2008年02月17日

新しい時代に

「十年一昔」とは言いますが、私はプロ野球という世界を5年のスパンで区切って見ることが多い。一向に変わらない制度とは反対に、あまりにも多くのことがグラウンドでは起きているからです。
5年区切りとはいえ、一般的にキリのいい年号で分けているわけではありません。

最近であれば、02年シーズン終了をひとつの区切りにしています。
イチロー、松井という日本球界の両巨頭が海を渡り、野手もメジャーリーグを目指すようになりました。それは同時に、球界グローバリゼーションの幕開けだったと思います。
つまり、私にとっては03年から昨年までが一つの時代の区切りであり、今年からは新しい時代が始まるという意識なのです。

そこで、最近、授業中…ではなく、電車の中でよく考えていたのが03~07年シーズンのベストチーム。ざっとこんな感じになります。

  <パ・リーグ>          <セ・リーグ>

  1、川崎  【遊】        1、赤星  【中】
  2、小笠原 【三】        2、井端  【遊】
  3、カブレラ【指】        3、福留  【右】
  4、松中  【一】        4、ウッズ 【一】
  5、城島  【捕】        5、金本  【左】
  6、ローズ 【左】        6、新井  【三】
  7、和田  【右】        7、谷繁  【捕】
  8、大村  【中】        8、荒木  【二】
  9、西岡  【二】        9、    【P】

  〔先発〕              〔先発〕
  松坂 斉藤            川上 黒田
  杉内 和田            上原 井川
  小林 渡辺            三浦 石川
   〔救援〕             〔救援〕
  薮田 藤田            木塚 石井弘
  三瀬 マイケル          藤川 ウィリアムス
  馬原 小林雅           岩瀬 久保田

解説させていただきますと、パは川崎の出塁→小笠原の盗塁アシスト+高出塁率でセット完了後、中軸へつながります。
足が遅く、ランナーを一掃する可能性のあるカブレラの後ろには、自ら出塁でき、ホームランで鈍足を帳消しにすることができる松中が待機。
ローズには打席内での自由を与えておいて、和田はそのフォロー。大村、西岡でチャンスメイクができたら、再び上位という流れです。

先発は他にも西口や清水、新垣などが候補に挙がりました。
リリーフは武田久を加えたかったのですが、左を2枚入れておきたかったので断念。当然、武田勝の名前が浮かんだのですが、実働年数の少なさからこちらも選外。

セの打線は順当なところでしょうか。1番の次にトップバッターとして打席に入ることの多い4番には、福留か金本が良かったのですが、ジグザグを崩したくなかったのでオーソドックスな形に落ち着けました。センターは青木、サードは村田がここ数年で急追したのですが、先人には及ばず次点。今年からの5年に期待です。

投手陣はおなじみの顔ぶれ。山本昌とクルーンが惜しくも次点。


ちなみに、98~02年は以下のように。

  <セ・リーグ>          <パ・リーグ>

  1、石井  【遊】        1、イチロー【右】
  2、金本  【左】        2、松井  【遊】
  3、ローズ 【二】        3、ローズ 【左】
  4、松井  【中】        4、中村  【三】
  5、ペタジーニ【一】       5、松中  【指】
  6、江藤  【三】        6、城島  【捕】
  7、高橋  【右】        7、小笠原 【一】
  8、谷繁  【捕】        8、谷   【中】
  9、     【P】        9、大島  【二】

  〔先発〕              〔先発〕
  上原 石井一           松坂 黒木
  野口 佐々岡           西口 金村
  桑田 山本昌           石井 若田部
  〔救援〕              〔救援〕
  岡島 伊藤            森 橋本
  岩瀬 落合            吉田 ペドラザ
  高津 佐々木           豊田 小林雅

セのセカンドをどうするかで迷いました。バランスを考えるなら、仁志でしょう。それにも増して、ローズの成績が飛びぬけていたことが選出の理由です。

大魔神は、期間中の実働が2年ですが、それを補って余りある98年の活躍ということで。

同じ理由で、パの指名打者を50ホーマーカブレラにしようと思ったのですが、MVP含む安定した活躍で松中に。
1、2番の打力を考えると、下位のチャンスメークも重要になってきそうです。

先発に物足りなさを感じるのは、打高投低時代の象徴。

計4チームを発表させていただきましたが、対戦してみたらどのチームが勝つでしょうか。興味は尽きません。


さて、今年も楽しみなルーキーがたくさんプロの門をたたいてきました。彼らだけではなく、飛躍を図る者から捲土重来を期する物まで、これからの5年間がまた楽しみです。

posted by AKIRA |04:59 | プロ野球 | コメント(4) | トラックバック(0)
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2008年02月11日

チーム総得点とOPS

朝刊をめくりスポーツ面を開くと、打者の打撃成績が並んである。ボックススコアには、出場した野手とチームの打率が表示されることが一般的だ。
「ヒットを打つ確率」の中では、単打も本塁打も同じ1安打としかみなされず、出塁という観点では同じ価値を持つ四死球の数が無視されている。この欠陥だらけの統計に一石を投じたのはビル・ジェームズであるが、我が国のプロ野球界においても、OPS(出塁率+長打率)の指標は「チーム総得点」に結びつきがあるものなのだろうか。
以下に、この5年間のチーム別総得点とチーム打率、OPSを、順位とともに並べてみた。

〔2003年〕
   総得点 AVG OPS      総得点 AVG OPS
H  822 297(1) 829(1)   T  728 287(1) 785(1)
Bu 718 274(3) 805(2)   S  683 283(2) 773(2)
L  692 271(5) 795(3)   G  654 262(4) 755(3)
F  675 269(6) 757(6)   D  616 268(3) 740(4)
Bw 652 276(2) 782(4)   B  563 258(6) 734(5)
M  651 271(5) 772(5)   C  558 259(5) 721(6)

〔2004年〕
   総得点 AVG OPS      総得点 AVG OPS
H  739 292(1) 841(1)   G  738 275(4) 822(1)
F  731 281(3) 810(2)   C  662 276(2) 780(3)
L  718 276(4) 804(3)   B  640 279(1) 785(2)
M  649 264(6) 770(4)   T  637 273(6) 752(5)
Bu 630 269(5) 750(6)   D  623 274(5) 730(6)
Bw 622 283(2) 769(5)   S  618 275(4) 762(4)

