2007年02月12日

きさらぎ賞に見る、今年のクラシック路線の傾向。

「ディープの再来」「ディープ2世」新馬戦で持ったままでの圧勝劇を演じて見せたオーシャンエイプスには、これでもかというほどの大絶賛の嵐だった。そしてその声は人気面で如実に反映され、重賞ウイナー・ナムラマースを差し置いて単勝1倍台の圧倒的人気に押された。

実際、レース前は私も「ぶっちぎりもあるかも・・」と思っていたし、スターホース誕生に期待を寄せていたことも事実である。だが、気になるデータとして、1戦1勝のキャリアできさらぎ賞に臨んだ馬は過去1頭も勝っておらず、国内で唯一ディープインパクトに土をつけたハーツクライですら3着止まりだった。

期待と不安が渦巻く中、ゲートが開かれた。まず先手を取ったのは、落馬負傷の四位に替わってアサクサキングスの手綱を取ることとなった武幸四郎だった。土曜京都のメイン・すばるSで超人気薄のモンテタイウンを1着に導いたように、ここのところ好調が目立つ騎手である。予想された展開ではあったが、アサクサキングスがやや後続を離す形でレースを引っ張った。注目のオーシャンエイプスは中団辺りでレースを進め、それをナムラマースがぴったりとマークしていた。

有力馬が牽制し合う中、武幸四郎は冷静に策を練っていたようだ。1000m通過が61秒を超えるスローの展開に持ち込むと、上がり勝負になってしまうタメ逃げをするのではなく、4コーナーからロングスパートを仕掛けることによって後続の脚を使わせた。これによりスローペースではあるが持続力のある末脚が問われ、スタミナの要求される流れを作り出した。

この流れに応えたのは、アサクサキングスだった。ビハインドザマスク、イングランディーレなど京都に相性の良い産駒を送り出しているホワイトマズルの遺伝子を受け継いだこの馬は、武幸四郎の作った流れを最大限に活かし、直線追い込んだナムラマースに1馬身3/4の差をつけ、重賞制覇を成し遂げた。

注目されたオーシャンエイプスは、4着だった。一旦はアサクサキングスに迫ろうかという場面もあったが、最後は脚を無くしてしまった。新馬戦こそ追わずして驚異的な勝ちっぷりを見せたが、目一杯追われた今回は伸びが無かった。単に気持ちの問題か、追って伸びないタイプなのか。この判断は非常に困るところだが、近親のゴールデンキャストも鮮やかな勝ちっぷりの後に人気が集中し、人気を裏切り続けた。もしかしたら、オーシャンエイプスはディープ後のスターホースを模索する人間側の過大評価だったのかもしれない。

きさらぎ賞が終わって気づいたことがある。それは、3歳クラシックへ向けた戦いにおいて、逃げ切り勝ちが例年以上に多いという点だ。京成杯をサンツェッペリンが逃げ切ったのに始まり、若駒Sをモチが、あすなろ賞をワンダースティーヴがそれぞれ逃げ切っている。そしてきさらぎ賞でのアサクサキングスの鮮やかな逃げ切り。だが、そのいずれも「誰も行かないなら行ってしまえ」という、ある意味では本意としない逃げ切りである。

今年のクラシック路線の有力馬はドリームジャーニー、フサイチホウオー、アドマイヤオーラと差しをストロングポイントとする馬が多い。だがその一方で、逃げ切り勝ちを収めた伏兵陣は自身の脚質の幅を広げている。有力馬と伏兵陣との脚質のバランスが取れている今年のクラシック路線、もしかしたら例年以上に見応えのあるものになるかもしれない。

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posted by 犬太 |13:04 | 競馬コラム | コメント(2) | トラックバック(1)
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2007年02月04日

