2008年09月17日

「四番・センター・青木」の可能性 【東京ヤクルトスワローズ】

シーズンも終盤に入り、プレーオフ進出争いを繰り広げているのがスワローズだ。主砲ラミレスを放出しながらも、今シーズンから指揮を執る高田監督の掲げる機動力野球が浸透。開幕カードではジャイアンツ相手に3連勝を飾り、新しいスワローズのスタイルを見せつけた。
しかし、万事がうまくは進まず、その後は戦前の予想通り厳しい戦いが続く。なかでも中軸が決定力を欠き、相手に先制を許すと追いつくことができない。前半戦、同条件でのチーム勝率は.291である。胸のすく攻撃を展開していただけに、信頼の置けるクラッチが一人いれば、スワローズの攻撃は更に魅力を増していたと思う。
とはいえ、ないものねだりをしても仕方がなく、現存戦力でいかに戦うかが問題となる。タレント不足のチームが上を目指す際に必要となるのは、一にも二にも投手陣の整備である。これは、いつの時代も変わらない。そして、走塁や守備などの細かい部分に着手し、チームの基盤を強くすることだ。その点、現在のスワローズ投手陣は若手の成長著しく、二軍にも才能が集まる。走塁面は言うに及ばず、守備でも失策や失策による失点などの数字が確実に減っている。長打力不足を補うための方策が実り、スワローズは現在の位置に付けているのだ。プレーオフ進出の有無にかかわらず、再建イヤーとしては上々の一年目だと言えるのではないか。

不満に感じるのが、打線にタクティクスを欠くことだ。ここで提言するのは神宮の安打製造機・青木宣親の起用法である。
大学時代や一軍に定着し始めた頃、主に二番を務めた青木は、チームの中に生きる術を知る打者である。それでも、その自由な打撃と積極性は、相手投手との1対1でこそより際立つ。彼は根っからのトップバッターで、適性は一番にある。だが、チーム事情がそれを許さない。昨年はリーグ8位の長打率を記録するなど、新境地を見せたバッティングにはポイントゲッターとしての期待がかかるようになり、今季からは主に三番を任されている。スワローズの八、九番打者の出塁率を考えればこの判断は正しい。本塁打を20本放ちながら、挙げた打点が58ではいかにももったいない。しかし、この選択はベストではない。「四番・センター・青木」こそが当面のスワローズにとってのベストであり、とるべき道なのである。

打順別イニング先頭打席数という統計を見てみる。05年のプロ野球で、トップを記録した打順は、もちろんセ・リーグ(1304)もパ・リーグ(1131)も一番打者だ。次いで、その数が多かったのが両リーグともに四番で、セは(661)、パは(678)。反対に、最も少なかったのがセ(457)、パ (458)ともに三番打者である。つまり、四番は先頭打者として打席に立つ機会が多く、三番は少ないということだ。
そこで、「四番・青木」がスワローズにもたらす相乗効果について主張したい。打順別
イニング先頭打席数については限られたデータしか用意することができないが、初回の攻撃が三人で終わる可能性を考えれば、他の年も似たような数字になっていることだろうと思う。信憑性は高い。試しに、昨年と今季前半戦のスワローズの打順別イニング先頭打席数を数えてみたが、07年は四番(140)が一番(270)に次ぐ数字をマーク。08前半こそ四番(97)は一番(183)、二番(102)に次ぐ数字だったが、都合のいい見方をすると、四割を超える出塁率を誇る青木が四番の前を打たなければ、スワローズ四番打者の打順別イニング先頭打席数はもっと増えていたはずだ。つまり、青木が四番に座れば、ポイントゲッターとチャンスメーカーの役割を両方担えることになる。
ここ数年で宮本や田中浩の五番起用が増えている点も、青木の四番起用を後押しする大きな理由だ。典型的な二番打者である二人のどちらかが五番に入り、四番・青木をサポートする五番になることで、彼らの持ち味もまた生きる。青木が出塁すれば、エンドランから送りバント、スチールのアシストなど戦術に幅が出るし、得意の右打ちで、広がった一、二塁間を狙えば個人の打率も上がる。チャンスで青木が凡退、あるいは勝負を避けられたなら、彼らの粘り強い打撃に期待といった具合だ。

「四番」は背負わせることで、打者を育てるという性質を持つ。近年ではジャイアンツの李やベイスターズの村田、元カープの新井が代表的な例だ。スワローズにも宮出やユウイチ、畠山、武内といった魅力的な打者が揃う。だが、彼らが何年も続けて打撃タイトルを争えるような存在にまでなるかと言えば、はなはだ疑問である。これは、スワローズに限定した話ではない。ただでさえ投高打低の傾向にある昨今のプロ野球において、元来の四番打者像にそぐう和製大砲の育成は容易ではない。ならば、育つかどうかもわからない「四番打者」の出現など待たず、それを形骸化することで、他球団とは違ったスワローズ独自の野球を打ち出せばよいのではないか。
先に挙げた現在のスワローズ中軸候補4人は、他球団の四番と比較するには物足りないが、三番と六番を打つ分には見劣りしない。四番から六番に、一番から三番と同様の機能を求める。つまり、一番から六番の間に、一番から三番を二つ作る。「四番・青木」はスワローズの攻撃をより深く、フレキシブルなものにしてくれるはずだ。