〔2005年〕
   総得点 AVG OPS      総得点 AVG OPS
M  740 282(1) 793(1)   T  731 274(3) 757(2)
H  658 281(2) 791(2)   D  680 269(4) 751(3)
F  605 254(6) 721(4)   B  621 265(5) 729(5)
L  604 269(3) 770(3)   G  617 260(6) 731(4)
B  527 260(4) 695(5)   C  615 275(2) 761(1)
E  504 255(5) 677(6)   S  591 276(1) 725(6)

〔2006年〕
   総得点 AVG OPS      総得点 AVG OPS
L  645 275(1) 763(1)   D  669 270(1) 742(1)
F  567 269(2) 741(2)   S  669 269(2) 741(2)
H  553 259(3) 697(4)   T  597 267(3) 724(3)
M  502 252(6) 697(4)   B  575 257(5) 698(4)
B  481 253(5) 681(5)   G  552 251(6) 687(6)
E  452 258(4) 675(6)   C  549 266(4) 697(5)

〔2007年〕
   総得点 AVG OPS      総得点 AVG OPS
G  692 276(1) 784(1)  M   629 262(4) 717(2)
D  623 261(5) 725(3)  H   575 267(1) 710(4)
S  596 269(2) 740(2)  E   575 262(4) 711(3)
B  569 265(3) 724(4)  L   564 264(2) 725(1)
C  557 263(4) 707(5)  B   536 259(6) 699(5)
T  518 255(6) 687(6)  F   526 259(6) 672(6)

過去のデータから、チーム総得点には、チーム打率よりむしろチームOPSに強い相関性があると言える。
OPSとて完璧な指標ではないが、それでも「打率よりは参考になる」とするに十分な結果ではないだろうか。
スポーツ紙でなければ、出塁率や長打率を目にする機会はあまりないが、もっと注目されるべき項目だろう。

posted by AKIRA |07:14 | プロ野球 | コメント(4) | トラックバック(0)
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2008年02月02日

プロ野球に見る格差

格差社会。こんな言葉が、新語・流行語大賞にノミネートされたのは06年のことだ。近年、格差の拡大はあらゆる場所で姿を見せた。この社会問題は、一向に改善の気配を見せず、現在も深刻な問題であり続けている。

プロ野球の世界も例外ではない。球団間の経済格差は広がりを見せる一方である。球団別の選手総年棒を見ると、トップは巨人の53億915万円。内訳を見ると、投手だけで20億6865万円を稼いでいる。巨人の捕手は全体で3億1030万円であるから、投手と合わせたバッテリー年棒の総額は23億7895万円だ。これは、プロ野球12球団の内、7球団の年棒総額を上回る数字である。中には、昨年、連覇を果たした日本ハムのような球団もあるが、ほか6球団はBクラスだ。球団間の資金格差は、球団間の戦力格差に強く結びついていると言っていい。
当然、裕福な球団に所属する選手は、大金を手にしている。巨人の年棒上位選手12人の総額は38億5600万円で、年棒総額2位の中日38億2610万円を超えている。また、巨人は、年棒上位の3選手に15億2000万円を支払う。年棒総額最下位の広島は、15億490万円だ。巨人の選手3人分の年棒で1球団が買えてしまう計算なのだから、あまりにも顕著な選手の所得格差である。
このような球界の格差は、もちろん親会社の資金力に起因している。そして、それが国内移籍市場での獲得機会不均衡を招く。フリーエージェントの権利を宣言した選手の獲得に手を挙げるのは、いつも決まった球団である。最近では、実績を残した外国人選手が契約満了と同時に、より良い条件を提示する球団と契約するケースが目立つ。そのような状況を、資金力に乏しい球団はただ見ているしかない。

格差を是正するためには、全ての球団が「共存共栄」の精神を持ち、そこからリーグの底上げを図る以外に道はない。具体策として、フリーエージェント権の短縮が挙げられるだろう。現行の制度では、権利取得までに9年と、あまりにも長い時間がかかるため、フリーエージェント市場の動脈硬化を引き起こしてしまっている。そのため、市場に出た数少ない選手に人気が集中し、必要以上に年棒が高騰するのだ。市場に多くの選手が出てきたなら、人気は分散し、球団間での競り合いは激しくならず、その選手とは適正な価格で契約することができる。外国人選手の問題に関しては、契約満了後のオプションを、球団側に持たせる条約を盛り込んでおくのが一つの手段だろう。
しかし、現状を見ている限り、これらは夢物語に終わりそうだ。自球団の利益を犠牲にしてまで、球界全体の利益を優先する余裕はどの球団にもない。現状維持が精一杯な今だからこそ、「損して得とれ」の精神が必要となるのだが、ドラスティックな改革に乗り出そうという姿勢はまったく見えない。

※金額は全て推定で、08年1月17日現在のもの

●参考資料→週刊ベースボール 2.4号

posted by AKIRA |06:56 | プロ野球 | コメント(24) | トラックバック(0)
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2008年01月20日

クローザー上原の功罪

開幕から1ヶ月故障離脱していた上原浩治に、これだけMVP票が集まるとは思ってもみなかった。
別項でセ・リーグMVPについて扱った際にも、上原への信望の厚さがうかがえるコメントが寄せられ、これはしっかり検証しておく必要があると感じさせられた次第である。
沢村賞を二度獲得した上原は、クローザーとしてどのような役割を果たしたのか。功罪含めて振り返ってみたい。

上原 浩治
登板数55 投球回数62 4勝3敗32セーブ ※WHIP0.84 奪三振率9.58 防御率1.74
※(被安打+四死球)÷投球回数
 1イニングあたりに許すランナー数の目安(07年セ・リーグ平均は1.46)
まずは、昨年の上原が残した成績である。
「登板数」「投球回数」「勝敗」「セーブ数」がチームへの貢献度を表す数字なら、「WHIP」「奪三振率」「防御率」は投手としての能力を示す指標である。

リリーフの仕事は、数字に表れにくい。だからこそ、リリーフピッチャーのMVP獲得には、「貢献度」と「能力」で完璧に近いものが要求され、その「実績」においても周囲を納得させるだけのものが必要になる。

