2006年12月16日

浦和レッズvsアビスパ福岡~「経営陣・フロントはゼロ査定」の横断幕~

そこに2週間前の面影はなかった。ゴール裏こそ浦和サポーターで隙間無く席が埋め尽くされていたが、少しカメラが引くと2階席には12月2日にはあった人文字によるチームエンブレムはなく、「SAITAMA」という文字が。もちろん、それはそこが空席であることを表している。

12月2日、ガンバ大阪との頂上決戦を制した浦和は、その後マスコミからの引っ張りだこに遭い、3日ほどオフをとったそうだ。加えて満身創痍の状態でプレーを続けていた闘莉王はこの試合に出場せずスタンドで戦況を見守り、また山岸、長谷部、三都主といった主力選手も体調不良によりスタメンを外れた。念願だったリーグ戦制覇を成し遂げ、燃え尽きた感もある中でモチベーションの維持が難しい所だが、モチベーションの拠り所としてはブッフバルト監督最後の大会であること、そして時期浦和監督に内定しているとも言われるオジェック氏がこの試合を観戦する、という2点だろうか。

一方福岡は先週の土曜日に入れ替え戦でのJ2降格という「生き地獄」を見た。川勝監督は辞任し、監督代行として沖野コーチがこの試合の指揮を執ることとなった。水谷、アレックス、布部といった主力選手は出場せず、神山、城後、田中らをスタメンで起用し、入れ替え戦の時からスタメンを実に7人も入れ替えて浦和に挑んだ。

この試合に先駆けて、私が最も目に付いたもの、それは決して数は多く無いが熱心に埼玉まで駆けつけた福岡サポーターの横断幕である。曰く「経営陣・フロントはゼロ査定」なるほど、と思ってしまう横断幕だった。シーズン前からエースストライカーの不在が懸念されていたにも係わらず大した補強をせずに臨んだ今シーズン、案の定福岡はここぞという場面で点を取れずに、終わってみれば得点数は18チーム中ワーストの32点。最多得点が薮田の5点という体たらくだった。その矛先が選手以前にチームの根源であるフロントにいくことも無理は無い。

このように両チームともに様々な背景が渦巻く中で始まったこの試合、立ち上がりから浦和がペースを握る。久しぶりの先発出場となった小野を起点に圧倒的なボールポゼッションで福岡ゴールに迫る。しかし、フィニッシュの部分での連携を欠き、どうしても良い形でのシュートが打てない。対する福岡は戦術としては、ボールを取ったら縦へ速く展開し、フィニッシュまで持っていく非常に分かりやすい「カウンター」。入れ替え戦でも左サイドから再三に渡ってクロスを上げ続けた古賀にボールを集め、そこからチャンスをうかがう。そして北京世代でもある若い田中が常に3バックの裏を狙う。やることは至ってシンプルではあったが、試合を通じて非常に有効な手段となった。

試合は次第に福岡ペースになっていくが、それでも個の能力で福岡を凌駕する浦和は23分、山田が左サイドを突破すると、ワシントンへ絶妙なクロス。これをワシントンが合わせるが、これは神山が左手1本でボールをかきだした。

すると今度は福岡にチャンスが訪れる。26分、小野が中盤でボールを失うと、宮本から田中、宮崎へとつなぎ、最後は流れの中で上がっていた宮本へ。しかし、このシュートは都築の手の中に収まった。この時間帯になると、大方の予想に反して福岡が試合の主導権を握り、ワンチャンスをモノにしたいチームは福岡から浦和になっていた。

浦和のチャンスが訪れたのは前半半ばだった。ワシントンが抜け出してシュートを放つと、ポンテもミドルシュートを放っていく。しかし、いずれも神山の好守の前に阻まれる。負けじと福岡も古賀があわやのミドルシュートを放つが今度は都築が好セーブを見せる。「圧倒的浦和有利」の下馬評を覆し、互角の攻防が繰り広げられた前半だった。さらに前半終了時には、Jリーグ王者とは思えないふがいない戦いぶりに、浦和サポーターからはブーイングが飛んでいた。

