2007年01月01日

浦和レッズvsガンバ大阪~想いは1つ、「有終の美を」~

その時、46,880人の大観衆に包まれたスタジアムが呼吸を止めた。国歌斉唱のために藤あや子さんがマイクの前に立ち、一礼する。すると、浦和、ガンバサポーターの大歓声がピタリと止み、国家斉唱が始まると、その声援は「君が代」という形に姿を変えた。そして国歌斉唱が終わると、再びスタジアムは呼吸を始めた。

画面にスタジアムが映し出されると、日の丸の人文字が完成されており、さらには日の丸の形がハートマークになっていた。「日本を愛する」という意味だろうか、それとも「サッカーを愛する」という意味だろうか。真相は定かではないが、確実に言える事はそれが間違いなく素晴らしい演出だった、ということだ。

ピッチ外での演出もさることながら、この試合にかける両チームのある人物に対する演出もまた天皇杯・決勝という舞台をより一層盛り上げるものになっていた。その人物は、この試合を最後にオーストリアのザルツブルグに移籍するガンバ大阪の宮本、この試合を最後に浦和レッズを退任するギド・ブッフバルトだ。「優勝して最後を飾ってやりたい」人こそ違えど、両チームの想いは同じだった。

ゼロックス・スーパーカップから数えて4回目となる浦和レッズvsガンバ大阪。立ち上がりから試合を有利に進めたのは、過去3回の対戦において未だに勝利の無いガンバだった。マグノ・アウベスが下がり目のポジションに位置し、播戸、二川と頻繁にポジションを変えていくことで浦和ディフェンス陣の混乱を招き、3バックの右を務めた細貝の裏を徹底的に狙っていた。そして何よりも前からプレスを掛けて高い位置でボールを奪うという意識が高かった。

浦和はほとんど防戦一方だった。ガンバの3バックがボールを持った時に対するプレスがほとんどなく、ハーフウェーラインまで自由にボールを持たせていた。それに応じてディフェンスラインもどんどん下がってしまい、ボールを奪っても前線で永井が孤立してしまう場面が目立った。そんな劣勢の中にあっても永井が裏に抜け出したりポンテがミドルシュートを放ったりと数少ないチャンスを活かそうとするが、いずれもGK松代の好セーブに防がれた。

ガンバのシュート数11本、浦和のシュート数4本という数字が示すように圧倒的に攻め立てたガンバだったが、決定的なチャンスを決め切れず前半をスコアレスで折り返した。一方浦和は都築を中心にディフェンス時における「際」での集中力が光った。

後半に入ると、劣勢の浦和をさらに追い込むアクシデントが起こった。前の試合で2ゴールを決める活躍を見せ復調の兆しを見せていた小野が左足首を負傷してしまったのだ。完全に支配されていた中盤の主導権を取り戻すために長谷部の投入を準備していた浦和だったが、このアクシデントにより交代のタイミングが遅れてしまった。その後小野は何とかプレーを続行することが出来たが、この交代の遅れがガンバに支配される時間をさらに延ばしてしまうこととなった。

それでも、ガンバは1点が奪えない。二川のミドルシュートも、播戸の決定的なシュートも、ゴールネットを揺らすまでには至らなかった。この試合まさに神がかり的とも言えるセーブを連発した都築が最後の砦として立ちはだかったからである。今シーズン途中、怪我により山岸にレギュラーの座を奪われ、レギュラーの座を手にした山岸は日本代表にまで上り詰めた。都築にとってその悔しさを元旦の舞台で晴らした恰好となった。

綱渡りのようなハラハラする試合展開になった浦和はここで流れを変えるべく、ジョーカーの岡野を投入する。そして、この投入が試合を決めることとなった。87分、長谷部からのロングパスを岡野が受けると、抜け出して中央へ折り返す。このボールを宮本がブロックしに行くが、宮本の背中に当たったボールはコースを変えて、永井の前へと転がっていった。永井の放ったシュートは松代に弾かれながらもゴールネットへと吸い込まれ、ついに浦和が均衡を破った。

