。

【つり輪】
TAMPAKOS(ギリシャ)
 大会直前に出場が決まり、調整不足も十分理解できる中、ほん転逆あがり十字倒立が止まらず、そして伸身月面宙返りも大きく後ろに動いてしまった。それでも、自身の名前のついたオリジナル技は決めてきた。

PLUZHINKOV(ロシア)
 終末技で伸身月面を狙ったと思われるが、屈身に近く、しりもちをつく大過失をおかしてしまう。

VOROBYOV(ウクライナ)
 屈身ヤマワキ~ホンマ中水平~押し上げて上水平~ナカヤマといった構成でAスコアは7.2まで上げて合計16.275。この時点でトップに立つ。

GEORGALLAS(キプロス)
 後ろふり上がり十字倒立で大きく乱れてしまい、終末技の3回宙返りも着地がまとまらず。Aスコアは7.2で高かったが、Bスコアが8点近くにまで下がってしまった。

VAN GELDER(オランダ)
 アザリアン~中水平~十字倒立~振り上がり上水平から始まり、かなり好調と思えたが、終末技が腰が曲がり屈身月面にかなり近くなってしまった。この終末技がどれだけ影響したかわからないが、Aスコアが7.0となり、VOROBYOV選手にAスコアで及ばず2位。

 つり輪に関しては世界選手権などでも名前を聞く選手ばかりで、構成のレベルは高かったが、タンパコス選手をはじめ、力技が決まらなかったり、終末技でミスを出すなど、準備不足の失敗が目立った。

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posted by 藤井俊明 |17:34 | 体操競技大会報告 | トラックバック(1)
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2008年12月14日

体操W杯決勝前半、女子レポート

【女子跳馬】
ZAMOLODCHIKOVA(ロシア)
 北京五輪出場を果たせなかった、シドニー五輪金メダリストは、1本目のユルチェンコとび2回ひねりにおいて腰を引いた低い着地で後ろに大きく動いてしまう。2本目のロンダード~後ろとびひねり前転とび前方かかえ込み宙返り半ひねりは前に崩れてしまう。

KAESLIN(スイス)
 1本目は価値点の高いロンダード~後ろとびひねり前転とび前方伸身宙返り1回半ひねりを見事に決め、2本目のユルチェンコとび伸身1回半ひねりも前に一歩動くにとどめて高得点をマーク。

BOCZOGO(ハンガリー)
 前転とび前方屈身宙返り半ひねりは後ろに一歩動き、そして2本目のユルチェンコとび伸身1回半ひねりはしりもちをついてしまう。

GARCIA(メキシコ)
 北京五輪は参加していないが、体線の美しさで評判の高い選手。1本目はユルチェンコとび伸身1回半ひねりで前に一歩動く。2本目のロンダード~後ろとびひねり前転とび前方屈身宙返り半ひねりはひねり切った後の高さが不足して得点を伸ばせず。

VANWALLGEGHEM(ベルギー)
 ユルチェンコとび伸身1回半ひねりは大きさのある演技であった。2本目はロンダード~後ろとびひねり前転とび前方屈身宙返り半ひねりで、着地でわずかに動いたもののまずまずの実施。GARCIA選手とまったく同じ技を見せたが2本ともにGARCIA選手を上回る得点であった。

CHENG(中国)
 ユルチェンコとび2回半ひねり(アマナール)は実施しなかったが、ユルチェンコとび2回ひねりは格の違いを見せつける演技であった。2本目も自身の開発した「チェンフェイとび」ではなく、1回ひねりのひねりを少なくしたロンダード~後ろとびひねり前転とび前方伸身宙返り半ひねりであったが、これも素晴らしい実施。唯一の15点台の決定点となった。

 北京五輪では失敗のため、地元の声援にこたえられなかったCHENG選手が圧倒的な力を見せて優勝した。2位も価値点の高い技を決めたKAESLIN選手が入った。また、3位にはVANWAGHEM選手が入り、ベルギーの体操に初のメダルをもたらした。

【段違い平行棒】
HE(中国)
 北京五輪金メダリスト。ポディウム練習から北京の構成を維持してきたが、本番もその構成を見せてくれた。やはりイエーガー宙返り半ひねり~イエーガー宙返りは観客を一番沸かせてくれるものであった。しかしながら、北京五輪の団体予選と同様、パク宙返りの後の低棒でのけ上がり倒立半ひねりのところで倒立に上がりきらずに倒れていまい、落下しなかったが、明らかなミスが出てしまった点は残念であった。得点は、Aスコア7.7を保ち、16点台をマーク。

SIKULOVA(チェコ)
 シュタルダー1回ひねり~ギンガーなどをノーミスで決めた。全体的に姿勢欠点があり、Bスコアは伸びず。

KOVAL(ウクライナ)
 ポディウム練習で最後まで何度も確認していた閉脚トカチェフでバーに乗ってしまい、非常に危ない体勢で落下。ポディウム練習では逆にバーより遠くてキャッチできずに落下していた。その後、見事に演技を続けたものの、落下が大きく響いた得点であった。

JIANG(中国)
 片手軸のひねりを多く入れた構成で、E難度を連続して息をつかせないシリーズであった。しかし、若干ではあるが全体的にHE選手よりもそのひねりの軸がややぶれている印象で、Aスコアは7.1まで伸びたがBスコアが失敗のあったHE選手をわずかに上回ったのみであった。この時点2位につける。

HYPOLITO選手(ブラジル)
 低棒から振りとびで高棒に移動するときにタイミング早くなったのか、高棒に触れることなく前に飛んでしまって落下。その後も落下があり、得点は伸びず。

鶴見虹子
 片手軸のひねりの後の倒立部分で、その後の技に繋げる前に停滞したものの、演技としては継続して、大きなミスはなし。全日本のときと同様の構成で挑み、Aスコアを6.8まで上げて、この時点で3位。

ZGOBA(ウクライナ)
 大逆手エンドー1回ひねり~屈身イエーガーの高難度のシリーズを決めたが、低棒で大逆手エンドーを行うというところで前にいけず、握りを変えて急遽足裏支持回転~そんきょ移動に変更。Aスコアが伸びず、そんきょ移動のペナルティもあり、15点に届かない得点にとどまり、鶴見選手の銅メダル確定!

 鶴見選手が日本女子として、世界大会でメダルを獲得したことは大いに喜ばしい。これで北京五輪の平均台種目別決勝進出に続く快挙を果たした鶴見選手の存在は、今後の日本女子体操界の発展に大きな影響を与えることは間違いない。
優勝したHE選手に関しては、ミスがあっても、圧倒的なAスコアが結果に結びついており、新しいルールでまたどういう構成になるか、楽しみである。

 余談となるが、鶴見選手が炭酸マグネシウムをバーにつける準備を手伝ったのは中国のJIANG選手。昔、ジュニア合宿で一緒に練習したときに知りあったそうで、敵味方を越えた光景に、体操ファミリーとしての絆を感じた。

■鶴見選手インタビュー
 自分でもこの結果には大変驚いています。出場が突然決まり、通しの練習もほとんどできない中で来たので、今回はでき過ぎです。北京五輪前の練習で仕上げてきた分の余力がまだ残っているのかなと思います。表彰台では中国の選手と並べたことが大変嬉しかったです。「わ、世界レベルだ」と思ってました(笑)。今回の構成は全日本のときに上げてきた内容と同じです。ただ、途中で止まってしまったので連続にはなりませんでした。途中で止まったところでは、意地で「頑張らないと」という気持ちで必死でした。


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posted by 藤井俊明 |17:31 | 体操競技大会報告 | トラックバック(1)
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