左前方にいたおっちゃんの、馬券を見つめる目。

東京競馬場に来るのは、かれこれ半年ぶりぐらいになるだろうか。最近は専らウインズ族なのだが、2歳王者のドリームジャーニーを東スポ杯で破ったことから3歳牡馬ピラミッドの頂点に位置するとの呼び声も高いフサイチホウオーをはじめ、ディープインパクトの半弟にして2戦2勝の戦績を誇るニュービギニング、東スポ杯でフサイチホウオーの上がりを上回る末脚を繰り出した藤沢厩舎の刺客・フライングアップルなど好メンバーが揃ったこともあり、久々の現地観戦を決断するに至った。

私は競馬場に行くと、必ず内馬場に行く。単純に空いてるし、ベンチに座ってゆっくり落ち着いて予想出来るからだ。そしてレースが始まるとモニターに釘付けになる。競馬場に来ている意味を問われそうだが、おそらくこのサイクルは一生変わらないような気がする。

それでも、メインレースになると内馬場を離れ、必ずゴール前で観戦するようにしている。やはりメインレースともなるとゴール前の歓声もより一層大きくなるからだ。さらに投資額もメインレースになるとより多くなることから、その歓声には「本気」が窺え、結果に一喜一憂するファンの人間模様がまた一層競馬場の趣を引き立たせる。

そして今日も、普段と同じようにメインレースが始まる前にゴール前へと向かった。周りを見渡すと返し馬の際に「宏司(北村騎手の名前)!」と叫ぶファンもいれば、僅かな時間も惜しまず最終レースの検討に勤しむファンもいる。そういった競馬場の風景が、また競馬場の魅力を引き立てる。

さて、そのメインレース・共同通信杯の結果はというと、直線に入り一旦はフライングアップルが先頭に躍り出たものの、中団で脚を溜めていたフサイチホウオーが直線半ばで並びかける。岩田の激に応え、必死にフライングアップルが食い下がるもフサイチホウオーはジワジワと差を広げ、外から追い込んで来たダイレクトキャッチの追撃もクビ差振り切り、見事無傷の4連勝を飾った。一方、期待されたニュービギニングは最後方からレースを進め、直線インを突いたものの、伸び切れず4着まで。上位陣との地力の差が出た格好となった。

私はフサイチホウオーとフライングアップルの馬連1点勝負(3倍強しかつかなかったが)だったので見事に外してしまった。直線結構熱かったので得も言えぬ脱力感が襲ったがまあしょうがないか、と最終レースに向けて気持ちを切り替えた。左前方におっちゃんの馬券が視界に入ったので盗み見してみるとその馬券はニュービギニングを軸にした3連単だった。さらにおっちゃんが別の馬券を見ていたのでそれも盗み見してみると、その馬券はニュービギニングからの馬単が記されていた馬券だった。

ニュービギニングを軸にした人はそのおっちゃんだけではないだろうからそれほど特別な光景とは思わなかったが、1つ気になったのが、その馬券を見つめるおっちゃんの目だった。愚痴を漏らすのでもなく、紙屑となった馬券を破り捨てるでもない。ただただその馬券をじっと見つめていたのだ。おっちゃんには、その馬券がどのように映っていたのだろうか。寺島修司は「競馬ファンは馬券を買わない。財布の底をはたいて自分を買っているのである」という言葉を残したが、おっちゃんが遠い目で見つめていたのは、馬券ではなく自分自身だったのだろうか。

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posted by 犬太 |19:33 | 競馬コラム | コメント(0) | トラックバック(0)
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2007年01月31日

武豊が発した言葉の意味を、今1度。

夕方のスポーツニュースを見ていると、ある1頭の競走馬の特集が組まれていた。エリザベスクィーンという名を持つその馬は目下113連敗中と連敗街道を突き進み、昨日のレースで3着に敗れたことで114連敗となったとのことだ。

なぜこの馬が今回スポーツニュースで特集されるほどに注目を集めたのだろうか?これは、言うまでもなく以前高知競馬に所属していたあの馬の騒動が起因している。

ハルウララ──当時人気が低迷していた高知競馬の救世主として突如スポットライトを浴び、ハルウララ絡みの馬券を買っても「当たらない」ことから、ハルウララのたてがみを交通安全のお守りとするファンが急増。それに付随してグッズの売上、入場者数は増加の一途を辿り、全国津々浦々からハルウララ見たさに高知競馬場まで人々が足を運んだ。さらにあの武豊までもが騎乗し、ハルウララを題材にした映画が作られるほどの一大ブームを湧き起こした。