比較対象として、同リーグ内屈指のクローザー二人の成績を用意する。
岩瀬 仁紀
登板数61 投球回数59 2勝4敗43セーブ WHIP1.05 奪三振率7.63 防御率2.44
藤川 球児
登板数71 投球回数83 5勝5敗46セーブ WHIP0.83 奪三振率12.47 防御率1.63
三者を比較してみると、開幕から出遅れた上原は、積み重ねの数字でやや劣る。逆に、統計数字では藤川と甲乙つけがたい成績を残した。
とはいえ、1年間チームに帯同した2人とでは価値が違う。上原をMVPとするには、「貢献度」の面から条件を満たしていないと言える。

また、個人成績には残らない貢献度を計るため、クローザー3人の点差別登板状況を比較してみた。当然、僅差の場面での登板が増えるほど、その価値は高まる。

            上原    岩瀬    藤川 
  1点リード      9     17     18
  2点 〃       8     11     20
  3点 〃      11     19     10
  4点 〃      12      5      7
  5点 〃       1      1      1
  6点 〃       1      3
  7点 〃       2
  10点 〃       1  
    同点時       10      5     13
  1点                      2  
    ビハインド 

  登板数       55     61     71

傾向は、明確に表れている。上原は、岩瀬や藤川ほどにタフな場面で投げていない。1、2点のリードより、3、4点のリードを守るケースが多かったのである。
内訳を見ると、終盤まで激しい優勝争いを繰り広げたドラゴンズ戦には、1点リードの場面で1試合、2点リードの場面で3試合投げただけだ。タイガース戦に至っては、ともに1試合ずつにしか過ぎない。
逆に、藤川は、ジャイアンツ戦1点リードの場面で8試合も投げている。

このような傾向が現れるのは、ジャイアンツのチーム構成に原因がある。
言うまでもなく、ジャイアンツは強力打線を抱え、大量得点を望めるチームだ。反面、効果的な足攻から局面を打開する、などという芸当にはほぼ縁がない。スコアが大味になるのは当然で、それだけクローザーの出番もまちまちになってしまう。1点をしぶとく勝ちにつなげるドラゴンズや、先攻逃げ切りのタイガースとは、まったく性質の異なったチームなのである。
破壊力抜群の打線が火を噴けば、相手チームは勝ちパターンのリリーフを送ることができない。力の劣る2番手以降のリリーフから、追加点をあげるのは容易である。そのような展開に持ち込めれば、大量得点が、アキレス腱となるブルペンを覆い隠す。攻撃は最大の防御なり、である。
実際、昨季のジャイアンツは、大味な展開に持ち込むほど勝率が上がった。5得点差以内の試合では60勝59敗だが、6得点差以上の試合には20勝4敗と圧倒的である。ゆえに、他球団ほどクローザーへの需要は高くならない。ジャイアンツのようなチームでは、絶対的なクローザーの確立が最優先事項とはならないのである。

00年以降の、シーズン勝率1位チームで例を挙げてみよう。
ジャイアンツは00年、開幕からクローザーの槙原が背信の投球を続け、代わった桑田も結果を残せない。それを受け、セットアッパーの岡島を配置転換することとなったが、防御率3.11で7Sを挙げただけである。02年には、河原がクローザーに定着した。2.70の防御率と河原自身は安定していたが、リーグ4位の28セーブという数字が、セーブ機会の少なさを物語っている。
01年、バファローズが優勝を果たすが、チーム防御率はリーグ最下位。クローザーの大塚もご多分に漏れず、26セーブで4.02の防御率である。
ホークスは03年、日本一に輝いたが、スクルメタが11セーブ、篠原が10セーブであり、年間を通して信頼の置けるクローザーはいなかった。2年連続シーズン勝率1位を果たした翌年は、新人王に輝いた三瀬が28セーブを記録するも、防御率は3.06である。さらに、その翌年のホークスは馬原がクローザーに定着するが、防御率は3.08で22セーブを挙げたに過ぎない。
彼らのほとんどが良い投手であっても、「磐石」とするには疑問が残る投手であった。
絶対的なクローザーの不在は、先発力と得点力で補うことができると過去が証明している。01年のバファローズは例外にしても、先に挙げたほかのチームは、スタートに豪華な投手を揃えた。そして、05年のホークスを除く全てのチームが、リーグトップの得点を挙げている。


では、上原以外で、今季、試合の締めくくりを任せられたのは誰か。答えは、リリーフ陣の中で、上原に次ぐ成績を収めた豊田である。
上原は、1点リードの場面で9試合、2点リードで8試合、3点リードで11試合に登板した。上原の防御率は1.74であるから、1点リードの9試合中1.7試合でセーブに失敗するという計算が成り立つ。
対する豊田の防御率は3.38だ。上原と同様に仮定すると、豊田は1点リードの試合で3.4試合、2点リードの試合で1.5試合、3点リードの試合で1.3試合に追いつかれることになる。
2人の成績を比較すると、クローザー上原は勝ち試合を1.7試合壊し、同じ状況で豊田は6.2試合を壊すことになる。上原ではなく、豊田にしんがりを任せていれば、ジャイアンツは差し引き4.5の勝ち星を失っていただろう。
つまり、ジャイアンツはたかだか4つや5つの勝ちを守るために、上原のクローザーに執着したのである。4つや5つと簡単に言えるのは、上原の先発復帰に伴う波及効果が、それを補って余りあるほど大きなものだからだ。4つや5つの負けを受け入れることで、それを上回る勝ち星を得ることができたはずなのである。
ここからは、そのことについて触れるとともに、クローザー上原の存在がチームにもたらした悪影響について述べておきたい。