試合はロスタイムに突入し、ブッフバルト監督の姿が映し出された瞬間、長いホイッスルが鳴り響いた。その瞬間、ガッツポーズをするブッフバルト監督をあっという間にベンチに居た選手・スタッフが取り囲んだ。闘莉王、ワシントン、三都主、坪井といった主力を欠きながらも、「ギドに有終の美を」という浦和の結束力が揺るぐことはなかった。

posted by 犬太 |19:48 | 天皇杯コラム | コメント(2) | トラックバック(0)
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2006年12月29日

ガンバvs札幌&浦和vs鹿島、どのチームが敗れても「ラスト・マッチ」

ガンバ一筋12年、来年からオーストリア・ザルツブルグでプレーすることとなった宮本恒靖。コンサドーレ札幌を率いて3年、札幌のスタイルとなった攻撃サッカーを完成の域に近づけ、惜しまれつつも今シーズン限りでの退任が決定している柳下正明。今大会にかけるバックボーンを持つ両チームの試合は、期待に違わぬ好ゲームとなった。

先制したのはガンバだった。FKのこぼれ球を拾うと、マグノ・アウベスへとつなぎカウンターを開始する。マグノ・アウベスから前田→加地へと渡り、1度はDFに防がれたものの、最後は加地が押し込んだ。

何としても同点に追いつきたい札幌はサイドから攻撃を仕掛け、何度も好機を得たが、どうしても点が奪えない。すると後半7分、セットプレーの流れで前線に残っていたフリーの宮本にボールが渡ると、中央へ折り返し前田が難なく追加点を決める。リプレイを見る限りオフサイドのようにも見え、札幌にとっては不運な形での失点となった。

このままでは終われない札幌はその2分後、芳賀のクロスがDFに当たりコースが変わったところを相川が見事なダイレクトボレーでゴールネットを揺らし、1点差にまで詰め寄るが、終盤はガンバが試合巧者ぶりを発揮し同点に追いつくことが出来ず、ジ・エンド。ガンバが元旦に国立で試合をする権利を獲得した。

そしてその国立で行なわれた「赤ダービー」浦和レッズvs鹿島アントラーズの試合も両者の意地が激突した素晴らしいゲームとなった。

試合が動いたのは40分だった。鈴木からの絶妙なパスを受けた小野が右足のインサイドでゴール左隅へ流し込んだ。「ゴールへのパス」という表現が良く似合う技ありのゴールだった。

ハーフタイム時に岩政と永井が小競り合いをするなど徐々に熱を帯びていったこの試合を振り出しに戻したのはその岩政だった。69分、野沢のFKに背中で押し込んだ。「体ごと押し込んだ」という表現が良く似合う泥臭いゴールだった。

浦和にとって3試合連続となる延長戦も考えられた試合に決着をつけたのは、ポンテと小野の鮮やかなコンビネーションだった。81分、ポンテがドリブルで持ち込むと小野へ一旦ボールを預け、小野はヒールで再びポンテへ。ポンテの放ったシュートはDFに当たったことでコースを変え、そのままゴールネットへと吸い込まれた。その後は故障が癒えた堀之内を投入するなど万全の逃げ切り体制を整え鹿島の猛攻を凌いだ浦和が、2年連続で元旦に国立のピッチに立つ事となった。

敗れた鹿島はアウトゥオリ監督が退任、そして足掛け15年、Jリーグ元年からチームを支え続けた本田泰人はこの試合を最後に選手生活を退くこととなった。

posted by 犬太 |17:12 | 天皇杯コラム | コメント(0) | トラックバック(4)
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2006年12月23日

浦和レッズvsジュビロ磐田~「レッズが好きだから」~

アビスパ福岡との死闘から1週間。この間に起こった出来事については既に皆さんの知るところだろう。

今シーズン全試合に出場した三都主アレサンドロのオーストリア・ザルツブルグへの期限付き移籍が決定した。来年ACLを戦うチームにとっては手痛い損失となるが、巷では浦和に対する悲観論はそれほど飛び交っていないように感じる。

