2007年06月10日

安田記念~春のG1の締めは、現役最強マイラー。~

2歳女王・ウオッカのまさかの敗北に始まり、そのウオッカによる64年ぶりのダービー制覇、波乱のG1戦線を演出した松岡&福永・・・一筋縄ではいなかった今年の春のG1戦線を締めくくったのは安藤勝己&ダイワメジャーのコンビだった。

内枠がなんだ。海外遠征帰りがなんだ。ダイワーメジャーの魅せた競馬は、まさに「横綱相撲」だった。

ゲートが開くと、ダイワメジャーはハナに立とうかという勢いで先行集団に取り付く。しかしそこは高ぶる気持ちをグッと抑え、注文をつけたいコンゴウリキシオーが手綱を懸命に動かし、先頭に立つ。コンゴウリキシオーに跨る藤田もまた、波乱のG1戦線を演出した1人だ。

各馬の序列も整い、直線を向く。長い府中の直線では差し・追い込みが効きやすいように思われるが、ヴィクトリアマイル、ダービーを見れば解る通り、逃げ・先行馬が良績を残している。ややもすると過剰人気に思われた3番人気というコンゴウリキシオーに対する期待値も、それを反映したものなのだろうか。

直線の半ばに入っても、先頭を行くコンゴウリキシオーの脚色が衰えることはない。高松宮記念を制したスズカフェニックス、府中で連対を外したことのないエアシェイディが後方から懸命に脚を伸ばすも、ジリジリとしか差が詰まらない。

「また逃げ馬か・・・」という声も漏れてきそうな東京競馬場。そんな中、道中4番手で前の様子を伺っていたダイワメジャーが1完歩ずつ差を詰める。100m、50m・・・ゴール版を通過した時、コンゴウリキシオーにクビ差をつけていた。

これで昨年のマイルチャンピオンシップと合わせての、マイルG1連覇。昨年の安田記念を香港馬・ブリッシュラックが制したことでマイル路線の地盤低下も囁かれたが、そんな不安を一蹴する横綱相撲だった。

陣営は次走、ダイワメジャーを宝塚記念に出走させるようだ。昨年の有馬記念3着が示すように、距離適正に問題はない。メイショウサムソン、アドマイヤムーン、ポップロック、カワカミプリンセス、さらには出走を匂わせているダービー馬・ウオッカ。今年のグランプリは、色とりどりの好メンバーが揃った面白いレースが期待できそうだ。

posted by 犬太 |14:45 | 競馬コラム | コメント(2) | トラックバック(1)
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2007年05月27日

日本ダービー~必然の快挙。~

ヴィクトリーが出遅れた。

一瞬立ち遅れただけでなく、隣にいたアサクサキングスに寄られる格好になってしまい、完全にリズムを失った。そして、道中は掛かってしまい、4番手まで押し上げるというチグハグな競馬。ヴィクトリー&田中勝春のダービーは、そこで終わりを告げた。

フサイチホウオーが掛かった。

いうまでもなく、ダービーは世代の頂点を決める舞台。その舞台で栄冠を手に入れるためには、馬と喧嘩していてはいけない。フサイチホウオー&安藤勝己のダービーは、そこで終わりを告げた。

アサクサキングスがハナに立ち、気分良く飛ばす。サンツェッペリンが2番手につける。鞍上は、先週、先々週とそれぞれG1を制した福永祐一と松岡正海。積極策は自信の表れか。

4コーナーを過ぎ、直線に入っても前を行く2頭の脚色が衰える様子は見えない。ヴィクトリーも抜け出そうとするが、すでに脚色は鈍っている。

さあ、何が来るのか──その刹那、ヴィクトリー、プラテアードの間を力強く抜けていく1頭の馬が視界に飛び込んできた。

ウオッカだ。

新聞上で、「何を考えているのかわからない」とまで言われたウオッカのダービー挑戦。その答えは、直線での鮮やかな弾けっぷりが表していた。「ダービー馬になれる自信があるから出走を選択したんだ」と。

