2007年04月07日
前半終了時、FC東京サポーターからブーイングが沸き起こった。0-1で負けているから?ベンチに控える豪華なメンツを出さないから?
否、試合の内容を指してのブーイングだろう。
FC東京がボールを奪った。さあ、カウンターだ。サポーターにも期待感が充満する。しかし、カウンターの起点となるべきファーストパスがミスパスになり、新潟ボールとなる。
前半、一連のこの流れを何度見た事だろうか。はっきりいって、前半のFC東京は酷かった。パスがつながらないことには何も始まらない。というより、パスを正確に通せないようではサッカーにならない。FC東京はこの試合を1-3というスコアで終えたが、この結果は極めて全う、むしろもっと点差がついてもおかしくなかった。
FC東京の酷さが目に余った前半だったが、前半新潟が先制点を挙げるまでは、新潟も決して誉められた内容とは言えなかった。前線からのプレスは効いているし、中央を突破するショートパスも随所に見られた。しかし、肝心のラストパスがつながらない。ミスをしてマイボールになったかと思えば、ミスをして相手ボールになってしまう。こんなことが、プロの試合で何度も起こっていた。
その雰囲気を一変させ、試合に「渇」を入れたのが、新潟に先制点をもたらした坂本だ。ペナルティエリア付近で川口からボールを奪うと、中へと切れ込み、右足一閃。ボールを奪う所での予測、そのまま中へと切り込み迷わずシュートを選択した判断。「これがプロだ」という見本を示さんばかりだった。
坂本が果たした仕事は、これだけではなかった。後半立ち上がり、U-22代表でキャプテンマークを巻く伊野波と対峙すると、絶妙な切り返しでかわし、ペナルティエリア内へ侵入。伊野波は手で止めるより術がなく、PKを献上。この日2枚目となるイエローカードを受けた伊野波はピッチ外へと去った。
結局この試合新潟は坂本の得たPKも含めて計3点を挙げ、アウェーで勝ち点3を得る結果となった。新潟の勝利に大きく貢献したのは、間違いなく坂本だった。そして坂本がこの試合で示した「プロフェッショナル」は、プロのサッカーの試合を観るべくスタジアムに足を運んだ観客の顧客満足度を確実に満たすものとなった。
posted by 犬太 |21:59 |
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2007年04月07日
ショートパスを多用し、犬塚、上田の両サイドバックも積極的に攻撃に参加。カウンター時には攻撃へとスイッチを切り替え3人、4人と浦和ゴールに向かって猛ダッシュを敢行する。前線では驚異的な運動量を誇る太田が至る所に顔を出し、チャンスメイクに奔走する。
この試合の内容に関してだけ言えば、五分、あるいは磐田の方が試合をより優勢に進めていたように思える。端的なこの試合の磐田への印象が前述のものだが、怪我人が続出しベストメンバーとは程遠い状態の中で前節まで3連勝と勝ち点を積み重ね続けた理由が紐解けたようだった。
開幕当初よりは改善されたものの、やはり後方からの追い越し、前線への飛び出し、ポジションチェンジなど、攻撃面でのバリエーションの乏しさが目に付く。また1度押し込まれる時間を迎えてしまうと、全体的にラインが下がってしまい、結果として攻撃への切り替えの遅さを招く。
それでも、試合終了後は笑顔でサポーターに勝利の報告をする。
浦和に関しては、端的な試合の印象はあまりアテにならないのかもしれない。結果と内容が伴わないことが特に珍しい訳ではないが、浦和に関してはこの部分の不一致が相当に多い。
この日の試合もそうだ。浦和はこの試合、前半半ば、後半開始後と2度に渡って完全にゲームを支配されていた。セカンドボールをことごとく拾われ続け、終盤には磐田の攻撃のキーマン・太田を自由にさせてしまったことで決定的なピンチも招いた。
それでも、勝ち点3を手土産にスタジアムを去っていった。
小野からワシントンへピンポイントのクロス。ワシントンは磐田DFを引き連れながら、ダイビングヘッドを決める。
ポンテから永井へくさびのパス。磐田ゴールへ向かってフリーランを敢行するポンテの姿が永井に見えていないはずがなかった。リターンを受けたポンテが豪快にゴールネットへ突き刺す。
その結果、浦和のホーム無敗記録がさらに延びることとなった。
選手達が昨シーズンを通して身につけたメンタリティー、「勝者のメンタリティー」を3年かけて選手達に教え込ませたギド・ブッフバルトが見守る中、浦和がさいたまスタジアムでまたしても勝ち点を積み上げた。浦和が勝ち点なくしてさいたまスタジアムを去る日が、果たしてやってくるのだろうか。
posted by 犬太 |21:03 |
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2007年03月31日
神戸、鹿島とも驚くほどに立ち上がりから飛ばしていた。人数をかけてボールを奪っては一気に攻撃への速度を高め、ボールを奪われるとすぐさま守備へとスイッチを切り替え、人数をかけて奪い返す。当然スタミナは削られていき、必然的に試合は消耗戦の様相を呈してくる。