その大きな理由として挙げられるのが、相馬の存在だろう。ヴェルディ時代に頭角を現し、一時期は代表入りも噂された実力の持ち主である。ドリブルを最大の武器とし、レアル・マドリードとの親善試合では、レアルにコンディションの問題があったにせよ、左サイドを幾度と無く切り裂き、鮮烈な印象を残した。

左サイドは問題ない。となるとこの試合で問題となってくるのが、ブラジルに帰国した闘莉王、ワシントンを誰が埋めるのかということだ。特に闘莉王はガンバにおける遠藤と同じく、試合に出ていないことがチームの結果にダイレクトに影響するレベルの選手だ。そして今日の相手は闘利王が累積警告によりリーグ戦で唯一出場できなかった磐田である。その時のチームは鉄壁のディフェンスが崩壊し、3点を失った。福岡戦での不安要素が精神的なものだとすれば、この試合の不安要素は主力選手の不在だった。

果たして、その不安は的中してしまった。前半から磐田に主導権を握られると31分、犬塚の絶妙のクロスに前田が頭で合わせ、先制点を許し、ビハインドで前半を折り返す。西、太田がサイドで起点を作り、犬塚、上田の若い両サイドバックが高い位置をキープする。そしてファブリシオがゲームを組み立て、前田、福西がフィニッシュに絡んでいく。連動性溢れる磐田の攻撃に浦和はなす術がなかった。さらに攻撃では持ち味を発揮していた相馬だったが、ディフェンスになると裏を狙われるシーンが多く、攻撃と守備のバランスに苦労していた。この辺りが三都主との経験の差なのだろうか。味方のフォローが遅かったこともあり、残念ながら前半の浦和のウィークポイントになっていた。

スコア、内容共に劣勢に立たされた浦和は後半から小野を投入し、何とか流れを変えようとした。しかし後半開始直後の46分、上田のクロスに前田が頭で落とすと、そこに福西が飛び込み2-0。磐田の鮮やかな攻撃の前に手も足も出なかった。

手の足も出なかった浦和だったが、その中にあった唯一出ていたもの、それは浦和サポーターの「声」だった。2点ビハインドという状況下にあっても依然として浦和サポーターの声援が鳴り止むことは無かった。それどころか、浦和の逆転を信じ、さらに声援を強めていった。「レッズが好きだから」試合中何度も映し出されたその言葉は、まさに浦和サポーターの想いそのものだった。

その言葉を見たかどうかはわからないが、サポーターの声援は確実に浦和の選手の耳に届いている。ここから浦和の反撃が始まった。

相馬のクロスに合わせた永井のヘッドは惜しくもゴールラインを割ることが出来なかったが、63分、山田のクロスに永井がGKと競り合いながらも押し込み1点差とすると、今度は相馬の右足でのクロスに小野がDFと競り合いながらのダイビングヘッドで同点に。さらに80分にはポンテのスルーパスに反応した小野が技ありのゴールでついに逆転に成功した。「浦和が好きだから」スタメンの機会は少ないものの、浦和一筋でプレーする永井、「浦和が好きだから」慢性的な痛みを抱えながらも足首の手術をせず、リーグ優勝を目指すチームの一員として試合に帯同し、チームを盛り上げた小野。そんな2人が決めたゴールに、スタジアムは興奮のるつぼと化した。

しかし、まだまだ試合は終わらない。逆転ゴールから僅か1分後、ゴール前で前田が潰れ役となり最後は飛び出してきた犬塚が角度のない所からねじこみ、磐田が執念で同点に追いつく。これで3-3。紛れも無く、天皇杯史上に残る死闘となった。

120分間で決着はつかず、試合はPK戦に。5人を終わってホームのアドバンテージを持つ浦和は全員がきっちりと決めた。一方の磐田も数こそ少ないもののサックスブルーのユニフォームを着たサポーターがアウェー特有の大ブーイングの中、チームを鼓舞する。磐田も全員が決め、勝負はサドンデスへと持ち込まれた。