怪我から復帰した上原は、シーズン終盤まで1人元気だった。あの様子では、先発としても好成績が期待できたはずだ。昨シーズン同様、アテネ五輪で1ヶ月離脱した04シーズンの成績が参考になる。22試合に登板して13勝5敗、防御率2.60は出来すぎかもしれないが、不可能な数字ではないだろう。
だが、上原の復帰当初は、ローテーションがしっかり守られていた。上原の体調も考慮し、手薄だったブルペンに迎え入れたのは正解だったかもしれない。しかし、「今年は抑え一本で」と決めたのが失敗だった。金刃はルーキーで、木佐貫は故障明けの選手である。最悪の事態を想定して、後半からの先発起用も考えておくべきだった。
問題は、今季ジャイアンツをリードした両左腕、高橋と内海にもあった。原監督は、第1次政権時から「エースはシーズン終盤、中5日や4日で投げれなければならない」と口にしている。ドラゴンズとタイガースの猛追に遭い、迎えた9月。高橋は中4日で2試合、中5日と6日で1試合ずつに先発し、リリーフとしても1試合に登板と、フル回転する。だが、先発したドラゴンズ戦2試合とタイガース戦1試合では、どれも5イニング以内での降板となった。
内海も、中5日中心の登板からくる疲労によって、シーズン序盤ほどの勢いがなくなっていた。迎えたクライマックスシリーズ第2ステージ。内海は初戦のマウンドを任されるが、4回を投げて早々にマウンドを降りる。
彼らにエースを求めるのは無理だったのだ。
「クローザー上原につなぐ」という意識は、先発やブルペン全体にモチベーションを与えていたかもしれない。しかし、ジャイアンツ投手陣は終盤、気持ちどうこうの問題以前に、体力がなかったのである。上原が長いイニングを投げていれば、チームは楽になった。大量得点差での登板も目立ったのが、クローザー上原であるが、勝ちを勝ちにつなぐことしかできないポジションの特性にはやきもきしたはずだ。
中4日は全て上原が引き受け、高橋が中5日中心に。内海は中6日で、という状況が確立されていれば、ジャイアンツは後半も優位に戦えただろう。他球団には、川上や黒田、三浦など、力あるエースがいるが、2番手以降は実力でかなり劣る。ジャイアンツは、高橋から内海、木佐貫までは、そう見劣りしない。
先発に余裕が生まれれば、当然好投が増える。先発の好投は、長いイニングの消化を呼び、リリーフ陣の登板機会と負担が減少を呼び込む。それがリリーフの好投につながる、という好循環が生まれていただろう。西村などは、9月の防御率が5.65と、限界に達していた。
こちらも、あくまで仮想の域を出ないが、クライマックスシリーズにも同様のことが言えるかもしれない。初戦、落合竜の奇襲に対応できなかったジャイアンツだが、それでも2点を取っている。上原には十分な援護だったのではないか。そして、高橋に2戦目のマウンドを託せば、歴史は変わっていたかもしれない。ジャイアンツはこの試合、川上から4点を奪っている。

上原のクローザー起用は、ジャイアンツの打線にも影響を与えた。クローザー上原の固定が、チームの動脈硬化を引き起こしたのである。
繰り返すが、ジャイアンツは点が点を呼ぶ循環で勝つチームなのだ。他球団ほどに、僅差の試合に対して過敏になる必要はない。そうであるにもかかわらず、後ろが安定してしまったことで「1点を取ろう」の意識が過剰なまでに作用し、よそ行きの野球が始まったのである。
ジャイアンツは、中軸に怪我人や不振者が出ると、先頭の高橋を3番で起用した。得点圏打率の高さを見込んでのことだろう。だが、ここだけは代えてはならなかった。
代わってトップを務めたのは静かなる巧打者谷だったが、そこから打線は迫力を失うのである。つなぎ役には木村が入り、悪循環に拍車が掛かった。木村は、強力打線の中で、下位を打つ分には良いアクセントになっていたが、上位を打てば事実上の穴でしかなかった。
爆弾も、導火線なしには爆発しない。高橋を生かすはずだった打順は、得点圏自体が減り、流れを失う。「侵略すること火の如し」を絵に描いたような打線は、すっかり鳴りを潜めた。

高橋をトップに据える打線のように、ジャイアンツの野球は大味である。クライマックスシリーズ初戦敗退を受けて、「細かい野球ができない」とする声は多かった。たが、そんなことはする必要がない。根拠は、前回出場した日本シリーズにある。
ジャイアンツは、その圧倒的なタレントでもって、「緻密な野球」の代名詞のようなライオンズをスウィープした。00年も同様である。「緻密な野球」の重要性は、それを標榜するチームにとっての論理にしか過ぎない。
肉を切らせて骨を断つ覚悟がなかったのは、ジャイアンツ首脳陣であるが、クローザー上原の存在は追い風にはならなかった。


上原の1番の武器は、何と言ってもリズムとテンポの良さだ。
その上原を、イチローは「世界のどのチームを相手にしても、自分のペースでピッチングができる」と評する。
リズムがいいから、上原は乱れない。テンポがいいから、相手の攻撃がすぐに終わる。上原が作ったテンポは打線に移り、そこから流れが生まれるのだ。
クローザーのポジションでは、持ち味が半減した。
生粋のスターターは今、まっさらなマウンドに飢えている。


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2008年01月06日

2007年セ・リーグ真のMVPは誰だ!?

07年シーズンのセ・リーグMVPには、ジャイアンツの小笠原道大が選出された。小笠原は、昨年のファイターズでの受賞に続き2年連続での選出となり、両リーグでのMVP受賞は江夏豊以来2人目である。

打率.313(4) 95得点(2) 31本塁打(6) 88打点(9) 長打率.539(4) 出塁率.363(11)( ) はリーグ内順位
以上が、07シーズンに小笠原が残した主な打撃成績である。
素晴らしい数字であることに違いはないが、「最も優れた選手」とするには物足りない数字ではないだろうか。

打率.313(4) 77得点(3) 32本塁打(1) 100打点(1) 長打率.573(1) 出塁率.397(3)
これは、小笠原が初のMVPを受賞した06年に残した成績である。
06年と07年。数字だけを単純比較してしまえば、そう違いのない数字であると言える。だが、同じような数字でも、リーグ内における順位に大きな違いが表れている。出塁率を下げながら得点が増えたのは、ジャイアンツの中軸が強力であったからに他ならない。怪我の影響も含め、ジャイアンツ移籍1年目の小笠原は総合的に成績を落としたと言っていいだろう。