消耗戦になると、敵陣と自陣を行き来する人数が減っていき、特定の選手が自陣、敵陣に分かれることとなる。中盤は省略され、中盤でのディフェンスが無い分チャンスは多く生まれる。つまり、得点の確率がぐっと高まることになる。それこそ、撃ち合いと呼ばれるぐらいに。
だが、試合は1-1のドローに終わった。チャンスが全く無かった訳ではない。シュート数は両チームとも10本を優に超えている。セットプレーからのチャンスもあった。それでも、この日ゴールネットを揺らした回数は2回にとどまった。
この現象について「決定力不足」と言ってしまえばそれまでだが、この試合で目に付いたのは決定的なシュートを外して点を仰ぐ選手よりも、決定的なピンチを神がかり的なセーブやブロックなどで防ぎ、チームメイトに束の間の労いを受ける選手の姿だった。再三に渡るセーブでチームに勝ち点をもたらした榎本、曽ヶ端の両守護神、後半15分過ぎから続いた鹿島の猛攻を体を張って守り切った北本、カウンターから招いたピンチにGKのカバーリングをし、あわやゴールというところで見事なブロックを見せた新井場。「絶対にゴールを許さない」そんな気持ちが観ているこちらにも伝わってくるようだった。
プレッシャーを撥ね退けPKを決めた大久保のゴールも、ファボンが見せた弾丸FKも、もちろん素晴らしいものだった。しかし、この試合で印象に残り、観るものの感情を揺さぶったもの、それは「絶対に点をやらない」という強固な意志が生んだ、数々の好守──これが挙げられるのではないだろうか。
posted by 犬太 |22:58 |
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2007年02月24日
昨シーズン1度も浦和に勝つことが出来なかったガンバが浦和に勝利した、という結果についてさほど大きな驚きはない。指揮官の交代と欧州遠征、代表選手の大量選出、主力の故障というマイナス要因の多い浦和に対し、大きな怪我人も無く、「10%の上積み」というテーマの下、理想的なキャンプを行なったガンバ。現時点の仕上がりでは明らかにガンバに分があるからだ。
ただ、それを差し引いても4-0というスコアに関しては、驚きを隠せない。
まずは両チームのスタメンだが、オジェック新体制を迎えて布陣の変化があるかどうかに注目が集まった浦和だったが、ブッフバルト時代の3-4-2-1の布陣を踏襲していた。大きな変化と言えば、怪我の相馬に代わって小野がトルシエ政権の日本代表以来となる左サイドに入ったこと、新加入の阿部が同じく怪我の長谷部のポジションであるボランチに入り鈴木とドイスボランチを形成したことぐらいで、レギュラーの代わりにスタメンに起用された選手にしても、昨シーズンからの変化はなかった。
対するガンバは昨シーズンにオプションの1つとして使っていた4バックを今シーズンからはガンバの基本布陣とし、この日の左サイドには昨シーズンほとんど出場機会のなかった安田がスタメンに抜擢されていた。中盤から前線にかけては昨シーズンと同じ顔ぶれで、注目されたバレーはベンチスタートとなった。
強い風が吹き付ける中、2007年の日本サッカーの幕開けを告げるホイッスルが吹かれた。
立ち上がりは、両チームとも左サイドからの攻撃が目に付いた。浦和は左サイドに入った小野を起点に攻撃を組み立て、ガンバは安田が積極的なオーバーラップを見せ、5分には平川との競り合いに勝ち、フリーでシュートを放ったがこれは大きくふかしてしまった。
序盤こそ互角に見えた両チームだったが、徐々にガンバが試合の主導権を握っていった。そして31分、前線へのくさびのボールを山口がカットし、遠藤へパス。山口はそのまま右サイドのスペースへ走りこみ、攻撃の数的優位を作る。ボールを受けた遠藤は左のスペースへフリーランをしていた二川へピンポイントのパスを送り、二川は右足へ持ち替えてシュート。1度は山岸に弾かれたが、こぼれ球をマグノ・アウベスが押し込んだ。ボールを奪った後もフリーランを止めなかった山口、ボールを奪った瞬間に裏のスペースへのフリーランを開始した二川と、好守の切り替えの速さが光った先制点だった。
ガンバの攻撃の勢いはとどまることを知らない。42分にはボールを持った二川がそのままドリブルで持ち込み、豪快なミドルを叩き込んだ。序盤には橋本が遠目の位置から惜しいシュートを放っていたように、シュートの対する意識の高さが目立ち、前半だけで10本以上のシュートを記録していた。
ハーフタイムを挟んでも、試合の主導権が動くことは無かった。遠藤、二川という高いスキルを持つ2人が自由にプレーする時間が多くなり、そこから数多くのチャンスが生まれた。また2人がボールを持つことで自然とボールをポゼッションする時間も多くなり、橋本、安田ら2列目、3列目からの攻撃参加が多く見られるようになった。
67分の得点はまさにその形から生まれた。バイタルエリアで二川がタメを作り、飛び出した橋本へスルーパス。橋本のシュートのこぼれ球をマグノ・アウベスが難しい角度だったが落ち着いて決めた。二川の個人技もそうだが、橋本の飛び出しのタイミングの良さが際立っていた。