サドンデスに突入してもなお、決着はつかない。そして、決着がついたのは、蹴っていないプレイヤーが残り1人という状況でのことだった。

福岡戦といい今日の磐田戦といい、天皇杯での浦和はリーグ戦に勝るとも劣らないハードなゲームを経験した。その中でリーグ戦ではあまり出場機会に恵まれなかった相馬、細貝が確実に成長の跡を見せている。加えてリーグ戦では闘莉王、ワシントンといった「個」の力に依存しているという向きも強かった浦和だったが、この試合で見せたように闘莉王、ワシントンの不在が「怪我の功名」となっている。「浦和は個人頼み」という世間の逆風に対して2人がいなくても勝てるということを証明した浦和。この試合は、全員の力で掴んだ勝利だった。

posted by 犬太 |16:31 | 天皇杯コラム | コメント(6) | トラックバック(5)
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2006年12月16日

浦和レッズvsアビスパ福岡~「経営陣・フロントはゼロ査定」の横断幕~

そこに2週間前の面影はなかった。ゴール裏こそ浦和サポーターで隙間無く席が埋め尽くされていたが、少しカメラが引くと2階席には12月2日にはあった人文字によるチームエンブレムはなく、「SAITAMA」という文字が。もちろん、それはそこが空席であることを表している。

12月2日、ガンバ大阪との頂上決戦を制した浦和は、その後マスコミからの引っ張りだこに遭い、3日ほどオフをとったそうだ。加えて満身創痍の状態でプレーを続けていた闘莉王はこの試合に出場せずスタンドで戦況を見守り、また山岸、長谷部、三都主といった主力選手も体調不良によりスタメンを外れた。念願だったリーグ戦制覇を成し遂げ、燃え尽きた感もある中でモチベーションの維持が難しい所だが、モチベーションの拠り所としてはブッフバルト監督最後の大会であること、そして時期浦和監督に内定しているとも言われるオジェック氏がこの試合を観戦する、という2点だろうか。

一方福岡は先週の土曜日に入れ替え戦でのJ2降格という「生き地獄」を見た。川勝監督は辞任し、監督代行として沖野コーチがこの試合の指揮を執ることとなった。水谷、アレックス、布部といった主力選手は出場せず、神山、城後、田中らをスタメンで起用し、入れ替え戦の時からスタメンを実に7人も入れ替えて浦和に挑んだ。

この試合に先駆けて、私が最も目に付いたもの、それは決して数は多く無いが熱心に埼玉まで駆けつけた福岡サポーターの横断幕である。曰く「経営陣・フロントはゼロ査定」なるほど、と思ってしまう横断幕だった。シーズン前からエースストライカーの不在が懸念されていたにも係わらず大した補強をせずに臨んだ今シーズン、案の定福岡はここぞという場面で点を取れずに、終わってみれば得点数は18チーム中ワーストの32点。最多得点が薮田の5点という体たらくだった。その矛先が選手以前にチームの根源であるフロントにいくことも無理は無い。

このように両チームともに様々な背景が渦巻く中で始まったこの試合、立ち上がりから浦和がペースを握る。久しぶりの先発出場となった小野を起点に圧倒的なボールポゼッションで福岡ゴールに迫る。しかし、フィニッシュの部分での連携を欠き、どうしても良い形でのシュートが打てない。対する福岡は戦術としては、ボールを取ったら縦へ速く展開し、フィニッシュまで持っていく非常に分かりやすい「カウンター」。入れ替え戦でも左サイドから再三に渡ってクロスを上げ続けた古賀にボールを集め、そこからチャンスをうかがう。そして北京世代でもある若い田中が常に3バックの裏を狙う。やることは至ってシンプルではあったが、試合を通じて非常に有効な手段となった。

試合は次第に福岡ペースになっていくが、それでも個の能力で福岡を凌駕する浦和は23分、山田が左サイドを突破すると、ワシントンへ絶妙なクロス。これをワシントンが合わせるが、これは神山が左手1本でボールをかきだした。

