2008年08月16日

小粒でもぴりりと辛く

 佐賀北の2番打者、井手和馬(現・亜大)の打球が、センター前にポトリと落ちる。2塁走者の馬場崎俊也(現・立命大)が足を絡ませながら、最後は倒れこむようにホームイン。全国制覇を目指した東の横綱が、伏兵の粘りに屈した瞬間だった。


 そう、帝京は“東の”横綱だった。


 西の横綱は、中田翔(現・北海道日本ハム)を擁する大阪桐蔭であった。中田の他にも、山口祥継(現・法大)、堀拓真(現・明大)、丸山貴司(現・青学大)ら、2年時からレギュラーを張る逸材がズラリ。圧倒的な個の力を見せつけて、大阪大会の決勝まで順当に勝ち上がる。


 だが、甲子園を懸けた大一番では、植松優友(現・千葉ロッテ)を中心に束となってかかってきた金光大阪に惜敗を喫する。3点ビハインドの最終回、きらびやかなタレント軍団は、ユニホームを真っ黒にして反撃を試みる。だが、お尻に火がつくのが少し遅かった。全国制覇の最有力は、予定よりも1ヶ月ほど早く夏休みを迎えた。


 高校野球ファンが落胆したタレント集団の予選敗退は、しかし、後輩たちにとっては最高の教材だったようだ。


 黄金世代が卒業した今年のチームの魅力は、昨年とは対照的な泥臭い全員野球。昨年は二塁手を争っていた浅村栄斗(3年)と森川真雄(3年)がその象徴だ。ともにスタンドに放り込む力を有しているが、浅村は出塁に徹し、森川は左右に打ち分ける。守備では二遊間を組み、戦術的にも精神的にもチームの中心だ。


 福島由登(3年)が先発し、右翼手の奥村翔馬(3年)が救援、福島が再び登板するというパターンも、ここにきてすっかり確立。外野で一休みした福島が気持ちあらたにマウンドへ上がるのは、相手チームにとっては脅威である。奥村の不調による苦肉の策の感もあったが、その奥村も、報徳学園戦で逆転劇を呼び込む好リリーフを披露。苦肉の策は、勝利の方程式へと昇華した。


 “粘りの”あるいは“逆転の”といった枕詞がついてまわる報徳学園に対し、お株を奪う粘り勝ち。勝負強さは、いよいよ本物だ。黄金世代が届かなかった真紅の優勝旗まで、あと2つ。

posted by jjc_skentaro |13:51 | 高校野球 | コメント(0) | トラックバック(0)
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