打率.324(.360) 89(126)得点 29(37)本塁打 88.5(102)打点 長打率.570(.649) 出塁率.409(.473)( ) はキャリアハイ
比較対象として、小笠原が初めて規定打席に達した99年から06年まで8年間の平均成績を算出してみた。
小笠原が活躍した頃のパ・リーグが極端な打高投低にあったとはいえ、これだけのアベレージはやはり立派である。積み上げてきた数字が立派であるために、今シーズンの成績が見劣りしてしまう。

松井 秀喜(00年)
打率.316(3) 116得点(1) 42本塁打(1) 108打点(1) 長打率.654(1) 出塁率.438(1)
ロベルト・ペタジーニ(01年)
打率.322(3) 93得点(4) 39本塁打(1) 127打点(1) 長打率.633(1) 出塁率.466(1)
松井 秀喜(02年)
打率.334(2) 112得点(1) 50本塁打(1) 107打点(1) 長打率.692(1) 出塁率.461(1)
金本 知憲(05年)
打率.327(3) 120得点(1) 40本塁打(2) 125打点(2) 長打率.615(1) 出塁率.429(2)
福留 孝介(06年)
打率.351(1) 117得点(1) 31本塁打(6) 104打点(5) 長打率.653(1) 出塁率.438(1)
00年以降、野手としてセ・リーグでMVPを獲得した選手を掲載した。
日本のプロ野球では、「最も優れた選手」ではなく「最も貢献した選手」にMVP票が多く集まる傾向にある。「最も貢献した選手」ではなく、「最も優れた選手」にMVPを与えると定めているのに、だ。よって、優勝チームの選手から選出される傾向にある。
同様に、個々の数字にも傾向は表れている。、チームへの貢献度を表す「打点」「得点」と、打者としての実力の指標を示す「長打率」「出塁率」で、軒並み高い数字を残していることだ。
面白いのはこの5人が、05年金本の出塁率を除いた全ての「長打率」「出塁率」の部門でトップに立っているということである。00年代序盤は、現在ほど「長打率」や「出塁率」の重要性が浸透していたわけではなく、MVPを選出される際に考慮されていたとは考えにくい。このことから、チーム数の少ない国内のプロ野球では、「最も優れた選手」と「最も貢献した選手」は、密接な関係にあると言える。
上記の5人は、いずれも優勝したチームからの選出であり、「最も優れた選手」でありながら「最も貢献した選手」でもあったように思える。MVP受賞の栄誉に預かるのも当然のことだろう。
このように考えると、小笠原の07シーズンMVP受賞に不当なものを感じざるを得ない。


では、07シーズンセ・リーグMVPにふさわしかったのは誰なのか。
最も条件を満たしていたのは、ジャイアンツの高橋由伸であったと思う。

ただ単に「最も優れた選手」を問うのであれば、スワローズの青木宣親やアレックス・ラミレスあたりが対抗馬として挙げられる。特に青木は守備・走塁面での貢献も大きく、「最も優れた選手」の最有力候補だ。しかし、所属チームの成績を考えた時、彼らの名前は早々とリストから姿を消すことになる。
よって、07年の高橋が小笠原よりも優れた選手であり、貢献を果たした選手であると証明することができれば、それが「高橋こそ真のMVP」の証明になるように思う。
ここからは、高橋をMVPに推す理由を述べてみたい。

打率.308(6) 76得点(11) 35本塁打(2) 88打点(9) 長打率.579(1) 出塁率.404(3)
まずは07シーズンの高橋の成績を振り返り、過去の受賞者との比較を行う。すると、小笠原同様、数字の面ではいまひとつ物足りなさを感じる。しかし、07年の高橋は主にトップバッターを務めた。クリーンナップとして受賞した5人との単純比較はできない。
打率や打点が少なくなるのはトップバッターであれば当然で、このポジションとしては十分である。トップバッターとして重要な得点数がリーグで11位となっているが、上位にひしめくのは、これも中軸を任されるような選手が多い。高橋に不利な見方をするなら、快足の持ち主であればもう少し数が増えていただろうか。
「本塁打」「長打率」「出塁率」の項目からは、高橋がリーグ有数の攻撃的なバッターであることがうかがえる。本塁打数はトップのベイスターズ・村田と1本差。出塁率こそリーグ3位だが、これもトップバッターとしての役割を担っていたためであり、OPS(長打率+出塁率)はリーグで1位。クリーンナップを任されていれば、10割超えも望めたはずである。
また、高橋は外野手としてリーグ3位の7補殺を記録し、1失策でゴールデングラブ賞に選ばれている。小笠原は三塁手として、野生的な打球反応で幾度もジャイアンツ投手陣を助けたが、この部門で高橋を大きくリードするほどに貢献できたわけではない。
以上を理由に、ジャイアンツ内で「最も優れた選手」は、小笠原でなく高橋であったと言い切ることができる。

それでは、高橋の果たした貢献とはどのようなものであったのか。
表立った数字には表れにくい要素を考えてみる。

1)強打のトップバッターがもたらすメリット
高橋は、従来のトップバッターとはイメージの違う、「強打のトップバッター」として新ポジションに据えられた。オープン戦で、原監督が先頭打者としての起用を明言すると、早速「由伸だと足が使えない」「早打ちの由伸で大丈夫か」の声が上がった。

確かに高橋は足が使えない。本人曰く「なぜか速く見られるが、松井さん(ニューヨーク・ヤンキース)より遅い」とのこと。プロ10年間での通算盗塁数は22にしか過ぎず、失敗も22で成功率は5割である。本人の意思だかサインかはわからないが、07年の成功1に対して失敗5は印象を悪くしただろう。
だが、トップバッターに求められものは、1にも2にも「出塁」である。足が使えるに越したことはない。一つでも先の塁に進むことも、相手バッテリーに無形のプレッシャーを与えることも、ゲームを有利に進めるための武器である。しかし、それはあくまで「出塁」という前提から派生したオプションに過ぎない。
特に、ジャイアンツのようなチーム構成であれば、足攻の需要は減る。あれだけ強力な中軸が後に控えているのだ。「待て」のサインが、強力打線の抑制となって働いてしまうリスクの方が大きい。この打線に塁上からの援護は必要なかった。トップバッターはただ、ベースに蓋をしておけばよかったのである。
ちなみに、トップバッターとして4割を超える出塁率を維持したのは、ここ10年間で、98、99年の緒方孝市(カープ)と07年の青木宣親、高橋由伸のみだ。

