2009年11月30日
早いもので12月だ。ということはつまり、ニューイヤー駅伝まで残り1カ月だ。
2010年元日のニューイヤー駅伝の焦点は、日清食品グループが悲願の初優勝を達成するかどうかだろう。近年、藤井周一、保科光作、北村聡、座間紅祢と大学陸上界のトップ選手を毎年のように陣容に加えてきたチームは昨季、優勝した富士通にわずか1秒差の2位。ここに大砲・佐藤悠基が加わったのだから、レース中盤から独走してもおかしくない。
だが、駅伝は難しい。私自身、高校時代は何度も駅伝を走ったためよく分かるが、誰かの弱気が他の選手に伝染することもあれば、誰かの微妙な遅れを取り戻すべくオーバーペースになった選手が失速することもある。まして、ニューイヤーでは4区の後半以降、突風のような向かい風に選手はさらされる。才能豊かなスピードランナーを揃えるチームがすんなり勝つとは考えづらい。
そこに他チームの勝ち目があるわけで、コニカミノルタや中国電力、Hodna、そして富士通といったチームは虎視眈眈と優勝を狙っているだろう。特に富士通は今年、昨季のVメンバーに、3000メートル障害でおなじみの岩水嘉孝が加わる。先日の国際千葉駅伝で千葉選抜のエース区間を走った山口祥太ら若手の台頭も頼もしい。
日清の初Vか、どこかが待ったをかけるのか。選手やスタッフはデリケートになる時期を迎えるが、1カ月後が楽しみだ。
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2009年06月21日
五輪競技において、五輪の翌年が“休み年”になることは珍しくない。4年に一度の五輪に照準を合わせた選手の引退や休養、不振、あるいは燃え尽き現象等により、競技のレベルが一時的に落ちるのだ。
アテネ五輪後の05年も、柔道では谷亮子が出産のために休暇に入り、7連覇がかかっていた世界選手権を欠場する。シンクロナイズドスイミングでは立花美哉と武田美保が五輪を最後に引退し、日本チームのメンバーがガラリと変わった。競泳でも北島康介が大会にこそ出続けていたが、日本選手権で3位に甘んじるなど低迷期に入る。あらゆる競技でこの“休み年”現象は見られるのだが、とりわけ競泳や陸上などは勝負がタイムで決するだけに、この一時的なレベルダウンが起きると球技等よりも目立つ。大会が行われても、選手もいなければ記録も出ない、盛り上がりに欠けたものになってしまったりする。
事実、6月上旬の競泳のジャパンオープンは、北島が休養、中村礼子や柴田亜衣が引退した中で行われ、3日間を通して日本新記録がゼロだった(水着の問題もあったが)。その一方で、競泳と並ぶ“タイム系”である陸上が、五輪翌年らしからぬ盛り上がりを見せている。北京五輪の400㍍リレーメンバーの朝原宣治は昨年限りで引退し、末續慎吾も休養中、現役続行を決断したハードラーの為末大もひざに痛みを抱えるなど“休み年になる要素”は十分にあるのだが、400㍍リレーメンバーの高平慎士、塚原直貴の“富士通コンビ”が五輪の流れをもってきたような好調を春先から維持し、短距離界を力強く牽引。そして、福島千里と高橋萌木子のライバル対決が盛り上がりをさらにヒートアップさせている。
福島と高橋はともに1988年生まれの同級生で、高校時代は高橋の方が速く、今は福島がややリードしている。茶髪で華奢な福島は、腕を横に振るような走法。一方の高橋は黒髪で筋肉質、腕は前後に振る。福島はスタートからの加速のスムーズさに定評があり、高橋は後半の追い込みが18番。ほんわか、おっとりの福島に対し、走った直後にもしっかりとした口調でレースを分析する高橋と、あらゆる点で対照的だ。
この2人が、今季は織田記念の100m、静岡国際の200m、大阪国際グランプリ陸上の100mと3戦続けて0秒01差の戦いをくり広げ(福島が3勝)、今月7日の記録会では福島が11秒24の100m日本新をマーク。高橋もやや後方で世界選手権参加標準記録Bを破る11秒32でゴールしており、それまでの自己記録(11秒54)も大きく更新した。
そのノリノリの2人が、25日(木)から28日(日)にかけて広島・広島広域公園陸上競技場で行われる日本選手権の100mと200mで激突する。“休み年”もどこ吹く風の若きエースのライバル対決に注目だ。