ハルウララの人気のパロメーター、それは語弊を恐れずに言うと「負けること」である。負けても負けても諦めない、という触れ込みなのだからこれは当然と言えば当然だろう。そして負けに負けを重ねたハルウララが持っていた連敗記録が113敗だった。つまり、昨日の敗戦によってエリザベスクィーンはハルウララの持つ記録を破ったわけだ。注目が集まるのも無理は無いだろう。

ただ、私はそのニュースを目にした時、武豊がハルウララの騎乗を終えた際に公式サイトで出したコメントがフッと頭に浮かんた。曰く、「生涯で一度も勝ったことがない馬が、G1レースを勝った馬達よりも注目を集める対象になるというのはどうにも理解し難いものがあります」ちなみに、この日は高知競馬唯一の交流重量である黒潮賞が開催され、武豊はフェブラリーSを制したノボトゥルーに騎乗していた。それでも、あくまで世間の注目はハルウララであり、G1馬の出走する黒潮賞は実質準メインという扱いになっていた。どう考えても矛盾しているとしか言いようがない。

そして今回、その歴史が繰り返されようとしている。エリザベスクィーンの存在をマスコミが取り上げたのか、それとも小牧、岩田といったトップジョッキーの中央移籍により人気が低迷している園田競馬側からマスコミへのPRの要望があったのかは定かではないが、確実に言える事として、ハルウララ騒動の良い部分だけを見るがあまり、その騒動の中にあった裏の面を何1つ見ていないということが今回の報道から窺い知れた。

ここでハルウララ騒動時に起こった裏の面を1つ1つ振り返ってみよう。馬主交代時に前馬主から現馬主が無償譲渡を受け、その直後に「ハルウララ」を商標出願登録したことから営利目的ではないかという批難が巻き起こったことに始まり、ハルウララの移送を巡る調教師、馬主間での綱引き、ハルウララ基金における高齢馬保護という観点の欠如・・・本当に様々な暗い影を落とした。

今回はハルウララ騒動の時と比べればそれほど大きな騒動にはならないだろうとは思うが、何があるか分からないのもまた事実である。何しろ、半官贔屓という言葉に託けて、100戦以上して未勝利の馬に「負け組の星」「負けても負けても諦めない」といった美辞麗句を並べたて、勝ち馬やG1馬の存在をないがしろにしてしまった「前科」があるのだから。

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posted by 犬太 |20:50 | 競馬コラム | コメント(3) | トラックバック(0)
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2007年01月26日

まな板の上に載ったことに、意味がある。

ディープインパクト引退後も、競馬界の話題の中心はディープインパクトだった。「ディープ、北海道へ出発」、「JRA賞授賞式、ディープ関係者喜びの声」、「ディープの全弟、オンファイアが引退」・・・ディープが競馬という存在を世間に大きく知らしめ、2年に渡って国民の関心を惹き続けたスターホースであることに疑う余地は無い。それに関して異論はほとんどないだろう。

ただ、いつまでも競馬界がディープにおんぶにだっこという訳にはいかない。ファンサービスといってしまえばそれまでだが、2月に行なわれる予定のディープ撮影会などは生産者にとって最も神経を使う時期である種付け・出産を目前に控えている時期でもあり、そのイベントに対する疑問を禁じえない。それでなくても、夏になれば牧場見学が可能になるのに、である。ディープはもう2度とターフに帰ってこない。いつまでもディープ人気のおこぼれを頂戴していてはいけない。過去を振り返ってばかりでは、前へ進めないのだ。

そんな中にあって、画期的なニュースが飛び込んできた。東京競馬場の新スタンド完成イベントとして、JRAが引退したダービー優勝騎手による「レジェンドレース」を企画しているというのだ。すでにオーストラリアではこのレースが施行されており、過去日本からは佐々木竹見、河内洋が参戦している。

