2008年07月30日
今一度問う、五輪日本代表の意義
開幕まであとわずかとなり、あらゆるメディアで北京五輪の話題がかまびすしい。 そんな中、北京大会を最後に正式種目から姿を消す野球の日本代表が、先日発表された。 前回のアテネ大会とは異なり、各球団で選出選手数に制限はなし。 選考は発表直前にまでずれ込むなど混迷を極めたが、結局は星野監督の破顔一笑、素晴らしいメンバーが顔を揃えた。 単純に戦力だけを見れば、この代表は出場8カ国中最も金メダルに近い場所に位置しており、過去の五輪日本代表の中でも最強のメンバーだと言える。 彼らならきっと正式競技としては初の金メダルを持ち帰ってくれるはずだ。 しかし、大会期間中の日本プロ野球は、ペナントの行方を左右しかねない時期に大きな損失を被ることとなる。これだけの面々がグラウンドから姿を消すのだ。主力がいなければいないなりの戦い方を楽しむこともできるが、実際に前回アテネ大会が開催された04年などは、五輪の影響で面白みに欠けるペナントであったと記憶している。 主力選手の離脱は、チームへの影響はもちろん個人記録に影響を与える点でも残念だ。04年なら例えば、開幕から驚異的なペースで勝ち星を稼いでいた岩隈が15勝と平凡な数字で終え、小笠原のシーズン30本塁打の記録が4年で途絶えた。谷は準決勝で足を故障し、今でもそれを引きずっている。 代表候補選手に故障や不振が目立った今回の代表選手だが、総じて見るに、アテネ大会時のメンバーより状態はいい。夏場は経験や体力のない選手がこれまでの調子を維持できず、相対的に有力選手が数字を伸ばす。夏こそ本番のプロ野球。ここに来て調子を上げ、「さあ、これから」という選手が大勢いる事に、複雑な気持ちを覚える。 今シーズン開幕前から、既に代表入りが有力視されていたダルビッシュ、涌井両投手には、現実的な目標として20勝を期待したかったし、今年FA権を獲得、メジャー挑戦を視野に入れる上原や川上には、置き土産とばかりに、リーグMVPを獲得するほどの数字を叩き出してほしかった。 数字と言えば、7月中に30セーブの快挙を成し遂げた藤川だ。自身の持つ日本タイ記録46セーブの更新はおろか、チームの好調もあってセ・リーグMVPの本命である。村田などは、現在熾烈なタイトル争いを繰り広げており、連続キングにも手の届く位置につけているが、代表招集による離脱はあまりにも大きなハンデだ。 今年は「イチローチルドレン」が元気である。しかし、北京行きを決意した時点で、神宮の安打製造機・青木のシーズン200本安打が消えた。途中、故障で戦列を離脱した青木だが、1年間出場さえ続けられたら、前人未到の同一選手による200本安打達成も見えたはずだ。尊敬する人をイチローと言ってはばからない川崎は、現在首位打者と共に最多安打のタイトルも狙える位置につけているが、かつてはイチローの指定席であった両タイトルの独占は難しそうである。西岡は打撃好調も、昨年に引き続き盗塁数が伸びない。契約するスポーツメーカーの宣伝で使用したキャッチコピー「世界一の盗賊」を名乗るには、いささか寂しい数字となっている。もし、彼らと話ができるのだとしたら、少し意地悪な質問をしてみたい。「連続記録更新中のイチローが日本にいたら、今回の五輪に参加しただろうか」と。 このように、個人にだけ焦点を当ててみても、夏場以降のプロ野球は見所が多い。これだけの魅力を犠牲にして、日本野球界は何を得ようとしているのか。そこで、大会本番を前にして、再度言及しておきたいのが「五輪日本代表」の意義なのである。 大義はある。それはもちろん、野球人気の普及だ。長嶋茂雄前監督が言ったように、野球大国日本の代表選手達は「野球伝道師」でなければならない。 実際、一流プロ選手派遣の効果は大きく、野球代表が表紙に使われた北京五輪関連本も多い。金メダル獲得の可能性から、特集も割と大きく組まれているようだ。このような国民的関心度の高さから、代表が勝てば勝つほど、大きな感動が日本にもたらされるだろう。その結果、8年後開催の五輪で野球が正式種目に復活すれば、北京五輪代表にとっては最大の成果と言うことができそうだ。 星野監督の言う「野球への恩返し」は理解できる。選手がそれぞれに持つ「日の丸への想い」も、連日メディアを通して伝わってくる。それらの気持ちに水を注すつもりはない。決まった以上はしっかりと戦い、戦果を挙げてほしいと思う。 それでも、仮に野球が正式種目として復活を果たしたとして、それ以降の五輪代表をどのような位置付けにしていくのかは、きちんと考えなくてはいけない。来年、第2回大会が開催されるWBCは、五輪よりも参加国数が多く、メジャーリーガーも参加することからレベルも一層高い大会である。それだけに、今後の更なる大会規模拡大の可能性を考えれば、日本にとってはより重要度の増す大会に成長を遂げるだろう。第1回は、至る所で大会の不備が目立った。WBCの価値を高めるためには、日本がアメリカと対等な関係を持つ必要がある。野球大国日本は、ディフェンディング・チャンピオンとして、それ相応の発言権を持たなければならないのだ。大会の公平性のため、日本は勝ち続けなければならない。政治的な背景を鑑みれば、野球日本代表背負った使命は、あまりにも重い。WBCで何より必要とされる結果が、延いては日本の、そして世界の野球のためになってくる。 このような理由から、監督・コーチの交代などはスムーズでなければいけないし、選手の招集にも一貫性がなければならない。 今の流れを汲めば、第2回WBC日本代表の手綱も、高い確率で現五輪代表監督星野仙一が握ることになりそうだ。だが、選手の方は、すんなり現行のメンバーのままということはありえない。ベンチ入りメンバーが30人に拡大されるとはいえ、海外組の合流も予想されるからである。ならば、五輪はWBCを見据え、若手選手育成機会の場と割り切ってしまえばどうか。例えば、今回は晴れて代表メンバー入りすることができたが、当落線上にいた中島や田中などは、経験さえ積めば、来年のWBC代表に名前を連ねていてもおかしくはない選手である。そのような選手を中心にメンバーを構成し、話題性が必要なのであれば、鎌ヶ谷から中田、戸田から佐藤、早大の斉藤も呼べばいい。06年に行われたアジア競技大会で、オールアマチュアで臨んだ日本がトッププロを派遣した韓国を下したように、プロアマ混合レベルでも十分戦えるはずだ。プラスして、そこでの経験が、後のプロ野球や代表で活かされる。 WBCで日本代表のユニフォームを初めて纏った選手の反応は鈍く、熱くなるのが遅かった。短期決戦はあっという間に終わってしまう。ともすれば、経験のなさが致命傷になる国際大会で、「世界大会が初の代表でした」というような選手が続出する状況は避けねばならない。WBCの存在が大きくなれば、それだけ五輪競技としての野球は小さなものになっていく。だからこそ、野球競技が再び五輪競技として日の当たる場所に出て来たその時は、金メダルよりもっと大きなことのために体制を組んでほしい。
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posted by AKIRA |04:59 |
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