2006年12月02日

浦和レッズの赤は、何色にも染まらない。

試合前、ピッチに向かう前に選手達が敵味方隔てなく談笑している様子が映し出される。「不仲説」も流れたマグノ・アウベスがワシントンに歩み寄り、一言二言とワシントンに声をかける。それにワシントンが笑顔で返す。どれだけ重要な試合であろうが、試合前は敵チームとはいえ1人の大事な「アミーゴ」だ。このシーンは、それを見事に描写していた。今後は、大事な試合に限らずこういったシーンを映し出してもらいたいものである。

スタジアムは、ほとんどが赤に染まっていた。さらにバックスタンドには人文字による浦和のチームエンブレムが見事に完成されていた。その美しさは、2ndステージ優勝を決める試合での駒場の紙吹雪にも匹敵するものだった。対するガンバも負けていない。12月の寒い気候もお構いなしで、一部サポーターが上半身裸になり自らに気合を入れ、選手を鼓舞する。サポーターの準備は整った。後は、ピッチ上で選手が躍動するだけだ──

主力が復帰してくるということで注目された両チームのスタメンだったが、ガンバは前節からの変更点はFWに播戸が復帰してきたことだけで、坪井の復帰が期待された浦和のスタメンは、前節から全く変更点がなかった。そして14時4分、上川主審が試合開始を告げるホイッスルを鳴らした。

3点を取らなければ優勝の可能性が無くなるガンバだが、先に大きなチャンスを得たのは浦和だった。5分、三都主が蹴った右からのFKを山田が後方に流し、フリーのワシントンがヘッド。完全に枠に行っていたが、GK松代が鋭く反応し、スーパーセーブで窮地を救った。

攻撃の形を作りたいガンバは、本来のパスサッカーが徐々にではあるが機能し出し、チャンスを作りつつあった。だが家長のクロスに播戸が合わせ切れないなど、どうしてもゴールが遠い。しかし21分、一瞬の隙からガンバがどうしても欲しかった先制点を取る。橋本のパスにキレのあるターンでディフェンス2人を振り切った播戸が折り返すと、詰めていたマグノ・アウベスがかかとで技ありのゴールを決めた。これであと2点。時間もまだたっぷり残っていることから、土壇場での逆転優勝が現実味を帯びてきた。

だが、浦和は落ち着いていた。若干押され気味になる時間帯もあったが、前節のFC東京戦と明らかに違っていたのが、前でボールを奪って攻撃につなげる意識だった。ネネが2度に渡ってガンバの攻撃をカットしたかと思えば、警告にこそなったが鈴木は積極的に前に出て敵陣でボールを奪おうとした。ワシントン、ポンテ、山田といった前線の選手のディフェンス意識も高く、ボールをなかなか前に出せないガンバが後方でボールを回しているシーンも度々あった。

そしてその高い守備意識は、浦和の同点ゴールの呼び水となった。27分、ボールを奪った浦和はカウンターを仕掛け、ワシントンにボールを預けると、ワシントンがスペースを走るポンテにスルーパス。カバーに入ったシジクレイをかわすと、そのままゴールへ一直線。最後は落ち着いて逆サイドに流し込んだ。これで1-1。浦和にとっては非常に大きい、ガンバにとっては優勝の可能性が遠のく手痛い失点だった。

その後は、一進一退の攻防が続く。41分に最終ラインからスルスルと上がった内舘がミドルシュートを放つと、終盤にはガンバがセットプレーから猛攻を仕掛ける。4本続いたガンバのCKの3本目には宮本がフリーでヘディングするが、GK山岸が好セーブを見せた。残り時間も少なくなったことで、試合はこのまま1-1で後半に突入するかと思われた。だが、前半終了間際にスコアが動いた。

スコアを動かしたのは、ワシントンだった。鈴木からのスルーパスを受けたポンテがディフェンス2人を引きつけ中央に折り返すと、そこにワシントンが詰めていた。これで2-1。浦和は3点取られても優勝という絶対優位を作り、ガンバは4点取らなければ優勝できないという絶望的な状況に陥った。

後半に向けて、選手交代は両チーム共になかった。遠藤の投入が注目されたガンバだったが、結局前半と同じメンバーで後半に臨むこととなった。そして今シーズンの34試合の合計3060分の中で両チームにとって最も重要な45分が始まった──