終わってみれば、2着に3馬身差をつけての圧勝。父よりも強くあって欲しいという願いをこめて命名された「ウオッカ」の走りは、すでに父を超えているのかもしれない。それほどまでに、ウオッカは強かった。

posted by 犬太 |16:54 | 競馬コラム | コメント(3) | トラックバック(2)
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2007年05月14日

5年目&3年目、府中のターフを鮮やかに彩ったフレッシュコンビ。

ハナ差でG1初制覇を逃した皐月賞から約1ヶ月。検量質へと引き上げる際に地面へと投げたヘルメットは、この日はしっかりと頭を覆っていた。そしてその代わりにジョッキーの命ともいえる鞭がスタンドへ投げられていた。昨年は北村宏司がG1初制覇を成し遂げたヴィクトリアマイルで、今年もまた新たなG1ジョッキーが誕生した。

松岡が手綱を取った馬は、コイウタ。前川清さんの持ち馬ということで昨シーズンの牝馬クラシック路線でも注目を集めていたが、桜花賞では3着、オークスでは競走中止と満足のいく成績を残すまでには至らなかった。前走のダービー卿CTで2着に食い込んだものの、カワカミプリンセス、スイープトウショウといった強豪揃いのメンバーにおいて、単勝60.1倍の12番人気にとどまった。

「馬の行く気に任せて乗った」とレース後に振り返ったように、道中は無理なく6番手につける。そして直線に入ると、迷わずインへ進路を取る。先週のNHKマイルカップで内が壊滅状態だったことから各ジョッキーともインを嫌う傾向が強かったが、松岡曰く「自分の勘を信じて乗った」。

松岡によってインへと導かれたコイウタは、競走中止のオークス以外で3着以内を外していないという得意なコースで文字通り「弾けた」。逃げ粘るアサヒライジングを内から交わし去ると、後はゴールまで一直線。鬼気迫る松岡の追いっぷりに応え、半馬身差をつけてG1のゴール版を真っ先に駆け抜けた。ゴール版を過ぎた後には渾身のガッツポーズを見せ、嬉しさを目いっぱい表現した。

嬉しかったのは、調教師もまた然りだろう。コイウタを管理する奥平調教師は若干34歳。開業から僅か3年でのG1制覇となった。ジョッキー5年目の松岡と、調教師3年目の奥平。この日、府中のターフを彩ったのは、フレッシュなコンビだった。

posted by 犬太 |23:06 | 競馬コラム | コメント(0) | トラックバック(0)
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2007年04月15日

15年ぶりの栄光。その裏には、初めて味わった悔しさがあった。

命の次に大切なお金を長方形の紙に託す競馬ファンは通常、馬券が当たらない限り100%勝者を祝福することはできない。そして、その祝福の度合いは配当金が大きさに反比例して少なくなっていく。

皐月賞もそうだった。7番人気のヴィクトリーがハナ差で15番人気のサンツェッペリンとの叩き合いを制した。馬連94,630円、3連単に至っては 1,623,250円。レース終了後後、えも言えぬ空気が中山競馬場を支配した。

だが、その空気は1人の男によって劇的な変化を遂げることとなる。ヴィクトリーの鞍上・田中勝春が表彰式のため公の場に姿を表すと、ヴィクトリーのオーナー・近藤英子氏の夫で「アドマイヤ」のオーナーでもある近藤利一氏と固く抱擁を交わし、岡部幸雄氏とも抱擁を交わす。そして勝利ジョッキーインタビューで滲み出る田中勝春の朴訥とした人柄。いつしか中山競馬場は、大きな拍手に包まれていた。

その一方で、レースを終え、検量室に向かう道中「あー、ちくしょう!」と声を荒げ、持っていたヘルメットを地面に叩きつけ悔しさを前面に押し出していたのが、15番人気・サンツェッペリンを2着に持ってきた松岡正海だった。一旦はヴィクトリーを交わし先頭に立っていただけに悔しさもひとしおだろう。たとえ15番人気でG1連対を果たすという大仕事をやってのけても、負けは負け。その「勝負師としての心」が、松岡を納得させなかった。