これは、競馬ファンからしてみれば「久しぶり」といっても良いぐらいの素晴らしい試みではないだろうか。過去、名馬を冠にした名馬メモリアルレースが行なわれた時はオールドファンをノスタルジックな気分へと誘った。もし今回の試みが実現されるとすれば河内調教師や岡部幸雄氏、大西直宏氏など若い競馬ファンにとっても馴染み深い名前が揃い踏みする可能性があるだけに、オールドファンのみならずともレジェンドレースに対する期待感、ワクワク感が否が応にも湧いてくる。

「案はまな板の上には載っているが、実際に乗れる人が何人いるのかなどクリアすべき問題は少なくない。ご協力が必要です」と住吉道紀東京競馬場長は語るが、岩元、加藤、河内、根本など各調教師は皆口を揃えて協力したいという旨の発言をしている。特に1987年、メリーナイスでダービーを制した根本調教師は当日の段取りについても意見を述べるなど、やる気を見せている。

過去のダービージョッキー騎手を集め、レースを行なうという案に賛同していることに、冒頭で述べた過去を振り返ってばかりはいられないという意見との矛盾を感じるかもしれない。だが、その試みに過去を振り返る要素は1つもない。なぜなら、長い日本競馬の歴史を振り返ってみても、ダービージョッキーが一同に会してレースを行なった例は過去に前例が無いからだ。JRAは今、新企画を打ち出し、実現への第一歩を踏み出したことでより前へと進もうとしている。今回のJRAの試み、是非とも実現させてもらいたいものだ。


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posted by 犬太 |20:48 | 競馬コラム | コメント(0) | トラックバック(1)
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2006年12月24日

WINSで観た有馬記念、そこは「小さな競馬場」だった。

少なくとも「WINS」という場所は、馬券を買う、ただそれだけのために存在するものだと思っている。そして、そのためだけにWINSへ来る人達は競馬場に足を運ぶ人達とは全く異なるオーラを放つ。G1のレース前の恒例ともなっているファンファーレに合わせた手拍子など一切せず、その間にも最終レースの検討を行なっているほどである。

しかし、この日のWINSは何かが違っていた。普段の競馬においては明らかに「温度差」のある競馬場とWINSが、見事にシンクロした空気を醸し出していたのだ。象徴的なのが、スイープトウショウがゲート入りをゴネたシーンだ。競馬場での音声を聞く限り、スイープトウショウの一挙手一投足に大きなどよめきが湧き上がり、ようやくゲート入りを果たした際には大きな拍手が沸き起こっていた。そしてWINSでも特別騒ぎ立てることなくその戦況をじっと見守り、ゲート入りを果たした際にはWINSには安堵感のようなものが広がっていた。表現は違えど、スイープトウショウの枠入りを願う気持ちは、競馬場もWINSも同じだった。

ゲートが開き、レースが始まると、大逃げ宣言をしていたアドマイヤメインと柴田善臣が公言通りの大逃げを見せた。ディープインパクトと武豊は後方から3番手に構え、ゲート入りに手間取った紅一点・スイープトウショウと池添謙一はその後ろにつけた。前に目をやると角居厩舎の2頭・デルタブルース、ポップロックが同じようなポジションを取り、その2頭の後ろにはドリームパスポート、前にはメイショウサムソンと今年の牡馬クラシック路線を牽引した馬が構え、距離の不安が囁かれていたダイワメジャーは2番手に控えた。

1周目を過ぎ、向こう正面に入りカメラがググっと引くと同時に、競馬場、WINSから大きなどよめきが起こった。先頭を行くアドマイヤメインと後続との差が大きく開いていたからである。「本当にディープは届くのか?!」そんな空気が競馬場、WINSを支配していた。