個人技で言えば、85分のゴールには遠藤の卓越した技術が集約されていた。3点目の二川と同じような位置から無駄の無いボールタッチでディフェンスを振り切り、中央のバレーへピンポイントクロス。バレーのトラップが大きくなってしまったが、これを山岸が弾いてしまい、最後はまたしてもマグノ・アウベスが決め、ゼロックス・スーパーカップ史上初となるハットトリックを達成した。
こうしてガンバの挙げた4得点の内訳を解いていったが、すべてのゴールに必然性があった。カウンター時における「守」から「攻」への切り替えの速さ、2列目、3列目からの飛び出し、こぼれ球に対する反応の速さと的確なポジショニング・・・ガンバにとって文句のつけようのないゲームだったと言える。
ガンバのゴールに必然性があったということは、浦和の失点にも必然性があったということだ。1点目のシーンではボールを奪われた後の守備への切り替えが遅れ、2点目のシーンでは誰がボールホルダーに対してチェックに行くかという連携の部分でのミスがあり、3点目のシーンでは橋本の飛び出しに対して誰も反応出来ず、パスを出した二川に対してもバイタルエリアで自由にさせてしまっていた。4点目にしても同じで、ガンバのキーマン・遠藤をバイタルエリアまで侵入させてしまっていた。二川、遠藤のマークにはポジション的に考えて山田、ポンテ、阿部、ポンテのいずれかがつくはずだが、前2人と後ろ2人との距離が空いてしまい、役割が分断されてしまっていたような印象を受けた。
さらに浦和にとって大きな問題だったのが、好守の切り替えやプレーの切り替えなどの「スイッチ」がこの日は存在していなかったことだった。前述の失点もそうだが、象徴的な場面として、スローイン時に副審の判定に異議を唱え、その間に右サイドの裏のスペースを取られて決定機を作られていたことがあった。率直に言って、2冠を達成したクラブにあるまじき行為だった。
逆にガンバは「10%の上積み」にとどまらない異色の出来だった。攻撃における連動性然り、セカンドボールを拾う意識然り、ファーストディフェンダーの速い寄せ然り、好守の切り替えの速さ然り・・・「予想以上に良いゲームが出来たと思う」という西野監督の言葉に偽りは無いだろう。
この試合で今シーズンの行方を占うことはあまりにも早計だ。とはいえ、この4-0というスコアはガンバに大きな自信をもたらしたことだろう。一方の浦和は戦術が完全に浸透するまでもう少し時間がかかりそうだ。怪我人のコンディションも気になるところで、開幕までの1週間でどれだけ立て直すことが出来るか、そこに焦点が絞られてくる。仮に欧州遠征、そしてこの試合での大敗がシーズンまで尾を引くようだと、今年のJリーグは例年にも増してより一層混沌模様を呈してくるだろう。
posted by 犬太 |15:42 |
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2006年12月10日
久藤が三浦のFKをモロに頭で受けてしまい、ピッチに倒れこむ。そしてほどなくして主審の長いホイッスルが鳴らされ、前半が終了した。
ハーフタイムの間、語弊を恐れずに言うならば、「退屈な試合」だと私は感じていた。立ち上がりこそカウンターから福岡がチャンスを作ったものの最後の部分での精度を欠き、対する神戸も北本がシュートを放った以外にはこれといったチャンスを作ることが出来ない。その後はお互いにリスクを最小限に抑え、最もミスの起こる確率の少ないロングボールを多用する。失点するリスクを考え終始アグレッシブさに欠けた第1戦の試合のような展開になっていた。
遂には、こんなことまで頭に浮かんだ。「こんな試合内容でJ1に残して(上げて)もいいのだろうか?」
18時、試合は延長戦に突入することもなく、90分間でタイムアップを告げた。その瞬間、私はこう思っていた。「こんな素晴らしい試合を見せてくれてありがとう」と。そして、ハーフタイム時に頭に浮かんでしまったことが、あまりにも情けなく、またそんなことを思ってしまった自分自身に腹が立ってしょうがなかった。それぐらい、後半の45分は壮絶なゲームだった。
60分、三浦が左サイドから前線に残っていた北本めがけ、ボールを送る。しかし、ボールは意に反して北本に触れずに福岡のDFに当たる。ボールはこぼれたが、そこには近藤がいた。こぼれ球にダイレクトボレーで合わせると、GK水谷の足に当たりながらもゴールネットに突き刺さった。第1戦と合わせて
150分、ついに神戸のスコアボードから「0」の文字が消えた。
神戸のスコアボードから「0」の文字が消えた、それはすなわち、福岡がまさに文字通りの絶対絶命に陥ったことを意味する。アウェーゴールのルールにより、神戸は同点に追いつかれたとしてもJ1昇格が決まる。つまり、福岡がJ1に残留するためには2点が必要になってくる。こうなってくると、福岡のやることは1つしかない。「攻めて、攻めて、攻める」
福岡の攻撃の起点になっていたのは、古賀だった。高校時代に高校選手権で全国制覇を成し遂げ、横浜マリノス(当時)に入団したものの、出場機会を得られずに地元福岡のチーム・アビスパ福岡へ。そこで、自身最大の武器である精度の高いクロスが育まれた。自分を育ててくれたチームのためにも、絶対に降格したくない──左サイドから幾度となく繰り出されるクロスには、1つ1つにメッセージが込められていた。
