2007年03月20日

川崎フロンターレvs横浜FC~川崎が横浜FCに教えてくれたこと~

格が違ったと言ってしまえばそれまでかもしれない。しかし、この試合において、「格」という言葉だけで片付けるにはもったいない気がする。それほどまでに、両チームのレベルが違い過ぎた。

「神奈川ダービー」を迎えるにあたって、横浜FCにとってある意味「誤算」だったのが、前節の横浜F・マリノス戦をJ2と同じやり方──ひたすらゴール前で跳ね返す──で完封したことだった。その時に芽生えた僅かな、しかし間違いなくチームの中に刻まれた自信がこの試合での戦い方を決定してしまった。自陣に引き、ワンチャンスをモノにする──その戦術は、昨シーズンリーグ1の得点力を誇った川崎に対しては、全く通用しなかった。

「結果が全てです。フィニッシュ、パス、動き出し。全てで相手が上回っていました」記者会見での高木監督のこの言葉は、誇張などひとつもない、率直な感想だろう。だが、それ以上に横浜FCに攻める姿勢がなかったことが気がかりだった。ここで言う「攻める」とは、ディフェンス時における「攻める」を指している。川崎の攻撃のキーマンである中村が「今日はボールを受けに入ってもフリーだった」と語るように高い位置からのプレスが全く効かずに、自陣バイタルエリアを自由に使われていた。これでは、仮にボールを奪えたとしても攻撃に時間がかかり、得点のチャンスなど望めない。

ただ、ひとつ横浜FCのディフェンスラインが「攻める」ことが出来なかった原因を挙げるとすれば、それは黒津、ジュニーニョのスピードだろう。2人が常に裏を狙い続けることで横浜FCディフェンス陣が裏へのケアを警戒し、さらに中村にバイタルエリアへの侵入を容易に許したことで中盤も下がり、チーム全体に自陣に引いて守るという意識が伝染してしまった。

もちろん、6-0という結果を「横浜FCが悪かったから」という理由に依存することは出来ない。むしろ、川崎の魅せたサッカーがそれ以上に良かったと言える。序盤から立て続けにシュートを放つなど積極的な姿勢を見せ2ゴールを挙げた黒津、前線で精力的に動き回り、攻撃を活性化したマギヌン、ウイングバックというポジションながらゴール前に何度も顔を出し2試合連続のゴールを挙げた村上・・・川崎にとってすべてが完璧だったと言える試合だった。

なかでも特筆すべきは、4点目のシーンだ。右サイドから中へ中へと止まることなくボールを動かし続け、最後はDFをかわしたジュニーニョが落ち着いて決めたこのゴール、まるでラグビーのパス回しを見ているような美しいゴールだった。

そして、もうひとつ特筆すべきは、攻撃意識の高さである。これが横浜FCとは明らかに違っていた。象徴的なのは前半のワンシーンで、自陣でスローインをする際に川崎の選手が7人敵陣に入っていた。さらに1人少なくなった後半のカウンターのシーンではDFの井川や伊藤が敵陣へと侵入していたように守備時においても常に攻撃を意識する──ここの部分での意識の差が6-0というスコアになって表れた。もちろんそれで点を取られては元も子もないが、リーグ戦において2試合連続で退場者を出したなかで僅か1失点に抑えている。今シーズンのテーマである攻守のバランスの改善は、現段階では成功していると言えるはずだ。

見方次第では今回の6-0という敗戦は横浜FCにとって「これだけコテンパンにやられれば逆にス気持ちが切り替わる」というポジティブな捉え方になるのかもしれない。しかし、J2でベースとなった戦い方がJ1の強豪チームに対しては全く通用しないという事実はしっかりと正面から受け止めなければならない。川崎が教え、気づかせてくれたことを次に活かせるかどうか、それ如何で「残留」か「降格」かが決まって来るだろう。

posted by 犬太 |21:49 | Jリーグマッチコラム2007 | コメント(2) | トラックバック(0)
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2007年03月11日

鹿島アントラーズvsガンバ大阪~勝負強さが失われた鹿島と、勝負強さを得たガンバ。~

今日のガンバの礎を築いた西野監督が就任しても、日本屈指のプレイメイカーである遠藤が加入しても、ぶっちぎりで得点王に輝いたアラウージョが加入しても、ガンバ大阪がカシマサッカースタジアムで勝利の凱歌を聞く事はなかった。

