2008年11月11日

13年ぶりの頂点へ

 第28回全日本実業団対抗女子駅伝が12月14日(日)に岐阜で行われる。89年から92年にかけて4連覇を達成し、95年にも大会を制したワコールが充実のラインナップで13年ぶりの優勝を目指す。



 89年から92年にかけて、4連覇の金字塔を打ち立てたワコール。だが近年は、福士加代子のゴボウ抜きばかりが目立ち、優勝争いに絡むことなく大会を終えていた。


 優勝に届かぬ最大の要因は選手層の薄さであった。


 日本長距離界のエースである福士、恵まれた体躯を持ち1500mからハーフマラソンまでをこなす野田頭美穂、美人ランナーとして人気のスピードスター・湯田友美、スタミナに自信を持つ風間友希、須磨学園高時代に都大路で2年連続区間賞の西山弥生、と5人目までは他チームと比べて見劣りしない。


 だが、全日本実業団対抗女子駅伝は6区間で構成される。1人足りないのだ。事実、一昨年も昨年も、6番手区間である4区で順位を落としている。また、選手層が薄いため、前述の5人は少々状態が悪くとも出走せざるを得ない。昨年の3区における風間の区間24位、05年の1区における西山の区間18位は、いずれも本調子なら考えられない順位である。

 
 しかし、今年はその選手層に不安がない。筑紫女学園高-順天堂大卒の稲富友香、立命館宇治-立命館大卒の樋口紀子というこの世代のトップランナー2人が入社し、1500mを得意とするスピードランナーの中條宏美(愛知淑徳高卒)も加入。“使える”選手が5人から8人に増え、ウィークポイントだった選手層は一気にストロングポイントとなった。


 11月3日に行われた淡路島女子駅伝で、ワコールは5年ぶりの優勝を飾る。1区で稲富が首位と5秒差の3位と好発進すると、最短2区で中條が快足を飛ばし首位奪取。最長3区で福士が区間新記録の快走を見せ独走態勢に入り、4区の樋口も区間賞で続く。5区の野田頭が準エース区間をのりきると、最後は湯田がチーム4つめの区間賞でダメを押した。福士、野田頭、湯田といったお馴染みの顔ぶれとフレッシュなルーキーの力が見事に融合。西山と風間を欠きながら、2位のダイハツに約1分、3位の天満屋に約2分半の大差をつけた。

 
 淡路島を制した自信を胸に乗り込む美濃路では、2つの長距離区間(3区と5区)をどう乗り切るかがポイントになる。一方に福士が入ることは間違いないが、他方を誰に任せるのか。2年連続で3区を走っている風間か、淡路島で5区を務めた野田頭か、あるいは稲富を抜擢するのか。スピード型の湯田、西山、中條、軽快なピッチを刻む樋口と短距離区間の駒には事欠かないだけに、長距離区間をうまくしのげば、95年以来13年ぶりの栄冠が見えてくる。

posted by jjc_skentaro |01:38 | 陸上競技 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2008年10月12日

ただ走るだけ だからおもしろい

 閑古鳥が鳴いている、という表現はこのような場合に用いるのだろう。

 
 10/8(日)、国立競技場へ陸上競技の関東学連秋季オープンを見に行った。出雲駅伝などのビッグイベントと時期が重なっているためだろう、名の知れた選手は見当たらず、関東インカレなどと比べると記録もぐっと落ちる。スタンドも、控え部員の姿ばかりで、一般の観客は数えるほどだ。

 
 ただ、顔ぶれが豪華かどうか、記録がハイレベルかどうかは、私にとってそれほど重要ではない。自己ベストなる、非常に分かりやすい己の限界。たとえレベルが低くとも、それに立ち向かう選手の姿が競技場にはある。観客席の上段からも手に取るように感じられる、荒い呼吸と鍛え上げられた筋肉の収縮。それを目にすることができれば、もう十分なのだ。

 
 ただ走るだけ、ただ投げるだけ、ただ跳ぶだけの、どこがおもしろいのかと問う人もいる。だが、スタンドに1日座っていると、ただ走ること、ただ投げること、ただ飛ぶことにこれほどの種類があるのかと驚くだろう。