蛇足ではあるが、北京五輪野球日本代表の打順別イニング先頭打席数も、14機会の一番に次いで、9機会の四番が最も多かったことを付け加えておく。戦前から長打力不足を指摘され、きめ細かさを前面に押し出して世界と戦うべきはずであった日本が、トップバッターとして迎えることの多い打順に新井を置いていたということだ。


●参考資料
→ワニとライオンの野球理論
→データで読む常識をくつがえす野球

posted by AKIRA |01:36 | プロ野球チーム | コメント(19) | トラックバック(0)
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2007年09月14日

巨人であるために 【読売ジャイアンツ】

春先こそ好調な滑り出しを見せた今シーズンの巨人ではあったが、その後他球団の追い上げもあり苦戦を強いられている。理由は様々だろうが、目に付いたのは他球団を意識し過ぎた消極的な采配が目立ったことだ。

今シーズンからトップバッターとしてチームを牽引していた高橋由の怪我の影響で、シーズン途中から一番谷、二番木村拓の形を採ることになった。一時的な策かと思いきや、高橋由の復帰後もこの形を崩さなかったのである。二番に小技のうまい木村拓を置き、高い得点圏打率を誇る高橋由を中軸に据えることで、「一点を大切にする野球」を標榜したのだろう。だが、その目論見は見事に外れることとなる。
木村拓は小回りの利く便利な選手だが、タレント揃いの巨人打線で上位を打つとなっては役不足の感は否めない。また、一番を打つ谷は積極的に盗塁を仕掛けるタイプではなく、相乗効果も生まれなかった。二番木村拓は、事実上の穴となってしまったのである。
打順を構成する際にも問題が生まれた。巨人打線には左打者が多い。右打者の谷を一番に固定することで、中軸に左打者がズラリと並ぶ羽目になり、攻撃のリズムが単調になってしまった。相手バッテリーは随分と楽ができたのではないか。
セーフティーリードが奪えず、接戦が増えれば、好投の先発投手に代打を送るケースが増える。そして、後を受けてマウンドに立った中継ぎ陣が試合を壊す悪循環が続いた。巨人が小手先の小細工を弄してみたところで、近道にはならないという証明である。

上原の起用法についても疑問が残る。春先は先発ローテーションがうまく回転していたこともあり、怪我で出遅れの上原をリリーフとしてスタートさせることに何ら疑問はなかった。チーム内に確たる信頼の置けるリリーフ投手がいなかったからだ。実際、チームはそれでうまく機能した。
しかし、「今年は抑え一本で」と固定したのが良くなかった。先発の木佐貫は怪我明けの選手であったし、金刃はあくまで新人選手。いずれ先発としての上原の力が必要になることは容易に想定できたはずである。もちろん、首脳陣もその可能性については危惧していたに違いない。だが、首脳陣は、「上原につなげ」の意識が投手陣全体に生み出す連帯感に賭けたのだ。
それでも、事態はもはや深刻なものとなっていた。先発に疲れが見え始めた後半戦、チームは上原を先発に戻すという決断に踏み切るべきだったのだ。巨人の勝ちには大量得点差のものが多い。それゆえ、抑え上原の登板間隔がまちまちになることがあった。セーブのつく場面であっても、切羽詰った場面は数限られ、本当にチームのナンバーワンピッチャーでなければ抑えられなかった場面はとりたてて多くはなかった。そして、上原には抑え投手としてのメンタリティが欠如しているという事実。抑えに強い気持ちが必要なことは言うまでもないが、それはマウンドの上でのこと。たとえ、失敗に終わっても、そこに気持ちを向けてはならない。失敗とはその日のうちに決別できるのが、一流の抑えである。今年から本格的にこのポジションに取り組む上原には、まだそれだけの割り切りがない。ここにきて、そのあたりの経験不足が顔を出している。
では、上原が先発に回っていたらどうなっていただろうか。確かに、代わりの抑え投手に上原ほどの信頼は置けないだろう。しかし、上原を先発に戻すことは、マイナスの要素を補って余りあるほどの利点に溢れているのである。
まずは、先発ローテーションにゆとりができること。人数的なことはもちろん、どうしても必要な中五日や四日での登板は上原に任せることができる。シーズンの序盤は離脱していただけに、この時期であっても無理は利いたはずだ。そして、エース上原が相手エースと投げ合う機会を増やすことによって、二番手以降の先発投手はマッチアップがだいぶ楽になる。完投能力に長けた上原と、マイペースで投げることのできる二番手以降の先発投手。これらのピッチャーが長いイニングを食いつぶすことにより、むしろ体力面に関してはリリーフの負担を軽減することができるのである。

「普通にやれば巨人が勝つ」とよく言われるように、巨人はリーグで最も多くの才能を抱えている。一点に重きを置く野球はよそ行きであり、そこで勝負をしたところで、本家本元中日ドラゴンズのそつのなさや、JFK擁する阪神タイガースには到底かなわない。守りに入っては、両チームの思う壺である。
巨人が巨人であるためには、ライバルチームの土俵で戦ってはいけなかった。「all or nothing」極端に言えば、このスタイルこそがあるべき巨人の本来の姿なのだ。攻撃は最大の防御なり。積極的な姿勢が、今、巨人に求められている。

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posted by AKIRA |11:18 | プロ野球チーム | コメント(15) | トラックバック(0)
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