2011年07月16日

逃げ切り失敗は見たくないよ。

 なでしこジャパンが決勝の舞台にたどりついたわけだが、戦いぶりを見ていて気になることがある。
 どうやらこのチームには、試合をクローズするパターンがない――。


 クローザーがいないわけではない。たとえば宇津木瑠美。高い守備力と正確な左足が武器のアンカータイプのボランチで、168cmの高さもある。試合終盤にアタッカーを1枚下げて中盤の底に入れれば、澤穂希や阪口夢穂の負担はグッと減るだろう。あるいは矢野喬子。最終ラインの全ポジションに対応可能で、ビルドアップ能力が非常に高い。横パスやバックパスがどうも危なっかしいサイドバック(近賀ゆかり、鮫島彩)の片方を下げて――あるいは1列上げて――ピッチに送りこめば、ゲームのテンションをいい意味で落とすことができる。


 だが、佐々木則夫監督は彼女たちをあまり使わない。宇津木は終了間際の数分間の出場が2回あるだけ、矢野に至ってはプレータイムなしだ。メキシコ戦やスウェーデン戦は、試合をクローズする格好の練習の機会だったと思うが、前線の選手や出場機会のない選手を試すために交代枠が使われ、①宇津木を入れて4-1-4-1→②矢野を入れて最終ラインの堅実性up→③トップに丸山桂里奈を入れて攻守に走らせる――といった選手交代はなかった。


 近年の日本代表――男子や世代別代表も含め――は、どうも大事な試合で逃げ切りに失敗するイメージがある。
 たとえば2006年ドイツW杯のグループリーグ初戦。豪州相手に1点をリードして終盤を迎えるも、柳沢敦を下げて小野伸二を入れたあたりから歯車が狂い始め、最終的に1-3で負けた。
 あるいは2007年、調子乗り世代のワールドユース。決勝T1回戦のチェコ戦で、2点のリードを追い付かれて最後はPK戦で散った。
 もしくはその年の秋の五輪予選。「引き分けでもOK」のカタール戦で、1-0から1-1に追いつかれた後にピッチ内での意思統一(勝ちに行くのか、まずは失点しないことを優先するのか)が取れなくなる。柏木陽介を上田康太に代えて試合を落ち着かせようとするも、終了間際にPKで逆転され、勝ち点を得られず。
 2010年の南アW杯初戦(カメルーン戦)も危なかった。守備的FWとして23人枠に滑り込んだ矢野貴章が終盤に右ウイングに投入されたが、闘志が空回りしたかアス=エコトをきちんと抑えられない。結果的に逃げ切ったが、個人的には大久保嘉人の守備のほうがツボを押さえていた気がした。
 そういえば2011年のアジア杯の韓国戦でも、5バックでの逃げ切りに失敗している。そして、これらの失敗の大半は、「必殺パターンが崩れた」のではなく「そんなの練習してなかったよ」なのだ。


 たとえばアメリカ戦で、1-0で終盤を迎えたとき、佐々木監督はどのような選手交代を行なうのだろうか。これまで通り、アタッカー4人のうち効いていない選手から代えていくのだろうか…。

 

posted by Pooh |00:42 | 女子サッカー | コメント(0) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2009年02月14日

inside-out

 “シャツを裏表逆さまに着る”などの際に用いる“逆さま”を、英語では“inside-out”と表現する。

 13日(金)、日テレ所属の日本代表FW荒川恵理子が米プロリーグのベイエリアに移籍することが発表された。日テレは昨季のなでしこリーグを2位に勝ち点差8をつける独走で制し、年度末の全日本女子選手権でも優勝した。お茶の間でもお馴染みのMF澤穂希や荒川らタレントを多く抱え、北京五輪でわずか18人の本戦メンバーに入ったDF近賀ゆかりや同宇津木瑠美がスタメンからしばしば外れるほど選手層は厚い。

 だが、その選手層の厚さはアウトサイドに限った話だ。ベレーザは4-2-3-1(4-4-1-1気味)を基本線としているが、左右に2枠ずつ・計4枠のアウトサイドには、代表クラスの近賀ゆかり(右SB)、宇津木瑠美(左SB・SH)、小林弥生(右SH)、永里優季(左SH)に加え、20歳前後の成長株、原菜摘子(右SH)、永里亜紗乃(左右SB・SH)、南山千明(左右SB・SH)がスタンバイ。スタメンに起用されながらインパクトを欠くと翌節はベンチ外、といった激しい争いが繰り広げられている。