 
 ピストルへの反応と直線的なスピードで勝負する100m。200mでは、それらに加えてコーナーワークも必要だ。400mはトップスピードのまま1分弱を走り続ける。800mになると、全身持久力や位置取りのうまさが要求される。そして、冷静なペース配分と一瞬の切り替えが求められる長距離種目。投てきや跳躍もまた然り。ハンマー、砲丸、やりと投げるものはいろいろとある。投げないのはサジだけだ。

 
 また、純粋に運動神経を競うからこそ、おもしろいのだ。金属バットの反発力で打ち損じがテキサスヒットになることもなければ、トスの乱れをアタッカーがカバーしてくれることもない。リレーにはわずかにチームプレーの香りが漂うが、さりとてエースが2人分走ってくれるわけではない。声援や風が多少の後押しにはなるが、基本的に自分の能力だけが頼みだ。一番にゴールした人間が、一番偉い。ごまかしなどはきかないため、選手は人一倍ストイックだ。

 


 24時間、気を張っているのは疲れるものであり、どこかで抜くことも大切だ。とはいえ、頑張らなければいけない時期があるのも、また事実。自分に活を入れたいときは、陸上を見に行こう。胸を打つ何かが、きっとあるはずだ。

posted by jjc_skentaro |16:35 | 陸上競技 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2008年05月24日

みんなは、ひとりのために。

 神宮球場で六大学野球の試合を見る予定だった。チケット売り場の手前で、今日の天気予報を思い出す。「午前中は曇り、昼からは雨、降水確率80%」。雨で濡れるのは構わないが、雨で試合が中止になるとチケット代がもったいない。どうせなら雨が降っても中止にならない競技をという消極的な理由で、来た道を少し引き返し、国立競技場に入った。


 陸上競技の関東インカレ・3日目の競技が行われていた。トラックでは女子10000m競歩が始まるところだ。ひとまずスタンドの空いている席に座ると、ピストルが鳴る。運動不足の人間のジョギングよりも速いであろうスピードで、選手が歩き始める。


 先頭集団が目の前を通り過ぎようとしたときだった。「ゆみえファイトォーッ!!」。大音声が耳をつんざく。驚いて辺りを見渡すと、後方に筑波大学の部員が十数名座っていた。「ゆみえ」というチームメイトが先頭集団の中を走っているのだろう。


 納得してレースに目を戻した瞬間、第二声があがった。「かなみファイトォーッ!!」。どうやらもう一人、「かなみ」という選手が出場しているようだ。途中で新聞を読み始めた私を尻目に、十数人の応援団は2人が前を通るたびに声を振り絞った。その回数、2人×25周で50回。1時間近いレースの間、彼らは声援を送り続けた。


 まだ雨は落ちてこないが、雲の色が灰色になってきたので、屋根の下へ移動する。周りに座っているのは中央大学の部員だ。彼らの応援も迫力がある。チームメイトが走っている間、声を出し続けるのだ。400mハードルでは1分少々、800mでは2分前後、200mでは30秒弱、ろくに息もつかない。レースが終わったあとは、走り終えた選手のような呼吸をしている。そうだ、彼らは選手とともに走っているのだ。


 バックスタンドでは各大学が横断幕を掲げ、ノボリを立て、そろいのジャージを着て、ときには人文字を作りながらチームメイトに勇気と元気を与えている。走幅跳が行われる時間にはホームスタンド最前列に幾重もの人垣ができ、3000m障害が始まると水郷の近くに新たな音源ができる。彼らの熱に水を差すのをためらっているのか、心配された雨はまだ降らない。


 3000m障害決勝の2組目が始まる4時30分頃、やっと水滴が天から落ちてきた。今まで溜めていたぶんもと言わんばかりに、一気に大降りになる。最終競技まで待ってくれないあたり、神様は意地悪だ。だが、「昼からは雨」という予報に反して、よくここまで天気が持ってくれたものだ。


 ひとりの選手を、部員全員が全身全霊をかけて応援する。身体はスタンドに座っていても、心は選手とひとつになって走る。そんな熱気が天に伝わり、雨を降らすのを躊躇させた。あまりに非科学的な話だ。あまりに非科学的だが、それを否定できない自分がここにいるのだ。

posted by jjc_skentaro |21:00 | 陸上競技 | コメント(2) | トラックバック(0)
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