後半に入り、なおも一進一退の攻防は続く。後半開始直後に古賀が裏に抜け、ニアへ走り込んできた田中にラストパスを送るが、この決定的なチャンスを田中が決められない。今度は浦和が鈴木のフィードに山田が飛び出し、GKと1対1に。しかし山田はシュートを打たず、ワシントンに預け結局DFに阻まれてしまう。前半にもシュートチャンスにシュートを打たずにブッフバルト監督に怒鳴りつけられていたように、この日の山田はシュートを打っていく積極性が足りなかった。

時間が経つにつれ運動量が落ち、マークがルーズになってきた浦和に対して、福岡は幾度と無く決定機を作る。後半26分、27分と古賀が立て続けにGKと1対1になるというビッグチャンスを得るが、26分のシュートはクロスバーを越え、27分のシュートは坪井にブロックされ、チャンスを形に変えることが出来ない。そのツケは目に見えて落ちた運動量という形で現れ、逆に浦和は長谷部、永井といったジョーカーを切り、試合の流れを再び掌握していく。

いつ点が入ってもおかしくないような状況に陥った福岡だったが、最後の砦として神山が立ちはだかった。小野のヘッドを間一髪の所で防いだかと思えば、長谷部のシュートにも反応する。少なくとも、前後半通じて2点は確実に防いでいた。また、立ちはだかったのは神山だけではなかった。ワシントンのマークという大仕事を任された川島は90分通してその役割を完璧に遂行し、宮本、千代反田も足を釣らせながら決死のディフェンスを見せる。ホーム・博多の森で浦和を迎えた時にはロスタイムに痛恨の失点を喫した福岡だったが、この日は90分間の中で1度たりともゴールを割らせなかった。

そして試合は延長戦へ。1週間前に入れ替え戦を戦い、この試合では120分を戦うという極限の状態に差し掛かった福岡と、モチベーションの維持に苦労し、この試合までのコンディショニングにも苦労したとはいえ、2週間の休みがあった浦和。今思えば、延長戦に突入した時点で勝敗は決していたのかもしれない。延長前半立ち上がりにも、CKから坪井のヘッドに反応しまさに神がかり的なセーブを見せた神山だったが、その直後のポンテのシュートは防ぐことが出来なかった。

ついに試合の均衡が破れると、後は浦和の独壇場に。特に永井は再三に渡って右サイドを切り裂き、ワシントンのゴールの起点になると、自らもゴールを挙げるなどの大活躍を見せた。福岡も川島、田中があわやというシュートを放つが、1点が遠く、今シーズン最後の試合でも今シーズンの悪い意味での福岡らしさが顔を覗かせてしまった。

終わってみれば3-0とスコアだけ見れば浦和の完勝だったが、内容は両チームともに互角だった。ただ内容が互角でも点を取って勝つことが出来るのが浦和であり、点を取れずに負けてしまうのが福岡だった。そういった意味でこの結果は、当然の結末とも言える。

だが、既にチームを去ることが決まっている選手がいる中で見せた福岡の戦いぶりは、賞賛に値するものだった。長丁場のJ2を勝ち抜くことは容易なことではないが、今日のような戦いぶりが出来れば、1年でのJ1復帰も不可能ではないだろう。そのためにも、福岡サポーターの声=「経営陣・フロントはゼロ査定」という言葉の意味を今1度噛み締めてもらいたいと思う。

posted by 犬太 |16:21 | 天皇杯コラム | コメント(5) | トラックバック(2)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

トラックバックURL
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/jleagecolumn/tb_ping/71
この記事に対するトラックバック一覧
天皇杯 浦和vs福岡 【O塚政晴と愉快な仲間達】

天皇杯5回戦。 J1優勝の浦和とJ2への降格が決まった福岡の1戦。 浦和は闘莉王、三都主、山岸を温存(というかノロウイルス?)し、長谷部はベンチ。 それでも強力なスタメン。 小野伸二は久しぶりの先発出場。 長谷部に替わりボランチに入る。 楽しみだけど90分プレーできるのか? 福岡、予想以上に頑張る。 レッズはクロスの質が悪く前半無得点。 やっぱり小野伸二の華麗なボールコントロールは観ていて楽しい。 でもまだ本調子で...