勝者と敗者のコントラストは、あまりに鮮やかだった。だが、この日は「カッチースマイル」が全開だった田中勝春も、4年前の皐月賞ではネオユニヴァースの後塵を喫し、唇を噛み締めていた。アイルランドへの武者修行を経て一回りも二回りも大きくなった松岡がこの日味わった悔しさ──それが晴れる日が、いつか来るはずだ。そして、その悔しさを晴らす最大にして最高の舞台は、5月27日、東京競馬場。そのレースの名は、「日本ダービー」だ。

posted by 犬太 |18:56 | 競馬コラム | コメント(0) | トラックバック(0)
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2007年03月29日

もはや「スプリンターNO.1決定戦」など存在しなくなった。

「やはり」と言うべきだろうか、今年の高松宮記念もまた「純スプリンター」とは明らかに一線を画す馬・スズカフェニックスが勝利を収めた。

短距離路線が整備され、現在もなお最強スプリンターの呼び声高いサクラバクシンオー、そしてその仔であるショウナンカンプ、最低人気でG1を制したダイタクヤマト、カルストンライトオなどそれぞれがスプリンター特有の速さを持ち、それぞれが強烈な個性を持った名馬達が凌ぎを削り、「スプリンター」としてのフィールドを守り続けた。

だが、近年その牙城が確実に崩されてきている。昨年などはそれが顕著に現れた年で、高松宮記念では共に初の1200mとなったオレハマッテルゼ、ラインクラフトがワンツーフィニッシュを果たした。そしてスプリンターズSでは外国馬・テイクオーバーターゲットがオーストラリアへの「手土産」を持ち帰り、日本のスプリント路線の地盤低下を証明してしまう結果となった。

純然たるスプリント能力を持った馬の質が低下しているのだから、毎度同じようなメンツのスプリント路線と比較して入れ替わりが激しくレベルの高い別路線組がスプリント路線の「頂」を獲ってしまうことは、ある種当然であるとも言える。悲しいかな「G1だし出走させてみるか」という発想がまかり通り、それでいて結果を残せてしまうのが現在のスプリント路線の現状なのである。

だからこそ、個人的にファルコンSを快勝したサクラバクシンオーの仔・アドマイヤホクトには崩れた牙城を再び建て直してもらいたいと思っている。1200mでは土付かずの一方、1600mではブービー。なるほど、非常に分かりやすいスプリンターである。

posted by 犬太 |23:26 | 競馬コラム | コメント(2) | トラックバック(1)
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2007年03月14日

人々の感情の引き出しを増やす、障害レースのススメ。

私がこれまで競馬を見て来た中で、特に印象深いシーンがある。それは2001年、中山グランドジャンプに出走したランドが1度は落馬したものの再騎乗し、競争を中止することなく走り切ったというシーンだ。最後まで諦めない姿勢に、ゴール時にはスタンドから拍手が沸き起こり、中山競馬場は暖かい雰囲気に包まれていた。

上記の例が示すように、障害には平地とは違ったファン心理を垣間見ることが出来る。例えば上記のシーンでは、「障害」という馬だけでなく人の人生にも付随してくる部分で落馬(=挫折)したが、それでも諦めずにゴールを目指した。そしてそれが、ゴール時の拍手と馬券の存在を忘れさせてくれるような暖かい雰囲気を作り出した。「オグリキャップが頑張る姿を見て私も頑張ろうと思った」という人がいたように、障害レースでも「目の前にそびえる障害を飛び越え、それにつまずいてもめげずに頑張る姿を見て私も頑張ろうと思った」という感情を人々から引き出す可能性があるのだ。