だが、その思いとは裏腹に、どうしてもゴールが生まれない。布部が鮮やかなループシュートでゴールネットを揺らすものの、オフサイドによりゴールは認められず、佐伯のヘッドもゴールポストの僅か横を通過していく。奇しくも、布部と佐伯は互いに神戸でのプレー経験を持つ選手だ。ただ、ピッチに立てば相手が古巣であるという考えは一瞬で吹き飛ぶことだろう。とにかく今はチームのために──
チームのために──それは神戸の選手もまた然りだった。目標だったワールドカップ出場の可能性が低くなることを承知の上で、J2に降格した神戸への残留をいち早く表明した三浦の魂が乗り移ったかのように、今シーズン急激な成長を遂げた若手がこの大一番で奮闘する。北本が古賀のクロスに背を向けずに腹でボールを受け止めたかと思えば、GK荻がアレックスの絶妙なFKを横っ飛びで防ぐ。「チームのために、そしてアツさんのために」神戸の選手の想いは1つだった。
しかし、博多の森の大声援を受ける福岡の執念が、この試合を降り出しに戻した。CKから薮田が逸らしたボールに布部が反応し、頭で合わせた。だが、この試合はもう1点が必要な試合だ。喜ぶ間もなくボールを拾い上げ、センターマークにボールをセットし一刻も早い試合再開を促す。
その後一進一退の攻防が続き、迎えたロスタイム、もはや言葉では説明の出来ない壮絶なシーンが生まれる。このシーンに関しては、本当に説明の仕様がない。いや、説明する気すらないのかもしれない。ただ一言、「運命の悪戯」。私はスポーツが言葉を超越した瞬間を目の当たりにした。
結果として福岡最後の攻撃となったFK時、GK水谷までもが攻撃参加していた。余談だが、その前のプレーでは平瀬とホベルトがボールを奪い合い、結局福岡ボールとなったがその中でコーナーフラッグが外れてしまった。しかし、それに目もくれずにすぐに試合を再開した。また遡って81分、朴に替わってガブリエルが投入される際、朴は靴の紐を結びなおし、ゆっくりと、ゆっくりと時間をかけてベンチに退いた。「早く試合を始めたい」という福岡側の心理と「早く試合を終わらせたい」という神戸側の心理。これほどまでに鮮やかなコントラストは、そうはお目にかかれない。
福岡最後の攻撃となったCKは、スコアを動かすことが出来なかった。この瞬間、神戸のJ1昇格と、福岡のJ2降格が決まった。再三に渡る好セーブを見せ、試合終了と同時にピッチに倒れこんだGK荻にガブリエルが覆いかぶさる。すると堰を切ったように、次々に選手が覆いかぶさっていく。カメラが切り替わると、1年でJ1に復帰するという「男の義務」を果たしたキャプテン・三浦が立つ力さえ奪われてしまった福岡の選手1人1人に声をかけていた。昨年同じ体験をした三浦にとって、当人しか分からないであろう「降格」の辛さは痛いほど分かっているのだろう。
そしてもう1つの義務、J1昇格のインタビューを受けている三浦の目には涙が浮かび、声は震えていた。そしてインタビューを終えると、すでにサポーターと喜びを分かち合っている選手達のもとへと走っていった。
posted by 犬太 |17:32 |
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2006年12月07日
現在五輪代表監督を務める反町監督は、アルビレックス新潟がJ2だった時代にこのように語っていた。「昇格出来れば今シーズンは満点。出来なかったら0点」
この言葉が如実に物語っているように、ヴィッセル神戸にとってJ1に昇格することは、今シーズンのすべてといっても過言ではない。柳川、田中、丹羽といった若手の有望株が台頭したからといって、今シーズンのヴィッセルは成功した、とは言えないのである。逆に言えば、どんな試合内容であろうが、若手が育たなかろうが、J1に昇格することが出来ればそれは結果として大成功になる。
アビスパ福岡にも同じことが言える。中村という北京世代不動の右サイドバックを輩出し、城後、柳楽といった若手がどれだけ頭角を現そうが、J1に残留しなければ元も子もない。J1からJ2に降格する場合、主力や若手の有望株が引き抜かれるケースが多いので、降格してしまったとしたら何も残らない可能性がある。
そのような特別な背景を持ったチーム同士が、J1・16位のチームとJ2・3位のチームがホーム&アウェー方式で戦う入れ替え戦で合間見える。過去2度に渡って行なわれた入れ替え戦では、一昨年は柏がJ1のプライドを見せ、昨年は甲府がバレーの大爆発によって柏を奈落の底へと突き落とした。
この試合、神戸にとって大きな痛手なのは、チームの大黒柱・三浦淳の出場停止だろう。今シーズンチーム最多得点を挙げ、正確無比なキックで得点を演出してきた三浦の不在はチームにどのような影響を及ぼすのだろうか。一方の福岡も、21歳の若さながら既にチームの中心となっている中村を怪我で欠く。右サイドを幾度となく駆け上がりチャンスメイクする中村の不在はチームに暗い影を落とすのだろうか。