すると今度は福岡にチャンスが訪れる。26分、小野が中盤でボールを失うと、宮本から田中、宮崎へとつなぎ、最後は流れの中で上がっていた宮本へ。しかし、このシュートは都築の手の中に収まった。この時間帯になると、大方の予想に反して福岡が試合の主導権を握り、ワンチャンスをモノにしたいチームは福岡から浦和になっていた。

浦和のチャンスが訪れたのは前半半ばだった。ワシントンが抜け出してシュートを放つと、ポンテもミドルシュートを放っていく。しかし、いずれも神山の好守の前に阻まれる。負けじと福岡も古賀があわやのミドルシュートを放つが今度は都築が好セーブを見せる。「圧倒的浦和有利」の下馬評を覆し、互角の攻防が繰り広げられた前半だった。さらに前半終了時には、Jリーグ王者とは思えないふがいない戦いぶりに、浦和サポーターからはブーイングが飛んでいた。

後半に入り、なおも一進一退の攻防は続く。後半開始直後に古賀が裏に抜け、ニアへ走り込んできた田中にラストパスを送るが、この決定的なチャンスを田中が決められない。今度は浦和が鈴木のフィードに山田が飛び出し、GKと1対1に。しかし山田はシュートを打たず、ワシントンに預け結局DFに阻まれてしまう。前半にもシュートチャンスにシュートを打たずにブッフバルト監督に怒鳴りつけられていたように、この日の山田はシュートを打っていく積極性が足りなかった。

時間が経つにつれ運動量が落ち、マークがルーズになってきた浦和に対して、福岡は幾度と無く決定機を作る。後半26分、27分と古賀が立て続けにGKと1対1になるというビッグチャンスを得るが、26分のシュートはクロスバーを越え、27分のシュートは坪井にブロックされ、チャンスを形に変えることが出来ない。そのツケは目に見えて落ちた運動量という形で現れ、逆に浦和は長谷部、永井といったジョーカーを切り、試合の流れを再び掌握していく。

いつ点が入ってもおかしくないような状況に陥った福岡だったが、最後の砦として神山が立ちはだかった。小野のヘッドを間一髪の所で防いだかと思えば、長谷部のシュートにも反応する。少なくとも、前後半通じて2点は確実に防いでいた。また、立ちはだかったのは神山だけではなかった。ワシントンのマークという大仕事を任された川島は90分通してその役割を完璧に遂行し、宮本、千代反田も足を釣らせながら決死のディフェンスを見せる。ホーム・博多の森で浦和を迎えた時にはロスタイムに痛恨の失点を喫した福岡だったが、この日は90分間の中で1度たりともゴールを割らせなかった。

そして試合は延長戦へ。1週間前に入れ替え戦を戦い、この試合では120分を戦うという極限の状態に差し掛かった福岡と、モチベーションの維持に苦労し、この試合までのコンディショニングにも苦労したとはいえ、2週間の休みがあった浦和。今思えば、延長戦に突入した時点で勝敗は決していたのかもしれない。延長前半立ち上がりにも、CKから坪井のヘッドに反応しまさに神がかり的なセーブを見せた神山だったが、その直後のポンテのシュートは防ぐことが出来なかった。

ついに試合の均衡が破れると、後は浦和の独壇場に。特に永井は再三に渡って右サイドを切り裂き、ワシントンのゴールの起点になると、自らもゴールを挙げるなどの大活躍を見せた。福岡も川島、田中があわやというシュートを放つが、1点が遠く、今シーズン最後の試合でも今シーズンの悪い意味での福岡らしさが顔を覗かせてしまった。

終わってみれば3-0とスコアだけ見れば浦和の完勝だったが、内容は両チームともに互角だった。ただ内容が互角でも点を取って勝つことが出来るのが浦和であり、点を取れずに負けてしまうのが福岡だった。そういった意味でこの結果は、当然の結末とも言える。