4コーナーに入ると、アドマイヤメインと後続の差は詰まり、後続馬に捕らえられるのはもはや時間の問題だった。すると「さて、どの馬が抜け出して来るのかな」とこちらが冷静に見る間もなく、ディープインパクトの鹿毛の馬体がカメラの前を横切り、あっという間に先頭に踊り出た。

こうなると、中山競馬場、そして2500Mという特殊な距離もディープの前では全く無と化す。ディープ劇場の最終章は、ポップロックに3馬身差をつける圧勝劇だった。

ところで、ディープが勝ったという事だけは解ったが、掲示板に着順が表示されるまで2着・3着馬が全く解らなかった。ディープ1頭に目が行ってしまったことにもよるが、場内で流れる実況の音声が競馬場に勝るとも劣らないWINS内での大歓声で、直線に入ってからほどんどまともに聞き取れなかったのだ。この日のWINSはまさに「小さな競馬場」だった。そして、その空間を作り上げたのは、紛れも無くディープインパクトだった。

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posted by 犬太 |21:14 | 競馬コラム | コメント(2) | トラックバック(1)
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2006年12月24日

ディープインパクト(有馬)記念にしか見えないテレビでの報道

ディープ、ディープ、ディープ。スポーツ新聞から一般の新聞、そしてテレビ。この1週間はまさに「ディープウィーク」だった。

それにしてもディープ人気は尋常ではない。800人が前日から入場門の前で徹夜を敢行し、前売り券は既に完売している。近年の有馬記念の中でも例を見ない盛り上がり方だ。

さて、当のディープはというと、凱旋門賞からのリベンジを期したジャパンカップが目イチの仕上げかとも思われたが、調教を見る限りでは体調に問題はなさそうだ。そうなってくると昨年生涯初となる敗北を喫した中山2500Mへの対応が鍵となってくる。昨年はいつもように大外を捲る「ディープ街道」を通り、先を行くハーツクライを捉え切れなかった。ジャパンカップで再確認した自分のスタイルを貫くのか、それとも天皇賞・春で見せたような4角先頭の積極的な競馬を見せるのか。いずれにせよ、レース前、レース中、そしてレース後もディープが話題の中心であることは間違いないだろう。

だが、ディープがクローズアップされる一方で、トウショウボーイとテンポイント(さらにグリーングラス)による「日本競馬史上最高のレース」とも称されたマッチレースや一代ブームを巻き起こしたオグリキャップ感動のラストラン、トウカイテイオー奇跡の復活、そしてグラスワンダーとスペシャルウィークのハナ差の激闘など数々の名勝負を作った舞台である「有馬記念」という固有名詞として紙面を賑わすことは無かった。世間的に見れば、「有馬記念」は「ディープの引退レース」というだけのものになっている。それは決して健全な姿とは言えない。

競走馬がいるから、レースが成り立つ。そして出走する競走馬のレベルが上がってこそレースの価値は上がり、勝利馬に対する評価も上がる。ディープ以外にも、今年の有馬記念には多士済々の馬が出走してきている。

降着の憂き目に遭ったものの、エリザベス女王杯でスイープトウショウ、ディアデラノビアといった歴戦の古馬相手に先着を許さなかったカワカミプリンセス、5連勝でジャパンカップダートを制したアロンダイト、そして先週のフサイチリシャール・・・今年の3歳馬のレベルが高いことは周知の事実だ。ジャパンカップ2着などG1・2着3回を数えるドリームパスポートは雪辱に燃えることだろう。そして春2冠のメイショウサムソンは不完全燃焼に終わった秋3戦からの巻き返しをすべく、ハードな調教を積んできている。中山2500Mという特殊な条件下で3歳馬の台頭があっても不思議ではない。

さらには世界で戦った経験値を持つ5歳世代が待ち受ける。メルボルンカップでワン・ツー・フィニッシュの離れ業を演じて見せた角居厩舎の2頭・デルタブルース、ポップロックにはそれぞれ岩田、ペリエといった名手が手綱を取る。名手と言えばこの秋充実の一途を辿っているダイワメジャーには今年G1・3勝の「アンカツ」こと安藤勝己が跨る。