 一方、センターラインは不動の顔ぶれだった。ベテランGK小野寺歩(アテネ五輪代表)、DF岩清水梓(北京五輪代表)、同豊田奈夕葉(日本代表候補)がゴール前に強固な壁を築き、北京&アテネ代表のMF加藤與恵と澤が中盤を制圧する。争いらしき争いは、北京五輪代表FW大野忍の相方を荒川と15歳の天才FW岩渕真奈が競うくらい。万能戦士の豊田がストッパーに定着してからは、故障や出場停止がない限り、GKを含めた7つのセンターポジションは8人でカバーされていた。

 その8人から澤と荒川が米リーグに挑戦し、小野寺と加藤は引退する。また、ボランチの控えとして渋く活躍してきた四方菜穂、伊藤香菜子もそれぞれ引退、退団が決まっており、アウトサイドの充実ぶりとは対照的にスタートのメンバーさえおぼつかない状況だ。優秀な下部組織から岩渕のようなシンデレラガールが昇格してくる可能性もあり、解散したTASAKIの阪口夢穂や山本絵美ら実力派MFの加入があるいはあるのかもしれない。しかし、このままでは(いくらサイドの時代だといえども)サイドが供給過多で肝心のインサイドが人材難という、inside-outな陣容で開幕を迎えることになる。

posted by Pooh |09:18 | 女子サッカー | コメント(0) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2008年12月27日

マジック2 その②

 12月23日に行われたサッカー・全日本女子選手権の準々決勝で、今季限りでの休部が決まっているTASAKIが浦和を1-0で下し、4強に進出した。


 北京五輪代表のMF柳田美幸、同安藤梢、DF矢野喬子を擁する強豪に対し、前半25分にMF大石沙弥香のゴールで先制。この虎の子の1点を死守し、準決勝進出を決めた。


 今季のプレナスなでしこリーグでは4位に終わったTASAKIだが、個々の能力は決して低くない。アテネ五輪代表FW大谷未央、北京五輪代表MF阪口夢穂、両大会代表DF池田浩美がセンターラインを固め、アテネ五輪代表DF下小鶴綾、MF山本絵美もまだまだ健在だ。サイドバックからウイングまで左サイドを幅広くカバーする主将のDF佐野弘子、崩しにもフィニッシュにも貢献できる大石、中盤の職人・MF中岡麻衣子ら脇役も実力十分。やや選手層が薄いが、ベストメンバーが揃えば王者・日テレともがっぷり四つに組む力がある。


 あす28日の準決勝の相手、INACには今季のリーグ戦で1勝2敗と負け越している。とりわけ4月29日の第4節では3-7の大敗を喫しているだけに、リベンジの思いは強いだろう。前線からの連動したプレスでボールを奪うと、米津美和・プレチーニャ・鈴木智子の強力3トップと北京五輪代表MF原歩がゴールに向かってくるINAC。その攻撃力は脅威だが、池田と下小鶴を中心に必死の守りを見せたいところだ。


 休部するチームの最後を飾るためにも、就職活動(他チームへの売りこみ)のためにも、優勝は夢ではなく現実的目標。元旦の国立でカップを掲げるまで、あと2勝だ。

posted by Pooh |11:22 | 女子サッカー | コメント(0) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2008年09月21日

 9/21(日)、夢の島競技場で「プレナスなでしこリーグ」第14節、日テレ・ベレーザ-TASAKIペルーレの一戦が行われた。首位を走るベレーザが怒涛のゴールラッシュを見せ、5-0で快勝。リーグ4連覇へ向けて、また一歩前進した。



 雨が降りしきるピッチに、ベレーザの選手が登場する。MF澤穂希をはじめ、FW大野忍、DF近賀ゆかりら北京五輪で活躍した顔ぶれがズラリと並ぶ。その中に、お姉さんたちのボール遊びに混ぜてもらった腕白坊主のような選手が、ひとり。