だが、既にチームを去ることが決まっている選手がいる中で見せた福岡の戦いぶりは、賞賛に値するものだった。長丁場のJ2を勝ち抜くことは容易なことではないが、今日のような戦いぶりが出来れば、1年でのJ1復帰も不可能ではないだろう。そのためにも、福岡サポーターの声=「経営陣・フロントはゼロ査定」という言葉の意味を今1度噛み締めてもらいたいと思う。

posted by 犬太 |16:21 | 天皇杯コラム | コメント(5) | トラックバック(2)
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2006年11月05日

「天皇杯っていいなあ」と思った日

確かに清水エスパルスのディフェンスの集中力の欠如ははっきり言って酷かったと思う。だが、それを差し引いても栃木SCの攻撃への滾ることのない意欲、そしてゴールへの執念──どれをとっても見るものの心を突き動かすものがあった。

前半、栃木は守備に重点を置いて清水に攻めるスペースを与えないようにし、ボールを奪ったら手数をかけずに縦へ展開していくという作戦だった。その作戦は守備においては功を奏し、ピンチらしいピンチはマルキーニョスに個人技で突破されポスト直撃のミドルシュートを撃たれた場面ぐらいしかなかった。ただ攻撃に関してはいくつかチャンスを作ってはいたが、「3人目の動き」がなく、攻撃時にあまりリスクを犯さない清水の慎重さも相まって点を取れる気配が一向にしなかった。前半は0-0で折り返すことが出来たが、「このままだとどこまでいっても0-0だろうなあ・・・」と思っていた。また、ほとんどの時間を守備に費やし、中盤で激しくプレッシャーをかけていたことによる疲労も気になった。

だが後半に入ってから、栃木が攻撃への比重を高めてきた。前半あまり見れなかった3人目の動きが出るようになり、受動的だった攻撃が能動的なものになっていた。それに呼応してか、前半横パスやバックパスが多かった清水の攻撃も縦への意識が強くなり、両サイドバックが積極的にオーバーラップを仕掛けていた。栃木の「意識改革」によって、試合の速度が急激に上がった。

だが皮肉にも、先制点は意識改革をした栃木ではなく、清水に入った。CKから矢島がフリーとなり、ヘッドで叩き込んだ。栃木はこのゴールで気持ちが切れてしまったのか、中盤でボールを失う場面が増え、藤本、マルキーニョス、矢島に立て続けに決められてしまった。4-0となり、この時点で勝負はほぼ決した。

しかし、ここから栃木の猛反撃が始まった。ペナルティエリア外でのこぼれ球に反応した途中出場の永井が強烈なシュートを放ち、GKが弾いた所を只木が押し込んだ。さらにその5分後、今度はこの試合決定機をものにすることが出来ずにいた吉田が左サイドを突破した永井のクロスにダイビングヘッドで合わせ、ついにゴールネットを揺さぶった。これで4-2となり、スタジアムには「ひょっとしたら・・」という空気が漂い始めた。

しかし、J1のチームとしてこのままふがいない状態で終わるわけにはいかない清水は、吉田のゴールから4分後、一瞬の隙を突いて裏のスペースに飛び出し、折り返してこぼれてきたボールを藤本が落ち着いて流し込んだ。だが「これで終わったか・・」と清水側が安堵したのも束の間、その僅か3分後に茅島がGKのキャッチミスもあり、ゴールを決めた。この頃、スタジアムの空気は完全に栃木SCが支配していた。

なおも追いすがる栃木に対して清水はすかさずセットプレーからマルキーニョスがヘッドで合わせ、再び3点差とする。だが、それでも試合は終わらない。それから僅か1分、この試合大活躍の永井が左サイドからのクロスに右足のインサイドで合わせる見事なゴールを決め、またしても2点差に追いつく。しかし、ここで試合終了を告げる無情のホイッスルが吹かれる。この結果、栃木SCは4回戦で姿を消し、清水エスパルスが5回戦進出を決めた。

試合後のインタビュー、負けはしたものの、栃木SC、そしてインタビューを受ける只木には暖かい声援、拍手が送られた。それも、清水サポーターから。そして清水サポーターから沸き起こる「栃木SC!」チャント。「天皇杯っていいなあ」と思わせてくれる良い光景だった。