「早打ち」についても賛否両論はいろいろとある。反対派の意見としては、「トップバッターはなるべく多くの球数を投げさせ、相手投手を消耗させなければならない。そして、球筋を味方に伝達しなければならない」といったところだ。
しかし、継投全盛のこの時代、待球は以前ほど意味を成さない。確かに、積極的な高橋が初球を打ち損じ、淡白な攻撃につながる可能性もある。それでも見逃せないのは、多くのOBが口をそろえて「1番高橋は怖い」と語る点だろう。
最初に対峙する打者が振ってこないと分かっていれば、投手は好きな球を投げ、自分のペースで試合に入っていくことができる。逆に、高橋のような打者が相手ではそうもいかない。初球から振ってくる、かつ長打のある打者に対して、バッテリーは余裕を持てないのである。相手バッテリーに過度の警戒心と慎重さを与えることができれば、試合開始から一気にイニチアシブを奪えるという寸法だ。
今季、巨人が初回に得点した試合は31勝14敗で勝率.689と、大きく勝ち越している。出塁するだけでなく、相手バッテリーに与える影響。ここには、数字に表れない価値が付随している。

2)打線の潤滑油としての働き
強力ジャイアンツ打線にあって、高橋の出塁は潤滑油のような役目を果たした。
まずは、高橋の後を打つことの多かった、移籍1年目の谷佳知について触れてみたい。この谷の復活にも、高橋の出塁が大きく影響しているのではないか。高橋が出塁し、後ろには強打者がずらりと並ぶ。ならば、谷は「最悪進塁打でいい」と、楽な気持ちで打席に入ることができたはずだ。ここ数年は、怪我の影響から不本意なシーズンが続いていたが、元々は最多安打を獲得するなどバットコントロールに定評のある巧打者である。その谷にとって、来た球をボールに当てることなど造作もない。三振48と、1打席あたりの三振率0.08は、ともにカープの前田に次ぐリーグ2位である。湿っていた巧打者のバットは、潤滑油を注ぐことで再び輝きを取り戻した。
二人の優れたテーブルセットは、チームに流れを呼び込んだ。07年、得点圏打率トップ10には、ジャイアンツの選手が5人を占める。1位、2位は、高橋と谷の.409、.379であるが、中軸を任された二岡、小笠原、阿部がそれぞれ.370、.324、.319と、シーズン打率を上回る数字を残した。李や清水も同様である。
先頭打者本塁打の記録を更新するなど、核弾頭としての高橋にばかり注目が集まったが、同時に周囲を高める役割も果たしていたのだ。

3)代えの利かない存在
得点力不足に泣いた打線にあって、テーブルセッターの確立こそが、昨年のジャイアンツに課された命題であった。07シーズン、弱点は解消され、06年にはちぐはぐだった打線が効果的に得点を積み重ねる。途中、怪我人や不振者も出たが、強打者揃いの中軸は、調子の良い者を入れ替え、やりくりすることによって事なきを得た。
だが、「1番・高橋由伸」の存在だけは代えが利かなかったのである。高橋は、17試合でスタメンを外れ、怪我人の穴埋めに9試合で3番を打った。その間26試合のジャイアンツの成績は13勝13敗で、平均得点は4.8から4.1にまで減少する。仮に、平均4.1得点を144試合で換算すると590得点にしかならず、リーグで3位の得点力に成り下がってしまう。もちろん、この数字でジャイアンツの優勝はなかっただろう。

4)存在感
チームへの「貢献度」を論じるのであれば、小笠原の野球に対する真摯な取り組みを挙げずにはいられない。小笠原の姿勢がチームにもたらすものは大きいという考えだ。
実際その通りなのだろう。だが、かつての金本知憲や小久保裕紀がそうであったように、移籍1年目の選手は周りのプレーに対してとやかく言うことができないものだ。ジャイアンツで率先してそれをするのは主将の阿部であり、小笠原は背中でチームを引っ張ったに過ぎない。
では、高橋にはそれがないのかと言えば、答えは断じてノーである。高橋を知っている者は、必ずと言ってもいいほど、彼の練習に対する勤勉さと熱い気持ちについて語る。人柄の良さも有名で、大学の後輩佐藤友亮は、「高橋さんがいなければ、何人も部活を辞めていた」と語る。高橋のチームに与える影響が、小笠原のそれに劣るとは思えない。
11の試合欠場も、06年に福留孝介が16試合に欠場しながらMVPを獲得したことを考えれば、さしたる問題ではないはずだ。

これらを総合して、満身創痍の小笠原ではなく、高橋由伸が「最も貢献した選手」であったと考える。


怪我をおしながら、あれだけ安定感あるプレーを見せた小笠原は称賛に値する。しかし、MVPともなれば話は別である。小笠原の安定感ではなく、高橋の爆発力こそがセ・リーグを制したジャイアンツの象徴であった。
観客の反応は素直なもので、東京ドームで試合を観戦すると、高橋の登場にひときわ大きな歓声が沸く。アウェイであっても敵味方関係なく、その場の人間全てが、ハラハラドキドキしながら高橋の初打席を見守るのだ。ファンは本能的に察知している。高橋なら何かやってくれる、と。
原や松井のようにタイトルを獲得したわけではない。中畑や清原のようなキャラクターを持ち合わせているわけでもない。だが、高橋は高橋なりの方法で存在感を示した。
もはや、「4番が打てばチームは勝てる。打てなければ勝てない」という時代ではない。高橋がいて、二岡がいて、阿部がいる。これが、今のジャイアンツの姿なのだ。その中でも、今シーズンの高橋が占めるウエートは、誰よりも大きかったように見える。
実際の投票では、開幕から1ヶ月以上登板のなかった上原に次ぐ3位で、その価値が正しく評価されることはなかった。しかし、優勝を果たしたチーム内で、「最も貢献した選手」であり「最も優れた選手」であったのは紛れもなく高橋由伸だ。「最も価値のある選手」が、個人としては最大の名誉を逃したことを残念に思う。

posted by AKIRA |09:09 | プロ野球 | コメント(17) | トラックバック(0)
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2007年09月17日