それ以外にも大逃げ宣言をしているアドマイヤメインやコスモバルク、前述の紅一点・スイープトウショウも虎視眈々と番狂わせを目論んでいる。さらにデビュー10年目の武士沢に初となる重賞のタイトルをプレゼントしたトウショウナイト、サマー2000シリーズ初代王者・スウィフトカレント、「ディープ世代」の1頭で11ヶ月ぶりの出走となるアドマイヤフジ、芦毛の名馬・タマモクロスの遺児であるウインジェネラーレ、佐賀で初勝利を挙げたトーセンシャナオーとバラエティに富んだメンバーが揃っている。

ディープばかりに目がいってしまうのも致し方ないことではあるが、ファンに選ばれた馬、そして推薦を受けた馬が走る「有馬記念」というレースを色々な角度から見てもらえたらな、と思う。今日はあまりにもディープ偏重のテレビ番組が多すぎた。

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posted by 犬太 |03:30 | 競馬コラム | コメント(0) | トラックバック(0)
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2006年11月26日

ディープ関係者のジャパンカップにかけた想い

「名誉挽回」「汚名返上」こんな文字が今週の紙面を賑わせた。言うまでもなく、それはディープインパクトのことを指している。

世間一般から見て、凱旋門賞に挑むまでの間、ディープは紛れもなく日本競馬界にとっての英雄だった。惜しくも3着に敗れた凱旋門賞が終わってもなお、ディープを賞賛する声が圧倒的だった。

だが、そこに例の「薬物騒動」が降りかかった。

この一件に関しては、池江調教師に罰金が科せられ、ディープは失格という形で一応収まったが、このときのJRAの対応はなんとも利己的なものだった。ダービーの時にまだ勝敗が決まっていない時点でディープの銅像を設置するなどディープをあれほど過剰扱いしたにもかかわらず、薬物騒動の時に高橋理事長は「世界最高峰の栄誉あるレースに汚点を残した」と何も調べていない段階で発言している。クラシックにマル外を解放するなど日本競馬の国際化に尽力を尽くしてきた人物だっただけに、何とも寂しい限りだった。

ともあれ、この一件はディープに暗い影を落とした。これまで英雄と謳われていたのがウソのような掌返しが始まり、事情を知っている人ならともかく、事情を良く飲み込めていない人は極端な話「薬で強くなった馬」として今回の騒動を見ている可能性があった。

それらの雑音を打ち消す方法はただ1つ、他ならぬディープ自身が「飛ぶ」しかなかった。そのために池江調教師をはじめ、ディープを支える関係者はまさに「究極」と呼べる仕上げをした。

そして、ディープは期待に応えて「飛んで」くれた。道中最後方から、大外をただ1頭突き抜けた。まるでダービーのリプレイを見ているかのようなディープらしい豪快なレースぶりだった。

ディープ自身6回目となるウイニングランで、武豊は拳を天に向かって3度ほど突き上げた。ファンは大「ユタカ」コールでそれに応えた。そしてレース後、インタビューに応える池江調教師の声は、心なしか震えているように思えた。今回の勝利は、ダービーよりも、菊花賞よりも大きな意味を持つ勝利だった。

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posted by 犬太 |22:09 | 競馬コラム | コメント(0) | トラックバック(0)
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2006年10月22日

菊花賞、3人の男模様

「3冠馬」この名誉を手にした馬は、過去僅か6頭しかいない。そして3冠馬となった馬達は、「ナタの切れ味」「皇帝」「シャドーロールの怪物」などといった称号を授かり、後世まで語り継がれる存在となる。

そして今年3冠に挑戦するのは、石橋守とメイショウサムソンである。この世代においてはトップグループのうちの1頭という評価に過ぎなかったが、皐月賞、ダービーを制したことで一気にこの世代の頂点を極めた。石橋はテイエムオーシャンで本田がブレイクしたのと同じように、メイショウサムソンによってブレイクを果たした。自身の誕生日前日に行なわれる菊花賞で前祝いを挙げる事ができるだろうか。