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posted by 犬太 |17:20 | 天皇杯コラム | コメント(0) | トラックバック(0)
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2006年11月04日

J1のプライドを見た日

正直に言うと、J1で首位を走る浦和レッズが地域リーグに所属する静岡FCに負ける、また浦和から勝ち点4差の3位につける川崎フロンターレがJ2で5位のサガン鳥栖に負けるといったジャイアントキリングを少し期待していた。判官贔屓といってしまえばそれまでだが、やはり自分の心のどこかに格下のチームを応援してしまう要素が含まれているようだ。

果たして、そんな儚い期待はあっさりと消え去った。

まず、戦前の予想ではリーグ戦が大詰めだということで主力の何人かは休ませると思っていたが、蓋を開けてみれば浦和は闘莉王、鈴木、長谷部、三都主といった代表勢が普段と変わらずスタメンに名を連ね、川崎に至ってはリーグ戦からメンバーを全く入れ替えることなく試合に臨んだ。

「でも、試合が始まったら何が起こるかわからない・・・」という僅かな望みを持って試合を観戦したが、開始4分に田中達、22分に長谷部が素晴らしいミドルシュートを叩き込んだ時点で勝負は決まった。そしてその後も攻撃の手を一切緩めることなく、3点を追加し、結局5-0という圧勝劇を演じて見せた。こんな浦和を見るのはいつ以来だろうか。

この圧勝劇を紐解くとすれば、静岡FCが真っ向から勝負を挑んできたことが挙げられるだろう。相手が浦和だからといってゴール前に防波堤を築くのではなく、機を見てはCBの選手もゴール前に顔を出し、得点への意欲を見せた。チームとしてもボールを足元でしっかりつないでいくというスタイルを崩さなかった。また最後まで走る意欲が衰えることがなかった。しかし、攻める姿勢を崩さなかったのは立派だったが、肝心の攻守のバランスが崩れてしまった。そこを浦和は見逃さなかった。ここ3年でリーグ(セカンドステージ)、ナビスコカップ、天皇杯を制した浦和には確実に「勝者のメンタリティー」が根付いている。

そして同時刻に行なわれた川崎フロンターレ対サガン鳥栖戦も3-0と、鳥栖からすれば格の差をまざまざと見せつけられた結果となった。

ただ、内容に関しては前半は互角だったと思う。守り方は相手にボールが渡った時にはしっかりと引き、両サイドのマルコン、森にもマークをつける徹底ぶりだった。だからといってただ引いているだけではなく、攻撃時には後方からしっかりと組み立て、ショートパスをつなぎ、ゴール近くまで侵入することもあった。だが、そこまでだった。ほとんどシュートを打つことが出来ず、最後の所ではJリーグ屈指の川崎の3バックにことごとく防がれていた。

そして、中村の物凄いミドルシュートがゴールネットに突き刺さり先制を許すと、その3分後にはCKからチョン・テセがヘディングで追加点。先日のナビスコカップといい、失点後のセットプレーはグンと失点率が上がるようだ。

今日の試合、期待していたジャイアントキリングは起こらず、J1のチームが順当に5回戦へと駒を進めた。果たして明日は、どうなることやら。個人的には、J2首位を走るヴィッセル神戸に打ち勝ったYKK APに期待している。



posted by 犬太 |19:06 | 天皇杯コラム | コメント(2) | トラックバック(0)
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2006年10月08日

ベガルタ仙台vsロッソ熊本~試合後に起きたブーイングの訳~

天皇杯の魅力、それはいうまでもなくノンカテゴリーであることだ。高校から大学、社会人まで様々なチームがプロ相手に一泡吹かしてやろう、という高いモチベーションを持って年に1度のこの大会に臨んで来る。そしてそれは思わぬ大波乱を招くことがある。

記憶に新しいのは、2004年のザスパ草津の快進撃だ。アウェーでセレッソ大阪を破ったかと思えば、Jリーグ年間チャンピオンに輝くなど当時隆盛を極めていた横浜F・マリノスを2人の退場者を出しながらも延長戦で破る大金星を挙げた。