共に主力をそれぞれのチーム事情で欠く中、試合が始まった。三浦を欠く神戸は三浦のポジションに、今シーズンノーゴールという結果に終わってしまった茂木をスタメンで起用し、中村のポジションには1997年から2004年途中まで神戸に在籍していたベテランの吉村を起用した。この吉村もそうだが、両チームの中には少なからぬ因縁を持つ人物が数名いる。薮田、佐伯は神戸でプレーした経験があるし、神戸の松田監督は今シーズン第12節まで福岡の指揮を執っており、福岡の川勝監督は1999年から2002年7月まで神戸で指揮を執っている。ちなみにその時トップチームのコーチを務めていたのが松田監督である。
前半は互いに戦術が徹底していた。神戸は4バックが常に高い守備意識を持ち、坪内、北本の両サイドバックが攻撃参加することはほとんどなかった。自陣で危険を感じたらまずは前線にボールを蹴りだすということを徹底していて、攻撃につながる効果的なビルドアップは見られなかったが、セーフティ・ファーストという観点で考えると一定の成果を見せていた。
後方からの組み立てがないとなってくると、神戸の攻撃方法は2つに限定される。すなわち、セットプレーとカウンターである。前半は、セットプレーから度々チャンスを作っていた。この日スタメンに起用されたガブリエルが立ち上がりに精度の高いFKで北本に合わせると、32分にはFKから直接ゴールを狙う強烈なシュートを放った。
アウェーの福岡にとってこの試合は、難しい戦いとなった。ホームで第2戦を迎える以上、アウェーで無理をしてまで点を取りにいく理由はないが、アウェーゴールは2倍の価値を持つ。川勝監督が就任して以降、得点数の増加に比例して失点数も増加していることから得点を取りに前に人数をかけることは福岡にとって失点という高いリスクを伴うのだ。この試合福岡は、それほど攻撃に人数をかけず、神戸の3トップを抑えることをファースト・プライオリティとし、攻撃はサイドを起点に崩す、この2点を念頭に置きゲームを進めた。
前半はお互いに気合が入りすぎたのか、カードが乱れ飛んだ。特に神戸は前半だけで4枚の警告を受けてしまい、後半に向けて一抹の不安が残った。福岡はセットプレー、カウンター以外ではピンチらしいピンチを見せず、安定した試合運びだった。リーグ終盤に頻繁に現れた神戸の「悪い熱さ」が出てしまった、そんな前半だった。
しかし、後半に入ると神戸の「熱さ」は良い方向へと向かう。朴のノールックでのスルーパスに近藤が抜け出しサイドネットに阻まれる惜しいシュートを放つと、今度はカウンターからガブリエル、朴、近藤と連動性溢れる攻撃を展開し、最後は近藤がゴールネットを揺らすが、これはオフサイドの判定。その後も茂木が左サイドを何度も突破し惜しいシュートを放つなど、何度も決定機を迎えるが、どうしてもゴールが奪えない。
後半は守備の時間帯が多かった福岡も、隙を見ては攻撃を仕掛ける。飯尾がドリブル突破からフリーの久藤にラストパスを送るも、久藤がこの試合最大の決定機を決めることが出来ない。さらにアレックスがFKで久藤ボールをズラした所で強烈なシュートを放つが、これも入らない。終盤、運動量が急激に落ちたことで、攻め手が見出せなかった感もあったがディフェンス陣が奮闘し、最後までゴールを割らせることはなかった。
入れ替え戦第1戦は0-0のスコアレスドローという結果に終わった。川勝監督は「ゲームの結果に関して落胆とかは全くない」と語り、松田監督は「最低の結果は得たかなという印象。福岡さんの方は勝って終わりたかったんじゃないかなと思う」と語った。0-0というスコアの捉え方は様々だが、博多の森で迎える第2戦はそうはいかない。試合終了時により数字が多いチームが歓喜の輪を作り、より数字が少ないチームが生き地獄を見る。果たしてどちらが歓喜の輪を作るのか、12月9日、その答えが明らかになる。
posted by 犬太 |22:55 |
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2006年12月02日
試合前、ピッチに向かう前に選手達が敵味方隔てなく談笑している様子が映し出される。「不仲説」も流れたマグノ・アウベスがワシントンに歩み寄り、一言二言とワシントンに声をかける。それにワシントンが笑顔で返す。どれだけ重要な試合であろうが、試合前は敵チームとはいえ1人の大事な「アミーゴ」だ。このシーンは、それを見事に描写していた。今後は、大事な試合に限らずこういったシーンを映し出してもらいたいものである。
スタジアムは、ほとんどが赤に染まっていた。さらにバックスタンドには人文字による浦和のチームエンブレムが見事に完成されていた。その美しさは、2ndステージ優勝を決める試合での駒場の紙吹雪にも匹敵するものだった。対するガンバも負けていない。12月の寒い気候もお構いなしで、一部サポーターが上半身裸になり自らに気合を入れ、選手を鼓舞する。サポーターの準備は整った。後は、ピッチ上で選手が躍動するだけだ──
主力が復帰してくるということで注目された両チームのスタメンだったが、ガンバは前節からの変更点はFWに播戸が復帰してきたことだけで、坪井の復帰が期待された浦和のスタメンは、前節から全く変更点がなかった。そして14時4分、上川主審が試合開始を告げるホイッスルを鳴らした。