プロ野球2007年MVPを占う

現在、国内プロ野球ではセ・パ両リーグとも史上まれに見る混戦が続いています。
そこで、最終的な順位が決まってしまう前に、是非とも論じておきたいことが一つ。
それは「MVPに選出されるのは誰か?」ということです。

さて、そのMVPという栄誉ある賞なのですが、NPBはこれを「最優秀選手賞」と定め、最も活躍した選手を表彰することとしています。
ところが、最近ではシーズン優勝チームから選出する傾向にあり、どうにも「Player of the year」を決めようという雰囲気ではありません。
月間MVPを選出する際には誰も所属チームの成績など考慮しないのに、年間MVPを決める場合には「優勝したチームから」が暗黙の了解になっているようです。
そのため「年間を通してベストの選手」と言うには、個人成績が及ばない選手の選出がしばしば。
個人的には「最も貢献した選手」と「最も活躍した選手」で分けたらどうか?と思います。
分けることで権威を損ねると言うのであれば、せめて見解の統一を…。
どちらにせよ今年も勝率首位のチームから選ばれるのでしょう。

今年は、首位を争うチームに素晴らしい結果を残す選手が顔を揃え、MVPの行方も混沌としています。
これを話のネタにしない手はありません!
以下に、候補者の名前と選考理由などを軽く掲載させていただきました。
読んでくださっている野球好きの皆様へ、一つ参考になれば嬉しく思います。


【セ・リーグ】

<巨人>

阿部慎之助
シーズン序盤こそ好リードを見せ投手陣をうまく引っ張るも、後半になり荒いリードが目立つ。票数を落とす原因になりそうだ。
また、自慢の打撃では打率の低下が気になるが、打点のタイトルに手が届く位置につけている。
同所属チームの二人との比較は避けられない。MVPには、タイトル獲得が必要条件となるのではないだろうか。

小笠原道大
二年連続のMVPということを考えると、昨年の成績との比較が待っている。打点、打率とともに本塁打数も昨年の数字を上回れそうではあるが、二冠獲得の昨年とは意味合いが違ってくる。出塁率を3分以上落としているのも気がかり。
セ・パ二リーグ分裂後、両リーグでのMVP獲得は江夏豊のみ。史上二人目の選出なるか?

高橋由伸
本塁打のタイトルがあればほぼ確定だろうが、残り試合数とライバルの存在を考えると難しそうである。しかし、リーグでトップの得点圏打率と三位の出塁率を誇り、核弾頭としてチームを牽引。先頭打者本塁打の記録を樹立するなど、とにかく爆発した印象。インパクトには事欠かない。
数試合の欠場も、昨年MVPの福留(16試合欠場)を通して見る限り大した問題ではないだろう。
     
高橋尚成
序盤こそ快調にとばすも後半息切れ。そのため印象が悪く、投票では不利。リーグトップの勝率、防御率は立派も勝ち星は伸びず。MVPのみならず、沢村賞にも届きそうにない。

<中日>

岩瀬仁紀
シーズン序盤こそセーブ失敗が目立ったが、ここまでの自責点は13。残りの登板次第では一点台の防御率も可能で、その他の数字に目を転じても例年と何ら変わりのない好成績であることがうかがえる。
しかし、周りが求めるものが高すぎるため、今年の成績と印象では選出の目はなさそうだ。

タイロンウッズ
監督自ら「高校野球」というチームにあって、不可欠な存在。
本塁打レースバリバリの大本命。昨年ほど突出した数字ではないものの、二年連続打点との二冠を視野に入れる。相棒福留の離脱後、四球の数が驚異的なペースで増えている。01年に金本が記録した年間128四球に届きそうだ(この数字は歴代五位となる記録であるが、上にあるのは全てが王貞治の記録である)。
今シーズンは、チームの柱でもある福留、川上、岩瀬が揃って満足のいく成績を残せず。チーム内の貢献度では一人郡を抜く。中日優勝時、この男以外の選手が選出されることは考えられない。

<阪神>

藤川球児
名実ともに、日本を代表するピッチャーに。評価されにくいポジションではあるが、二年前とは違う。それは、ここ数年で確固たる実績を築いたことと、「セーブ数」という分かりやすい数字が残っていることである。日本記録の樹立も可能なペースで、阪神優勝の際にはほぼ満場一致で一位票を獲得するのではないか。

久保田智之
日本記録となるシーズン81試合登板を達成するなど素晴らしいシーズンを送っているが、藤川との比較にはならないだろう。
「もし藤川がいなければ」という仮定の話で、チームの抑えとして君臨していたならば、同僚ウィリアムスとどちらが多くの票を獲得していただろうか。数字、実績ともに及ばないかもしれないが、セーブ数次第ではわからない。それだけの活躍を見せる充実のシーズンである。

ジェフウィリアムス
意外性という意味では、この男が票を集めるかもしれない。何せ数字が驚異的である。自責点はわずかに1。登板するたび、防御率が限りなくゼロへと近づいていく。
二位票を多く集めると予想する。

金本知憲     
野手に怪我人が続出する中、今日も連続フルイニング出場の記録を更新中。「今日も元気に」と表現できないのがさびしいところではあるが、不振が長引いても最低限の数字は残すのが金本の鉄人たる所以である。
仮に打点王のタイトルを獲得し、ここ数年の実績や存在感、チームに与える影響を加味しても…MVPの線はないだろう。

【パ・リーグ】

<日本ハム>

ダルビッシュ有
難攻不落。今、日本で最も攻略するのが難しい投手である。
「圧巻」というに相応しい投球を毎試合のように披露し、防御率一点台が現実的なものとなっている。しかし、その価値をより高いものとしているのは、リーグトップとなる12の完投と3つの完封。そして、200にも届きそうな投球回数なのだ。
決して充実しているとは言えない日本ハム先発陣。勝つためには、磐石のリリーフ陣に力を借りなくてはならない。そのリリーフ陣が危なげない投球を続けることができるのは、このタフなエースが長いイニングを消化するためである。リリーフ陣の登板試合数とともに、負担をも大きく軽減。
実力、成績、貢献度。これだけ高いレベルで三つの条件を満たしている選手が他にいるだろうか?若くして、個人としては最高の栄誉となる賞の獲得となるのか。注目である。