「6年間」これはガンバが鹿島にカシマサッカースタジアムを笑顔で去ることの出来なかった年数をも表している。今日こそ笑顔でスタジアムを後にすることが出来るのか──

だが、その願いは虚しくも崩れ去ろうとしていた。試合開始から僅か19分、本山とのワンツーで抜け出した内田を倒してしまった安田がこの日2枚目のイエローカードを受け、早々にピッチを後にしてしまう。やはりこのスタジアムには見えない何かが働いているのだろうか。

これを機に一気に試合の主導権を握ったのは、ホームの鹿島だ。だが、ゴール前で播戸を倒してしまったことで、ファボンが一発退場を受けてしまう。ちなみにこのシーンを主審は見ていなかったが副審に直接確認し、後にレッドカードが出たという流れである。

これによって10人対10人となったものの、ホームの鹿島が依然としてガンバゴールをおびやかし続ける。セットプレーやサイドからのクロスを中心にチャンスを作り、次々と決定的なシーンを作り出す。もはや得点は時間の問題かのように思えた。

しかし、そこに立ちはだかったのが松代だった。左サイドからのコーナーキックにニアで合わせたシュートを間一髪の所ではじき出すと、その後のクロスにドンピシャのタイミングで合わせたマルキーニョスのヘッドも止めて見せた。さらには前半終了間際の増田のミドルシュートも横っ飛びで防ぎ、決してゴールラインを割らせなかった。この苦しい時間帯を我慢したこと、それが後に活きてくることとなった。

エンドが変わった後半、ガンバは中盤の不慣れなポジションながらも献身的な守備でチームに貢献していた播戸に代えて家長をピッチに送り出した。システム上は4-4-1のフラットな体系となり、フラットなラインを作ることによってスペースを消すという狙いのようだ。

後半立ち上がりこそ引き気味だったガンバだが、徐々にラインを上げ、前線からのプレスが活発になっていった。54分には明神が敵陣でボールを奪い、マグノ・アウベス→遠藤とつないでフィニッシュまで持っていく場面もあった。

前半ガンバの強力オフェンス陣のプレスに奔走し、確実にスタミナを奪われていったことでバイタルエリアが空き始め、徐々に押され気味になっていった鹿島も、ホームでガンバに敗北は許されまじと右サイドの内田のクロスからチャンスを作り、ゴール前に顔を出した増田がフリーでシュートを放つがこれは大きく外れてしまう。この試合、得点のチャンスは何度もあった鹿島だったが、全盛期にはあったチャンスをものにする勝負強さが全く見られなかった。

鹿島が失った勝負強さ、それを得たのはガンバだった。66分、マグノ・アウベスがドリブルで持ち込むと、家長に一旦ボールを渡す。家長はペナルティエリア内で待つマグノ・アウベスへ丁寧なパスを返し、最後はディフェンスの網をシュートのタイミングをズラすことによって掻い潜り、豪快に鹿島ゴールに突き刺した。

このゴールもそうだが、ガンバに感心したのはむしろその後の試合運びの上手さだった。柳沢を投入し3トップにすることで攻撃への比重を強める鹿島に対して、決して自陣に引き篭もることなく隙あらば家長、マグノ・アウベス、二川、遠藤を中心にカウンターを狙うことで、鹿島に守備に対する意識を植え付けさせ、決して攻撃に専念させなかった。そして試合終了が近くなると二川、遠藤、家長といったキープ力のある選手がタッチライン沿いでしっかりとボールをキープし、時間を上手く使っていた。

そして、6年間聞くことのなかった勝利の凱歌をここカシマサッカースタジアムで聞くこととなった。6年間突破することの出来なかった「鬼門」を打ち破ったガンバ。ゼロックス・スーパーカップでの圧勝劇によるタイトル獲得から始まり、苦しみながらも勝ち点3を手にした開幕戦、そしてこの試合での勝利は、これまでのガンバには馴染みの薄かった「勝負強さ」の証明となったのかもしれない。

posted by 犬太 |16:06 | Jリーグマッチコラム2007 | コメント(8) | トラックバック(1)
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2007年03月04日