3点を取らなければ優勝の可能性が無くなるガンバだが、先に大きなチャンスを得たのは浦和だった。5分、三都主が蹴った右からのFKを山田が後方に流し、フリーのワシントンがヘッド。完全に枠に行っていたが、GK松代が鋭く反応し、スーパーセーブで窮地を救った。
攻撃の形を作りたいガンバは、本来のパスサッカーが徐々にではあるが機能し出し、チャンスを作りつつあった。だが家長のクロスに播戸が合わせ切れないなど、どうしてもゴールが遠い。しかし21分、一瞬の隙からガンバがどうしても欲しかった先制点を取る。橋本のパスにキレのあるターンでディフェンス2人を振り切った播戸が折り返すと、詰めていたマグノ・アウベスがかかとで技ありのゴールを決めた。これであと2点。時間もまだたっぷり残っていることから、土壇場での逆転優勝が現実味を帯びてきた。
だが、浦和は落ち着いていた。若干押され気味になる時間帯もあったが、前節のFC東京戦と明らかに違っていたのが、前でボールを奪って攻撃につなげる意識だった。ネネが2度に渡ってガンバの攻撃をカットしたかと思えば、警告にこそなったが鈴木は積極的に前に出て敵陣でボールを奪おうとした。ワシントン、ポンテ、山田といった前線の選手のディフェンス意識も高く、ボールをなかなか前に出せないガンバが後方でボールを回しているシーンも度々あった。
そしてその高い守備意識は、浦和の同点ゴールの呼び水となった。27分、ボールを奪った浦和はカウンターを仕掛け、ワシントンにボールを預けると、ワシントンがスペースを走るポンテにスルーパス。カバーに入ったシジクレイをかわすと、そのままゴールへ一直線。最後は落ち着いて逆サイドに流し込んだ。これで1-1。浦和にとっては非常に大きい、ガンバにとっては優勝の可能性が遠のく手痛い失点だった。
その後は、一進一退の攻防が続く。41分に最終ラインからスルスルと上がった内舘がミドルシュートを放つと、終盤にはガンバがセットプレーから猛攻を仕掛ける。4本続いたガンバのCKの3本目には宮本がフリーでヘディングするが、GK山岸が好セーブを見せた。残り時間も少なくなったことで、試合はこのまま1-1で後半に突入するかと思われた。だが、前半終了間際にスコアが動いた。
スコアを動かしたのは、ワシントンだった。鈴木からのスルーパスを受けたポンテがディフェンス2人を引きつけ中央に折り返すと、そこにワシントンが詰めていた。これで2-1。浦和は3点取られても優勝という絶対優位を作り、ガンバは4点取らなければ優勝できないという絶望的な状況に陥った。
後半に向けて、選手交代は両チーム共になかった。遠藤の投入が注目されたガンバだったが、結局前半と同じメンバーで後半に臨むこととなった。そして今シーズンの34試合の合計3060分の中で両チームにとって最も重要な45分が始まった──
点を取るより他ないガンバは、立ち上がりから前へ前へとボールを運んでいく。その代償として後方から一気に前線に当てるロングボールの回数が増え、パスサッカーの色が薄まりつつあったが、48分にはロングフィードに抜け出した播戸がシュートを放つなど、とにかくシュートまで持っていきたいという意図がはっきりとしていた。そして54分、パスサッカーの心臓とも言える遠藤が投入された。コンディションが万全ではないのは百も承知だが、西野監督は比較的早い時間帯で遠藤というこの試合最高のジョーカーを起用した。
だがここでガンバにアクシデントが発生してしまう。ガンバのディフェンスラインを支えていたシジクレイが負傷退場してしまったのだ。これによりガンバは一時的に10人での戦いを余儀なくされた。
浦和はその隙を見逃さなかった。CKを得た浦和はマーキングの確認に躍起になっているガンバを尻目にショートコーナーを選択。三都主がファーの闘莉王めがけて絶妙のボールを上げると、闘莉王がヘッドで中に折り返し、最後はワシントンが頭で流し込んだ。これで3-1。この時点で浦和の優勝はほぼ確定したといっても過言ではなかった。
なんとか1点でも多く返したいガンバだが、そこにリーグ最小失点を誇る浦和の鉄壁のディフェンスが立ちはだかった。満身創痍の闘莉王がクロスをことごとく跳ね返せば、鈴木、長谷部のダブルボランチが中盤で攻撃の芽を摘んでいく。そしてこの試合の2ゴールで得点ランクトップに立ったワシントンまでもが自陣まで戻ってボールを奪うなど、個々のディフェンスの意識が素晴らしかった。78分にキャプテン・山口がCKから意地のゴールを決めるが、このゴールも焼け石に水だった。
試合は3-2のままロスタイムに入り、プレーが止まったところで長いホイッスルが吹かれた。Jリーグ創成期、「Jリーグのお荷物」と揶揄されていた浦和レッズが、クラブ創設以来初となるリーグ制覇を成し遂げた。Jリーグ元年に最下位、さらにはJ2降格と苦難の時代を乗り越えてきた浦和レッズの赤は、何色にも染まらなかった。
posted by 犬太 |16:42 |
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2006年11月30日