稲葉篤紀
自身初のバッティングタイトルとなる首位打者は難しいだろうか。
MVPとなればハードルはそれ以上。
本塁打王争いを繰り広げる楽天山崎、オリックスローズに次ぐリーグ三位の打点を叩き出し、ほとんどの部門で昨年以上の数字を残している。
チームに欠かせない存在ではあるが、主役はやはり投手陣か。

<ソフトバンク>

杉内俊哉
MVPを与えられるに相応しい今シーズンの働きである。キャンプで「斉藤和巳越え」を高らかに宣言した左腕の実力は伊達ではなかった。しかし、一昨年の同賞受賞時の成績に比べると物足りなさは否めない。
二度目の受賞にチームの優勝は必要条件である。

馬原孝浩
抑え受難の今シーズン、昨年に続いて格別の数字を残している。
抑え転向から三年目。最終回のマウンドに登る姿が板についてきた。
パ・リーグのセーブ記録更新も可能だが、ポジション柄、票を集めるのは難しいところか。

<ロッテ>

成瀬善久
ロッテが優勝を決めれば、消去法的な選出があるかもしれない。
(成瀬については、近々別項で取り上げる予定です)


まだまだ予断を許さぬペナントレース。その行く先は、とりもなおさずMVPの行方に直結します。
チームの勝利に優先するものはありませんが、MVPが個人として最も価値ある賞であることも事実。
果たして、その栄誉を手にしているのは誰なのでしょうか。興味は尽きません。

posted by AKIRA |12:26 | プロ野球 | コメント(8) | トラックバック(0)
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2007年09月11日

混セ展望 ~伝統の一戦から~

東京ドームでの巨人対阪神21回戦。テーブルスコアやニュースで確認するだけであれば、この試合をただ単に「首位攻防にふさわしい試合」と認識するにとどまったに違いない。だが、この一戦は両チームの今後の可能性と不安要素に溢れ、残り少ないペナントレースの行方を占う上で重要な試合だったのである。

試合は序盤から荒れた。登板する投手が一様に浮き足立ち、地に足のつかない投球を続ける。これが大一番のプレッシャーというものなのだろう。独特の緊張感は、普段プレッシャーなどというものとはまるで縁のなさそうな阪神先発下柳をも飲み込んでいるように見えた。ボールになる球がはっきりしており4つの四球を与え、3回3失点での降板である。
一方で、プレッシャーなど感じる余裕すらなさそうだったのが巨人先発の高橋尚だ。中四日の影響だろう。投球フォームは乱れ、力ない球が高めに浮いては痛打される。こちらも先発の責任を果たせず、4回を投げて5失点での降板となった。

この試合、目に見えて疲れを感じさせた投手がもう一人。阪神藤川である。ここまで阪神の9連勝とともに9連続で登板を続け、この日の登板で10試合連続となるのだから無理もない。疲労のせいか、この日の藤川は背筋が曲がっており、ボールにうまく力が伝わっていないようだった。自慢の速球にはキレがなく、打者の手元で伸びるような感じもない。キャッチャーの矢野もそのことに気がついたのだろう。途中からフォーク主体の攻めに転じ、巨人打線をかわしにきたのだ。1点を失い、1点差にまで追い上げられたものの、逃げ切りに成功し、事なきを得た。
10回裏、藤川の苦しさが如実に現れたシーンがあった。バッターボックスの李がタイムを要求。藤川はそれに気づかず、審判の「タイム」の声によって打者との真剣勝負に水を差されたと勘違いをする。そして、審判に対しての抗議の意味を込めてか、藤川はそのままボールを三塁線方向に投げつけたのだ。その行為はチームを鼓舞するという類のものではなく、チームに焦りをもたらすものである。藤川自身、審判への理不尽な思いだけでは、あのような行動には及ばなかったのではないか。人一倍、チームに対しての責任感が強い藤川のこと。思うようなパフォーマンスを披露することができず、自分への強い苛立ちが多分に影響してのことだったのだろう。

藤川の疲労と苛立ちに一抹の不安を覚える。11日からは9連戦がスタート。そのうちの後半6試合には、首位争いを繰り広げる中日、巨人との6連戦が予定されている。激戦が予想される首位攻防において、藤川の登板数増は必至。また、阪神は全日程を終えるまでに二日しか休みがないという事実も不安に拍車を掛ける要因である。
加えて、主砲金本の調子が上がらず、あたっているとはいえ下位打線の実力は見た目に劣る。大量援護はそうそう期待できないのではないか。
そして、正念場では経験がものを言う。進心境著しい阪神の若手選手ではあるが、若さとは勢いであると同時に脆さでもある。最後まで脆さを露呈せず、チームに勢いを与え続けることができるのか。ここまで来たなら内容云々ではなく結果が大事ではあるが、その結果に対して影響を及ぼすプロセスに不安を感じるのだ。

今後、流れを作り出せそうなのは、むしろ首位決戦三連敗を喫した巨人ではないだろうか。9日の試合に高橋由を一番に戻したことによって、本来の戦い方を取り戻したように思えるのだ。李の復調もあり、残りの試合をこの日のようなオーダーでまわせるようなら、巨人に有利な状況だと言える。打線が機能し、試合終盤までに点差をつけてしまえば、JFKや岩瀬らの顔を見なくてすむのである。
加えて、日程も巨人に味方をしている。残り17試合のうち、実に14試合までもが東京での試合なのである。今年の巨人は特別東京での試合に勝っているというわけではない。だが、それ以上に、この時期移動に労力を費やす必要がないというのは大きなアドバンテージである。しかも、巨人だけ試合の消化が早いため、今月の27日から翌月1日の間がまるまる休みとなるのだ。クライマックス・シリーズも含めた長丁場を考えるなら、この休養は巨人にとっては大きな恩恵となるはずである。
中日が、勝率六割以上と、今年も得意にしている本拠地名古屋ドームでの試合数をあと7としているのも巨人にとっては追い風だろうか。

posted by AKIRA |07:40 | プロ野球 | コメント(11) | トラックバック(0)
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