2007年03月03日
浦和レッズvs横浜FC~「34分の1」がもたらしたもの。~
間違いなく、久保の表情から笑顔がこぼれていた。初のJ1の舞台で緊張の面持ちの横浜FCの選手の中にあって、その光景は「異様」とも言えた。 「異様」だったのは、スタジアムの雰囲気もまた同じだ。昨シーズンの優勝決定戦の時とはまた違った雰囲気。何かサポーターが今週から始まる8ヶ月間の長い戦いを目にすることが出来るという幸福感に酔いしれているようだった。そしてテレビ越しでもはっきりと伝わる大声援。声援というよりも、むしろ地響きという言葉の方が適切な気がする。 そんな雰囲気の中、ただでさえアウェーで浦和と対戦することは苦しい戦いを意味するが──J1緒戦がそのケースに該当し、しかもそれが開幕戦であるというのは横浜FCにとって厳しい船出と言える。この試合で高木監督が執った戦術は、久保を前線に残して他全員が守備的に振る舞い、カウンターから隙あらば得点を狙うというものだった。今シーズンの大前提が「残留」であり、昨年のチャンピオンチームと戦う以上、懸命な判断である。 横浜FCが守備的な戦いをするとなると、必然的に攻める時間帯が多くなるのは浦和だ。だが、山田のFKや相馬の個人技での突破など随所に光るプレーは見せるものの、やはり個人頼みになってしまうことが多く、意図的な崩しがほとんど見られなかった。それでも25分、ようやく先制点を挙げる。ワシントンに入ったくさびのボールにワシントンがワンタッチでポンテへ流すと、中に折り返したボールが横浜FCのオウンゴールを誘った。 これで勢いに乗りたい浦和だったが、その勢いを止めたのは久保の左足だった。44分、右サイドでボールを受けると中へ切れ込み、30m以上離れている距離からシュートを放つと、そのボールは浦和のゴールネットを揺さぶった。それはまるで解き放たれた矢の如く──ゴール後、これまでに見せたことのない表情で喜びを表現する久保の姿は怪我に苦しみ、ワールドカップの日本代表から漏れた昨年からは想像のつかないものだった。まさにドラゴンが解き放たれた瞬間だった。 久保のゴールは、浦和の勢いを殺ぐだけでなく、浦和の戦略に狂いを生じさせた。1点リードして折り返せばゲームプランもまた違ったものになったはずだが、ホームで勝ち点3を得ることは必須条件であるだけに、後半も攻めにより重点をおくこととなった。後半に入っても浦和の攻撃に相変わらず厚みを感じず、何度かあったサイドからの攻撃も永井、相馬が個人の力で突破したものであり、中央に3人、4人と入ってくるシーンもほとんどなかった。 では横浜FCに勝ち越しのチャンスがあったのかと言うと、答えは「ノー」である。前半からほとんど守りっぱなしで、守備時に数的優位を作るために所狭しと動き回ったディフェンス陣(特に中盤)に、攻めに転じる体力はほとんど残っていなかった。前半以上に久保が前線で孤立する場面が増え、いくら久保と言えども阿部、坪井というリーグ屈指のディフェンス能力を持った2人を相手にすることは困難な作業だった。 この展開では横浜FCとしては勝ち点を取れれば御の字だ。しかし85分、赤く染まったスタジアムが熱狂に包まれた。これまで浦和の猛攻を決死のディフェンスで跳ね返していた横浜FCだったが、クリアしたボールが味方に当たってしまう。それを拾った永井がDFを1人かわし、これまで再三の好セーブを披露していた菅野の手をぶちぬく豪快なゴールを決め、ついに勝ち越しに成功した。そして勝ち越した後は攻撃をスローダウンさせ、時間を上手に使い、試合終了の笛を聞いた。 終わってみれば、ホームの浦和が勝ち点3を得るという大方の予想通りの結果となった。コンディション・連携にまだ不安は残るものの、記者会見でオジェック監督が語っていたように、調子は確実に上向いていると言っていいだろう。来週の水曜日に控えるACL緒戦に向けてまずまずのスタートを切った。一方横浜FCもJ2を制した底力を見せ、途中まで大方の予想を裏切る展開を作り出した。負けはしたものの、次節のホーム開幕戦、横浜F・マリノスとの横浜ダービーに向けて収穫のあった開幕戦となった。超満員の埼玉スタジアムで試合をするというある種の「拷問」を開幕戦で受けたことは、横浜FCにとって34分の1以上の価値があったのかもしれない。
posted by 犬太 |21:32 |
Jリーグマッチコラム2007 |
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この記事に対するコメント一覧
Re:浦和レッズvs横浜FC~「34分の1」がもたらしたもの。~
こんにちは、あきら@です。今シーズンも始まりましたね。2007シーズンも、よろしくお願いします。
久しぶりの白星発進だったレッズでした。「立ち上がりが悪いレッズ」という癖を考えれば、内容不満、結果は満足といったところでしょうか。
あのドラゴンシュートは仕方ないとしても、攻撃面。次々にレッズボールが水色の網にかけられていましたね。ポゼッションサッカーを目指すものの、ブツ切りのポゼッションでした。
高木監督、「引き分けでもいい」との話でしたが、そういう相手の望みどおりにさせないことが浦和の課題でしょうね。
逆に横浜FC。負けたとはいえ、確かに手ごたえは感じられた試合だったでしょうね。「最後」の怖さを知っている監督・選手。今日の試合を若手に説いたことでしょう。手ごたえのあった試合だったでしょうね。
ともあれ、シーズン開幕。今シーズンもまた、楽しみですね。
posted by あきら@ | 2007-03-04 10:16
Re:浦和レッズvs横浜FC~「34分の1」がもたらしたもの。~
こんにちは。
開幕直後は、楽な試合はできないってことでしょうね。
レッズばかりでなく、ガンバも大苦戦でしたから。
どんなに選手層が厚くても11人しか出られないのですから。
選手層の違いはシーズンを通して出てくるということでしょう。
3戦2勝なら十分優勝争いなので、現状のやりくりの中でも連敗しないことが重要です。
posted by ゲッチュー | 2007-03-04 12:39
Re:浦和レッズvs横浜FC~「34分の1」がもたらしたもの。~
あきら@さん>
時間の許す限り記事を書いていこうと思うので今シーズンもご愛読の程よろしくお願いします!浦和のリアクションからポゼッションへの変革はリスクを伴うことは確かですよね。FC東京は昨年それでつまづきましたからね。ただ自力があるチームなので戦術が浸透したら手がつけられなくなる可能性もありますよね。
ゲッチューさん>
ホームでやる限り勝ち点を得れない試合は滅多にないと思うので連敗の可能性は低そうですよね。ただアウェーで相手のスタイルを実行されたときにどうでるかですよね。特に東海地区には昨年全敗ですから。
posted by 犬太 | 2007-03-04 23:31