非常に難しい試合だった。前半途中から降り出した雨によってスリッピーな状態になったピッチコンディションに苦戦し、前半は鳥栖に主導権を握られていた。横浜のチャンスもほとんどがセットプレー絡みであり、流れの中で崩した場面はほとんどなかった。
この試合を前に2位・神戸との勝ち点差は2。得失点差で3位に位置する柏との勝ち点差も2。つまり、横浜が勝利して神戸、柏が引き分け以下に終わると、その時点で横浜のJ1昇格&J2優勝が決まる。この状況下で、平常心でプレーしろ、というのは極めて困難な作業だ。山口が「最初立ち上がりがちょっと固いなとは思った」と語ったのも当然といえば当然だろう。
だが、今シーズンの横浜には試合の中で悪い状況を良い状況に変換することができる。それを可能にするのが、もはや横浜の代名詞にもなった「ハマナチオ」とも言われる堅いディフェンスである。前線からカズ、城が労を惜しまず積極的にボールを追う。それに中盤、最終ラインが連動してディフェンス時に常に数的優位の状況を作り出し、相手の侵入を防ぐ。横浜にとっての「良い状況」というのは「数的優位の状況」と全く同義語なのだ。
その状況を作り出した横浜は、少しずつ流れを引き寄せていく。横浜の形であるサイド攻撃が徐々に機能し始め、流れの中からチャンスが生まれてくる。一方の鳥栖もユン・ジョンファン、新居を中心にゴールを狙い、互いに一進一退の攻防が続く。
横浜は68分、カズに替えてアレモンを投入する。これが、見事に当たった。交代直後に2人を抜き去り惜しいシュートを放つと、迎えた77分、ロングボールに城が頭で落とし、アレモンが懸命に足を伸ばすと、ボールはゆっくりとゴールネットへ吸い込まれていった。昨年京都パープルサンガをJ1昇格&優勝に導いた22歳のストライカーが、今度は横浜FCをJ1昇格&優勝に導こうとしている。
こうなったら横浜の勝ちパターンだ。アレモン1人を前線に残し、残り全員が自陣で守る。山口が体を張ってシュートを防いだかと思えば、全試合に出場している横浜の守護神・菅野がスーパーセーブを見せる。試合はロスタイムに入り、試合終了の時間が刻一刻と近づいてくる。
そして、試合は終わった。今シーズン8回目となるウーノ・ゼロ(1-0)での勝利。接戦をモノにする勝負強さが、極限のプレッシャーの中でも活きた。
それから2時間後、横浜の選手は移動中のバスの中で神戸が引き分け、柏が敗れるという速報を聞く。この瞬間、横浜FCのJ1昇格&優勝が決まった。誰もが歓喜に酔いしれる。ピッチ上であれだけ冷静な山口もカメラに向かって喜びを爆発させる。山口は全日空時代からの生え抜きで、今は無き横浜フリューゲルスを支えた功労者だ。1999年1月1日の横浜フリューゲルス消滅から足掛け8年となる2007年、「フリエ」がついに、J1の舞台に戻ってくる。
posted by 犬太 |17:15 |
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2006年11月26日
横浜FCが勝ったことを知っている以上、自動昇格圏内をより近づけるためには、自らが勝利を手にするしかないということは百も承知である。それ故、プレーが熱を帯び、警告覚悟のプレーが増えることは当然であると言えよう。
湘南に先制された神戸は73分、栗原のゴールでようやく同点に追いついた。だが、同点ゴールから僅か1分後、有村がこの日2枚目の警告を受け、10人に。神戸は劣勢を強いられることとなった。
10人での戦いを余儀なくされた神戸だったが、サッカーは数的不利になった時の方がえてして動きがよくなり、ハンディがハンディでなくなることがままある。それを考慮すると、1人少なくなったとはいえ神戸に勝利の可能性は十分に残されていた。
だが、81分に河本までもが退場処分を受けてしまう。さすがに9人での戦いを余儀なくされることは想像していなかっただろう。
9人になると、逆サイドのケアまで人数が行き届かないので、サイドチェンジのパスを1本通されただけでピンチを招く。さらにサイドに人数をかけられないので、簡単にクロスを上げさせてしまう。ならばクロスを上げさせまいとサイドに人数をかけると、今度は中央が空いてしまう。やはり点を取られないためには後ろを増やしたい。そうすると前を削ることになる。だがどうしても勝ちたいこの試合、点を取るためには前を削る訳にはいかない・・・考えれば考えるほど、出口の見えない迷路に迷い込んでしまう。
現実的なプランとしては、このまま何とか湘南の攻撃を凌いで勝ち点1を取り、最終節に自動昇格権をかける、という方法が賢明だろう。だが、神戸はあくまで勝ちにこだわった。そしてそれを見事に体現して見せたのが田中だった。右からのスローインを受け中へと切れ込むと、最後は倒れこみそうになりながら左足を振り抜き、勝ち越しゴールを決めた。ゴール後、田中にGKの荻を含めたピッチに立っている9人が一斉に駆け寄った。サッカーという11人で行なうスポーツにおいて、「ナイン」が1つになった瞬間だった。
これであとはロスタイムの3分を守り切れば、という所だった。しかし、試合はまだ終わらない。ロスタイム、37歳・大ベテランの加藤望のヘッドがゴールネットに突き刺さった。