清水エスパルスvsヴィッセル神戸~「理想」と「現実」の差は埋まるのか。~

この日の日本平は、不安定だった。日差しが差し込んだかと思えば、ピッチが雲に覆われるときもあった。それに比例してか、試合の流れもまた、不安定だった。

前半ほとんどの時間帯を支配したのは清水だった。今シーズンから本格的に右サイドハーフに固定された藤本が攻撃の軸となり、鋭いパスや強烈なシュートを放つなど既にチームの顔といった風格さえ漂わせていた。そして持ち前の堅守も健在で、特に高木和、青山はくさび役の近藤に全く仕事をさせず、神戸の起点を完全に遮断していた。

清水が試合を支配する中で生まれた先制点はセットプレーからだった。藤本のCKにファーサイドから飛び込んできた青山が頭で合わせた。昨シーズンはゴールのなかった青山だったが、開幕戦で幸先の良いゴールを決めて見せた。

このゴールでさらに追加点、と行きたい清水だったが、最後の一歩で決め手を欠いてしまう。神戸のプレスがほとんど効いておらず比較的余裕を持ってプレーできた影響も多少なりとはあったとは思うが、綺麗にパスをつないでゴールを決めようとしているように映った。特にサイドバックの市川が前線を追い越しフェルナンジーニョや藤本との連携からサイドをえぐる場面はスタジアムからも歓声が上がるほど美しいものだったが最後のクロスの精度を欠き、決定的なチャンスを作り出すまでには至らなかった。

パスがつながり、スタンドが沸く→最後の決定機を決められずため息が漏れる。こんな展開を繰り返していくうちに、清水の運動量がガクッと落ち、後半に入って徐々にプレスが効き始め、清水のスピードにも慣れてきた神戸が息を吹き返してきた。レアンドロを投入し、ボッティを下がり目の位置に置きそこからサイドへ展開していくことで攻撃の形が生まれ、藤本、市川に手を焼き、前半全く攻撃に参加することが出来なかった左サイドバックの坪内が積極的に攻撃参加することで攻撃に厚みをもたらし、何度か同点に追いつくチャンスもあった。

しかし、清水も同点にさせじとここ一番での踏ん張りを見せる。特に伊東の危機察知能力と的確なポジショニングは秀逸で、ことごとく攻撃の芽を摘んでいた。さらに市川もサイドからの突破をスライディングで止めたり近藤のシュートを体を張って防いだりと、素晴らしい働きを見せた。もちろんそれはGK西部にも言えることで、河本、三浦のシュートを止めたシーンに代表されるように神がかり的なセーブを連発した。

攻勢から一転、劣勢に立たされた清水だったが岡崎、枝村を同時に投入することで前線での運動量を増やし、流れを再び引き寄せる。特に枝村のタイミングの良い飛び出しに神戸ディフェンス陣は翻弄され、裏を抜け出した枝村からのクロスにチョ・ジェジンがフリーで合わせる惜しい場面もあった。

そして、1-0のスコアのままタイムアップ。清水がホームで迎えた開幕戦を白星で飾った。とはいえ、前半立ち上がりの戦いぶりからすればそのスコアは物足りず、先にも述べたが綺麗に崩そうとする意識が強いあまりシンプルなプレーがほとんど見られず、藤本、伊東以外に相手を前に引き出そうとする遠目からのシュートもなかった。スタイルは全く異なるが先日の試合でサンフレッチェ広島が人も時間もほとんどかけないゴールを連発していただけに、その光景は非常に対照的なものだった。確かに3人、4人と絡んだパスワークには美しいものがあるが、ゴールを決めなければそれはただの自己満足になってしまう。あまりにも「理想」を追求してしまうと、「現実」との差に絶望し兼ねない。清水が「理想」と「現実」の間に立たされる日は、そう遠くないのかもしれない。

posted by 犬太 |19:33 | Jリーグマッチコラム2007 | コメント(0) | トラックバック(1)
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2007年03月03日

浦和レッズvs横浜FC~「34分の1」がもたらしたもの。~

間違いなく、久保の表情から笑顔がこぼれていた。初のJ1の舞台で緊張の面持ちの横浜FCの選手の中にあって、その光景は「異様」とも言えた。

「異様」だったのは、スタジアムの雰囲気もまた同じだ。昨シーズンの優勝決定戦の時とはまた違った雰囲気。何かサポーターが今週から始まる8ヶ月間の長い戦いを目にすることが出来るという幸福感に酔いしれているようだった。そしてテレビ越しでもはっきりと伝わる大声援。声援というよりも、むしろ地響きという言葉の方が適切な気がする。

