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ビデオア・シスタント・レフェリー制度の現在地:求められるのはピッチ上の審判団の誠実さ

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VAR制度のライブテストが開始されて2年目。この数ヶ月でオーストラリアのAリーグを皮切りにいくつかのリーグで新シーズン開始にあわせてテスト導入され、一気にテストケースが増えたことで得られるデータも多くなっている。特に欧州では独ブンデスリーガと伊セリエAという注目度の高い大きなリーグほとんど何の事前テストも無くいきなりリーグ戦に試験導入が行われたせいか、ファンの中だけで無く監督や選手たちにまで大きな混乱を呼んだ印象があるが、導入を認めた時点で「今シーズンはテスト」とシーズン最後まで割り切って受け入れるしか無いだろう。

実際テストケースの増大でVAR制度自体に対しての新しい発見はほとんど無いというのが正直な印象。多くのケースでは問題無く運用されているが、そうでないケースも当然あり、VARの判断ミスや審判団の中のコミュニケーション・ミス、そもそもVARのルールを理解せずに運用しているといったケースも一部では見られるようだが、制度自体に『新しい問題点』は出てきておらず、ここまでのテストでは想定通りの、ポジティヴな結果を得られているといった評価の声が圧倒的だろう。

むしろ問題はVAR制度について、テストを実施している国でも正しい理解がほとんど得られていないという状況であり、「制度への誤解による不当な批判が圧倒的に多い」ということがここまでのテストでの最大の収穫に思える。メディアやファンだけでは無く、選手や監督のコメントにも制度の本質的な部分を誤解している部分がかなり多く、どうやって正しい理解をより迅速に得ていくかが今後の大きな課題だろう。ただこの点でも、各組織がもっと時間を掛けて段階的なテストを経て理解を得てからリーグ戦の使用に踏み込むべきだったとは思える。

最も重要なポイント VAR制度のプロトコルはすでにIFABが公開しているためにここで全て説明する必要も無いが、最も重要な部分は「主審は常に判定を行い、VARは試合を決める重大なシーンで『明確な誤審』があったと判断した場合のみに介入し、その助言を受けて主審は最終判定を行う」というものであり、運用に際しては「ピッチ上の審判団の誠実さ」と「VARの明確な誤審の判断の客観性」が最大のポイントである。

最も分かりやすい例で言えば、VAR制度ではオフサイド誤審で笛が吹かれた場合にはVARが介入できないため、ピッチ上の審判団がVARがいるからと微妙なオフサイドの判定を敢えて行わずにプレーを流そうとする怖れが常にある。VARがいるかいないかで審判団の振るまいが変わり、判定の流れが変わるのはIFABの意図では無く、むしろ避けなければならない状況と見られているため、ピッチ上の審判団がVARに頼らずに常に判定を行うのはフットボールの判定制度の根幹に関わる重要なポイントになる。

例えば独ブンデスリーガではボールがゴールラインを割る前にファールの笛が吹かれていた事にVARと審判団が気づかずに判定を修正してゴールを認めてしまうミスがあったが、ファールでは無かったという判断が正しくとも、そもそも判定制度に則っておらず、重大なミスだったとのは間違いない。もちろんこのケースではコンマ何秒という微妙な差でVARが介入できるかできないかの大きな違いが生まれる可能性があるため、運用上の問題としてどこまで厳密にその差を計測することができるかは疑問の余地はあるだろうが、だからこそピッチ上の審判団、特に主審がVARに頼ること無く常に迅速な判断で笛を吹こうとする誠実さを失わないことが求められるとも言える。

VARの明確な誤審の判断の客観性の問題点については説明するまでも無いだろう。どのシーンで介入し、どのシーンで介入しないかの基準が分かりにくいという声はテストが行われている国で毎週のように出ている。制度以前の「VAR個人の能力の問題」で片付けられるケースもあるだろうが、VARが正しい判断をしていても批判が出ていると言われるケースもあり、そもそも「審判にとって客観的に見て明確な誤審ではない」という状況でも、必ずしも人々の共感を得られる訳では無いというのが誤解を呼んでいる一因だろう。しかし主審の笛が常にそうであるように、「判断の基準が分かりにくい」というのはフットボールの判定制度そのものの本質的な部分であり、VAR制度自体の問題では無いとも言える。主審同様にVARも人間であり、間違った判断を下す可能性も常にあるということが早く理解されるべきだろう。もちろんその上で最終的に「VARが間違うことは受け入れられない」という意見が多数を占めて導入が見送られる可能性もある。

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