結局この試合をものにすることが出来なかった神戸だが、9人になっても攻撃を忘れない姿勢は、見るものの心を揺り動かすだけのものがあった。最終節はこの試合退場処分を受けた2人のDFを欠く事になるが、最後までピッチに立ち続けた「ナイン」がいる限り、大きな不安要素にはならないだろう。そしてその中心に、「自分の体がどうなろうとも、サッカー人生すべてをかけて全力で戦う」と最終戦への固い決意表明をした三浦淳宏がいる限り、きっと良い結果がついてくることだろう。
posted by 犬太 |19:44 |
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2006年11月25日
ホーム・埼玉スタジアムでは今シーズン負け知らずの浦和レッズ。だが、ヴァンフォーレ甲府とはアウェーでの対戦時に、引き分けという結果に終わっている。その時は甲府のスタイルである次から次へと人が湧き出てくる運動量に満ちたサッカーへの対処に苦労していた。
一方のアウェー・甲府は右サイドを支える杉山を出場停止で欠くことになってしまった。対峙するのは日本代表の三都主ということで、甲府としてはいかにして浦和の左サイドを封じるかが鍵となる。
ホームの大声援(アウェーでもだが)を受ける浦和は、立ち上がりから波状攻撃を仕掛ける。敵陣右サイドでボールをカットした鈴木がクロスを送り三都主が後方にボールをそらすと、ポンテがダイレクトでシュート。これはGK阿部の好守に阻まれる。そしてCKからワシントンがヘッドを放つもこれはクロスバーを越えてしまう。
甲府も負けていない。持ち前の運動量を存分に活かし、度々浦和ゴールに迫っていく。しかしどうしても最後の赤い壁を突破することが出来ず、決定機を作るまでには至らない。
15分を過ぎると、サポーターの熱が点火したかのように、試合は徐々に激しさを増していく。それが悪い方向に出てしまったのは、甲府だった。2列目から飛び出したポンテを秋本が倒してしまうと、この試合2枚目となるイエローカードをもらい、前半で退場してしまう。絶体絶命の甲府だったが、ワシントンが蹴ったPKを阿部が見事に読み切り、難を逃れる。そしてその直後に得たFKで藤田がポスト直撃の強烈なシュートを放つ。これで嫌な流れを断ち切ったかに思えた。
しかし、「一難去ってまた一難」とはよく言ったもので、山田の飛び出しに対して今度はアライールがペナルティエリア内で倒してしまい、再びPKを与えてしまう。この場面、ベンチから三都主が蹴るようにという指示があったそうだが、ストライカーとしてのプライドか、はたまたFWとしてのプライドか、ワシントンが再びボールをセットする。そして自分自身に対するプライドか、止められた1本目とまったく同じ場所に蹴ったが、なんとこれも阿部にキャッチされてしまう。「意地になって同じ方へ蹴ってくるだろうと思っていたら、その通りだった」と試合後に語った阿部の読み勝ちだった。
もしかしたら、ワシントンの2連続でのPK失敗は、チームに悪影響をもたらすものになっていたかもしれない。だが、今の浦和にはこの悪い状況を打破するだけのメンタリティーがあった。
後半開始から僅か1分、右サイドから中に切れ込んだ山田の左足でのクロスにワシントンが頭で合わせ、遂に待望の先制点を奪った。山岸が「今までワシントンの力で何試合も助けられてきたと思うし、あれで逆にいい意味でまとまれた」と語ったが、ワシントンを取り囲む輪の大きさがそれを表していた。
こうなると試合は完全に浦和ペースになっていく。ワシントンが執拗なマークに遭う背後で、ポンテ、山田のツーシャドーが水を得た魚のように自由自在に動き回ってボールに絡むことでチャンスを作り、自身も積極的にゴールを狙う。そして64分、左サイドでボールを受けた山田が軽く2人を抜き去ると、そのまま中へ切れ込む。さらに詰めてきたDFを鮮やかなステップでかわすと、右足でコントロールされたシュートを放ち、見事なゴール。その4分後にはまたしてもワシントンがCKを頭で合わせ、あっという間に3-0とし、試合を決めて見せた。
その後10人ながら甲府もチャンスを作るが、どうしてもゴールが奪えず、結局3-0のまま試合は終了。浦和が優勝に王手をかけた。
試合を振り返るとワシントンの独り舞台と言った感じだが、この試合で最も輝きを放っていたのはキャプテンの山田だったと思う。2点目のゴールも去ることながら1点目のワシントンのゴールを演出したピンポイントクロス、遅攻になりがちな浦和の攻撃にアクセントを与えた裏への飛び出し、そして効果的なドリブル・・・一時期はベンチを温める事も多かった山田だが、ここにきてチームにとって絶対に必要不可欠な選手になった。
この試合を見せられると浦和の優勝は堅い、と言いたいところだが、次の対戦相手はガンバ大阪戦、川崎フロンターレ戦で大逆転劇を演じたFC東京である。さらに浦和はアウェーでのFC東京との対戦成績は2勝1分5敗と苦手にしている。前回対戦時の4-0という結果はリセットしたほうがいいかもしれない。果たして明日、味スタは「浦和劇場」へと化すのか、それとも三度「東京劇場」が見られるのか──
posted by 犬太 |20:56 |
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