2006-12-16 22:14 | 続きを読む
天皇杯 浦和レッズ対アビスパ福岡 【あちこちペンギン】

体調絶不調ヘロヘロリンだけど、 スケジュールが調整つかない場合 今シーズン最後の試合になってしまうので 這う様にして駆けつけた、 浦和レッズ vs アビスパ福岡 の試合 福岡はJ1落ちが確定しているし、 入れ替え戦で微妙な判定があり納得出来ない選手が 審判の部屋を蹴飛ばしたとかで 2試合出場停止処分を受けていたりして 鬱憤が溜まっているチーム 決して侮ってはなりませぬ しかーし、この観客の少なさはなにぃ!? 前回の優勝決定戦は満杯だったのに幻の様 あんまり赤くない 観客総数20,0...

2006-12-19 11:18 | 続きを読む
この記事に対するコメント一覧
Re:浦和レッズvsアビスパ福岡~「経営陣・フロントはゼロ査定」の横断幕~

お邪魔します
福岡惜しかったですね・・。
本当にフロントの責任でもありますね・・。
まぁ、特に今シーズン福岡で目を引いた選手と言えば、古賀と田中佑昌でしょう。(やはり)

古賀は良いですね。スピードもあるし、クロスの精度もあり、切れ込んでシュートも撃てる。
今日の試合でも、決めるべきところはあったかもしれませんが、ほとんどのチャンスが古賀の左サイドからでした。

田中佑昌はU-21日本代表候補ですけど、古賀と同じくスピードがありますね。
今日の試合で、坪井を振り切って左足で放ったシュートは、惜しくも枠をそれましたが、それなりに可能性を感じさせました。

余談といえば余談ですが、今日思ったんですけど、古賀って誰かに似てると思ったら、イタリア代表の「リンギオ」の愛称で知られてる選手にソックリですね笑)

posted by 中坊 | 2006-12-16 19:46

Re:浦和レッズvsアビスパ福岡~「経営陣・フロントはゼロ査定」の横断幕~

まぁレッズはやる気なかったね^^

それでも勝てなかった福岡…
決定機の時にパスがあれだけ酷いと
試合にならん。。
J2でもう一回、自分達のサッカーを確立し
J1にあがってきて欲しい。
ガンバ!!

posted by poi | 2006-12-16 20:11

Re:浦和レッズvsアビスパ福岡~「経営陣・フロントはゼロ査定」の横断幕~

中坊さん>
個人的に田中にはかなり期待しています。なんかマリノスの坂田を思い起こさせるんですよね。あと古賀についてですが確かに似てますね(笑)あと私的には現在来日中のデコにも似ているような気が・・・

poiさん>
確かに今のラストパスの精度ではよっぽどいいFWがいない限り点を取ることは難しいですよね。中村、城後、田中、柳楽といい若手が多く在籍しているだけにJ2で自分達のスタイルを確立してもらいたいものですね。

posted by 犬太 | 2006-12-17 00:59

Re:浦和レッズvsアビスパ福岡~「経営陣・フロントはゼロ査定」の横断幕~

 犬太さん、どうも初めまして。
福岡ファンでも神戸ファンでもない私ですが、12/9に博多で入替え戦を見てきた者です。
その時のマッチレポを現在、書いているのですが、どうも出来が悪く、最悪です。
 犬太さんのこの福岡-浦和戦の文章は臨場感が溢れていて、引き込まれものがあります。
いつか、Jリーグのどこかのスタジアムの何かの試合でお会いしたいと思っています。
時間がありましたら、私のブログページもチェックして頂けると幸いです。

posted by FOOTBALL NEEDS YOU | 2006-12-22 13:07

Re:浦和レッズvsアビスパ福岡~「経営陣・フロントはゼロ査定」の横断幕~

柏サポです。

>「経営陣・フロントはゼロ査定」の横断幕

福岡サポのその気持ち、痛いほどわかります。1年前、自分もまったく同じ気持ちでした。

あれから1年、チームを一から立て直すことは困難を極めました。

フロントはもちろん、選手・スタッフも、そしてサポも意識改革して今シーズンに臨んだことが、結果につながったのだと思っています。

でも、柏の場合たまたま結果につながったのであって、結果については運不運に左右されることもあるでしょう。

福岡もJ2での過酷な試練に負けず、J1に復帰することを願っています。

posted by 彩の国なTX | 2006-12-23 23:27

コメントする