そして今年のクラシックすべてのレースで「アドマイヤ」の馬に騎乗し、人気に応えることができなかった武豊は、最後のクラシックをダービー2着のアドマイヤメインとのコンビで挑むこととなった。その名の通り「メイン」を飾り、最後の最後にオーナーの期待に沿えることが出来るだろうか。

ドリームパスポートと横山典弘のコンビは、お互いに期するものを持っている。ドリームパスポートとメイショウサムソンはこれまで6戦して3勝3敗と全くの5分。しかし、そのうちの2敗が、皐月賞とダービーである。2着、3着と惜敗の続いた春のクラシックの雪辱を最後の1冠で果たすことが出来るだろうか。そして横山典弘は3年連続2着とあと一歩の所で菊花賞を勝てずにいる。セイウンスカイ以来2度目となる名誉を再び掴むことが出来るだろうか。

3者3様、それぞれの想いを乗せて、3000mの長丁場がスタートした。

大方の予想通り、逃げたのは「アドマイヤ」でのリベンジを誓う武豊のアドマイヤメインだった。「勝つにはこれしかない」という大逃げで、セイウンスカイの逃げ切りの再現を狙った。

そしてそのセイウンスカイで3000mを逃げ切った横山典弘とドリームパスポートは敵をメイショウサムソン1頭に絞り、普段より前目の位置でレースを進めた。「もう2着はいらない」馬も鞍上も想いは同じだった。

ドリームパスポートのマークを受ける形となった石橋守とメイショウサムソンは、いつものように好位からレースを進めた。折り合いも上手くつき、理想的ともいえるレース運びだった。

3コーナー。徐々に各馬のスピードが上がっていく。アドマイヤメインは相変わらず快調な逃げを打ち、ドリームパスポートは虎視眈々とメイショウサムソンの様子を窺いながら末脚を温存している。メイショウサムソンは「前門の虎」武豊とアドマイヤメイン、「後門の狼」横山典弘とドリームパスポートに挟まれる恰好で、動くに動けない。

4コーナー。先頭を行く武豊とアドマイヤメインの脚はなおも衰えない。ここでようやく石橋守とメイショウサムソンが手綱を動かしアドマイヤメインを捉えにかかる。横山典弘とドリームパスポートはなおも末脚を温存し、最後の直線に勝負を賭ける。

残り2ハロン。武豊とアドマイヤメインが逃げ込み体制に入る。石橋守とメイショウサムソンは脚が上がってしまったのか、ジリジリとしか伸びない。武豊のリベンジ達成か──しかし、その外からは最後まで脚を貯めていた横山典弘とドリームパスポートが猛然と襲い掛かってくる。

そして、残り1ハロンを切った所で、ついに2頭の順位が入れ替わった。ドリームパスポートにとって春のクラシックの雪辱、そして横山典弘にとって3年越しの雪辱を晴らす時が来たのか──

しかし、最後に笑ったのは、武幸四郎とソングオブウインドだった。皐月賞の1週間前にようやく勝ち上がった8番人気の伏兵は、エルコンドルパサーを父に持つ最後の世代として最後のクラシックでとてつもない大仕事をやってのけた。

終わってみれば、レースレコードとなる3分2秒7で決着した今年の菊花賞。メイショウサムソンは惜しくも3冠馬の仲間入りを果たすことができなかった。横山典弘とドリームパスポートはまたしてもG1で辛酸を舐める結果となった。そして武豊はついに今年のクラシックで「アドマイヤ」でのG1制覇を果たすことができなかった。

その一方でソングオブウインドというG1馬が誕生した。希望的観測だが、エルコンドルパサーを父に持つ馬として、是非とも来年あたり凱旋門賞にチャレンジしてもらいたいものである。そして願わくば、父が2着に敗れたその舞台で、父を超える着順でゴールしてもらいたいものである。

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posted by 犬太(ケンタ) |21:26 | 競馬コラム | コメント(0) | トラックバック(2)
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