そんな雰囲気の中、ただでさえアウェーで浦和と対戦することは苦しい戦いを意味するが──J1緒戦がそのケースに該当し、しかもそれが開幕戦であるというのは横浜FCにとって厳しい船出と言える。この試合で高木監督が執った戦術は、久保を前線に残して他全員が守備的に振る舞い、カウンターから隙あらば得点を狙うというものだった。今シーズンの大前提が「残留」であり、昨年のチャンピオンチームと戦う以上、懸命な判断である。

横浜FCが守備的な戦いをするとなると、必然的に攻める時間帯が多くなるのは浦和だ。だが、山田のFKや相馬の個人技での突破など随所に光るプレーは見せるものの、やはり個人頼みになってしまうことが多く、意図的な崩しがほとんど見られなかった。それでも25分、ようやく先制点を挙げる。ワシントンに入ったくさびのボールにワシントンがワンタッチでポンテへ流すと、中に折り返したボールが横浜FCのオウンゴールを誘った。

これで勢いに乗りたい浦和だったが、その勢いを止めたのは久保の左足だった。44分、右サイドでボールを受けると中へ切れ込み、30m以上離れている距離からシュートを放つと、そのボールは浦和のゴールネットを揺さぶった。それはまるで解き放たれた矢の如く──ゴール後、これまでに見せたことのない表情で喜びを表現する久保の姿は怪我に苦しみ、ワールドカップの日本代表から漏れた昨年からは想像のつかないものだった。まさにドラゴンが解き放たれた瞬間だった。

久保のゴールは、浦和の勢いを殺ぐだけでなく、浦和の戦略に狂いを生じさせた。1点リードして折り返せばゲームプランもまた違ったものになったはずだが、ホームで勝ち点3を得ることは必須条件であるだけに、後半も攻めにより重点をおくこととなった。後半に入っても浦和の攻撃に相変わらず厚みを感じず、何度かあったサイドからの攻撃も永井、相馬が個人の力で突破したものであり、中央に3人、4人と入ってくるシーンもほとんどなかった。

では横浜FCに勝ち越しのチャンスがあったのかと言うと、答えは「ノー」である。前半からほとんど守りっぱなしで、守備時に数的優位を作るために所狭しと動き回ったディフェンス陣(特に中盤)に、攻めに転じる体力はほとんど残っていなかった。前半以上に久保が前線で孤立する場面が増え、いくら久保と言えども阿部、坪井というリーグ屈指のディフェンス能力を持った2人を相手にすることは困難な作業だった。

この展開では横浜FCとしては勝ち点を取れれば御の字だ。しかし85分、赤く染まったスタジアムが熱狂に包まれた。これまで浦和の猛攻を決死のディフェンスで跳ね返していた横浜FCだったが、クリアしたボールが味方に当たってしまう。それを拾った永井がDFを1人かわし、これまで再三の好セーブを披露していた菅野の手をぶちぬく豪快なゴールを決め、ついに勝ち越しに成功した。そして勝ち越した後は攻撃をスローダウンさせ、時間を上手に使い、試合終了の笛を聞いた。

終わってみれば、ホームの浦和が勝ち点3を得るという大方の予想通りの結果となった。コンディション・連携にまだ不安は残るものの、記者会見でオジェック監督が語っていたように、調子は確実に上向いていると言っていいだろう。来週の水曜日に控えるACL緒戦に向けてまずまずのスタートを切った。一方横浜FCもJ2を制した底力を見せ、途中まで大方の予想を裏切る展開を作り出した。負けはしたものの、次節のホーム開幕戦、横浜F・マリノスとの横浜ダービーに向けて収穫のあった開幕戦となった。超満員の埼玉スタジアムで試合をするというある種の「拷問」を開幕戦で受けたことは、横浜FCにとって34分の1以上の価値があったのかもしれない。

posted by 犬太 |21:32 | Jリーグマッチコラム2007 | コメント(3) | トラックバック(5)
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