もうひとつ、障害レース時に発生するファン心理から見た面白い感情としてはレースを通じての応援スタイルにある。平地では「差せ!」とか「そのまま」といった言葉が浮かぶだろうが、これが障害となると、まず「落ちるな!」という大前提の感情がファンの中に出現する。先週の阪神スプリングジャンプSでも、コウエイトライが最後の障害を越えた後にバランスを崩すと、ウインズから一斉に「落ちるな!」という感情が声となって発生していた。なんとか持ちこたえると、今度はウインズ全体が安堵感に包まれ、皆がホッと旨を撫で下ろしていた。

障害レースは見ていて非常に面白いと思う。それでも、年間総レース数は約130程度で、障害G1の中山大障害がメインではなく10Rに組み込まれているように世間一般の注目度は低い。現在競馬界では「ディープ後」にぽっかりと空いてしまった空洞を埋めるための努力がなされているが、競馬という枠組みの中にあって、一般の人達がイメージする競馬とはまた違った魅力を持つ「障害レース」の存在異議を、今1度掘り起こしてみるのも1つの手ではないだろうか。

posted by 犬太 |18:33 | 競馬コラム | コメント(0) | トラックバック(0)
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2007年03月09日

待てど海路の日和なし、ウォッカもまた、待っていた。

安藤勝己にとって、このレースは2頭立てだったのか。彼の視界には、ウオッカだけが映っていた。抜群の手応えで直線を向くと、その視線の先にゴール板はあらず、外から同じように抜群の手応えで直線を向いたウオッカの動きを凝視していた。

一方のウォッカはというと、ダイワスカーレットを含めた他馬を一切眼中にせず、直線に入ってもなお、手綱をグッと引き、ウオッカを解き放とうとしなかった。そして、その状態のまま「偶然にも」先頭を走っていたダイワスカーレットに並びかけていった。

「待ってました」とばかりにウォッカが並びかけたその瞬間に馬上での動きが激しくなっていったのは安藤勝己だ。このレースにおいてはウォッカに勝つ=レースに勝つ、ということを意味する。そして、それは同時に3歳牝馬クラシック路線において最強を誇るウオッカと双璧をなすこととなるのだ。

だが、「この路線における壁は1頭のみ」と自己主張するかのように、ウオッカはダイワスカーレットを力でねじ伏せてしまった。付け加えると、目一杯追われたダイワスカーレットに対して、ウオッカは余力残しである。「どこまで行っても変わらない」ウオッカがダイワスカーレットにつけたクビ差という着差はそれ以上のものだった。

このレース、2頭が演じたマッチレースもさることながら、ダイワスカーレット、ウオッカにそれぞれ跨った安藤勝己、四位洋文の駆け引きのまた見応えのあるものだった。相手をウオッカのみに絞った安藤勝己と、愛馬の実力さえ発揮すれば負けることはないと他馬を一切気に留めていなかった四位洋文。奇しくも彼らは3歳牡馬クラシック路線においてもそれぞれフサイチホウオー、トーセンキャプテンという有力馬をお手馬にしている。今年のクラシック路線、馬上の駆け引きにも1つ注目してみたいところだ。

posted by 犬太 |18:38 | 競馬コラム | コメント(0) | トラックバック(0)
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2007年02月25日

瀬戸口調教師へ送る「魂」の騎乗、ミルコ・デムーロ。

外国人ジョッキー初となるダービージョッキーに輝いたミルコ・デムーロの目には、光るものがあった。それは、自身をダービージョッキーへと導いてくれたネオユニヴァースへ向けたものであり、自身にネオユニヴァースという馬への騎乗機会を与え、全幅の信頼を置いてくれた瀬戸口調教師へ向けたものでもだった。

歓喜のダービーから、4年が経った。その間、ネオユニヴァースは屈腱炎を患ったことで、引退を余儀なくされた。そして、2007年2月25日を持って瀬戸口調教師は定年退職の為、第一線を退くこととなった。この日の瀬戸口厩舎の管理馬のほとんどの手綱を取ったのは、瀬戸口調教師をダービー・トレーナーへと導いたデムーロだった。