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2008年12月31日
新年1月2・3日に行われる箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)の各大学の区間エントリーが12月29日に発表された。
“戦国駅伝”と呼ばれた過去数大会とは異なり、駒沢大学・早稲田大学・東洋大学の3強の力が頭ひとつ抜けている今大会。質・量ともに充実のラインナップを揃えた早大と東洋大が連覇を狙う駒大に挑む構図だ。
だが、早大は竹沢健介(4年)、東洋大は大西智也(4年)の両エースが2区を外れ、負担の軽い3区にエントリーされている。3区にエントリーされたということは、おそらく“走れる”ということであり(状態が深刻なのであれば、補欠に置いてギリギリまで様子をみたうえで7区あたりに投入するか、いっそ主要区間にダミーで置くはずだ)、両校とも1人の故障でぐらつくほどの陣容ではない。とはいえ、エースが2区を走らないことで1分から1分半程度のマイナスが出るのも事実である。
その点、王者・駒大はエースの宇賀地強(3年)が2区にきっちりエントリーされている。主力の池田宗司(4年)、深津卓也(3年)が補欠にまわっているが、有事に備えて万能型の主力を補欠に置くのは例年のこと。アクシデントがなければ、池田は3区、深津は9区にそれぞれ当日変更で投入されるだろう。区間エントリーを見る限り、3強の中では最も順調なようだ。
ひとつ気になるのは、補欠に人を残しすぎている点だ。当日変更で出走できるのは4人までだが、補欠には池田、深津に加え吾妻伸洋、太田行紀(以上4年)、藤山修一(3年)、井上翔太(1年)と出走が有力視されていた選手がズラリ。この6人の中に、状態が思わしくない選手があるいはいるのか。選手層の厚さが代名詞の駒大とはいえ、駅伝に力を入れる大学が増えている中で、5~6年前ほどの絶対的な層の厚さはない。1人2人、走れない選手がいるのであればピンチである。
ただ、吉田繁(2002~04年出走)のようなとっておきのロードランナーがいる可能性も十分。そう考えると、6区の岩本雄樹(3年)、7区の藤原昌久(2年)に10000mの記録がないことは逆に不気味になってくる。頼れる上級生を軸に往路で好位置に着け、復路序盤でニュースター誕生、9区で力の差を見せつける得意のパターンが炸裂しそうな気配も漂っている。
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2008年11月11日
第28回全日本実業団対抗女子駅伝が12月14日(日)に岐阜で行われる。89年から92年にかけて4連覇を達成し、95年にも大会を制したワコールが充実のラインナップで13年ぶりの優勝を目指す。
89年から92年にかけて、4連覇の金字塔を打ち立てたワコール。だが近年は、福士加代子のゴボウ抜きばかりが目立ち、優勝争いに絡むことなく大会を終えていた。
優勝に届かぬ最大の要因は選手層の薄さであった。
日本長距離界のエースである福士、恵まれた体躯を持ち1500mからハーフマラソンまでをこなす野田頭美穂、美人ランナーとして人気のスピードスター・湯田友美、スタミナに自信を持つ風間友希、須磨学園高時代に都大路で2年連続区間賞の西山弥生、と5人目までは他チームと比べて見劣りしない。
だが、全日本実業団対抗女子駅伝は6区間で構成される。1人足りないのだ。事実、一昨年も昨年も、6番手区間である4区で順位を落としている。また、選手層が薄いため、前述の5人は少々状態が悪くとも出走せざるを得ない。昨年の3区における風間の区間24位、05年の1区における西山の区間18位は、いずれも本調子なら考えられない順位である。
しかし、今年はその選手層に不安がない。筑紫女学園高-順天堂大卒の稲富友香、立命館宇治-立命館大卒の樋口紀子というこの世代のトップランナー2人が入社し、1500mを得意とするスピードランナーの中條宏美(愛知淑徳高卒)も加入。“使える”選手が5人から8人に増え、ウィークポイントだった選手層は一気にストロングポイントとなった。