 少年のような少女の名は、岩渕真奈。ベレーザの下部組織であるメニーナに籍を置く、15歳のFWである。身長は153cm。小柄な選手はつい姿を見失ってしまうものだが、あまりに小さいので逆に目立つ。負けん気の強そうなキリッとした顔立ちは、失礼ながら、浦和レッズの日本代表FW田中達也にそっくりだ。


 岩渕のポジションは、田中が先日の代表戦で務めあげた4-2-3-1システムのトップ下。中盤に下がってボールを受け、ターンして前を向き、サイドにボールを出し、ゴール前に詰める。この難易度の高い一連の作業を、弱冠15歳のファンタジスタはいとも簡単にやってのける。MFともFWともつかない難しいポジションだが、彼女にとっては組み立てにもフィニッシュにも絡める楽しいポジションか。


 称賛すべき点は多々あるが、特に素晴らしいのはボールの受け方だ。パスをもらう前に首を四方に振り、どの方角に広いスペースがあるかを確認したうえで、そちらに進みやすいようにボールをトラップする。広いスペースがある方にボールを置くため、ターンした後の加速は非常にスムーズ。また、パスを受ける前に状況を把握しているため、その後のプレー選択も正確かつ迅速だ。


 濡れたピッチとプレスの応酬により、ベテラン選手もボールのコントロールに苦しむなかで、岩渕はヒールパスやダイレクトボレー、ループシュートなどを次々と披露する。前半20分に先制点を決めると完全に“ノリ”始め、4-0の後半18分にお役御免となるまで、澤や大野の存在感がかすむほどの輝きを放ち続けた。


 ベンチへと退く岩渕には、TASAKIサポーターからも惜しみのない大きな拍手が送られた。灰色の雲に覆われた空から光が射すことはとうとう最後までなかったが、サポーターは見たのだ。ピッチの上に、鮮やかな虹を。

posted by Pooh |23:49 | 女子サッカー | コメント(1) | トラックバック(1)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2008年07月14日

10番の輝き

 後半開始を告げる笛が鳴った直後だった。岡山湯郷BelleのMF宮間あやが、センターサークル付近でボールを受ける。反時計まわりにターンして前を向くと、日テレベレーザのMF澤穂希、DF中地舞をひらりとかわし、右足を振りぬく。男子顔負けの弾丸ミドルがゴールに突き刺さり、試合は一瞬にして振り出しに戻った。

 その直後、ベレーザが決定機を迎える。FW荒川恵理子がボンバーヘッドを振り乱しながら左サイドをドリブル突破。ゴール前には右サイドハーフのMF小林弥生が詰めているが、荒川はマイナス方向のクロスを選択する。ボランチの位置から走りこんできた澤がこれに合わせ、ベレーザが再びリードを奪った。

 7/13(日)、西が丘サッカー場で行われた「プレナスなでしこリーグ」第11節、ベレーザ-湯郷Belleの一戦。両チームの背番号10が、強烈な輝きを放った。

 湯郷Belleの10番は宮間。ダイヤモンド型の中盤の頂点に位置し、攻撃の全権を掌握する。常に2、3人のマークがつくが、まったくお構いなし。密集の頭をふわりと越すパスが味方選手にピンポイントで届く。左右両足ともに高い精度を誇り、わずかな時間とスペースで決定的な仕事をやってのける。彼女がボールを持った瞬間、危険な香りがピッチには漂う。

 一方、ベレーザの10番は女子サッカー界の顔、澤。宮間に比べると、そのプレースタイルはいくぶん硬質だ。4-2-3-1システムのセンターハーフに入り、ピッチの中央に君臨。DFラインの前で守備に奔走し、最前線でフィニッシュに絡む。宮間がオランダ代表のウェズレイ・スナイデルなら、こちらはドイツ代表のミヒャエル・バラックか。

 試合はこの後、両チームが1点ずつを重ね、3-2でベレーザが勝利を収める。宮間は2得点ともに絡み、それ以外の場面でも幾度となく決定機を演出した。澤は豊富な運動量でピッチのいたるところに登場。若手選手に声を掛け、監督の指示を伝えるなどリーダーとしての役割もまっとうした。

 プレナスなでしこリーグは、この第11節をもって一時中断。2人はなでしこJAPANの一員として五輪に出場する。異なる音色を持つナンバー10の、アンサンブルに注目だ。

posted by Pooh |10:01 | 女子サッカー | コメント(0) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加