この日3鞍用意されていた瀬戸口厩舎&デムーロのラスト・ラン。その先陣を切ったレットバトラーは、直線粘るサウスディーダを上がり3ハロン33.7という驚異的な末脚で差し切り、勝利をプレゼントした。ちなみにレットバトラーの全兄はデムーロが手綱を取り皐月賞を制したダイワメジャー。何か強い縁を感じたのは私だけだろうか。

昨年は引退を表明し重賞ラスト騎乗となった松永幹夫が乾坤一擲の騎乗で劇的な勝利を飾った阪急杯。瀬戸口厩舎が送り出した最後の重賞出走馬・イースターの手綱を取ったデムーロは、ここで痛恨の出遅れ。スズカフェニックスに次ぐ上がり2位の末脚で直線よく差を詰めたが、9着まで。瀬戸口厩舎最後となった重賞を最も良い形で飾ることは出来なかった。

だが、最後にハッピーエンドが待っていた。32年間の調教師生活の最後を飾った馬は、エイシンボストン。鞍上にはもちろん、デムーロ。内々でレースを進めると、直線で先頭を捉えにかかる。100m・・50m・・20m・・ゴールが近づくにつれ、先頭との差が少しずつ詰まっていく。「イタリアのダービーを勝つより日本のダービーを勝つほうが嬉しい」とまで言い切ったデムーロの夢の確かな手助けをした瀬戸口調教師へ送る最高の騎乗──鬼神のごとき追いっぷりで猛然と差を詰め、ゴール直前、ついに差し切った。何かが憑依したとしか思えないその騎乗ぶりは、瀬戸口調教師にこれ以上ない最高の花道を作ることとなった。

posted by 犬太 |21:00 | 競馬コラム | コメント(0) | トラックバック(1)
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2007年02月18日

フェブラリーS~サンライズバッカスが追い求めたものとは。~

カネヒキリはどこへ行った。アロンダイトはどこへ行った。昨年の中央ダートG1を制した2頭は、フェブラリーSの馬柱から姿を消していた。カネヒキリは、屈腱炎を発症。引退という方法もあったが現役続行の道を選び、来たるべき復帰の日に向けて懸命なリハビリが行なわれている。後者は今年2月1日に前脚の球節部分の手術を受け、こちらも秋競馬での復帰を目指し、春シーズンを休養に当てている。

かくして、ダート中央G1勝ち馬不在で行なわれた今年のフェブラリーS。とはいえ、メンバーのレベルが決して低い訳ではない。昨年交流G13勝のブルーコンコルド、フェブラリーS2年連続2着からの雪辱に燃えるシーキングザダイヤ、さらには東西の前哨戦を制した上がり馬・ビッググラス、メイショウトウコン。新時代の息吹が東京競馬場に吹き抜けるのか、古豪がまだ早いと言わんばかりにそれを阻むのか──

東京競馬場に今年初となるファンファーレが鳴り響き、ゲートが開かれる。トーセンシャナオー、ダイワバンディッドといった伏兵陣がレースを引っ張り、淀みない流れを形成する。ハナを切りたかったアジュディミツオーはスタートの芝の部分で置いて行かれてしまい、押して押してようやく好位に取り付く。人気勢ではサンライズバッカス、シーキングザダイヤがほぼ同じような位置を取り、ブルーコンコルドはサンライズバッカスの後ろでじっくりと脚を溜めていた。

スタンドの歓声が一層大きくなった。直線に入ると抜群の手応えでレースを進めたメイショウバトラー、シーキングザベストが一足早く抜け出す。2頭に跨るジョッキー・ペリエ、福永は共にフェブラリーSでの勝利経験を持つ。経験が人を強気にさせるのか。先頭に立たない限り絶対に勝利の栄光に預かることは出来ない。間違いなく2人は勝ちにいった。