11月3日に行われた淡路島女子駅伝で、ワコールは5年ぶりの優勝を飾る。1区で稲富が首位と5秒差の3位と好発進すると、最短2区で中條が快足を飛ばし首位奪取。最長3区で福士が区間新記録の快走を見せ独走態勢に入り、4区の樋口も区間賞で続く。5区の野田頭が準エース区間をのりきると、最後は湯田がチーム4つめの区間賞でダメを押した。福士、野田頭、湯田といったお馴染みの顔ぶれとフレッシュなルーキーの力が見事に融合。西山と風間を欠きながら、2位のダイハツに約1分、3位の天満屋に約2分半の大差をつけた。
淡路島を制した自信を胸に乗り込む美濃路では、2つの長距離区間(3区と5区)をどう乗り切るかがポイントになる。一方に福士が入ることは間違いないが、他方を誰に任せるのか。2年連続で3区を走っている風間か、淡路島で5区を務めた野田頭か、あるいは稲富を抜擢するのか。スピード型の湯田、西山、中條、軽快なピッチを刻む樋口と短距離区間の駒には事欠かないだけに、長距離区間をうまくしのげば、95年以来13年ぶりの栄冠が見えてくる。
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2008年05月24日
神宮球場で六大学野球の試合を見る予定だった。チケット売り場の手前で、今日の天気予報を思い出す。「午前中は曇り、昼からは雨、降水確率80%」。雨で濡れるのは構わないが、雨で試合が中止になるとチケット代がもったいない。どうせなら雨が降っても中止にならない競技をという消極的な理由で、来た道を少し引き返し、国立競技場に入った。
陸上競技の関東インカレ・3日目の競技が行われていた。トラックでは女子10000m競歩が始まるところだ。ひとまずスタンドの空いている席に座ると、ピストルが鳴る。運動不足の人間のジョギングよりも速いであろうスピードで、選手が歩き始める。
先頭集団が目の前を通り過ぎようとしたときだった。「ゆみえファイトォーッ!!」。大音声が耳をつんざく。驚いて辺りを見渡すと、後方に筑波大学の部員が十数名座っていた。「ゆみえ」というチームメイトが先頭集団の中を走っているのだろう。
納得してレースに目を戻した瞬間、第二声があがった。「かなみファイトォーッ!!」。どうやらもう一人、「かなみ」という選手が出場しているようだ。途中で新聞を読み始めた私を尻目に、十数人の応援団は2人が前を通るたびに声を振り絞った。その回数、2人×25周で50回。1時間近いレースの間、彼らは声援を送り続けた。
まだ雨は落ちてこないが、雲の色が灰色になってきたので、屋根の下へ移動する。周りに座っているのは中央大学の部員だ。彼らの応援も迫力がある。チームメイトが走っている間、声を出し続けるのだ。400mハードルでは1分少々、800mでは2分前後、200mでは30秒弱、ろくに息もつかない。レースが終わったあとは、走り終えた選手のような呼吸をしている。そうだ、彼らは選手とともに走っているのだ。
バックスタンドでは各大学が横断幕を掲げ、ノボリを立て、そろいのジャージを着て、ときには人文字を作りながらチームメイトに勇気と元気を与えている。走幅跳が行われる時間にはホームスタンド最前列に幾重もの人垣ができ、3000m障害が始まると水郷の近くに新たな音源ができる。彼らの熱に水を差すのをためらっているのか、心配された雨はまだ降らない。
3000m障害決勝の2組目が始まる4時30分頃、やっと水滴が天から落ちてきた。今まで溜めていたぶんもと言わんばかりに、一気に大降りになる。最終競技まで待ってくれないあたり、神様は意地悪だ。だが、「昼からは雨」という予報に反して、よくここまで天気が持ってくれたものだ。
ひとりの選手を、部員全員が全身全霊をかけて応援する。身体はスタンドに座っていても、心は選手とひとつになって走る。そんな熱気が天に伝わり、雨を降らすのを躊躇させた。あまりに非科学的な話だ。あまりに非科学的だが、それを否定できない自分がここにいるのだ。
posted by Pooh |21:00 |
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