点を取るより他ないガンバは、立ち上がりから前へ前へとボールを運んでいく。その代償として後方から一気に前線に当てるロングボールの回数が増え、パスサッカーの色が薄まりつつあったが、48分にはロングフィードに抜け出した播戸がシュートを放つなど、とにかくシュートまで持っていきたいという意図がはっきりとしていた。そして54分、パスサッカーの心臓とも言える遠藤が投入された。コンディションが万全ではないのは百も承知だが、西野監督は比較的早い時間帯で遠藤というこの試合最高のジョーカーを起用した。

だがここでガンバにアクシデントが発生してしまう。ガンバのディフェンスラインを支えていたシジクレイが負傷退場してしまったのだ。これによりガンバは一時的に10人での戦いを余儀なくされた。

浦和はその隙を見逃さなかった。CKを得た浦和はマーキングの確認に躍起になっているガンバを尻目にショートコーナーを選択。三都主がファーの闘莉王めがけて絶妙のボールを上げると、闘莉王がヘッドで中に折り返し、最後はワシントンが頭で流し込んだ。これで3-1。この時点で浦和の優勝はほぼ確定したといっても過言ではなかった。

なんとか1点でも多く返したいガンバだが、そこにリーグ最小失点を誇る浦和の鉄壁のディフェンスが立ちはだかった。満身創痍の闘莉王がクロスをことごとく跳ね返せば、鈴木、長谷部のダブルボランチが中盤で攻撃の芽を摘んでいく。そしてこの試合の2ゴールで得点ランクトップに立ったワシントンまでもが自陣まで戻ってボールを奪うなど、個々のディフェンスの意識が素晴らしかった。78分にキャプテン・山口がCKから意地のゴールを決めるが、このゴールも焼け石に水だった。

試合は3-2のままロスタイムに入り、プレーが止まったところで長いホイッスルが吹かれた。Jリーグ創成期、「Jリーグのお荷物」と揶揄されていた浦和レッズが、クラブ創設以来初となるリーグ制覇を成し遂げた。Jリーグ元年に最下位、さらにはJ2降格と苦難の時代を乗り越えてきた浦和レッズの赤は、何色にも染まらなかった。

posted by 犬太 |16:42 | Jリーグマッチコラム | コメント(2) | トラックバック(3)
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この記事に対するコメント一覧
Re:浦和レッズの赤は、何色にも染まらない。

 こんにちは。あきら@です。またお邪魔します。

 昨日はレッズ公式ショップ「レッドボルテージ」にて観戦していました。叫び倒していたら、のどが痛い・・・。

 ああ、ついにこの日が来ました。J草創期は「浦和銀行」「Jリーグのお荷物」「サッカーの阪神(阪神は、今や強豪ですね)」と称されてきたチーム。

 当時中学生だった私は、この日の到来を望みながらも、永遠に来ないかもしれない、と悲嘆にくれていました。

 時は過ぎ、ここ数年は優勝争いに絡むチームに。でもまだ何かが足りなくて、今年やっと、優勝に値するチームになった気がします。

 チームとして、終始機能していたわけではありません(そこはG大阪や川崎のほうが上かも)。最終的には個人任せになってしまった試合も多かったです。

 でも連敗しなかったこと、ホーム無敗だったことなどが、リーグ戦を進めるうえでの根幹ですから、それができたのは本当の強さだと思っています。

 さて、今季。天皇杯も残っています。来季、アジア王者への挑戦権もあります。あれだけの選手層、決して「昨日まで」のために構成した選手たちではないはずです。
 
 浦和サポが望むもの、まだまだあります。選手の皆さんも絶えず「僕たちは、サポーターの力で生計を立てられる」と口にしています。いつもサポーターを忘れない選手の皆さん、次に描いていることは、サポーターの望みと共鳴していることでしょう。

posted by あきら@ | 2006-12-03 11:19

Re:浦和レッズの赤は、何色にも染まらない。

あきら@さん、毎度コメントありがとうございます。
確かに個の力に依存しすぎているという声もありましたが、昨年のガンバにしても今年のJ2横浜FCにしてもそうですが、優勝するチームは他に負けないストロングポイントをもっていますよね。
レッズのストロングポイントは守備以上にサポーターの後押しだったと思っていますあきら@さんのようなサポーターの存在が選手のモチベーションへとつながり、ホーム無敗という結果につながったのだと思います。

posted by 犬太 | 2006-12-03 11:43

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