だが、フェブラリーSを制したジョッキーは彼らにとどまらなかった。今年に入って絶好調のアンカツこと安藤勝己。アドマイヤドンでフェブラリーSを制した経験を持つ彼は、ツルマルボーイで安田記念を、キングカメハメハでNHKマイルカップを制した経験も持つ東京1600mの鬼だった。

東京1600mの鬼が見せた鮮やかな手綱捌き。その手綱裁きは自然と馬を動かした。いや、この日に限っては馬が騎手を動かしたのかもしれない。そう見違えるほどの強烈な脚。外に進路を取り、道が拓けたサンライズバッカスにとって、先に抜け出したフェブラリーS勝利経験を持つ2人のジョッキーも、後方から差し切りを狙う1、2番人気の馬も、問題ではなかった。ブルーコンコルドが猛然と追い込むも時既に遅し。皐月賞の裏開催で未勝利を勝ち上がったサンライズバッカスが遂にG1の勲章を手にした。

遡って1年前、サンライズバッカスはまさにどん底だった。同じ舞台で行なわれた武蔵野Sでカネヒキリに黒星をつけさせたその姿はなく、勝ったカネヒキリから1.7秒離された12着に終わった。あれから1年、同じ舞台で馬場差はあれど勝ち時計でカネヒキリを0.1秒上回った。

しかし、この計算はあくまで試算に過ぎない。その試算が本物であるか否か、そのためには好敵手・カネヒキリと再び合間見えることが臨まれる。「カネヒキリはどこへ行った」もしかしたらサンライズバッカスは、1年前に自身より1.7秒早くゴールしたカネヒキリの姿を追い求めていたのかもしれない。

posted by 犬太 |20:48 | 競馬コラム | コメント(0) | トラックバック(1)
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2007年02月14日

競馬界の名脇役Vo.1~「G2王」バランスオブゲーム~

「870万」これが、当歳時にフサイチコンコルド産駒のバランスオブゲームに対して下された評価額だ。サンデーサイレンスの仔にしては安かったと言われるディープインパクトですら、その評価額は7000万。バランスの約8倍の額である。競走馬が値段ではないということは後の活躍が雄弁に物語っているが、当時の評価は決して高いものではなかった。

「ダービースタリオン」バランスの馬主は、競馬ファンの拡大に貢献したと言われるゲーム・ダービースタリオンの開発者、薗部博之だ。母校・早稲田大学をモチーフにした勝負服から、馴染みのあるファンも多かったのではないか。

「ちょうど向こう正面の内ラチにカラスがいて、それに物見してペースが落ち着いた」バランスを語る上で欠かせないのが、このエピソードだろう。競馬界の概念を覆した「カラス」による折り合い。馬7、人3というのが競馬界の定説だが、まさかカラスがその割合を壊すことになろうとは、誰が想像しただろうか。

「田中勝春」2005年に交流G1を勝つまで、G1競走125連敗。彼もまた、G1という舞台で脇役に甘んじていた。似たような境遇を経た1頭の馬と1人の騎手は、いつしかかけがえのないパートナーになっていた。真夏の新潟に始まり、中山、東京、京都、阪神、中京、札幌。バランスオブゲームと田中勝春は全国を行脚し続けた。「そこにレースがあるからさ」G1のない競馬場に何度も参戦したバランスの姿は、登山家であるジョージ・マロリーが発した台詞にも似ていた。

「左前浅屈腱不全断裂発症、競走能力喪失」バランスはこの時まで1度たりとも故障したことがない。休み明けを叩き台、という発想はバランスにはない。休み明けからエンジン全開の全力疾走。そんな馬から競走能力を奪ったところで何が残る?私はこのニュースを聞いた時多大なるショックを受けた。

「2006年10月26日」競馬界からまた1頭、名優が去った日だ。「とても長い競走生活で本当にこの馬には感謝しています」バランスの引退を受けて宗像調教師が発したコメント、それはファンの声そのものだった。

posted by 犬太 |20:59 | 競馬コラム | コメント(5) | トラックバック(1)
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