2008年02月18日

「クァルテットマジコ」 その行く先は誰も知らない…

  話は今からニ年前、2006年ドイツW杯開催間近に遡る。
	
 毎度の如く優勝候補の一角に挙げられていたブラジル代表。その中のある四人の選手の起用法を巡って、ブラジル国民を中心に、世界のフットボールジャーナリスト、フットボールファンの間で活発な議論が交わされていた。

 「クァルテットマジコ」、(魔法の四人組)と呼ばれた四人の選手たち。
 
 当時レアル・マドリーに在籍し、度重なる怪我の影響で全盛期の能力は失われたと云われつつも、抜群の決定力で世界トップクラスのFWに君臨していた、1996、1997、2002年FIFA最優秀選選手賞、1997、2002年バロンドール受賞者、元祖「フェノーメノ」、ロナウド。
 
 圧倒的なパワーを生かした敵陣突破と、丸太のような左足から放たれるシュートの破壊力は対峙する多くの者を震え上がらせ、その愛称をイタリア五賢帝の一人の名にかけて「インペラトーレ」(皇帝)の異名を取っていた、アドリアーノ。

 卓越したテクニックとエンターテイメント性溢れるプレースタイルで、文句なしに当時、世界最高のフットボーラーと評され、バルセロナを二年連続のリーグ優勝と、05~06シーズンUEFAチャンピオンズリーグ(以下、CL)制覇に導いた、2004、2005年FIFA最優秀選手賞、2005年バロンドール受賞者、ロナウジーニョ。

 若くして、あのルイ・コスタからACミランの攻撃のタクトを奪い、チームの中軸を担う。縦へのドリブルのスピードは世界最高クラスで、そこから繰り出される妙技の数々はシンプルながら高い殺傷力を誇る。その自由奔放さが時にマイナスの作用を引き起こすブラジル人選手の中では、規律を遵守し、組織の中で自分の個性を最大限に生かす術を知る選手、カカ。

 彼ら四人を同時にピッチに送り出すか、出さざるべきか。
 議論は大いに盛り上がった。

 攻撃的な選手である四人の守備での貢献度は低い。(一応、カカは三人の中では比較的守備時の貢献度は高い方ではある)前線を担う選手にも守備時の積極的な貢献が求められる時代において、それを望めない選手を同時に多数起用することは、監督にとって非常に勇気がいることだろう。

 しかし、世界最高のタレントである四人が織りなすであろう、華麗で攻撃的なフットボールを見たい。そして、それを持ってしてW杯を制覇する。内容と結果、両方を重視するブラジル国民が四人の同時起用を望んだとしてもなんら不思議ではない。世界中のフットボールジャーナリスト、フットボールファンも彼ら四人がどんなフットボールを見せるのか、非常に注目していた。

 だが、彼らが同時にピッチに立つことはほとんどなく、ブラジルは準々決勝のフランス戦、ティエリ・アンリの一撃に沈んだ。

 悲嘆にくれる四人の魔術師。期待されていた優勝も、美しいフットボールも見せることは出来なかった。

 ブラジル国民の夢は無残にも打ち砕かれ、世界中のフットボールファンの多くから溜息が漏れた。

 しかし、この時、彼ら四人のフットボーラーとしてのキャリアは今後も順風満帆だと、誰もが思っていたに違いない。

 翻って現在、彼らの内、三人がキャリアの重要な岐路に立たされている。

 イタリア、ACミランで二年目のシーズンを迎えたものの、前半戦を怪我とコンディション不良で棒に振り、2月13日の対リボルノ戦で後半途中出場するも、僅か二分後に左ひざに重傷を負ったロナウド。リハビリには約9ヶ月を要すると云う。

 メンタル面の問題と、コンディション不良で所属先のインテル・ミラノでのスタメン争いに敗れ、昨年末から故郷ブラジルのサンパウロにレンタル移籍したが、2月10日のサントス戦で試合中に相手選手に頭突きをするという暴挙に出て、最長で18ヶ月の出場停止を言い渡される可能性のあるアドリアーノ。

 2006年、欧州のクラブとして初のクラブW杯制覇が期待されたがまさかの敗退。そのシーズンのリーガ、CLでも失意のシーズンを送った。
最近では、連日のようにナイトライフを満喫し、チームの合同練習をさぼり続けているという噂が絶えず。ライカールト監督との不仲説、遂にはリオネル・メッシーの台頭で不要論まで囁かれ始めたロナウジーニョ。

 彼ら三人は、いずれもフットボーラーとして、素晴らしい才能と実績を持った選手である。だからこそ現状は本当に残念でならない。キャリアの晩年に差しかかったロナウドはともかく、ロナウジーニョ、アドリアーノには、まだまだ世界のフットボールシーンをリードしていく存在であって欲しいと、切に願わずにはいられない

 一方で、カカは06~07シーズンCL制覇の立役者となり、2007年、FIFA最優秀選手賞、バロンドールをダブル受賞、年末には日本でボカ・ジュニオルスを一蹴し、世界王者に輝いた。
 
 一概に彼らを比較することは出来ない。人にはそれぞれ願うものも、辿り着きたい場所も違う。
 だが、フットボーラーとしてだけでなく素晴らしい仁徳者として知られるカカと、その真逆のことが多く囁かれる、ロナウド、ロナウジーニョ、アドリアーノ。

 ここに、彼らの現在を分かつものの一つがあったのではないかと考えるのは私だけではないはずだ。

posted by jjc_shunyasutake |07:23 | コメント(3) | トラックバック(0)
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