そしてこの試合の前に中継されていた横浜FCvsバンディオンセ神戸の試合でも現在J2首位の横浜FCをバンディオンセ神戸が破るという波乱があった。

さて、そろそろ本題に入ろう。

ベガルタ仙台のホームに、ロッソ熊本が乗り込んだ。ロッソ熊本は今年Jリーグ準加盟クラブとして承認を受け、リーグ戦で2位以内に入れば来シーズンからJ2への参戦が可能になるチームである。現在J2で4位の位置にいるベガルタ仙台は現状のチーム力を図る上では恰好の対戦相手と言えるだろう。

立ち上がりは両チームともほぼ互角だった。ホームの仙台はロペスを攻撃の軸とし、彼を起点にして両サイド、特に右サイドの中田がゴール前まで飛び出す場面が何度も見られた。だが、ディフェンスはというと球際での寄せやプレスのかけ方がやや甘く、シュートまで持っていかれるシーンが多かった。

熊本は立ち上がりはカウンターをベースにした戦術を見せ、早めにFWの高橋に当ててそこからサイドへ展開、という一連の約束事がなされていた。特に主に左サイドから攻撃を組み立てた斉藤から多くのチャンスが生まれていて、仙台は彼に手を焼いていたようだった。ディフェンスではラインを引き過ぎないように設定し、ボルジェスには朝比奈が常に見るような形でマーク、そして仙台最大の攻撃のキーマンのロペスには常に2、3人が彼がボールを持つとプレスをかけていた。それでもJ2の中でも屈指の実力の持ち主であるロペスをなかなか抑えきれず、逆に彼に人数をかけたことでサイドにスペースが出来てしまい、そこを突かれてピンチを招く場面が目立った。

先制したのは仙台だった。仙台としてはラッキーな、そして熊本としてはアンラッキーなゴールだったが、何はともあれこのゴールによって仙台はある程度落ち着きを取り戻し、くさびに対するチェックも厳しくなり、立ち上がりに比べてディフェンスに安定感が増していた。熊本の方も先制点こそ取られはしたが内容は決して悪いものではなく、点を取られた後もディフェンスが破綻をきたすことはなく、後半への望みを託した。

そして迎えた後半、立ち上がりから積極的に仕掛けたのは仙台だった。早く勝負を決めたい、という思いがあったのだろうか、前半は主に中田が攻撃参加していた右サイドが起点だったが、後半は左サイドの磯崎も積極的に攻撃参加することで、両サイドから起点を作っていた。そして梁、熊林がそれに絡むことで中盤を完全に支配した。

しかし、これだけ仙台が前掛かりになってももう1点もやれない熊本の決死のディフェンス、特にGK飯倉の神がかり的なスーパーセーブの前に肝心の追加点が奪えない。すると、少しづつ、流れは熊本へと傾いていった。

疲れから徐々に足が止まってきた仙台に対して運動量の落ちなかった熊本はサイドから次々とチャンスを作った。サイドでの攻防に対して常に数的優位を作り、またサイドからのクロスに対しても中央にFWだけでなく2列目からどんどん選手が飛び出していった。後半全くといっていいほど拾えなかったセカンドボールも拾えるようになったことで流れは完全に熊本へと傾き、試合だけでなくスタジアムの空気さえも熊本が支配していった。終盤、度々カウンターからピンチを招いたものの、ここでもGK飯倉がスーパーセーブを見せ、決して追加点を奪わせなかった。

熊本は最後まで攻め続けた。しかし、とうとう同点に追いつくことはできなかった。だが、自分達のサッカーを最後までやり通した上での僅差での敗北──内容では決して劣っていなかった──これは賞賛されてしかるべきだろう。仙台のホームで仙台が勝った後に起きたブーイング、そして期せずして起きた「ロッソ熊本!」コール。この一連の出来事がそれを物語っている。

posted by 犬太(ケンタ) |17:11 | 天皇杯コラム | コメント(7) | トラックバック(1)
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